カンガルーの小部屋

2010.11.18

カンガルーの本棚 いまは冬

重松清さんの、「季節風・冬」を読みました。

冬を題材に綴る、12の物語です。

その中でも、わたしは「じゅんちゃんの北斗七星」という小編に、心ひかれました。

40年も前に会わなくなった、隣家のじゅんちゃん。

北の空を見上げながら、思い出します。

みんなとは、すこし違っていたじゅんちゃん。

となりのおじさんと、おばさんは、小学生になる主人公に、「これからも、じゅんと仲良くしてやってね」と、何度もくり返します。

その言葉の重さと苦さを、主人公は大人になり、親になってから、少しづつ噛みしめます。

重松さんは、こう述べられています。

「ひとの想いを信じていなければ、小説は書けない気がする」             

ひとの心を想像すること、思いやることを教えてくれる小編集でした。

                       2010年11月18日

                       いたやどクリニック小児科 木村彰宏