2015.01.11
カンガルーの本棚 つらさがこみ上げる
東野圭吾さんの「手紙」(文春文庫)を読みました。
犯罪者の兄をもつ弟は、世の中の偏見や差別の嵐と出会います。
就職、恋愛、そして最愛の家族を巻き込んで・・・
この先はどうなるのかなという興味と、
これ以上は読み進めることができない「つらさ」とが交錯します。
主人公をこれほどまでに苦境に追いやる作者を
恨みたくもなります。
その中で、就職先の社長さんとの会話に救いを感じます。
他殺であれ自殺であれ、人がその命を突然に絶たれることは
その人の命だけではなく、
その人を愛する人の生きる力さえも奪ってしまいます。
つながりの糸を、一本一本結びなおしていく中で、
被害者への贖罪を果たしていけるのだと。
映画化されたと聞きますので、DVDも観てみたいと思いました。
2015年1月11日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏