2014.03.24
カンガルーの本棚 母から連なる私探し
岡田尊司先生の「母という病気」(ポプラ新書)を、読みました。
子どもが問題行動を起こしたり、成人になって不適応行動を起こしたりする背景には、
母との問題が潜んでいると精神科医師の岡田先生は述べられます。
人が世の中で生きていくためには、基本的な安全感や信頼感が不可欠です。
安全感や信頼感は、2~3才までの間に、母を中心とする身近な親しい人から 限りなく愛される事を通して築き上げていきます。
その時期に、適切な安全感や信頼感を築き上げる事ができないとすれば、
人は、一生をかけてそれを追い求めます。
岡田先生の本を読むと、母という存在の大きさに圧倒されます。
同時に岡田先生は次のようにも述べられます。
長くなりますが、全文をご紹介します。
「社会の近代化は、母親と子どもを孤立させ、子どもが母親から支配されやすい状況を生んだ。母親は忙しすぎて、子どもにかかわる暇も十分になかったり、不在がちな父親に代わって、子どもを厳しく指導しなければならない。だが、そんなスーパーマンのような母親を子どもは求めているのだろうか。子どもは、明るく優しく、困ったときに、そっと寄り添ってくれるお母さんでいてほしいだけではないのか。
豊かで快適になったはずの社会は、子どもから、本来の母親を奪ってしまってきたように思える。それが、母という病の増加をもたらしている大きな原因ではないだろうか。経済が豊かになっても、幸福になるどころか、生きることすら意味が感じられず、空虚感に苛まされる人が増えている一因が、そこにあるように思えてならない。
母と子どもに関わられている全ての人に、お読みいただきたい1冊です。
2014年3月24日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏