カンガルーの小部屋

2010.03.30

カンガルーの本棚 通勤電車でよむ詩集

小池昌代さんの編著「通勤電車でよむ詩集」を読みました。

小池さんは、「詩を読むということは、読むというより、思い出す作業に似ている」と、はしがきに書かれています。

この詩集には40数編の詩が収められています。

そのなかで、わたしのベストをご紹介します。

「胸の和泉に 塔和子」

かかわらなければ

  この愛しさを知るすべはなかった

  この親しさは湧かなかった

  この大らかな依存の安らいは得られなかった

  この甘い思いや

  さびしい思いも知らなかった

人はかかわることからさまざまな思いを知る

  子は親とかかわり

  親は子とかかわることによって

    恋も友情も

    かかわることから始まって

かかわったが故に起こる

幸や不幸を

積み重ねて大きくなり

くり返すことで磨かれ

そして人は

人の間で思いを削り思いをふくらませ

生を綴る

ああ

何億の人がいようとも

かかわらなければ路傍の人

  私の胸の泉に

枯れ葉いちまいも

落としてはくれない

                       2010年3月30日

                       いたやどクリニック小児科 木村彰宏