2010.04.04
カンガルーの本棚 悪いのは・・
香山リカさんの「悪いのは私じゃない症候群」を読みました。
日本社会は古くは「おわびの構造」「自責の構造」が支配的とされてきましたが、最近「他罰的な行動」を取る人が増えてきたと言われています。
職場で、社会で、そして家族の中で、「自分は何も悪くない。悪いのは○○だ」という考えを、香山先生は「悪いのは私じゃない症候群」と名付けられました。
この他罰主義の広がりを、香山先生は自己責任論の裏返しだと分析されます。
少しでも自分に非があれば、「それは自己責任だろう。自分で何とかしろよ」と冷たく言われ、誰も助けてくれない。
「自己責任だ」と責められ、攻撃されることを回避するために、先制攻撃合戦が始まる。やられる前に先にやる。攻撃は最大の防御なり。こうした他罰主義の背景には、強い恐怖や不安が隠れているのではないかと、香山先生は続けられます。
このような「悪いのは私じゃない症候群」への処方箋として、香山先生は「分かち合いの精神」を主張されます。
「幸福とは、他者にとって自分の存在が必要だと思えること。」
「助け合うことは自分が幸せになるために必要だから。」
医療生協の設立の精神にも通じる、大切な視点だ思いました。
2010年4月4日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏