2018.02.26
カンガルーの本棚 森の中をさまよい歩き
宮下奈都さんの「羊と鋼の森」(文春文庫)を、読みました。
主人公はピアノの調律師をめざす青年。
個性豊かな先輩の中の助けの中で、自分だけの音を探す旅に出ます。
「明るく静かに澄んで懐かしい文体、少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体」
原民喜の理想とする文体を音に変えた言葉が、繰り返し主人公の背中を後押しします。
一人の青年の成長物語でありながら、筆者の覚悟が伝わってくる小説です。
2018年2月26日
いたやどクリニック 木村彰宏