子どものアレルギーQ&A

  • アレルギーについて
  • アトピックマーチについて
  • 食物アレルギーについて
  • 食物アレルギーの診断
  • 基本食について
  • 除去食療法について
  • 食物アレルギーをもつお子様の離乳食について
  • アレルギーをもつお子様への予防接種について
  • 乳幼児のアトピー性皮膚炎について
学校や幼稚園の先生対象「小児アレルギー説明会」資料はこちら

アレルギーについて

アレルギーってなんですか?開く
人の身体には、自分と異なる物質(非自己)を体内に受け入れてもよいか、受け入れない方がよいかを、チェックするシステム(免疫システム)が発達しています。
これは、自分にとって不都合なもの(細菌・ウィルスなどの病原体やアレルギー物質など)を、体内に受け入れないようにするための防御システムです。
アレルギーは、環境中に存在する様々な物質に対して、チェックシステムが過剰に働き、身体が過敏になっている状態といえます。
アレルギーは増えているのですか?開く
平成4年度に厚生省が行ったアトピー性疾患実態調査によると、今までに「アレルギー疾患です」と医師にいわれた事がある子どもさんは、乳児6.6%、1才6か月児24.9%、3才児38.9%にのぼります。
そのうち、アトピー性皮膚炎は、乳児6.0%、1才6か月児19.0%、3才児31.2%と、乳幼児期のアレルギー疾患の大部分を占めています。
一方、気管支喘息の罹患率は、3.9~8.2%と、20~30年前の5~10倍に増加しています。 ダニに対する特異的IgE抗体の保有率をみますと、1960年代中頃には2~3%、1970年代後半には20%、1990年代前半には40%という統計結果が報告されています。
このように、アレルギーの病気は全人口の40%にも達し、またその予備軍も年々増加傾向にあります。
アレルギーの原因(抗原=アレルゲン)には、どういうものがありますか?開く
アレルギーを起こす物質(抗原)には、いろいろなものがあります。
抗原の種類は、体内へ入る経路により、次の4つに分類されます。

食物アレルギー
(口や消化管から)
そばアレルギー・卵アレルギー・牛乳アレルギーなど
吸入アレルギー
(鼻や気管支から)
ダニアレルギー・カビアレルギー・花粉アレルギーなど
接触アレルギー
(皮膚や粘膜から)
うるしアレルギー・ラテックスアレルギー ・ペットアレルギー など
薬物アレルギー ペニシリンアレルギー・ピリンアレルギーなど

しかし実際には一つの物質が、いくつかの違った経路から体内に入り、アレルギー反応を引き起こす事があります。 この他にも、人の身体を取り巻く多くの物質に、強さこそ違え、アレルギーを起こす力があると考えられています。

アレルギーの症状にはどういうものがありますか?開く
アレルギー反応の結果、引き起こされる症状には、いろいろなものがあります。
症状が現れる身体の場所の違いにより分類しますと、次のように整理する事が出来ます。

全身症状 アナフィラキシーショック・蕁麻疹
呼吸器症状 気管支喘息・喉頭浮腫
消化器症状 難治性下痢症・ミルク嫌い・臍疝痛
神経症状 偏頭痛・起立性調節障害・アレルギー性緊張弛緩症候群
耳鼻科的症状 アレルギー性鼻炎・滲出性中耳炎
眼科的症状 アレルギー性結膜炎
皮膚科的症状 アトピー性皮膚炎・蕁麻疹・脂漏性湿疹・アレルギー性紫斑病
泌尿器科的症状 アレルギー性膀胱炎

実際には、一人の人に、いくつもの症状が同時に現れる事があります。

アレルギーの症状は、どれぐらいの時間で現れますか?開く
原因となる物質(抗原)と接触(食べたり、吸い込んだり、触ったり)してから、症状が現れるまでの時間は、次のように整理する事ができます。

(1)即時型 数分以内から起こり、遅くとも2時間までに症状が現れます。
(2)遅発型 6~8時間後に、症状が現れます。
(3)遅延型 24~48時間後に、症状が現れます。
(4)二相性 即時型に続き、一度落ち着いてきた症状が、半日後に再び悪化する事があります。

即時型アレルギー反応は、肥満細胞の脱顆粒により引き起こされるアレルギー性炎症です。
一方、非即時型アレルギー反応は、好酸球が主役を演じるアレルギー性炎症です。
このようにアレルギー反応は、様々な免疫担当細胞が、時間とともに次々と反応を起こしていく、連続した生体反応過程です。
そのために、アレルギーを引き起こす原因となる物質(抗原)と接触した時は、急性期をやり過ごした後も、1~2日は安心しないで、子どもさんの様子を観察する事が大切です。

アレルギーの病気は一人一人特徴が違うのですか?開く
アレルギーの病気は、一人一人原因も、現れる症状も、現れ方も違います。
一人一人のアレルギーの特徴を,正確に理解し合うためには、次の3点を診断する事が必要です。
●アレルギーの原因
●アレルギーの症状
●アレルギーの症状の現れ方
例えば
A君は、そばが原因で、すぐにショック症状におちいります。
B子さんは、すぎ花粉が原因で、春先に屋外にでると、すぐに目がかゆくなります。
C君は、イヌの毛が原因で、イヌを飼っているお家に遊びに行くと、しばらくすると喘息の発作がでます。
D君は、ダニが原因で、夜になると体がかゆくなり、アトピー性皮膚炎が悪化します。
このようにアレルギーの病気は、同じ原因からくる場合でも、一人ひとり症状や現れ方も違うために注意が必要です。
自分の経験に基づく善意からの助言であっても、他の人には害をなす事があります。
アレルギーの病気は、医師の診断の基づいて、対処する事が大切です。

アトピックマーチについて

アトピックマーチという言葉を聞いたのですが?開く
小児医療は、「子どもさんの健康・疾患を、子どもさんの身体的・精神的発達に即して理解し、時間的流れの中で、見通しを持って指導にあたる」ことを、基本的な姿勢としてもっています。
この姿勢で、乳幼児期からアトピー性皮膚炎をフォローしていますと、気管支喘息や花粉症に移行していく子どもさんを数多く経験します。 子どもさんを診察する経験から得られた臨床経過を、小児科では「アトピックマーチ」という言葉でよんでいます。
そして「アトピックマーチ」の進行を阻止するために、早期介入という立場でアトピー性皮膚炎の治療を試みようと考えています。 「アトピックマーチ」という言葉には、次の2つの意味のマーチが含まれています。

(1)アレルギーを起こす物質(抗原)の種類のマーチ
アレルギーの原因となる抗原の種類が、年齢とともに、卵白・牛乳・ペット・穀物・ダニ・花粉・果物などと、移り変わっていく臨床経過です。

(2)アレルギー症状の現れ方のマーチ
アレルギー反応の結果、引き起こされる症状が、アトピー性皮膚炎・気管支喘息・花粉症へと、移り変わっていく臨床経過です。 「アトピックマーチ」は、臓器発達の特異性・抗原被爆量の蓄積効果・免疫応答の年齢的変化などが原因として考えられますが、不明な点が多い臨床経過です。 乳幼児期アトピー性皮膚炎の子どもさんが、みんな「アトピックマーチ」のコースをたどり、気管支喘息を発症するわけではありません。 しかし、多くの子どもさんが、気管支喘息へと続く「アトピックマーチ」をたどる事も事実です。
「アトピックマーチ」という臨床経過を観察するにつけ、乳幼児期アトピー性皮膚炎を、皮膚だけの病気としてとらえるのではなく、免疫失調状態の早期表現型としてとらえ、診断・治療を行う必要に 迫られる事も少なくありません。 全身の免疫機能の健やかな発達を促すために、離乳食指導・防ダニ指導など、早期からの指導に力を入れる事も、小児科医師の重要な役割だと考えています。

アトピックマーチへの早期介入とはなんですか?開く
「アトピックマーチ」という臨床経過を観察する中で、気管支喘息や食物アナフィラキシーなど、直接生命に危険が及ぶアレルギーの病気への進展を、未然に阻止できないかという課題がおきてきます。 いたやどクリニック小児科では、食事の面・防ダニの面・生活環境の面から、指導を行っています。
食事指導の面では、子どもさんの消化機能の発達に合わせた形での離乳食の開始時期と、食材の選択の指導を行っています。 防ダニ指導の面では、寝具の掃除や丸洗い・防ダニ寝具の購入・床面のフローリング化など、乳幼児早期からの指導を行っています。 生活環境の改善指導の面では、ペットの室内飼育のしかた・室内喫煙の禁止・暖房器具の選択などの指導を行っています。
乳幼児早期からの生活改善や環境改善の指導を行うと、アレルギー感作の成立を阻止できないまでも、アレルギー症状の軽減につながる事は、多くの子どもさんで経験しています。

食物アレルギーについて

食物アレルギーってなんですか?開く
大勢の子どもさんが、普通に食べている食物が、ある子どもさんの身体には良くない事があります。
食物アレルギーは、「アレルギー反応が関与し、食物に対して過敏な症状を起こす病気」をさします。
アレルギーを起こす食物(食物抗原)が口から入ると、消化管粘膜内でアレルギー性炎症反応が起きます。
その結果、消化管の透過性が亢進し、食物抗原の吸収がさらに促進され、皮膚や気管支でアレルギー症状が発現すると考えられています。
食物アレルギーの症状にはどういうものがありますか?開く
消化管から吸収された食物抗原は、全身の臓器に運ばれて、そこでアレルギー性炎症を引き起こします。 そのため、食物アレルギーの症状は、身体のどこにでも出現します。
食物アレルギーの症状を、
1.一次的な炎症の場である消化管の症状
2.二次的な炎症の場である全身の症状
とに整理して説明します。

(1)
消化管の症状
口腔内
アレルギー
症候群(OAS)
消化器の症状
異味感・口唇の発赤・腫脹 難治性下痢症・ミルク嫌い・臍疝痛・消化不良症・口内炎・口臭・便秘・過敏性大腸炎・クローン病・肛門掻痒症
(2)
全身の症状
全身症状 アナフィラキシーショック ・蕁麻疹・血管神経性浮腫・貧血・発熱
呼吸器症状 気管支喘息 ・喘息性気管支炎・ 喉頭浮腫
神経症状 偏頭痛・夜驚症・起立性調節障害・アレルギー性緊張弛緩症候群
耳鼻科的症状 アレルギー性鼻炎・滲出性中耳炎
眼科的症状 アレルギー性結膜炎・春季カタル
皮膚科的症状 アトピー性皮膚炎・蕁麻疹・脂漏性湿疹・アレルギー性紫斑病
泌尿器科的症状 アレルギー性膀胱炎・起立性蛋白尿・頻尿
食物アレルギー症状の重症度について教えてください開く
食物アレルギーの症状は、湿疹などの軽微なものから、生命に危険が及ぶものまで、広範囲にわたります。
アナフィラキシーショック ・ 気管支喘息発作 ・ 喉頭浮腫 は、短時間のうちに生命に危険が及ぶ症状です。
重症タイプの食物アレルギーの症状の多くは、症状出現までの時間をみると60分以内と短く、 即時型食物アレルギー に分類する事ができます。
しかし、このような重症タイプの食物アレルギーの存在は、一般的にはあまり知られていません。
一方、嘔吐や下痢をおこす消化管アレルギーは、症状出現までの時間は比較的長く、 非即時型食物アレルギー に分類する事ができます。
食物アレルギーを理解する時に、原因・現れる症状・出現までの時間・重症度が多彩な疾患であるという認識を持つ事が重要です。
アトピー性皮膚炎と食物アレルギーとは違うのですか?開く
アトピー性皮膚炎は、皮膚の症状から名付けられた病名です。 食物アレルギーは、原因から名付けられた病名です。 この2つの病名は、一人の人の病像を、違った角度から表現したものです。「アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」と定義されています。 すなわち、

  1. 1.繰り返し傾向のある
  2. 2.掻痒感が強い
  3. 3.アトピー体質のある
  4. 4.湿疹病変

といえます
アトピー性皮膚炎の原因として、

  1. 1.皮膚の脆弱性
  2. 2.免疫の異常
  3. 3.精神的ストレス

が考えられ、これらの原因が組み合わさって出現します。
何がアトピー性皮膚炎の主な原因なのかは、その子どもさんによって異なります。
皮膚が弱いと汗やこすれなどの刺激でかゆみが生じます。
かゆみをがまんするのは難しくひっかくと皮膚に傷が生じます。
皮膚が傷つくと、その部位からダニのアレルゲンやたまご、牛乳などの食物アレルゲンが侵入し、ダニアレルギーや食物アレルギーにつながります。
また傷ついた皮膚の部位で自然免疫が働きはじめ、体全体を過敏な状態にし、さらにかゆみを強くするなどの悪循環が始まります。
アトピー性皮膚炎の治療は、はじめに、スキンケアや外用療法などをしっかりと行いましょう。

一方、食物アレルギーは、全身の免疫異常を引き起こす原因の種類から、名付けられた病名です。
食物アレルギーの症状として、食物アナフィラキシーを起こす場合が深刻です。 食物アナフィラキシーを起こす子どもたちは、普段は皮膚には症状が現れていない場合があります。
そのために、「皮膚の症状は改善されているのに、何故、徹底した除去食療法が必要なのか」といった声が聞かれる事もあります。
周囲の大人が、食物アナフィラキシーなどの重症タイプの食物アレルギーを理解できず、誤った対応をする事も少なくありません。

食物アレルギーの原因となる食物にはどういうものがありますか?開く
食物アレルギーを起こしやすい食物として、卵・牛乳・小麦が代表的な食物といわれています。
この他にも、ごく普通に食べたり、身体に触れたりしている食物のほとんどが、食物アレルギー症状を起こす可能性を秘めています。
最近では、クルミやアーモンド・カシューナッツ・ヘーゼルナッツなどの木の実やピーナッツのアレルギーは急増しています。
しかし、食物アレルギーを起こしやすい食物と、食物アナフィラキシーなどの重症タイプのアレルギー症状を起こしやすい食物とは、必ずしも同じではありません。
重症タイプのアレルギー症状を起こしやすい食物としては、次の食物をあげる事ができます。

穀物類 ソバ・小麦
動物性蛋白 牛乳・卵
魚介類 かに・えび・たこ・いか
果物類 キウイ・バナナ・柑橘類
ナッツ類 ピーナッツ・アーモンド・クルミ・カシューナッツ・ヘーゼルナッツ
その他 カレー・チョコレート・グミキャディー など

食物アレルギーの診断

食物アレルギーの診断では、何をはっきりとさせる必要があるのですか?開く
食物アレルギーの正確な診断は、治療方針を立てる上での基礎になります。
食物アレルギーの診断の要点は、次の5つに整理する事ができます。

(1)食物アレルギー関与の診断 今の症状が食物アレルギーに基づくものか否かの診断
(2)食物抗原の特定 何が食物アレルギーの原因抗原なのかについての診断
(3)症状の種類・程度の予測 どのような症状の出現が予測されるのかについての診断
(4)症状の出現経過の予測 症状はどのような経過で出現する事が予測されるのかについての診断
(5)耐性獲得の確認 食物抗原と考えられていた食物に対して、
耐性獲得が成立していないかの診断
食物アレルギーの診断はどのように進めていくのですか?開く
食物アレルギーの診断は、子どもさんの年齢や症状に応じて、子どもさんやご家族の負担の少ない診断方法から、順次進めていきます。
食物アレルギーの診断の進め方を、次の3つの段階に整理します。

StepI (1)現病歴 発症時のエピソードや症状の種類から、原因を推察する
(2)既往歴 以前に経験した症状や、その状況から、原因を推察する
(3)食生活状況 好きな献立・嫌いな献立・お菓子の与え方などの食生活習慣から、
原因を推察する
(4)診察 症状の観察や診察の結果から、原因を推察する
診断をする上で、子どもさんの症状についての
聞き取りが中心になります。
お母さんのていねいな観察記録が必要です。
StepII (1)血液検査 IgE値・食物関連特異的IgE値・好酸球数・好塩基球数・
IgA値・ヒスタミン遊離試験
(2)便検査 便中IgE値・好酸球数・便細菌培養・便真菌培養
(3)皮膚テスト 皮内テスト・プリックテスト・スクラッチテスト・パッチテスト
StepIII (1)食物除去試験
(2)食物負荷試験「診断のための食物負荷試験」
(3)食物生活日誌
食物アレルギーの診断について、もう少し詳しく教えてください。開く
食物アレルギーの診断は、食物抗原の摂取から、症状が出現するまでの時間で分類すると、理解しやすくなります。 ここでは食物アレルギーを、即時型・非即時型の2つのタイプに分けて説明します。

I:即時型食物アレルギー
蕁麻疹・喉頭浮腫・気管支喘息発作・食物アナフィラキシーショックなどの、即時型食物アレルギーを診断するためには、アレルギー症状発症時のエピソードの聴取・血液検査 (IgE抗体・食物関連特異的IgE抗体・ヒスタミン遊離試験)・皮膚テストが用いられます。 即時型食物アレルギーは、原因食物抗原の摂取から、症状が出現するまでの時間が短いために、聴取したエピソードから比較的容易に、原因抗原を類推する事ができます。 また、食物関連特異的IgE抗体など、即時型アレルギーを診断するための血液検査も、診断に有用です。
しかし、食物アナフィラキシーショックの出現を避けるために、即時型食物アレルギーを診断する目的で、「診断 のための食物負荷試験」を実施する機会は、多くありません。

II:非即時型食物アレルギー
アトピー性皮膚炎に代表される、非即時型食物アレルギーを診断する事は、容易ではありません。
血液検査として、IgE抗体・食物関連特異的IgE抗体(CAP-RAST値など)を検査する事が普及しています。 しかし、IgE抗体・食物関連特異的IgE抗体の検査は、本来即時型アレルギー反応を調べる検査法です。
そのため、検査結果と、食物除去負荷試験に基づいて診断された非即時型食物アレルギーとの間の相関は、必ずしも良好ではありません。

食物除去試験は、どのように進めるのですか?開く
食物除去試験は、原因と考えられる食物抗原を、微量な混入まで避けた上で一定期間過ごし、アレルギー症状が改善するかどうかを調べる試験です。 そのためには、お母さんの注意力と根気に加え、栄養士さんの専門的な指導が必要です。

当初は食物アレルギーが関与していた子どもさんでも、年齢が大きくなるに伴い、食物耐性を獲得してくる場合が一般的です。 これらの診断上の不十分さを解消するためには、診断のための食物負荷試験を実施する必要があります。 しかし、食物除去試験を行う事により、身体の過敏性が亢進し、非即時型アレルギー反応が、即時型アレルギー反応に移行する事も稀ではありません。その結果、食物アナフィラキシーショックが出現する危険性もあります。

食物負荷試験は、救急時の対応が可能な医療機関で行う必要があります。

食物生活日誌をつける目的は何ですか?開く
食物生活日誌は、お母さんの観察記録を、子どもさんの食物アレルギーの診断に役立てようとするものです。食物生活日誌を記録してもらう中で、次の事がわかります。

  1. ●微量な食物抗原の混入にまで注意して、除去されているかの確認
  2. ●除去食療法の効果判定
  3. ●予測した食物抗原以外の食物抗原の発見
  4. ●栄養摂取状態の把握
  5. ●食生活パターンの把握
  6. ●生活リズムの把握

食物生活日誌は、食生活の記録だけでなく、遊びや生活リズムを記録する事で、 症状の変化の原因を推察し、食物アレルギーの診断を過誤なく行うために鍵となる記録だと考えます。

食物生活日誌をつける上で、注意する点を教えてください。開く
食物生活日誌をつける上での注意点を説明します。

  1. I:食物面では、
  2. 1.食事時間を記載する。
  3. 2.子どもさんが口にしたすべての飲食物を記載する。
  4. 3.母乳を与えているお母さんであれば、お母さんが口にしたすべての飲食物を記載する。
  5. 4.加工食品を口にした場合は、加工食品に表示されている成分名を記載する。
  6. 5.使用した調味料も記載する。
  1. II:生活面では、
  2. 1.起床時間・就寝時間を記載する。
  3. 2.入浴時間・着替えの時間・スキンケアを行った時間を記載する。
  4. 3.母乳を与えているお母さんであれば、お母さんが口にしたすべての飲食物を記載する。
  5. 4.外遊び・外出の時間・出かけた場所を記載する。
  6. 5.その日の子どもさんの体調(熱・咳・排便・食欲など)を記載する。
  7. 6.天候についても記載する。
  1. III:症状面では、
  2. 1.皮膚症状(湿潤している部位・発赤している部位・乾燥の強い部位・かゆみの強い部位)を図に記載する。
  3. 2.皮膚以外の症状についても、時間を追って記載する。
  4. 3.症状の変化と原因と考えられる事について、自由に記載する。
  5. 4.外遊び・外出の時間・出かけた場所を記載する。

基本食について

基本食とは何ですか?開く
基本食(健康的な生活を送るための基本的な食事の摂り方)は、身体の過敏な状態を抑え、アレルギーを起こしにくくするために考えられた、食物アレルギー治療の基本をなす食事指導です。 除去食療法を行う前に、基本食の考え方をしっかりと理解しておく必要があります。 基本食を実践する事で、除去食療法の効果も高まります。
基本食について、もう少し詳しく教えてください。開く
人は、自らを取り巻く様々な物質を、積極的に外部から取り入れ、または否応なしに受け入れて生活をしています。 そのなかでも食事は、人が生命を維持・増進するための不可欠な生命行為です。
身体を構成する物質のほとんどが、通常は食事という生命行為を通じて、身体に取り込まれます。 摂取する食材の構成成分により、身体構成成分も大きく規定されています。 そのために、人は摂取する食材の質と量に、大きな影響を受けて生きているといえます。
空腹を満たすために窮々としていた時代には、生命を維持するために、利用できる食材を探す事が、 人々の生活の最大の関心事でした。 しかし、社会の生産力が向上するにつれて、食事がもつ生命維持・増進という基本的側面を離れて、 豊かな食生活を享受する事ができるようになりました。 高動物性蛋白質食・高脂肪食・低繊維食が、現在の豊かな食生活の特徴です。
その結果、食事を原因とする様々な生活習慣病が、驚くべき早さで私たちの健康を脅かすようになりました。 食物アレルギーの治療を考える時に、まず現在の豊かな食生活全般を見直す必要があるように思います
健康的な生活を送るための基本的な食事の摂り方を、基本食と名付け、次の8項目にまとめました。
除去食療法の (1)アレルギー症状の緩和、(2)免疫学的寛容の誘導という目標は、基本食を実践する上に成り立ち、除去 食療法の効果もあがると考えています。
基本食は、食物アレルギーをもつ子どもさんにとっても、食物アレルギーをもたない子どもさんにとっても、 食生活を送る上で基本的な事なので、しっかりと実践するようにして下さい。

  1. 1.一日三度の食事をとり、生体のリズムに合った、則正しい食生活を送る
    人の一日の身体活動は、様々なリズムに支配されています。 夜明け近くなると、交感神経が優位に働きはじめ、体内のホルモン分泌が始まり、体温が上昇し始め、目覚めの準備がされます。 同時に、消化管ホルモンの分泌も高まり、食物を消化・吸収する準備に入ります。
    消化・吸収の準備が整った頃に起床し、朝食を摂る事は、効率良く食物を消化し、未消化な蛋白質の吸収を減らす事ができるため、 食物アレルギーの発生を少なくします。
    日没とともに、副交感神経が優位に働き、体温は下降し始め、眠りの準備がされます。 遅い時間に食物を摂取すると、身体は吸収したカロリーを脂肪組織に蓄積し、肥満の原因となります。 このように、生体の活動・休止リズム、自律神経リズム、内分泌リズム、代謝リズムなどの生体のリズムは、日照リズム(太陽が昇り、太陽が沈む周期)の影響を強く受けています。
    自然な生体リズムにそって食事を摂る事が、食物の消化・吸収の効率を高め、食生活に基づく生活習慣病を減らす事につながります。
    しかし、忙しい現代生活では、大人だけではなく子どもさんも、自然な日照リズム、生体リズムとかけ離れて生活する事が多くなっています。
    起床から朝食までの時間を十分にとれない。そのために、自然な食欲がわかないうちに朝食に向かい、十分な栄養を摂れないままに、 一日の始まりを迎えてしまう。場合によっては、朝食を抜く食生活を過ごしている幼児もみうけられます。 午前中に、十分身体を動かして遊べないうちに昼食を迎えるため、あまり食欲がわかない。 空腹を感じた時に、お菓子やジュースをダラダラと摂り、きっちりとした食事をもてないでいる。 夜遅く、一日の食事の大半を摂り、部屋の中で遅くまで遊んでいる。 そのために、また翌朝の起床時間が遅くなる。 このような不自然な一日を過ごしている子どもさんも、少なくありません。
    人の生体リズムは、本来25時間周期であると考えられています。 人は様々な刺激(同調因子)の力を借りて、体内時計を24時間周期に毎日微調整しています。 体内時計を微調整するために働く同調因子として、次のような刺激があげられます。

    I.日照リズム 昼と夜の明暗のリズム
    II.社会因子 家庭・学校・会社・遊び・勉強・仕事などの刺激
    III.食事
    IV.身体運動
    V.環境 温度・湿度・騒音・振動

     小児期に、しっかりとした生体リズムを確立する事は、身体や精神力を鍛える上で、特に重要です。 生体リズムを確立するためには、一日の始まりである朝の目覚めが鍵となります。 快適な朝の目覚めをもたらすために、次の工夫が考えられています。

    I.毎朝一定の時間に起きる 休日も同じ時間に起きる
    II.朝に日光浴をする 2,500~3,000ルクスの光を浴びる事で、 睡眠ホルモン(メラトニン)分泌を抑える
    III.朝食の工夫をする 蛋白質の少し多い目の食事を摂る 温かい飲食を摂る事で、体温・脳内温度を高める
    IV.身体を温める工夫をする 朝風呂やシャワーを浴びる 乾布摩擦をする事で、交感神経優位にする
    V.できれば早寝をする 入浴はぬる目に 無理に眠ろうとせず、静かに身体を横たえる 夕食は、炭水化物を多い目に摂る

     外が明るくなると自然に目覚め、ひとしきり遊んでから朝食をいただく。
    午前中は十分な外遊びをして、しっかりと昼食をいただく。
    お昼寝の後は、少しおやつをいただいて、夕食までまた遊びにでる。
    思いっきり身体を動かした後は、待ちきれないほどにおなかがすき、しっかりと夕食をいただく。
    お風呂の後は、もうすっかりと眠くなり、眠りの世界に入っていく。
    このような子どもらしい、メリハリのある一日の生活に、少しでも近づけてあげましょう。

  2. 2.しっかりと噛んで食べる
    しっかりと噛んで食べる習慣には、次の利点があります。

    1. ●食べ物を効率よく消化する
    2. ●アレルギー物質・発癌物質を中和する
    3. ●満腹中枢を速やかに刺激し、過食を防ぐ
    4. ●記憶力を高める
    5. ●痴呆を予防する
    6. ●顎の骨を強める
    7. ●顔の筋肉を鍛え、表情を若々しくする
    8. ●虫歯を予防する
    9. ●味覚神経を敏感にする

    このうち、食物アレルギーと関係するものとして、i. ・ii. をあげる事ができます。
    i.しっかりと噛んで食べる事は、食物を細かく砕き、唾液の中に含まれている消化酵素との接触を増し、消化を助けます(口内消化)。 その結果、食物を効率よく消化する事ができ、未消化な食物蛋白質の吸収を減じる事で、 食物アレルギーの発生を少なくする事ができます。
    ii.唾液の中には、食物抗原・食品添加物・発癌物質などの、食物中の様々な有害物質を中和する物質 (リゾチーム・IgA)が含まれています。 しっかりと噛んで食べる事は、中和物質を効率よく働かせる事になります。 しかし、忙しい現代では、食事に十分な時間を費やす事も少なくなりました。そのために、食物繊維が少なく、高脂肪の、軟らかくて食べやすい物が好まれるようになり、 しっかりと噛む機会も減ってきました。 その結果、口内消化や唾液に含まれる消化酵素・中和物質の働きが十分に期待できなくなります。 「しっかりと噛んで食べなさい」と注意するだけではなく、食物繊維の豊富な、少し歯ごたえのある食物に慣らしていって下さい。

  3. 3.同じ食材を続けて食べないようにする
    食物アレルギーは、食物抗原の侵入により消化管粘膜でのアレルギー性炎症が惹起され、その結果、消化管透過性が亢進し、 食物抗原の吸収が促進され、全身の臓器(皮膚・気管支・消化管・神経系など)で症状が発現すると考えられています。
    食物アレルギーは、食物に含まれる食物抗原の含有量に応じて、また、食物抗原の炎症惹起力の強さに応じて、消化管粘膜の炎症の程度が決まります。
    一方、食物抗原が侵入しなくなると、自然快復力により、消化管粘膜は数日で(4~5日)修復されます。 消化管粘膜が修復されるまでに、再び食物抗原が侵入すると、粘膜損傷は更に拡大されます。 そして消化管透過性が次第に亢進し、更に微量な食物抗原の侵入も許してしまいます。
    食物アレルギーの予防や治療のためには、悪循環の結果生じる、消化管粘膜の破綻を防ぐ事が大切です。 食物抗原の炎症惹起力(食物抗原度)は、未知な部分が残る概念です。

    1. ●食物抗原が持つ本来の性質:抗原提示細胞との親和性・肥満細胞の脱顆粒を起こす力など
    2. ●食品中の食物抗原含有量
    3. ●調理による食物抗原の変性:加熱や発酵による抗原力の減弱
    4. ●消化による食物抗原の変性:消化による抗原力の減弱

     食物抗原度が高い食物は、消化管粘膜を損傷する力が強いために、大量に、また続けて摂らない事が大切です。 蛋白質が多く含まれている食材(肉・卵・魚など)は、抗原度の高いものが多いために、食べる回数も、 1品目あたり週に1~2回までにしたいものです(回転食の考え方)。 蛋白質があまり多く含まれていない食材(野菜・主食類など)は、続けて食べても大丈夫な場合が多いようです。
    しかし、アレルギーの強い子どもさんでは、安全とされている食材に対しても、食物アレルギーを起こす事があるので、 3~4日以上続けて摂らないほうが良い場合があります。食物アレルギーの成立は、消化管機能の未熟さと大きく関わっているために、摂取しても大丈夫な食材と、 摂取間隔は、年齢により異なります。
    一般的には、年少児ほど間隔をしっかりとあけて食べる必要があります。 医師や栄養士に、摂取しても大丈夫な食材と摂取間隔を相談して下さい。

  4. 4.野菜、海藻類をしっかりと摂る
    野菜や海藻類の栄養学的な役割として、次の3点をあげる事ができます。

    • ●ビタミン・ミネラル類が豊富に含まれている
    •  除去食療法を実施している時には、栄養摂取の面での偏りが生じていないか、注意する必要があります。 中でも、カルシウムは、除去食療法を実施していない子どもさんにも、不足しがちな栄養素だけに、 十分に摂取できているか特に注意が必要です。 しかし、骨格の成長を考えると、カルシウム摂取量だけに注意を向ける事は、一面的な指導を生む事につながりかねません。 骨格の形成には、カルシウムの他にも、マグネシウム・リン・鉄・亜鉛などのミネラル、ビタミンD・A・C などが必要とされています。 また、日光や、適度な運動も欠かせません。 野菜や海藻類には、ビタミンやミネラルが豊富に含まれているために、 子どもさんにはしっかりと与えたい食材です。
    • ●食物繊維が豊富に含まれている
    • 食物繊維の役割として、次の点をあげる事ができます。
      ・カロリーの摂りすぎを防ぐ
      ・コレステロールなどの余分な吸収を防ぐ
      ・血糖のコントロールを助ける
      ・腸内細菌叢を改善させる
      ・腸内細菌叢を整える事は、後で述べるイーストコネクションを防ぎ、消化管免疫の破綻を防ぐ上で重要です。
      ・便通を助ける
      便通を整える事は、不必要な物質の吸収の機会を減らす事ができ、食物アレルギーを起こしにくくします。
    • ●ω3系列不飽和脂肪酸が豊富に含まれているものが多い
    • 不飽和脂肪酸の役割については、油脂の項で説明します。

     結論をいえば、野菜や海藻類にはω3系列不飽和脂肪酸が比較的多く含まれているために、身体の過敏性を抑える働きがあります。 しかし、子どもさんは、野菜や海藻類を好まない事が多いため、調理の工夫が必要です。 また、野菜には、仮性アレルゲンと呼ばれる化学物質が多く含まれているために、[かゆみ]や、過敏症状を引き起こす事があります。 ゆがいたあと、水洗をするなどの調理法を用いて、仮性アレルゲンを減らして与えるようにして下さい。 一般的には、この調理行為は、[あくを抜く]と表現されています。

  5. 5.動物性蛋白質は、魚介類を中心に摂る
    子どもの成長には、動物性蛋白質の摂取は欠かす事ができません。 しかし動物性蛋白質は、食物抗原度も高いので、注意して摂る必要があります。
    卵は、様々な食品に使われている事も多く、無意識のうちに卵蛋白の摂り過ぎになっています。 そのために、卵の摂取はアレルギーの無い場合でも、1~3才までは1回に1/4個まで、 3~4才までは1回に1/2個まで、5才以上は1回に1個までを限度とし、週に2回までにして下さい。
    牛乳も、日本人のカルシウム摂取不足を解消する食材として、多く摂るように強く指導されています。 しかし、お茶代わりに牛乳を摂取する幼児もみられるために、アレルギーの無い場合でも、 一日に 200ccを越えないように注意して下さい。
    牛肉・豚肉・鶏肉は、子どもさんが好んで食べる機会も多い動物性蛋白質ですが、食物抗原度高く、 また含まれている脂肪酸組成も飽和脂肪酸が多く、脂肪酸の融点が高いという性質から考えて、 それぞれ週に1~2回までにして下さい。
    脂身を避け、赤身の部分を中心に選び、しっかりと加熱調理し、できれば脂を落とす調理法を勧めます。
    魚は、ω3系列不飽和脂肪酸を比較的多く含むものが多く、子どもさんにはしっかりと与えたい動物性蛋白質です。 ただ魚介類に食物アレルギーをきたす事も稀ではなく、同じ種類の魚介類は続けて摂らないように注意して下さい。
  6. 6.油脂を摂りすぎないように注意する
    油料理は、カロリーが高くおなかの持ちもよく、独特のうまみがあるために、子どもさんに好まれます。 子どもさんが好きな献立を調べると、フライやハンバーグ・コロッケなどの、油で調理した献立が上位を占めています。
    脂肪が生体内で果たす働きとして、次の項目があげられます。

    1. ●高エネルギー源となる
    2. ●細胞膜を作る
    3. ●ホルモン様物質の原材料となる
    4. ●外からの衝撃から内蔵を守るクッションの働きをする
    5. ●体温を保つ断熱材の働きをする
    6. ●神経細胞の絶縁体の働きをする
    7. ●満腹感を長持ちさせる
    8. ●油溶性ビタミンの吸収を助ける

    しかし油脂の摂り方が、質量ともに急速に変化した結果、油脂の摂り方と関係する様々な疾患が増加してきました。
    油脂のマイナス面と関連した疾患を、次の3点に整理する事ができます。

    1. ●飽和脂肪酸の摂りすぎと、食物繊維の不足に関連した疾患
    2. ●ω3系列不飽和脂肪酸とω6系列不飽和脂肪酸の摂取バランスの偏りに関連した疾患
    3. ●脂肪の酸化に関連した疾患

    油脂類は、単位あたりのカロリーが高く、身体が利用するためには強い消化力が要求されます。
    同じ食材でも、油脂を使って調理すると、未消化のまま吸収される機会が増えます。
    また、油料理は、カロリーの割に食物繊維の含有が少ないために、しっかりと噛まなくても摂取できるという面から見ても、食物アレルギーの治療・予防には望ましくない献立といえます。

    1. ●不飽和脂肪酸は、必須脂肪酸として人体には無くてはならない種類の脂質です。

     不飽和脂肪酸は、体内で代謝を受け、プロスタグランディン・トロンボキサン・ ロイコトリエンなどの様々な化学伝達物質を合成する素材に使われます。
    リノール酸に代表されるω6系列不飽和脂肪酸から誘導されるロイコトリエン4は、 2型ヘルパーT細胞(Th2)を刺激し、IgE抗体産生を盛んにする働きを持ちます。
    一方リノレン酸に代表されるω3系列不飽和脂肪酸から誘導される化学伝達物質には、 免疫活性を抑える働きがあるとされています。

    1. ●酸化された脂肪(過酸化脂質)には、強い細胞毒性があります。

     アトピー性皮膚炎や気管支喘息の発症に、皮膚や粘膜面の細胞障害が大きな役割を演じていると考えられます。 以上の理由から、油脂とつきあうためには、いくつかの注意が必要です。

    • 油脂類を使う献立は、週に1~2回にとどめる
    • 揚げ物の吸油率を抑える
      ●吸油率の大きい素材は避ける:水分含有量が多い素材は、水分と油が入れ替わるために、吸油率が高まる
      ●素材を大振りに切る:細かく切ると、表面積が大きくなり、吸油率が高まる
      ●衣を薄くつける
    • 飽和脂肪酸を多く含む肉類は脂身を避け、煮る・ゆでるなどの調理法を用い、できる限り脂を抜いて食べる
    • 飽和脂肪酸を多く含む油を避ける(牛脂・豚脂・やし油・パーム油など)
    • ω6系列多価不飽和脂肪酸を多く含む油を避ける(サフラワー油・ひまわり油・コーン油・大豆油など)
    • ω3系列多価不飽和脂肪酸を多く含む油を多く摂るようにする(シソ油・アマニ油・魚油など)
    • 不飽和脂肪酸は、酸化しやすいので、加熱する献立には用いないようにする
    • 価不飽和脂肪酸を多く含む油を、揚げ物などに用いるようにする(オリーブ油など)
    • 油を購入する時には、開封後の酸化を避けるために、できる限り少量の容器の商品を購入する
    • 一度加熱調理に用いた油は、二度使いをしないようにする

     油脂類の摂りすぎは、食生活全般のバランスを崩し、身体を過敏にし、[ かゆみ ] を増す役割を演じます。
    油脂を使わなくて、子どもさんに喜ばれる献立を工夫して下さい。

  7. 7.砂糖分を摂りすぎないように注意する
    炭水化物は、唾液や腸液の働きで消化され、人の貴重なカロリー源となります。 炭水化物は消化酵素の働きで、ブドウ糖・果糖・ガラクトースなどの単糖類にまで分解され、吸収・利用されます。
    個々の細胞は、主たるエネルギー源としてブドウ糖を利用しています。中でも脳細胞は、利用できるエネルギー源を、 ほとんどブドウ糖に依存しているために、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)は、 一日の変動域が一定の範囲内に収まるように、数種類のホルモンで調節され、厳密に管理されています。 この人体に不可欠な単糖類のブドウ糖や、二糖類の砂糖・乳糖も、大量に摂取すると、様々な弊害が生じます。

    1. ●インスリンの過分泌:糖尿病を誘発・反射性低血糖を誘発
    2. ●腸内細菌叢の悪化  :ウェルシュ菌・カンジダの増殖
    3. ●カルシウムの吸収阻害
    4. ●空のカロリー:カロリーだけが存在し、他の栄養素が含まれていない
    5. ●虫歯の誘発

     このうち、食物アレルギーの発症と深く関係するのが、イーストコネクションと呼ばれる腸内細菌叢の悪化に基づく、消化管粘膜の破綻です。
    穀物などに含まれているでんぷんは、ブドウ糖などの単糖類が数千~数万個、数珠繋ぎになっているために、 大きな糖の固まりのまま小腸に達し、粘膜の微絨毛間でゆっくりと消化・吸収されるために、 消化管に常在している ウェルシュ菌・カンジダなどは、この炭水化物を有効に利用する事ができません。
    しかし、二糖類の砂糖や単糖類のブドウ糖は、大量に摂取すると、そのままの形で大量に小腸粘膜に達するために、 ウェルシュ菌・カンジダなどが有効利用する事が可能となり、いわゆる悪玉腸内細菌が異常増殖する事になります。
    なかでもカンジダの異常増殖は、イーストコネクションと呼ばれ、食物アレルギーと深く関わっています。
    カンジダの異常増殖により、カンジダ菌糸が消化管粘膜に侵入し、消化管バリアを破綻させて食物抗原の侵入を容易にする事で、 食物アレルギーが成立します。
    他方、カンジダの持つ毒素により、消化管免疫の失調が惹起され、抵抗力が減弱するために、 食物抗原に対するアレルギー反応がおこり、食物アレルギーが成立します。
    1日の砂糖の摂取限界量は、子どもさんで10g以下、大人で20g以下とされています。 通常の薄味の食生活では、この摂取限界量を遵守する事は可能です。
    しかし、子どもさんの食生活のなかで、大きな位置を占めているお菓子やジュースを無批判に与えていると、 すぐに 10gを越えてしまう事になります。 特にジュース類は100%果汁と表示されていても、カンジダの栄養源となる砂糖や果糖を多く含み、 食物アレルギーを治療していく上での、大きな足かせとなります。
    食物アレルギーを治療する前提として、ジュースや砂糖菓子(飴・チョコレートなど)は与えないようにして下さい。
    また子どもさんは、甘さを一度覚えると、その味から抜け出せなくなりがちです。 離乳期から、ジュースを与えないなど、甘さに慣らさない育て方を心がけて下さい。

  8. 8.手作りを心がける
    加工食品は、味や見栄えもよく、子どもさんに喜ばれます。また調理時間も短く、長期間の保存に耐えるために、 現代の食生活には、欠かす事のできない食品になりました。 しかし、食物アレルギーを治療していく上で、加工食品にはいくつかのマイナス面が見受けられます。

    1. ●表示成分以外の食物抗原が、混入している可能性がある
    2. ●食物繊維が少なく、油脂の摂りすぎにつながる食品が多く見受けられる
    3. ●品添加物の害が考えられる

     加工食品に微量に含まれている食物抗原が原因で、即時型食物アレルギー反応をきたす事は稀ではありません。 除去食療法を実施している時には、身体の反応がかえって過敏になっている時期があります。 この時期には、常識では考えられないような微量な食物抗原との接触で、激しいアレルギー反応が起こります。
    その摂取蛋白量は、おおよそマイクログラム(1gの100万分の1)のオーダーではないかと考えられています。 残念ながら、今の我が国の食品業界では、微量な食物抗原の混入までも避ける事ができるだけの、 安全な食品生産システム・品質管理を行っているメーカーは限られています。 除去食療法を実施している時には、原則として加工食品を摂らないように指導しています。 加工食品は、おいしさと食べやすさを追求して生産される事が多く、その結果、 低食物繊維・高脂肪食品になる 傾向にあります。
    前述のように、基本食の原則にはずれる食品が多いように思われます。色素や防腐剤などの食品添加物が、食物アレルギーにどのように関わるのかは、良くわかっていません。
    保存や流通を考えると加工食品は、食中毒や変質を避けるために、添加物を使う事がむしろ自然な食品です。 家庭で、その時間に食べきる献立には使わなくてもよい薬品(化学物質)が使われます。 手間と時間がかかりますが、家族での健康的な食生活を築いていくために、安全な食材選びから始め、 手作りを心がけて下さい。

除去食療法について

除去食とはなんですか?開く
食物アレルギーの原因となる食物(食物抗原)を、完全に除去する食事療法です。
食物抗原を除去する事で、消化管粘膜の場で生じているアレルギー性炎症を抑え、消化管透過性亢進を改善させ、 子どもさんの消化管機能や免疫機能を修復する事を通じて、食物に基づく免疫失調状態を改善させる治療です。
除去食療法は何を目指して行うのですか?開く
除去食療法は、食生活を見直す指導の延長線上にある治療法です。 しかし、除去食療法を続ける上で、栄養の問題・ストレスの問題など、 様々な難しい問題が生じます。 そのために、除去食療法は漫然と行うのではなく、目標をはっきりとさせて実施する必要があります。 除去食療法の目標は、次の2つに分ける事ができます。

  1. 1.短期目標:アレルギー症状の緩和(アレルギーが原因で生じている症状を改善する)
    食物アレルギーをもつ人は、アレルギーの原因となる食物(食物抗原)を摂取する事で、 身体のあらゆる場所に、いろいろな症状が出現します。
    除去食療法は、食物抗原を食事から完全に除去する事で、 アレルギー症状を改善する事を目標にしています。
  2. 2.長期目標:免疫学的寛容の誘導(何でも食べる事ができる身体を作る)
    食物抗原を摂取する事で、消化管の場でアレルギー性炎症が起きます。 その結果、消化管バリアは破壊され、消化管透過性が亢進し、食物抗原の更なる侵入を容易にするという、 悪循環が成立します。
    その結果、消化管免疫や全身の免疫システムが過敏になり、免疫失調状態が亢進します。 除去食療法は、食物抗原を一定期間完全に除去する事で、消化管のアレルギー性炎症を鎮め、 消化管バリアを修復し、免疫失調状態を改善させる事を目標にしています。
除去食療法をすることで、何でも食べられるようになるのですか?開く
乳幼児期に食物アレルギーをもっていた子どもさんも、多くの場合、 自然にアレルギーを起こしていた食物を受け入れる事ができるようになります。
食物アレルギーの免疫学的寛容は、除去食療法をしなくても、年齢が大きくなるにつれて自然に誘導される場合が多いようです。
しかし、除去食療法を実施する事ではじめて消化管の炎症が改善し、 その結果、免疫学的寛容が誘導される子どもたちも少なくありません。
ただ誰もが、何でも食べられる身体(免疫学的寛容の成立)になる訳ではありません。 大きくなっても、これだけは苦手だという特定の食物が残る事もあります。
除去食療法を続ける上での見通しを教えてください開く
除去食療法は、栄養的にも精神的にも、ストレスの大きい治療法なので、 いつまで続けるのかという見通しをもって続ける事が大切です。
除去食療法は、次の3つの時期に分ける事ができます。 除去食療法の時期をとらえる事で、今行っている治療の見通しを持ちやすくなります。

  1. 1.除去導入期: 消化管で進行しているアレルギー性炎症の結果、消化管バリアが破綻し、更に食物アレルギー感作が進行するという悪循環を断ち切るために、 食物抗原が完全に消化管に入らないようにする時期です。
    食物抗原を完全に除去する事で、免疫失調状態はかえって過敏なる傾向があります。 重症タイプの食物アレルギー反応を避けるためにも、この時期は、微量な食物抗原の混入にも注意する必要があります。 通常2~4週間が、この期間にあたります。
  2. 2.除去維持期: 食物抗原を完全に除去する事で、消化管機能の未熟さや免疫失調状態を改善させ、 子どもさんの健やかな成長・発育を成し遂げていく時期です。
    微量な食物抗原との接触を避けるために、卵・牛乳・ 小麦そのものを家庭の中に持ち込まないという家族ぐるみの協力が必要です。 また、除去を続けながら、十分な栄養が摂れているかどうか、定期的な確認が必要です。
    栄養価計算や、栄養検査、アレルギー検査が必要になります。 通常1~3年が、この期間にあたります。
  3. 3.除去解除期: 除去していた食物を再摂取し、食事の面からも集団生活に復帰する時期です。 解除の時期を決めるために、定期的なアレルギー検査や「解除のための食物負荷試験」が必要です。
    「解除のための食物負荷試験」の結果、重症タイプのアレルギー症状が出現しなかった場合、ゆっくりと除去食物の再摂取を始めていきます。 再摂取を始めた後も、食物負荷日誌の記載や、定期的なアレルギー検査が必要です。 通常3ヶ月~数年が、この期間にあたります。
除去食療法にはどのようなマイナス面があるのですか?開く
毎日の食事は、人が生きていくために必要な身体の栄養摂取の役割だけではなく、 心の栄養としても大切なものです。 それまでごく普通の食生活を送ってきた子どもさんが、除去食療法を始める事で、 様々な問題が生じる可能性があります。
除去食療法のマイナス面を、次のように整理する事ができます。

(1)栄養面 栄養摂取の面での偏りが生じやすくなる。
(2)経済面 食材への出費がかさむ。
(3)心理面 親子ともに、長期間の緊張状態に置かれる。
(4)社会面 他児と同じ社会生活を経験することが困難になる。
(おやつ、外食や旅行、集団給食への参加など)
(5)医学面 思わぬ事故(食物アナフィラキシーなど)につながる恐れがある。

これらのマイナス面をカバーするための指導法が工夫されています。 しかし、食物アレルギーの治療として、除去食療法を選ばれる時には、マイナス面も十分に考慮して、決められる事が大切です。

家庭で除去食療法を続けていく上で、何に注意をすればよいのですか?開く
除去食療法を続けていく上で生じるマイナス面をカバーするために、次の点に注意する事が大切です。

  1. 1.必ず医師・栄養士の指導のもとに行う。
    医師の役割として、次の事があげられます。

    1. ●正確な食物アレルギーの診断を行い、診断に基づいて除去食療法を指導する。
    2. ●去食解除が可能になったと判断した時には、安全を確かめながら目の前で「解除のための食物負荷試験」を行い、解除を進めていく。
    3. ●子どもの成長・発達全体をみていく。

    栄養士の役割として、次の事があげられます。

    1. ●微量な食物抗原の混入を避けるために、食品成分内容の情報を提供する。
    2. ●安全な食材の購入先、献立法など、具体的に指導する。
    3. ●除去食療法を続けながら、十分な栄養が摂れているかどうかについて、栄養面からの健康管理をする。

    微量な食物抗原の混入を避けるために、食品成分内容の情報を提供する。 安全な食材の購入先、献立法など、具体的に指導する。 除去食療法を続けながら、十分な栄養が摂れているかどうかについて、栄養面からの健康管理をする。 これらの役割は、お母さんや、食物アレルギー児の親の会だけでは担う事はできません。 除去食療法は、一人一人、除去する食品の種類も、厳格さも違います。 先輩のお母さんの経験が、その子どもさんの治療には、役立たない事があります。 反対に、善意からの助言であっても、自分の子どもさんの経験が、 周りの子どもさんには危険な結果を招く事もあります。 除去食療法は、必ず医師や栄養士などの専門家と協力して、行うようにして下さい。

  2. 2.除去食療法の目標をはっきりとさせておく。
    除去食療法には、(1) アレルギー症状の緩和・(2) 免疫学的寛容の誘導という2つの目標があります。 症状の緩和を図るための除去食療法のレベルと、免疫学的寛容の誘導を図るための除去食療法のレベルとでは、 厳格さが異なります。症状の緩和を図る除去食療法レベルでは、 微量な食物抗原の混入を防ぐ事ができず、免疫学的刺激が持続し、 食物アレルギー感作を改善できない事があります。 その結果、免疫学的寛容が誘導できず、いつまでも除去食療法を続ける事になりかねません。 反対に、症状の再現を恐れるあまり、除去解除をためらう傾向もみられます。 除去食療法は、一定期間厳格に食物抗原を除去する事を通して、普通の食生活を送る事ができる体質に作り変える事を目指す治療法です。 可能な時期が来れば、「解除のための食物負荷試験」を行い、除去食療法の解除を行う事が大切です。
  3. 3.除去する食材は、きっちりと除去する。食べられる食材は、きっちりと食べる。
    除去食療法は、食材選択の制約が加わるために、栄養摂取の面での偏りが生じやすくなる傾向があります。 除去する必要のある食材は、微量な混入程度まで完全に除去する事が大切です。しかし、除去する必要のない食材は、しっかりと摂取したいものです。しっかりと食べる事を通じて、体力や免疫力をつけていくように注意して下さい。
  4. 4.同じ食材を続けて食べないようにする。
    除去食療法を実施しなければならない子どもさんでは、食べても大丈夫な食材の種類が限られるために、 どうしても同じ食材を繰り返し食べる機会が多くなります。 食物アレルギーは、同じ種類の蛋白質が続いて身体に入ってきた時に、成立しやすくなります。 穀類や野菜などは、2~3日は同じ食材が続いても大丈夫な場合が多いのですが、魚や肉類は、 短期間のうちに繰り返し同じ食材を摂取しない事が原則です。 しかし、食材の選択に制約が加わる除去食療法の場合、季節によっては同じ食材が続く事があります。 繰り返しを避けるためには、いろいろな野菜や魚などの食材を、積極的に摂取し、 大丈夫と考えられる食材を増やしていく努力を積み重ねる事が大切です。 新しい食材を家庭で食べさせる事が心配な場合には、主治医の目の前で試してもよいか、お願いしてみて下さい。
  5. 5.栄養面のバランスに注意する。
    除去食療法を行っていると、食べても大丈夫な食材の種類が限られてしまいます。 その上、子どもさんが好む献立と、お母さんが食べさせたいと考える献立とが異なる事があります。 十分に注意をしていても、子どもさんに必要な栄養が、偏りがちになる傾向があります。 子どもさんの栄養摂取量が心配な時には、食物生活日誌をきっちりと記載した上で、栄養士さんに栄養価計算を依頼してみて下さい。 子どもさんの現在の栄養評価の資料をもとに、食生活のどこを改善すればよいのか、具体的に指導を受けられる事が大切です。
  6. 6.健康的な生活を送るための基本的な食事の摂り方(基本食)を実践する。
    砂糖や油脂類を摂りすぎないように注意をする基本食には、消化管を安定させ、食物に基づく身体の過敏状態を改善させる働きがあります。 除去食療法の効果をあげるためにも、基本食を実践する事が大切です。
  7. 7.食事以外のアレルゲンにも注意する。
    乳幼児期は、食物に含まれている食物抗原の影響を強く受け、食物アレルギーが成立しやすい時期です。 年齢が大きくなるにつれて、室内のダニやペットの毛などの吸入抗原の影響を強く受けます。 また直接、抗原としては認識されないまでも、食品や飲料水に含まれる添加物やダイオキシンなどの化学物質も、子どもの身体を過敏にする危険性があります。 室内喫煙や大気汚染なども、子どもさんにはマイナスの影響を与えます。 子どもさんにとって望ましくない環境因子を、一つ一つ取り除いていく努力をされる事が大切です。

食物アレルギーをもつお子様の離乳食について

アレルギーハイリスク児とは、どのような子どもたちをさすのですか?開く
アレルギーの病気は、誰にでも現れるわけではありません。その子どもさんがご両親からいただいたその子らしさ(遺伝情報)と、その子どもさんが生まれ育った環境の組み合わせによって、アレルギーの病気へのなりやすさが決まります。
この遺伝情報には、他の子どもさんに比べてアレルギーの病気のなりやすいという遺伝情報も含まれています。今のところ、遺伝子診断の技術を用いても、具体的なアレルギー遺伝子は解明されていません。
そこで、統計的な技法を用いて、アレルギーの病気になりやすい子どもたちを見つける研究がすすみました。

  1. ●二親等以内にアレルギーの人がいる子どもさん
    特にご両親や兄弟に、アレルギーの病気がある子どもさん
  2. ●生後すぐに調べられたIgEの値が高い子どもさん
    臍帯血のIgE値 0.5 IU/ml 以上の子どもさん
    生後6かヶ月の IgE値 5.0 IU/ml 以上の子どもさん
    生後12かヶ月の IgE値 10.0 IU/ml 以上の子どもさん
  3. ●生後早くから、アトピー性皮膚炎が現れている子どもさん

このようなグループに当てはまる子どもたちは、アレルギーの病気になる可能性が統計的に高いと言われています。 このようにアレルギー遺伝情報を多く受け継いでいる子どもたちを、アレルギーハイリスク児と呼ぶ事にします。遺伝情報は、今のところ変えるわけにはいきませんが、子どもさんが生まれ育つ環境は、よい方向に変える事ができます。
ここでは、離乳食に絞って、アレルギーになりにくい食事についての説明をします。

離乳とはどういう言葉ですか?開く
離乳とは、「母乳や人工乳だけの栄養から、乳汁以外の食物へと移行すること」と定義されています。
乳児期のあとも乳製品をふんだんに使う欧米では、本来の意味での離乳=断乳は一生涯実現することがないので、離乳食という言葉ではなく、移行食という言葉が用いられています。
一方、乳製品になじみの少なかった時代の日本では、離乳食とは言葉通りお乳から離れるために準備された食事でした。しかし、食習慣の欧米化とともに、離乳期のあとも乳製品を摂る習慣が一般化したため、離乳食という言葉は本来の意味を離れて移行食という考え方に変わりつつあります。
離乳食にはどのような目的があるのですか?開く
離乳食には次のような目的があります。

  1. 栄養的側面
    ●母乳や人工乳では不十分な栄養素の補給
    ●消化酵素活性の発達に見合った食物摂取への橋渡し
  2. 顎機能の発達的側面
    ●咀嚼能力や嚥下能力の発達促進
    ●構音機能獲得の促進
  3. 精神発達的側面
    ●豊かで安定した母子関係の確立
    ●生活リズムの確立
  4. 文化的側面
    ●その国、その家庭の食文化へのいざない

このうち、栄養面・精神面の役割が大きいといえます。特に「離乳食はこころの栄養」という言葉があるように、はじめの頃は食べる食品も量も少ないのですが、それでもまわりの大好きな人と同じようなことがしたいという、あかちゃん自身の気持ちを大切にしてあげて下さい。
離乳期は、子どもさんの側からみると、新しい食品や食器を次々と経験し、受け入れていく楽しみな時期です。お母さん側からみると、子どもさんを新しい食環境に慣らしていく根気のいる時期です。お互いに努力の必要な時期なので、あせらずに、ゆったりと進めていきましょう。

アレルギーハイリスク児に離乳食を与えるときに、何に注意すればよいのですか?開く
アレルギーハイリスク児の離乳食を考えるときに、いつから何を始めていけばよいのか、何は与えない方がよいのかなど、心配な問題が残ります。
アレルギーハイリスク児の離乳食の問題を、次の4点に整理し、説明を加えたいと思います。

  1. 1.果汁の与え方
  2. 2.離乳食の開始時期
  3. 3.離乳食の進め方
  4. 4.食材の選び方
離乳食を始める前に、湯冷ましや果汁を与えると聞いたのですが開く
乳汁以外に果汁などの液体成分を与えることを、離乳準備といいます。これは離乳食には含みません。
湯冷ましや果汁は、次の目的で与えられてます。

  1. ●暑い時に水分を補給する。
  2. ●お乳以外の味に慣らし、味覚を発達させる。
  3. ●果汁を与えることで、ビタミンCを補うことができる。
  4. ●口の中を清潔にする。

しかし、アレルギーハイリスク児には、果汁や湯ざましは与えない方が良いと思います。
離乳食の準備として、4~5か月になれば、野菜スープから始めましょう。

なぜ湯冷ましや果汁を与えないほうが良いのですか?開く
  1. 1.水分補給の目的は、初期の頃に開発された育児粉乳が、高蛋白質・高ミネラルだったために、腎臓に負担がかかりました。そのために、水分を補給して、尿をでやすくする必要がありました。現在の育児粉乳では、母乳に近い低蛋白質、低ミネラルのタイプに改良され、腎臓への負担もなくなりました。授乳期には、ふつうお乳(母乳でも人工乳でも)で十分な水分はとれています。むしろ、湯ざましや果汁で、水分を多く与えると胃液の酸度( pH )がアルカリ側に傾くために、胃液の消化酵素の働きが弱まり、その結果未消化なミルクが小腸に届くために、食物アレルギーが成立しやすくなると考えられています。
    汗をかき、水分補給が必要な時には、ほうじ茶や番茶などの刺激の少ないお茶を飲ませてあげて下さい。
  2. 2.味覚の発達は、母乳栄養の場合、母乳を摂るだけでも十分に発達すると考えられます。
    母乳は、お母さんが食べたものによって成分が変わります。吸いはじめと、おしまいの頃との母乳では、味も成分も微妙に違います。 また初期乳と成熟乳とでは、栄養成分や免疫成分などに、大きな違いがあることが分かってきました。
    このような母乳の微妙な変化を、あかちゃんは味わっています。 このことがあかちゃんの味覚の発達の手助けとなっています。
    果汁の強い味や、市販の果汁に含まれている甘みは、かえってあかちゃんの微妙な味覚の発達を損なうことになりかねません。
    人工乳の場合には、この微妙な味わいを経験する事ができませんが、離乳期まで急がなくても良いと思います。
  3. 3.果汁を与えることで、ビタミンCを補うことができる。
    母乳がでない場合、歴史的には牛乳や山羊の乳を加熱して殺菌し、あかちゃんに与えていました。 そのときに、ビタミンCが壊れてしまいました。また、初期の頃に開発された育児粉乳も、ビタミンCが足りなかったために、果汁でビタミンCを補うことが強調されて、果汁を与えることが育児の常識となったそうです。
    現在では、育児粉乳も改良され、ビタミンCが不足する事はなくなりました。 母乳の場合には、もともとビタミンCが豊富に含まれていますので、果汁で補う必要はないと思います。
  4. 4.口の中を清潔にする。
    以前に市販されていた育児粉乳は、糖質の濃度が高く、口の中を清潔にする目的で、湯冷ましを飲ませることが勧められていました。 現在の育児粉乳では、湯冷ましを飲ませる必要はありません。
    離乳食が進み、食事のあとで水分をほしがるようであれば、ほうじ茶や番茶などの刺激の少ないお茶を飲ませてあげて下さい。
なぜ果汁はあまり良くないのですか?開く
あかちゃんに果汁を与えない方がよい理由として、次の3点が考えられます。

  1. 1.果物の安全性
    果物がアレルギーの原因になることがあります。 特に、オレンジ・グレープフルーツなどの柑橘類やキウイ・バナナ・パイナップルなどのトロピカルフルーツが、アレルギー症状を起こしやすいようです。 その結果、口の中が痛くなったり、唇が腫れ上がったり、喘息発作をきたすこともあります。
    また、柑橘類や、トロピカルフルーツには、仮性アレルゲンとよばれる化学物質(セロトニン・ヒスタミンなど)が多く含まれ、アレルギー反応によく似た症状を引き起こします。
    さらに、輸入果実の場合、防腐剤として使われる農薬やワックスの問題があります。消化管や免疫系が未熟な乳児期前期に、アレルギーを引き起こし、消化管に炎症を引き起こす危険性のあるものは、なるべく口にしないことが大切だと思います。
  2. 2.果物の甘み
    果物は、その香りや甘み、好ましい食感のために、多くの世代に好まれています。 お母さんにとっても、あかちゃんが好むことだし、身体にも良さそうなので、つい求めるだけ与えがちです。
    しかし、果物に含まれている甘み(果糖)には、ブドウ糖と同じように、腸内の細菌を良くない方向へと変える働きがあります。
  3. 3.果汁の与え方
    果物をそのまま食べているうちは良いのですが、果汁の形にすると、食べられないほどの果物の量を、一度に摂る ことになります。(コップ一杯のジュースは、その7倍位の量の果物を食べたことと同じといわれています)年齢が大きくなると、果汁は子どもさんの大好きな飲み物になります。お母さんも「100%果汁なら安全だし、栄養もあるのではないか」とつい与えすぎてしまいがちになります。
    しかし、果汁100%と表示されている場合でも、市販のジュースには、ブドウ糖が添加されている場合が多く、この場合、果糖とブドウ糖の二重の意味で、糖分の摂り過ぎになります。
    果汁を与える場合には、手づくりの果汁を、それも量を考えて与えてほしいと思います。
離乳食はいつ頃から与え始めたらよいのですか?開く
離乳食の開始時期を考えるときに、アレルギーの側面に焦点を当てると、なるべく遅い時期が望まれます。
1993年 Aggettらは、生後4~6ヶ月間の完全母乳哺育とともに離乳食の導入を遅らせる事により、アレルギーハイ リスク児の12~36ヶ月までのアレルギー疾患及び、牛乳による消化器症状の発症率を低減化できると述べています。
私達も、次に述べるアレルギーハイリスク児のための離乳食案に基づき指導したところ、アトピー性皮膚炎の皮膚症 状の著明な改善をみました。 しかし<Q3:離乳食を与える目的>のところでも説明しましたが、顎機能の発達や精神発達の側面から考えると、離乳食の開始を遅らせすぎる事にも問題が残ります。
早過ぎもせず、遅くなり過ぎもしない離乳食の開始時期は、次の3点を考慮して決める必要があります。

  1. 月齢・体重の目安
    歴史的にみると、1900年~1935年には6か月頃が離乳食の開始時期とされていましたが、1937年頃から3~4か月と早期に離乳食を開始する事が勧められました。その結果、腎臓に過度の負担がかかる事がわかり、アレルギー疾患も起こりやすくなる事がわかりました。 そのために、1980年以降、離乳食開始の推奨月令は、4~6か月に戻された経緯があります。 体重は、6Kgを越えた頃が、目安にされています。
  2. 消化・吸収の発達
    子どもの消化機能の発達は、医学的にもよくわかっていない分野です。デンプンの消化酵素の発達は、生後4か月から始まると考えられています。1歳半には、ほぼ大人の80%の消化機能を持つと考えられます。
  3. あかちゃん自身の要求
    健康な発達をしているあかちゃんは、離乳食をただ受け身で、いただいている訳ではありません。4か月を過ぎる頃から、お父さんやお母さんが食事をしている時に、その口元をじっと見つめて、あかちゃん自身も少し口元を動かし始めることがあるでしょう。 「お母さん、わたしにも分けてください」と、まだ言葉で伝えられない気持ちを口元の動きに託しているようです。

以上の点を考慮すると、4か月半を過ぎて体重も6Kgを越えた頃、大人と同じことがしたいという気持ちが食事に寄せられる時期が、離乳食を始める頃かと考えています。

アレルギーをもつお子様への予防接種について

予防接種は受けた方がよいのですか?開く
予防接種には、利点のほかに注意すべき点もあります。

(1)
利点
子どもの感染症を予防する・感染症の合併症を予防する。
(2)
注意点
予防接種そのものによる副反応がおきる恐れがある。
予防接種による疑似感染では、十分に免疫力がつきにくい。
そのために、子どもさんが成長してから、軽く罹ることがある。
また、女児が成長して出産したときに、その子どもさん(孫)が十分な移行抗体を受け継ぎにくい。

新しい予防接種法では、利点と注意点の両方を考慮した上で、保護者の方が接種するかどうかを決める事になっています。

予防接種を受けずに病気になったとき、どのような合併症があるのですか?開く
子どもさんが感染症に罹った時に、発熱・発疹・リンパ節腫脹などの急性期の症状のほかに、次のような合併症が起きる場合があります。

インフルエンザに多い肺炎

(1)ポリオ まれに 小児マヒ(1/1000~2000人)
(2)結核 多い 肺結核、結核性髄膜炎、粟粒結核
(3)麻疹
(はしか)
多い 肺炎、中耳炎
まれに 脳炎(1/2000~3000人)
ごくまれに 亜急性硬化性全脳炎(SSPE 1/10万人)
(4)百日咳 多い 無呼吸発作(乳児期前半では咳のために息を吸うことができなくなる)
少ない 肺炎
まれに 脳炎
(5)風疹
(三日ばしか)
多い 先天風疹症候群(妊娠中に母親が罹った時に、胎児に異常がおこる)
まれに 血小板減少性紫斑病(1/3000人)
脳炎(1/5000人)
(6)水痘
(みずぼうそう)
多い 肺炎(成人では、20~30%)
まれに 免疫不全の小児が罹ると致命的
(7)流行性耳下腺炎
(おたふくかぜ)
多い 睾丸炎、副睾丸炎(思春期以後では、15~35%)
無菌性髄膜炎(10%)、膵炎(6%)
まれに 難聴(1/10000~20000人)
(8)日本脳炎 多い 急性脳炎(致死率 30~40%)
まれに 脳炎

感染症の合併症の怖さを考えると、予防接種は受けた方がよいと思われます。

予防接種にはどのような副反応があるのですか?開く
予防接種には、次のような副反応が起きる事があります。

  1. 1.即時型局所反応
  2. 予防接種施行後、5~10分ほどで、注射局所が赤くはれたり(発赤腫脹)、水ぶくれができたり(水疱形成)する事があります。 多くの場合、1~2時間ほどでおさまります。
  3. 2.即時型全身反応
  4. ごくまれに、予防接種施行後、数分以内にアナフィラキシーショックがおこる事があります。
    アナフィラキシーショックの症状は、その人により程度が違います。一般的には次の症状が急速に進みます。
    気分が悪くなり、立っている事ができない。
    顔色が悪くなり、くちびるが紫色になる。
    そして、意識が低下し、けいれんする。
    アナフィラキシーショックがおきた時に備えて、予防接種施行後少なくとも30分は、病院内に留まるようにして下さい。
  5. 3.遅発遅延型局所反応
  6. 予防接種後、数日以内に注射局所が発赤腫脹したり、水疱形成します。
    発赤腫脹が数㎝の場合はあまり心配ありませんが、5㎝を越えるような場合や水疱形成する場合には、接種医に相談し、診察を受けるようにして下さい。
  7. 4.遅発遅延型全身反応
  8. まれに予防接種施行後、数日してから、全身に発疹が現れる事があります。
    また、気分が悪くなったり、意識が低下したりする事もあります。接種医に相談し、診察を受けるようにして下さい。
  9. 5.その他の副反応
  10. まれに予防接種施行後、数日してから、全身に発疹が現れる事があります。
    また、気分が悪くなったり、意識が低下したりする事もあります。接種医に相談し、診察を受けるようにして下さい。

    1. ●発熱、発疹 :麻疹予防接種施行後に多くみられます。
    2. ●無菌性髄膜炎:おたふくかぜ予防接種施行後、2~3週間してまれにみられます。
アレルギーをもつ子どもは、特に注意が必要なのですか?開く
アレルギーの子どもさんは、言葉をかえれば、いろいろなものに過敏な体質をもつ子どもさんといえます。
予防接種は、免疫的に考えると、子どもさんの体に強い異物を入れる事にほかなりません。それだけに、アレルギーの子どもさんが予防接種を受ける時には、十分な注意が必要だと考えます。 実際、食物アレルギーの子どもさんは、そうでない子どもさんに比べると、ワクチン液に対して過敏反応を示す率が高い事がわかっています。
予防接種いつ受けたらよいのですか?開く
予防接種には、安全性と、実際に免疫が獲得される年齢との関係で、標準的な接種時期が定められています。

ポリオ 生後3ヶ月以上の5月と11月(保健所にて)
BCG 生後3ヶ月以上(保健所にて)
麻疹 生後3ヶ月以上(保健所にて)
BCG 生後12ヶ月以上、24ヶ月以下
三種混合 生後3ヶ月以上、12ヶ月以下
風疹 生後12ヶ月以上、36ヶ月以下
水痘 生後12ヶ月以上
ムンプス 生後12ヶ月以上

ポリオ、BCGに続いて、1才までに三種混合ワクチンを始める方法が一般的です。
また体力が低下している季節の接種を避けるために、7月・8月の夏期は、予防接種を中止している医療機関もあります。

予防接種を受けるときには、何に注意すればよいのですか?開く
  1. 1.感染症に罹った時に起きるかもしれない合併症を、熟知しておいて下さい。
    それを免れるために開発された予防接種にも、副反応があることを知っておいて下さい。
    その上で、子どもさんに予防接種を受けさせた方が得策かどうかを、保護者の方が判断して下さい。
  2. 2.食物アレルギーのある子どもさんは、副反応がおきる率が高いので、主治医に相談しましょう。
  3. 3.予防接種は、健康な子どもさんに施行するものですから、体調の良い時を選びましょう。 どうしようかと迷うときには、次の機会にされた方が良いと思います。
  4. 4.予防接種を受けさせる時には、申し込み用紙をしっかりと読み、必要な記載をして下さい。
  5. 5.接種後は、薬液を急速に吸収させない方が安全なので、強くもまないで下さい。 接種直後に、主治医が軽くもむようにしていますので、後は針あとからの軽い出血を拭き取る位で良いと思います。
  6. 6.予防接種施行後は、不測の事故に備えて、少なくとも30分は、病院内に留まるようにして下さい。 心配なことが観察された時には、遠慮せずにすぐに診察を受けるようにして下さい。
  7. 7.接種当日の入浴は控える必要はありませんが、軽く汗を流す程度にし、接種部位を強くこすらないで下さい。
  8. 8.接種後1~2日は、激しい運動をさせたり、強い日光に当てるなど、無理をさせないで下さい。
  9. 9.遅れて副反応がおきた時には、接種医に連絡をとり、診察を受けるようにして下さい。
アレルギーをもつ子どもには、どのような手順で接種するのですか?開く
いたやどクリニック小児科では、次のような手順で、アレルギーをもつ子どもさんに、予防接種を実施しています。

  1. 1.問診表の記入
    予防接種当日の体温、体調、便の状態などを具体的に記載していただきます。
  2. 2.診察
    予防接種当日の体調を調べるために、診察を行います。
  3. 3.皮内テストの実施
    アレルギーのある子どもには、原則として1/10ワクチン液を用いた皮内テストを実施します。 同時にコントロールとして生食を皮内注射します。
  4. 4.判定
    皮内テストの後、15分後に判定します。
  5. 5.ワクチン接種量
    判定の結果、陰性の場合には、通常量を接種します。
  6. 6.予防接種施行後の観察
    疑陽性・陽性者に減量接種した場合、15分後,30分後の診察を行います。 診察室の近くで待機していただいています。
  7. 7.陽性者に対しては、減量接種施行8週間後に、抗体獲得を調べるための血液検査を行います。

乳幼児のアトピー性皮膚炎について

アトピー性皮膚炎はどういう病気ですか?開く
アトピー性皮膚炎は、皮膚症状の特徴から、名付けられた病名です。
「アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」と定義されています。
もう少し整理すると、
(1)繰り返し傾向のある、(2)掻痒感が強い、(3)アトピー体質のある、(4)湿疹病変といえます。
この特徴のうち、[かゆみ]は,アトピー性皮膚炎の症状の中心をなすものです。[かゆみ] のために、子どもさんは [掻く] 行為を繰り返し、特徴的な皮膚症状が作られていきます。 [かゆみ] こそ、アトピー性皮膚炎の特徴的な皮膚症状を形作る原動力といえます。
[かゆみ]って、何ですか?開く
[かゆみ] は、皮膚の表面に分布する知覚神経が刺激されて起こります。 知覚神経が刺激を受けると、刺激が軽い時には[かゆみ]として感じます。[かゆみ] を感じると、子どもさんはその部分を手や足を使って[掻く]行為をします。[掻く] ことで、皮膚の表面に付いている異物を、取り除こうと試みるわけです。
知覚神経への刺激がより強い時には、[痛み] として感じます。 [痛み] を感じると、子どもさんはその部分を手や足を使って保護しようとします。
このように、[かゆみ] や [痛み] を感じて、[掻く] 行為や保護行為をする事は、自分の身体を守るための生理的な反応(防御反応)といえます。
[かゆみ]を引き起こす刺激には、どういうものがありますか?開く
皮膚の表面にある知覚神経は、物理的刺激・化学的刺激・生物学的刺激により、身体の外部から常に刺激を受けています。 また、アレルギーの患者さんでは、アレルギーを引き起こす環境刺激により、身体の内部から刺激を受けています。
知覚神経に[かゆみ]刺激与える原因について、整理します。

  1. 1.皮膚表面からの刺激
    物理的刺激・機械刺激 肌着・砂・圧迫・こすれ・擦り傷など
    温熱刺激 熱さ・冷たさ・火傷・しもやけなど
    外気刺激 紫外線・風など
    化学的刺激・生理的刺激 汗・汚れなど
    外用剤 軟膏・湿布など
    生物学的刺激 ダニ・カビ・細菌・ウィルスなど
  2. 2.アレルギーを引き起こす環境刺激(抗原):ダニ・カビ・花粉・食物 など
  3. 3.[かゆみ]を増幅させる精神的な刺激:ストレス など

これらの[かゆみ] 刺激は、アトピー性皮膚炎を発症させ、増悪させる主要な原因となります。

皮膚に[かゆみ]を引き起こす皮膚表面からの刺激について、詳しく教えてください。開く
アトピー性皮膚炎の子どもさんは、生まれながら皮膚の生理的な機能に弱さをもっています。 健康な肌をもつ人では考えられないような、わずかな皮膚刺激を敏感に受け取って、[かゆみ] と感じます。 ここでは、皮膚表面からの [かゆみ] 刺激について、大切だと思われる順に、詳しく説明します。

  1. 1.汗・汚れ
    皮膚への刺激のうち、最も重要なものは汗です。汗は塩分濃度が高く、それだけで [かゆみ] を引き起こします。
    また細菌により汗がアンモニアに分解されると、皮膚のpHをアルカリ側に傾けて、皮膚の生理的防御能を低下させ、様々な刺激物質の侵入を容易にします。
    その結果、皮膚刺激に対して敏感になり、[かゆみ]を感じやすくなります。
  2. 2.皮膚表面の感染
    皮膚感染症は知覚神経を刺激し、激烈な[かゆみ]を引き起こします。[かゆみ]のために[掻く]行為を繰り返し、掻くことで皮膚を傷付け、ますます細菌繁殖に良い条件を作るという、悪循環が成立します。
    皮膚表面の感染症として、ブドウ球菌などの細菌感染が最も多くみられます。 その他にも、ヘルペスなどのウィルス感染や、カンジダなどの真菌感染も、よく経験します。

    1. 1.ダニ
      ダニは、皮膚の毛穴や角質層の損傷部位から皮膚内に侵入し、アレルギー性炎症を起こし、激烈な[かゆみ]を引き起こします。
    2. 2.生活用品
      石鹸やシャンプー、洗剤、化粧品などの生活用品は、皮膚バリアを障害し、[かゆみ]を引き起こします。 特に、顔から首にかけてのアトピー性皮膚炎は、シャンプーが皮膚に合わないのではないかと考えて下さい。
      また、洗濯に用いる洗剤は、界面活性剤の少ないものを選ぶようにして下さい。
    3. 3.肌着
      肌着は、直接皮膚に触れるので、材質が皮膚に合わないと、アトピー性皮膚炎が悪化する事があります。 また、洗濯の仕方も大きく影響します。
      肌着だけではなく、パジャマやオムツにも注意が必要です。
    4. 4.砂
      砂遊びは、子どもさんが大好きな遊びの一つです。 しかし、砂は、皮膚を直接傷つけ、[かゆみ] を引き起こします。 また、砂の中に含まれている金属や動物の毛で、アレルギー性炎症が起きる事もあります。
    5. 5.直射日光
      直射日光も、紫外線による炎症を起こし、[かゆみ]を引き起こします。 また、皮膚免疫能を低下させ、皮膚感染症を助長させます。雪による紫外線反射にも注意が必要です。
アレルギーを引き起こす環境刺激について、詳しく教えてください。開く
アレルギーを引き起こす環境刺激は、次の2点に整理することができます。

  1. 1. アレルギーの原因となる刺激(アレルゲン)
  2. 2. 身体を過敏な状態にし、アレルギー感作を成立させやすくする刺激
  1. I:アレルギーの原因となる環境刺激(アレルゲン)
    1. 1.ダニ・カビなどの微生物
      ダニやカビは、アトピー性皮膚炎や気管支喘息の主要な原因となります。 ダニアレルギーは、呼吸とともに気管に吸い込まれ、気管支喘息の主要な原因となります。 また皮膚面からも直接侵入し、アレルギー性炎症を起こし、アトピー性皮膚炎の原因となります。
      アレルギーになりやすいという遺伝情報をもつ子どもさんでは、早ければ生後6か月で、ふつう2歳頃にはダニに対するアレルギー感作が成立します。
    2. 2.ペット
      ペットのふけや排泄物は、子どもさんのアレルギー疾患の大きな原因となります。 アレルギー感作が成立する年齢を考えると、ダニよりも早い年齢から、アレルギーの原因となる事も少なくありません。
      直接皮膚に反応してアトピー性皮膚炎を悪化させたり、気管から吸い込まれ気管支喘息の原因となります。
      ペットを飼うのをやめても、3~6か月の間は影響が残るといわれるほど、アレルギーを引き起こす強い力をもっています。 また、ペットのふけや排泄物は、ダニのエサにもなり、結果的に室内のダニを増加させます。 家庭で飼っていなくても、実家や、よく遊びに行く家庭の室内でペットを飼っている場合には、注意が必要です。
    3. 3.食物
      食物は、出生直後から体内に大量に摂り入れる物質なので、異物として認識される機会も多く、アレルギーの原因となります。
      母乳栄養児では、お母さんが食べる食物蛋白が母乳中に分泌され、子どもさんの食物アレルギーの原因となります。 人工栄養児では、ミルクに含まれている牛乳蛋白や大豆蛋白などが食物アレルギーの原因となります。
      離乳食が始まると、様々な食物蛋白が子どもさんに取り込まれ、食物アレルギーの原因となります。 乳幼児期は、消化機能も弱く、消化管も未熟なために、食物アレルギーが成立しやすい時期です。
      年齢が大きくなると、消化機能や消化管免疫が発達し、食物アレルギーは少なくなります。
      しかし、成人になっても、消化機能や消化管免疫が低下すると、食物アレルギーが成立します。
    4. 4.花粉などの植物
      毎年春になると、花粉症が話題になります。
      杉花粉が増加した原因として、様々な説がありますが、花粉は、本来、人には無害なものです。 無害な花粉を外敵と見なして、アレルギー反応を起こす過敏な体質の広がりこそが、花粉症を増加させている原因だと考えています。
      花粉症の季節には、アトピー性皮膚炎や気管支喘息などのアレルギー疾患も悪化する事があります。
      花粉症のために、目が痒くなり、涙が出て目をこする結果、目の周りのアトピー性皮膚炎が悪化する子どもさんも少なくありません。 また室内観葉植物は、果物アレルギーを起こしたり、室内のカビを増加させ、環境を悪化させます。
  2. II:身体を過敏な状態にする環境刺激
    1. 1.喫煙
      喫煙は、吸っている本人の健康に良くないだけではなく、まわりで生活する人の健康を損なう事がわかってきました。
      タバコの煙自身には、アレルギー感作を起こす力はないとされています。 しかし、タール分などが気道内に付着し、気管支喘息などの気道系アレルギーの成立を助長します。
      特に乳幼児などの気道系が未熟なものほど、喫煙の影響を強く受けます。 その結果、アレルギーになりやすいという遺伝情報をもつアトピー性皮膚炎の子どもさんでは、家族の誰かが室内で喫煙していると、気管支喘息になる危険性が4~8倍にもなるといわれています。
      風邪を引きやすい、風邪を引くといつまでも咳が残る、このような症状のある子どもさんは、気道系が弱く、過敏になっていると考えて良いでしょう。
    2. 2.食品中の化学物質(食品添加物・仮性アレルゲン)
      食品を加工したり、流通させたりするために、多くの食品添加物が使われています。
      食品添加物の中には、摂取するとすぐにアレルギー反応と同じような過敏反応を起こすものもありますが、大部分の添加物では症状はすぐには現れません。
      ダニや食物・喫煙・ペットに比べると、一人の子どもさんの体に与える影響力は未知数ですが、食事を摂る度に体内に入り、一生涯影響を与えるものだけに、体の中にできる限り摂り入れたくないものです。
      食物の中には、ヒスタミンなどの[かゆみ]を引き起こす化学物質(仮性アレルゲン)を、大量に含んでいるものがあります。調理方法によっては、アレルギー症状が悪化する事があるので、注意が必要です。
    3. 3.金属
      歯科の治療に用いられる充填剤に含まれている金属、砂場の砂・食物中に含まれている金属、ピアス・時計のバンド・ベルトなどの生活用品に含まれている金属に対して、 身体が過敏に反応する事があります。
      また、金属のある種のものは、身体の免疫機能を失調させ、アレルギー体質になりやすくする事もあります。
    4. 4.室内化学物質
      最近の省エネ住宅は、冷暖房効率を上げるために高度に気密化し、自然換気率が以前の住宅の数分の一にまで減少しています。 その結果、ホルムアルデヒドなどの室内の揮発性有機化合物(VOC)による、化学物質過敏症が増えています。
      室内の揮発性有機化合物の主な発生源は、壁紙・フローリングの板・新しい家具・それに接着剤です。 特に新築の家屋に引っ越しをした時や、リフォームを行った時には、室内の揮発性有機化合物濃度が高くなっているために、短期間に大量の揮発性有機化合物の影響を受ける事になります。
      化学物質過敏症は、疲れやイライラなどの精神症状のほかに、体を過敏にするために、アレルギー感作を成立させ、アレルギー症状を悪化させます。シロアリ駆除の薬品や、除草剤の使用にも注意が必要です。
    5. 5.屋外化学物質
      1. ●水質汚染
        水は、食物や空気とともに、人が生きていくために必要な基本的な物質です。 体の小さな子どもさんほど体重あたりの必要水分量も多く、水質の影響を大きく受けると考えられます。
        また、水は入浴や洗顔の機会に、直接肌に触れる物質ですから、水質はアトピー性皮膚炎の子どもさんには、大きな影響を及ぼします。
      2. ●大気汚染
        気管支喘息は、大気汚染と強い関連性があります。
        工業地帯や交通量の多い道路沿いの住民の気管支喘息の有病率は、そうでない地域の住民に比べると、明らかに高いという統計が出されています。
        毎日呼吸する空気を通じて体が過敏になるために、気管支喘息だけではなく、花粉症などの他のアレルギー疾患も多くなるといわれています。
      3. ●土壌汚染
        植物は、土壌や水質の影響を強く受けています。植物を食べて成長する魚や動物は、餌や水質の影響を強く受けています。 そのため、私たちが食物に供する野菜・穀類・魚・肉は、生産地や生産の方法で、栄養価や安全性が大きく違ってきます。
        ゴミ処理の過程で発生するダイオキシンなどの化学物質は、人の免疫系に強く悪影響を与えると言われています。
[かゆみ]の感じ方は、そのときの精神状態によっても違うのですか?開く
知覚神経の受ける刺激の強さや感じ方は、そのときの体調や心理状態の影響を強く受けます。知覚神経が過敏な状態に陥っていると、汗や温度差、風などのわずかな刺激に対しても、[かゆみ]と感じます。イライラしている時には、皮膚からのわずかな刺激も、強い [かゆみ] として感じられて、我慢できずに強く掻いてしまう。 その結果、皮膚が損傷し、さらに [かゆみ] が増す事になります。
心理的な不安定さは、アトピー性皮膚炎の発症や悪化の重要な鍵になります。 一方、[掻く]行為には、[かゆみ]を取るという目的の他にも、様々な心理的要素が隠されている事があります。
退屈な時に、お母さんの注意を引くために、[掻く] 行為を取る。欲求を上手に処理できない時に、[掻く] 行為を繰り返す事で、自分の身体に対する関心を強め、まわりとの関係を絶ち、自分の殻に閉じこもる。
このように、[掻く] 行為の背景にある精神的な問題にも、目を向ける必要があります。
アトピー性皮膚炎は遺伝子やすいと聞いたのですが?開く
アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患は、体質が遺伝する疾患と考えられています。
アトピー性皮膚炎では、どのような体質が遺伝するのでしょうか。多くのアトピー性皮膚炎の子どもさんを診察していますと、アトピー性皮膚炎では、次の2つの体質が遺伝すると考えられます。
(1)皮膚の生理的な機能が弱い体質(臓器過敏性)
(2)アレルギーになりやすい体質 (IgE抗体の過剰産生)
しかし、この2つの体質が、どの遺伝子により受け継がれていくのかは、現在では不明です。
皮膚の生理的な機能が弱い体質について、もう少し詳しく説明してください。開く
健康な人の皮膚には、次のような生理機能が備わっています。

1.皮膚の保湿能 皮膚表面からの水分の蒸発を防ぎ、皮膚をしっとりさせる力
2.皮膚の感染防御能 皮膚表面で細菌感染やウイルス感染が起こらないように防御する力
3.皮膚の損傷修復能 傷ついた皮膚をもとに戻す力

アトピー性皮膚炎の子どもさんは、生来、このような皮膚の機能に、弱さがみられます。

  1. 1.皮膚の保湿能の弱さ
    人を含めて陸上動物は、その昔、水中動物から進化してきたと考えられています。陸上にあがると、そこは水中とは違い乾燥の世界です。そこで乾燥から身体を守るために、皮膚に水分を保つ力(保湿能)が発達してきました。
    皮膚の保湿能は、a)皮脂、b)角質細胞間脂質、c)天然保湿因子で成り立っています。

    1. 皮脂は、皮脂腺より分泌される脂質で、皮膚表面を覆う事により、水分の蒸発を防いでいます。
    2. 角質細胞間脂質は、表皮細胞が産生するセラミドなどの脂質で、角質層のバリア機能を作っています。
      しかし、アトピー性皮膚炎の皮膚は、表面の角質層が荒く、水分保湿能が劣るために、乾燥肌 (ドライスキン)になりやすくなります。 皮膚表面の湿度は、主に大気中の湿度と発汗によって保たれています。 そのために、大気中の湿度も低く、発汗も少なくなる冬季は、皮膚が特に乾燥しやすくなります。
  2. 2.皮膚の感染防御能の弱さ
    身体のまわりには、細菌やウィルス・カビなどの様々な微生物が取り巻いています。 微生物が、皮膚表面で繁殖し、身体に侵入しないように、皮膚には感染防御能が発達しています。
    しかし、アトピー性皮膚炎の子どもさんは、皮膚表面のバリア機能が劣るために、皮膚細菌感染症(とびひ など)、皮膚ウィルス感染症(水いぼ・ヘルペス など)、皮膚真菌感染症などの皮膚の感染症にかかりやすい傾向があります。
    皮膚感染症は知覚神経を刺激し、激烈な[かゆみ]を引き起こします。中でもブドウ球菌が皮膚面に繁殖すると、[かゆみ]は10倍にもなるといわれています。[かゆみ]のために[掻く]行為を繰り返し、掻く事で皮膚を傷付け、細菌繁殖にとって、ますます都合の良い条件が作られます。
    また皮膚感染症は、皮膚の免疫系に働きかけて、多くのアレルギー担当細胞(Tリンパ球)を刺激し、アレルギー的に過敏な状態を作るといわれています。
  3. 3.皮膚の損傷修復能の弱さ
    子どもさんは、生活をしていく中で、いろいろな原因で、皮膚にダメージを受けます。物理的ダメージ(擦り傷・やけど・日焼け・しもやけ など)、化学的ダメージ(石鹸まけ・軟膏かぶれ など)、生物学的ダメージ(虫刺され など)を受けると、その部位から感染しやすくなるために、速やかに皮膚を修復しようとする力が発達しています。
    しかし、アトピー性皮膚炎の皮膚は、ダメージを修復する機能が劣るために、皮膚感染を併発する事が多くなります。
アレルギーになりやすい体質について、もう少し詳しく説明してください。開く
アトピー性皮膚炎の子どもさんには、アレルギーになりやすいという全身的な免疫失調が存在する事があります。
アレルギーになりやすい体質は、親から子へと遺伝するといわれています。統計的には、両親に何らかのアレルギーがある場合、子どもさんの約80%にアレルギーが起こります。両親にアレルギー疾患がある子どもさんや、兄弟にアレルギー疾患がみられる子どもさんは、統計的には、アレルギー疾患になる確率が高いといえます。
アレルギーになりやすい体質をもつ子どもさんが、環境から過剰な刺激を受けると、アレルギー感作が成立し、アレルギー症状が発症します。
アレルギー感作を引き起こす原因(アレルゲン)として、食物・ダニ・カビ・花粉・動物の毛などが、代表的なものです。皮膚機能の弱い子どもさんに、アレルギー感作が成立すると、アレルギーに基づくアトピー性皮膚炎が起きやすくなります。
気管の弱い子どもさんに、アレルギー感作が成立すると、アレルギーに基づく気管支喘息が起きやすくなります。目や鼻の粘膜の弱い子どもさんに、アレルギー感作が成立すると、アレルギー性結膜炎やアレルギー性鼻炎(花粉症)が起きやすくなります。
アトピー性皮膚炎の治療について説明してください。開く
アトピー性皮膚炎の治療の基本は、[かゆみ]を抑え、[かゆみ]と[掻く]行為の悪循環を断ち切る事です。
[かゆみ]を抑える一番の早道は、強力な抗炎症剤=ステロイド外用薬を使う事だといわれています。
しかし、手軽に[かゆみ]を抑える治療を求める前に、なぜ[かゆみ]が起きるのかについて考えて下さい。
現在の医学では、アトピー性皮膚炎の子どもさんが受け継いでいる

  1. 1.皮膚の生理的な機能が弱い体質
  2. 2.アレルギーになりやすい体質

そのものを治療する事はできません。
しかし、[かゆみ]を引き起こし、[かゆみ]を感じやすくさせている原因を調べ、取り除く事は可能です。

  1. 1.皮膚に[かゆみ]を引き起こす刺激
  2. 2.アレルギーを引き起こす環境刺激
  3. 3.[かゆみ]を増幅させる精神的な刺激

を、一つ一つ丹念に取り除き、[かゆみ]そのものが起こらないようにする 事ができれば、皮膚炎症状も落ち着きます。
さらに、健康な皮膚機能を取り戻す治療(スキンケア)を気長に続けていく事で、アトピー性皮膚炎は良くなっていくと考えています。
残念ながら、[かゆみ]を起こす原因の組み合わせは、一人一人違います。簡単なスキンケアだけで軽快する人もいれば、考えられるすべての事に注意をし尽くしても良くならない人もいます。
環境から受けるいろいろな刺激に対して、必要以上に神経質になり、子どもさんやお母さん自身が大きなストレスを受けてしまっては良くありません。アトピー性皮膚炎の原因を大きく眺めて、必要な治療を専門医と相談しながら進めていく事が大切です。
ここでは、アトピー性皮膚炎の治療を、次の5点にまとめて説明します。

  1. 1.しっかりとしたスキンケア
  2. 2.十分な環境整備
  3. 3.安定した精神生活
  4. 4.必要最小限の食事療法
  5. 5.治療の助けとしての薬物療法
スキンケアの目的は何ですか?開く
スキンケアは、健康な皮膚機能を取り戻す治療です。 ここでは、スキンケアを、次の4点にまとめて説明します。

  1. ●皮膚表面に受けた損傷を回復させるスキンケア
  2. ●皮膚表面の感染を治療し予防するスキンケア
  3. ●皮膚表面への刺激を少なくするスキンケア
  4. ●皮膚の生理的な機能を維持・増進させるスキンケア
皮膚表面に受けた損傷を回復させるスキンケアについて、説明してください。開く
[掻く]行為を繰り返すなかで、皮膚のバリア機能がダメージを受けると、 感染防御能が弱まり、細菌感染やウイルス感染が起きやすくなります。 皮膚に感染症が合併すると、さらに[かゆみ]が強まります。
[掻く] 行為と [かゆみ] との悪循環は、アトピー性皮膚炎をさらに悪化させます。 そのために、皮膚バリア機能のダメージは、できる限り速やかに回復させる事が大切です。
皮膚表面に受けた損傷を回復させるために、ステロイド外用剤は最も効果的な治療手段です。 ステロイド外用剤は、感染症による炎症であれ、アレルギー性炎症であれ、炎症を強く抑える働きがあります。 しかし、ステロイド外用剤を長期に使用すると、皮膚表面の免疫を失調させ、さらに過敏な皮膚を作ります。 また、ステロイド外用剤そのものによる接触性皮膚炎を起こす事も稀ではありません。
ステロイド外用剤を効果的に使用するためには、次の点に注意する事が大切です。
(1)ステロイド外用剤を使用する量と期間を、使用を始める時にあらかじめ決めておく。
(2)ステロイド外用剤だけに頼るのではなく、基本的な治療法を実践する。
皮膚面の感染を治療し、予防するスキンケアについて、説明してください。開く
皮膚感染症は知覚神経を刺激し、激烈な[かゆみ]を引き起こします。 [掻く] 行為は、 皮膚感染防御能をさらに破綻させ、皮膚感染症を助長させます。
難治性のアトピー性皮膚炎では、殆どの場合、皮膚感染症が合併していると考えています。 皮膚感染症の治療としては、
(1)超酸性水による消毒
(2)抗生物質含有外用剤の塗布
(3)抗生物質の内服
などがあります。
それぞれ治療上の特徴や、適応・副反応・使用上の注意点があるので、主治医と相談のうえ行うようにして下さい。
皮膚表面への刺激を少なくするスキンケアについて、説明してください。開く
皮膚表面への刺激を少なくする事は、[かゆみ]が起こらないようにするうえで重要です。

  1. 1.汗、汚れ
    汗を長く留めておかない事は、アトピー性皮膚炎のスキンケアの出発点です。 成人に比べると、子どもさんは発汗量が多いので、特に注意が必要です。 夏期は、行水などを含めて一日3~4回は汗を落としましょう。 冬期でも、毎日の入浴は必要です。入浴後の保湿軟膏の塗布も忘れないで下さい。
  2. 2.ダニ
    生きたダニが、皮膚に直接接触しないように環境を整える事は、アトピー性皮膚炎を治療するうえで重要です。 寝具や床面などに、特に注意を払うようにして下さい。
  3. 3.生活用品
    石鹸・シャンプー・化粧品などの生活用品は、敏感肌の人のために開発されたものをお勧めします。
  4. 4.肌着
    直接皮膚に触れる肌着やパジャマは、木綿や綿製品をお勧めします。 洗濯には、合成洗剤・柔軟剤・漂白剤を使わない方が無難だと考えます。
  5. 5.砂遊び
    夏期は、水遊びを中心とし、砂に触れさせない方が良いでしょう。 どうしても、砂遊びがしたい時には、あらかじめ手足に保湿軟膏を塗り、 長袖・長ズボン・手袋・靴下を着用した完全武装スタイルで出かけ、帰宅後はすぐに入浴させ、 保湿軟膏を塗ったうえで、着替えさせて下さい。
  6. 6.直射日光
    海などで直射日光に当たる機会のある時は、帽子や長袖Tシャツなどで、顔や身体を保護して下さい。 日光が強い時間帯では、波や砂浜からの反射光で障害を受ける事があるので、注意が必要です。 低刺激のサンスクリーン(SPF値の低い製品)の使用も、効果的です。
皮膚の生理的な機能を意地・増進させるスキンケアについて、説明してください。開く
アトピー性皮膚炎の皮膚は、急性期の皮膚の炎症が落ち着いた後も、角質層の水分保持機能が劣り、 ドライスキンの状態が続きます。そのために、わずかな刺激で、アトピー性皮膚炎が再発します。
アトピー性皮膚炎が落ち着いた後も、皮膚の生理的な機能を維持・増進させるスキンケアを、 気長に続ける事が大切です。

  1. 1.入浴
    体温より少し高め(37~38℃)のぬるめのお湯に、30分以上ゆったりとつかるようにしましょう。 ドライスキンの人も、お湯の中では、しっかりと皮膚に水分を保持できます。
    石鹸を手に塗り、皮膚の表面の汚れだけを優しく落とす事。タオルは使わない方が良いでしょう。 汚れのひどくない部位は、お湯だけで洗うようにして下さい。
  2. 2.入浴剤
    炭酸が含まれていないタイプの入浴剤の使用は、皮膚の水分保持を高めて効果的です。 漢方薬を煎じた入浴剤も、よく使われています。
  3. 3.保湿系外用剤
    皮脂の不足を補うために、保湿系外用剤を塗る事は効果的です。
    ただ、アトピー性皮膚炎の皮膚は、健康な皮膚に比べて乾燥しやすいために、入浴後5~10分ほどで、 入浴前の乾燥状態に戻ります。湯舟からあがった後は、できる限り早い時間に保湿系外用剤を塗るようにして下さい。脱衣場に出る前に、浴室内の洗い場で軟膏を塗ると、効果的です。
環境を整える上で、何に注意すればよいですか?開く
私たちを取り巻く環境の中から、健康に良くないと考えられる刺激を取り除く事は大切です。 良くない環境刺激により身体が過敏となり、免疫失調に陥ると、アレルギー疾患の他にも、 自己免疫疾患や、悪性新生物(ガンなど)に罹りやすくなります。

  1. 1.ダニ・カビなどの微生物
    ダニは、アトピー性皮膚炎や気管支喘息の主要な原因となります。 生きたダニは、皮膚の毛穴や角質層の損傷部位から皮膚内に侵入して、アレルギー性炎症を起こし、 激烈な [かゆみ]を引き起こします。しかし、生きたダニには一定の重量があるので、 気管支の奧まで吸い込まれる事はなく、直接気管支喘息の原因にはなりません。
    一方、ダニの排泄物や、ダニの死虫体は、細かくて軽いために、容易に気管支の奧まで吸い込まれて、 気管支喘息を引き起こす強いアレルゲンとなります。アトピー性皮膚炎だけでなく、気管支喘息などのアレルギー疾患の予防や治療を考えると、 生きたダニだけではなく、ダニの排泄物や、ダニの死虫体を除去する対策が重要となります。
    ダニは、

    1. 1.適度な湿度と温度が保たれている場所
    2. 2.エサになるホコリがある場所
    3. 3.卵を産むために潜り込めるフカフカとした場所で繁殖します。

    ダニの繁殖に適した場所は、人間にとって住み心地の良い場所といえます。 そのためにダニを完全に減らす事は容易ではありません。 ダニアレルギーを本気で治すためには、住み心地を二の次にして、健康的な住まいを優先する事も必要です。
    防ダニ対策のポイントは、部屋の床面と、寝具です。 敷きつめの絨毯やカーペットは、 ダニの繁殖にとって好都合です。しかし昔の建て方と違い、風通しの悪い床面に敷かれた畳も、 ダニの繁殖を助けます。板の間やコルク床など、ダニが潜り込んで繁殖できない床面が理想です。 部屋の全てをフローリングにできない場合でも、居間や子どもの寝室はフローリングにしたいものです。 寝具は、人が長時間をその中で過ごす、身近な環境です。 天日干しや掃除機かけなどの日常の管理が大切な事は、 いうまでもありません。また、ダニの排泄物や、ダニの死虫体を完全に除去するためには、 洗えるタイプの布団を購入し、定期的にダニを洗い流してしまう事もよい方法です。安全な防ダニ布団や、 高密度繊維で作られたシーツを用いる事も効果的です。
    カビも、アレルギー疾患の主要な原因となります。夏期は、エアコンの中のカビに注意して下さい。冬季は、結露管理が大切です。(除湿器を使う。加湿器は使わない)

  2. 2.ペット
    いぬ・ねこなどのペットとのおつきあいは、心の癒やしにつながる側面があります。 そのために、一概にペットの飼育を否定する訳ではありません。しかし、ペットの毛やフケがもつアレルギーは、 生まれてすぐの子どもさんを過敏にする、主要なアレルゲンとなります。その後のアレルギーマーチの出発となります。
    一度、ペットアレルギーが成立すると、アトピー性皮膚炎が悪化し、気管支喘息発作が起きるなど、 心身共に疲労につながる環境刺激となります。
    ペットを飼育する時には、できる限り室内に入れない事。定期的に入浴させる事などの注意が必要です。
    子どもさんが小さい時や、アレルギー体質が強い人は、はじめからペットを飼わない方が良いでしょう。
  3. 3.食物
    アレルギーになりやすい子どもさんは、授乳中の母親の食事・ミルクの選択・離乳食などについて、注意が必要です。 また、離乳食の問題だけではなく、離乳食の完成期の目標となる大人の食生活も、 現代では高動物性蛋白質食・高脂肪食・低繊維食に片寄る傾向にあります。
    大人自身の食生活も、健康的なものに変えていく必要があります。 加工食品に頼る食生活を改めて、できる限り手作りを心がけ、不必要な食品添加物を避けるようにしましょう。
    仮性アレルゲンを多く含む食品の調理方法や、摂取量にも注意して下さい。
  4. 4.喫煙
    喫煙は、吸っている本人やまわりで生活する人の健康にとり、「百害有って一利無し」というべきものです。 禁煙が一番の解決法ですが、それが無理な場合には、次の点は最低限守るという心がけをお願いします。
    a)室内で喫煙しないようにする。
    b)公共の場でも、乳幼児や妊婦の近くでは吸わないようにする。
  5. 5.花粉などの植物
    花粉症の季節に外出した時は、帰宅後は、すぐに洗顔するようにしましょう。
    寝具の天日干しは、花粉症の季節にはお勧めできません。この季節は布団乾燥機をうまく使いましょう。 もし、天日干しをする時には、取り入れたらすぐに掃除機をかけて、花粉を吸い取って下さい。
    観葉植物は、果物アレルギーを起こしたり、室内の湿度を高めてカビを増やす事があるので、 室内で育てない方が良いでしょう。
  6. 6.金属
    金属による過敏症を合併している場合には、歯科の治療を見直して下さい。 また、身につける生活用品の金属にも注意しましょう。
  7. 7.室内化学物質
    新築の家屋に引っ越しをする時や、リフォームを行う時には、壁紙・フローリングの板・ 接着剤に揮発性有機化合物(VOC)が少ない建材を選択するように、建築施工業者と相談して下さい。 また、適度な自然換気率が保てる工夫も必要です。 転居後は、できる限り窓を開けて、十分な換気を試みる事が大切です。
    それでも、化学物質過敏症が疑われる症状が続く時には、 揮発性有機化合物を吸着させるタイプの空気清浄機の使用を勧めます。
  8. 8.屋外化学物質
    水質汚染・大気汚染・土壌汚染など環境汚染は、アレルギー疾患だけではなく、 悪性新生物(ガン)や不妊症が増加するなど、私たちの健康や、私たちの子孫に関わる大きな問題です。
    環境汚染は、すぐには解決できない問題ですが、無関心ではいられません。
心理面で注意する点を教えてください。開く
アトピー性皮膚炎などアレルギー疾患は、身体だけではなく、精神にもダメージを与えます。 その結果、精神的に不安定な状態が続き、さらに [かゆみ] を強く感じやすくなります。 また、アトピー性皮膚炎の治療は、生活の場や食事面などで制約が多くなるために、その事がストレスの原因にもなります。自分の身体に対する関心が強くなり、まわりとの関係を絶ち、自分の殻に閉じこもる傾向もみられます。
安定した精神生活を送るためには、まわりの人の温かい支えが必要です。アトピー性皮膚炎の子どもさんを精神的に支える出発点は、子どもさんのつらさへの共感を持つ事です。
[かゆみ] は、昼夜を問わずにおそってくるものだけに、生活のリズムを乱します。 眠れない・食べれないなど、その苦痛は想像を超えるものがあります。そのために、全身倦怠・頭痛・肩こりなど、多くの不定愁訴を合併してきます。
精神的にも、無気力・集中できないなどの不安定さを伴う事が多く、ひいては人間関係に支障をきたす事もあります。この状態から抜け出るために、何をしたら良いのか、本人にもわからない事さえあります。皮膚の[かゆみ]にとどまらない、全身のつらさへの共感を、まわりの大人がもつ事が大切です。
アトピー性皮膚炎は、病気が外観から判断できるだけに、年長児になると他者から指摘され、大なり小なり 【心のきず】 を受けています。「きたない・うつる・ちかよらないで」などの言葉できずつき、友人関係でうまくいかなくなったり、不登校につながる事も少なくありません。「かわいそうね」という安易な同情は、アトピー性皮膚炎の子どもさんの人格を低める事にもつながります。
「頑張っているんだね」という、子どもさんの努力への共感がなにより大切です。アトピー性皮膚炎の子どもさんも、まわりの大人も、この治りにくい病気と、どのようにおつきあいしていけば良いのか考えていきましょう。
皮膚の状態が極端に悪くなり、心身ともに安静が保てない時には、一時的にステロイド外用剤を十分に使用したり、入院治療する事で、心身をゆっくりと休める機会を持つ事も必要です。
アトピー性皮膚炎の食事療法について教えてください。開く
アトピー性皮膚炎に対する食事療法は、次の2つの指導に整理する事ができます。
(1)基本食指導(健康的な生活を送るための基本的な食事の摂り方)
(2)除去食療法(食物アレルギーに基づくアトピー性皮膚炎の場合)
食事療法は、母児ともに、大きなストレスを与える事があるので、実施に当たっては、十分な配慮が必要です。
アトピー性皮膚炎に使われる薬には、どのようなものがありますか?開く
アトピー性皮膚炎の薬物療法としては、次のものがあります。
(1)外用剤:ステロイド外用剤・非ステロイド外用剤・消毒剤
(2)内服剤:抗アレルギー剤・抗ヒスタミン剤・ビタミン剤・亜鉛製剤・抗生物質・抗真菌剤・漢方薬
このうち外用剤は、アトピー性皮膚炎の薬物治療の中心的な役割を演じています。外用剤の他にも、抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤が良く使われています。皮膚や全身の状態が非常に悪化している時には、薬物療法を他の治療の助けとして使用すると効果的な事があります。
ステロイド外用療法とどのようにつきあえばよいのですか?開く
アトピー性皮膚炎の治療を説明する時に、「先生はステロイド外用剤を使う立場なのですか、使わない立場なのですか」といった二者択一的な質問を受ける事があります。 しかし、このような質問にお答えする事には、無理があります。
ステロイド外用剤には、他の薬物療法にはみられない強い抗炎症作用があります。急性期の皮膚病変には、ステロイド外用剤の積極的な使用が必要な場合があります。
しかし、急性期の皮膚病変といえども、ステロイド外用剤のみに頼る治療法には限界を感じます。ステロイド外用剤以外の抗炎症療法を組み合わせて、速やかに急性期の皮膚病変の改善を図る事が大切です。
それとともに、なぜ[かゆみ]が生じ、皮膚炎症が生じるのかについて、あらゆる角度から検討し、可能な限り原因除去を行う中で、急性期の皮膚病変の治療効果も上がり、また再び悪化する機会も減じる事ができると考えています。
一方、非急性期の皮膚病変は、生活指導(生活改善・環境整備・ストレスケア)を基本にすえて指導を行い、子ども さんの過敏性の改善を図り、悪化する機会を減らす事が大切です。
抗アレルギー剤は、どのような場合に使われるのですか?開く
抗アレルギー剤は、次の条件を満たす時に、使われています。
(1)ごく軽症例に対して、除去食物療法を行わずに抗アレルギー剤を投与して治療する。
(2)重症例に対して、除去食物療法や、環境整備を行いながら、治療効果を高めるために投与する。
(3)原因食物抗原が多岐にわたるなどの理由で、完全除去が困難な時に投与する。
(4)アレルギーマーチの進行阻止を期待して投与する。
抗アレルギー剤を服用するとき、何を知っておけばいいのですか?開く
抗アレルギー剤は、子どもさんのQOL(生活の質)を高めるために、使われています。 その場合最低限、次の要点だけは把握しておいて下さい。
(1)今使っている薬の名前を知っておく。
(2)薬の効用と、副作用を知っておく。
(3)どのように服用すれば良いのかを知っておく。
(4)何を目的に服用し始めたのかを知っておく。
(5)いつまで服用する予定なのかを知っておく。
抗アレルギー剤を服用するとき、何に注意すればいいのですか?開く
多くの抗アレルギー剤は、消化管から吸収されて全身に運ばれ、各臓器に作用して効果をあげます。アトピー性皮膚炎の場合、吸収された抗アレルギー剤は、皮膚表面近くにある肥満細胞に働いて、化学伝達物質が遊 離するのを抑制したり、遊離された化学伝達物質の作用を抑えたりして効果をあげます。そのためには、ある程度の期間、必要な量を飲み続けて、初めて十分な血液中の濃度が得られ、薬としての作用を得 る事ができます。不規則に服用したり、自分の判断で量を少なくして服用すると、十分な効果を期待できません。
食物アレルギーに使われるDSCG剤(インタール内服薬)は、消化管の局所に作用し、消化管でのアレルギー性炎症を 阻止します。そのために、食物が吸収される時に、消化管粘膜に十分な薬剤量があれば効果を発揮すると考えられています。 食物の吸収は、主に小腸で行われるので、食前15~30分に服用して、あらかじめ小腸粘膜にインタールが先回 りしている必要があります。また、広い面積の消化管粘膜をカバーするためには、消化管に広がりやすいように、お白湯で溶かして飲む必要があります。