カンガルーの小部屋

2010.02.27

カンガルーの本棚 食堂かたつむり

小川糸さんの小説「食堂かたつむり」を読みました。

美しい描写に満腹です。

翡翠色の実、玉ねぎの薄皮みたいに半透明の雲、地球をそのまま巨大なはちみつのビンに沈めたみたいな夕焼け空、フラミンゴのようなピンク色の空、コーヒーゼリーのようにつるんとした真っ黒な目。

その鮮やかないろ使いの美しさは、ページをめくるごとに、わたしを楽しませてくれます。

ありふれた食材のひとつ一つを、いとおしむように文字に置き換えられた豊かな表現は、わたしのこころを瑞々しくしてくれます。

読みすすむごとに、やすらぎを与えてくれる小説です。

                     2010年2月27日

                     いたやどクリニック小児科 木村彰宏