2010.08.19
カンガルーの本棚 日本の戦後史
池上彰さんの「そうだったのか!」シリーズ、「そうだったのか!日本現代史」(集英社文庫)を読みました。
「永遠の0」を読んだ直後だけに、戦争で亡くなられた方々の想いを託された戦後の日本社会が、どのような歩みをたどってきたのか、考えさせられながら読み進みました。
池上さんは「敗戦国・日本」「自衛隊」「安保条約」「高度経済成長」「沖縄」「日本列島改造」「バブル」など、日本戦後史を15の章に分けて、解説されています。
なかでも、「公害問題」は、わたしがどのような医師になるのかを模索していた青春の一時期のテーマだけに、興味深く読みました。
池上さんは掻かれています。
「終身雇用のもとで、自分が働く企業の『犯罪』を告発することができないまま、患者の被害は広がったのです。
これは何もチッソに限られたことではありませんでした。当時の公害企業の多くで、多かれ少なかれ同じようなことが起きていたのです。企業の社員という立場が、人間らしくあることをいかにむずかしくするものなのか。人間性を失わせる企業とは何なのか。私は考え込んでしまうのです。」(266p)
戦後史は、過去のものではありません。
池上さんは、三池闘争の中で生まれた次のような詩を載せられています。
「やがてくる日に」
「歴史が正しく書かれる
やがてくる日に
私たちは正しい道を進んだといわれよう
私たちは正しく生きたといわれよう
私たちの肩は労働でよじれ
指は貧乏で節くれだっていたが
そのまなざしは
まっすぐで美しかったといわれよう
まっすぐに
美しい未来をゆるぎなく
みつけていたといわれよう・・・」
2010年8月19日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏