カンガルーの小部屋

2010.07.21

カンガルーの本棚 ローマのリーダー

塩野七生さんの「日本人へ リーダー編」(文春新書)を読みました。

文藝春秋誌に、2003年から3年間にわたり連載されたエッセイを集めた本です。

リーダーといっても、当時はコイズミ劇場の時代です。

塩野さんのリーダー論も、コイズミさんを中心に展開されています。

コイズミさんの業績が、100年後にどのように評価されるのかは分かりませんが、少なくとも2010年の時点では、普通の生活をしている人の中に格差を持ち込んだ人であり、古き良き日本の温かさをこわした人だと、わたしは評価しています。

リーダー論では、塩野さんの視点には、同意できない点を多々感じました。

一方失業問題に言及しての文章では、大いに共感できるものがありました。

塩野さんは、イギリスの作家ケン・フォーレット氏の言葉を紹介されています。

「人は誰でも、自分自身への誇りを、自分に課せられた仕事を果たしていくことで確実にしていく。だから、職を奪うということは、その人から、自尊心を育む可能性さえも奪うことになるのです。」と。

食べる手段としてだけではなく、その人がその人らしく生きていくためにこそ、職は必要だという観点は、なんと健全な考え方なのでしょう。

一冊の中に、キラリと光る1ページを見つけました。

                       2010年7月21日

                       いたやどクリニック小児科 木村彰宏