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2010.02.16
カンガルーの本棚 そうだったのか!発達障害
生協さん(コープこうべ)の宅配便で、本が届きました。
とき・のりさ(斗希典裟)さんの「そうだったのか!発達障害」という本です。
本を購入するときは、書店でしばらく立ち読みをし、気に入った本を購入することが多いのですが、今回はカタログの題名にひかれて申し込みました。
ときさんの本は、発達障碍という重い話を、4こまマンガを使いながら、楽しく説明されていきます。
子どもや自分自身、また友だちの子どもが実際に体験した不適応行動の実例をあげられながら、違いを知ることを否定や排除に用いるのではなく、違いを知ることを援助の手がかりとして役立てる気持ちで紹介されています。
お子さんの毎日の行動に大変さを感じられているおかあさんや、子どもとつながりを持とうと思われている多くの方の、楽しめる入門書と思います。
2010年2月16日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2010.02.16
聴診器のむこうに 88円ですから
魚のアレルギーがある、6才の男の子がやってきました。
今日はイワシのかんづめの負荷試験です。15分ごとに2回に分けてイワシを食べ、大丈夫かどうか確かめます。40分ほど様子を見ましたが、今日のテストは大丈夫でした。
「これで家計が助かりますね。」と言いますと、おかあさんは「88円ですから。」と受けられます。
男の子に「ところで、家計ってなに?」と、問いかけますと、「???」
男の人は、大人になっても家計がよく分からないものですから、あなたは立派に大人の人になれる資格がありますよ。
帰って試しに子どもに「家計ってなに?」と聞きますと、「食事代に、電気代に、水道代に・・・」と、話は続きます。あなたは、立派な主婦になれますよ。でも、その前にはやく寝なさい!
2010年2月16日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2010.02.15
聴診器のむこうに バレンタインの翌日に
5才の女の子が、チョコひと粒が入った袋を手渡してくれました。
2年生のおにいさんには、卵と牛乳アレルギーがありますので、「チョコの話題をどうフォローしようかな」と思っていますと、「このチョコは、卵も牛乳も、小麦も入っていないので、通販で買いました。」とおかあさんが言われました。
3人兄弟の診察の間に、銀紙をほどき、少し大きめのチョコを口にほおり込みました。
あまり甘くなくビターな大人の味。なかなかいける一品です。
兄弟みんなが食べられるようにと、アレルゲンぬきのチョコレートを探されたのかなと思います。
おにいさん、このチョコは先生が食べた中で、一番おいしいチョコでしたよ。
少し後で、小学6年生の女の子が来ました。
「チョコ、誰かにあげたの。」と聞きますと、「あげてへん。うちのクラスにイケメンいいへんもん。」と答えます。
「男はイケメンと違うよ。」と返しますと、「そうやな、やっぱりお金やな、お金。」と答えます。
この話を帰ってから家でしますと、「わたしも、そう思う」と奥さんに同意されてしまいました。
小学生の男子諸君。世の中は、家族の愛と、世間のきびしさと、二つながら真実ですよ。
2010年2月15日
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2010.02.15
散歩の楽しみ 一日1万歩
歩数計を買い、数年前からその日に歩いた歩数をパソコンに入力しています。
ただ、入力するだけだと意味もありませんので、昨年の9月からは一日平均1万歩をめざして歩くことにしました。
3か月間で100万歩近くになりましたので、新年からは平均ではなく、一日1万歩以上に目標をグレードアップしました。
ウイークデイはクリニックに出かけますので、ゆとりで達成するのですが、休日は大ピンチ。
夜になり、足りない歩数分は家の中をウロウロと歩き、歩数を稼ぎます。
しかし、先日は夜の散歩の後も6000歩しか数字が出ていません。
家の中を歩くという姑息な手段では、とうてい1万歩達成は危うくなりましたので、再度ハッちゃんを散歩に連れ出しました。
散歩が大好きなハッちゃんは、しっぽを振って大喜び。
しかし、坂道を避けて家のまわりの平坦なところをグルグルと回るだけのお散歩ですので、次第に飽きて不機嫌になりました。
ハッちゃん、わたしの健康維持には、あなたの協力がかかせません。これからも無理なお願いを聞いてくださいね。
2010年2月15日
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2010.02.14
かんがるうっ子 ジュラシック・バレンタイン
新聞の4こま漫画を、家族で見るのが日課になりました。
今日、2月14日は、男の子が宝の地図を片手に公園を探し回ります。
そして見つけた物は、やはりチョコレート。
「そうそう、これ」と何やら冷蔵庫から取り出してくるのをみると、ジュラシック・チョコレート。粉チョコの砂をかけ分け、スコップとピンセットとはけを使って、恐竜の骨を発掘します。
発掘した恐竜は、ステゴザウルス。子どもが「ステゴやっ」と言うので、「あんたと一緒や」と言いますと、あっさりとスルーされてしまいました。
子どもとふたりで発掘していますと、「わたしも一緒に発掘させて。」と、ナナが顔を出します。
ナナちゃん、残念ながら、あなたにはチョコレートは禁忌です。
それにあなたは女の子だから、もらうのではなく、誰かにわたす方でしょ。
お昼から、ハッちゃんに何かプレゼントを発掘しに行きましょうか。
2010年2月14日
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2010.02.14
聴診器のむこうに たけちゃ~ん
診察室に先に入ってこられたおかあさんが振り返り、愛らしい声で「たけちゃ~ん」と呼ばれます。
てっきり、小さい子が入ってくるのかと思いますと、ドアを開けて入ってこられたのは、子どもさんを腕に抱えた大きな体のおとうさんでした。
少し恥ずかしそうに、何も言われず立っておられます。
「アレッ、少しヘン」と思い、カルテの表紙の名前を確認しますと、子どもさんは たけちゃん ではありません。きっと、おとうさんの愛称なのでしょう。
「素敵ですね。お名前で呼ばれるのは。」と、声をかけました。
「おとうさん」でもなく、「はやくしてよ」でもなく、優しく愛称で呼ばれるそれだけで、温かいご家庭の様子がうかがえました。
みなさんは、おとうさんのことをどのように呼ばれていますか。
ちなみに、木村家での呼び方は秘密事項に属します。
以前、オレオレ詐欺の電話がかかってきたときに、この秘密事項が役にたちました。
2010年2月14日
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2010.02.14
聴診器のむこうに ライオンの絵
「はやくしなさい」診察室でおかあさんが声をかけます。
2年生の男の子は「ちょっと待って」と言いながら、診察室の机を占領して、手を動かします。
大きめの紙には、何やら絵が書かれています。
簡単な診察の後、「じゃ、好きに書いてもいいよ」とOKを出しますと、数十秒も経たないうちに「ライオン」の完成です。
どことなくエキゾチックで、大人の絵とも、子どもの絵とも言えない味があります。
「もらってもいいですか」 診察室の壁がまた一つ、にぎやかになりました。
2010年2月14日
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2010.02.13
7+8= ゴルフボールは食べ過ぎに注意
風が冷たい朝は、お散歩に出かけるのにも少し気合いが必要です。
どのお散歩コースを取るのかは、ナナかハチかの一発勝負。
今日は上の公園に向かいます。
野球ができる広場を過ぎ、階段を下って芝生の広場に着きますと、雨上がりの水はけの悪い溝の中に、ゴルフボールが二つ待っています。
ゴルフボールもハッちゃんの大好物です。一度くわえると離しません。くわえるとハッちゃんのお口の中にすっぽりと隠れます。何かの拍子に驚いて飲み込まないかと心配です。
素早く写真を撮り、ハッちゃんがくわえるよりも早くポケットの中にしまうことに成功。297個目、298個目、ゲットでちゅ。
ハッちゃんは「アレッ、どこにいったんだろう」という顔をして、しかたなくボールのそばにあったもう一つの丸い物をくわえます。
枯れた、いがぐりをくわえて、「これは違うでしょ」とあわてて離します。
ハッちゃん、ゴルフボールは食べ過ぎに注意しましょうね。
2010年2月13日
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2010.02.13
かんがるうっ子 バンクーバーごっこ
朝のニュースを見ていますと、荒川静香さんが出ていました。
バンクーバーからの実況中継です。
東京のスタジオからの質問に、しばらく間をおいて答えが返ります。荒川さんは画面の中で、動かずにいます。
「なんで、ずれると思う?」聞くと、「遠いからやろ」と子どもが答えます。
すぐに答えるので感心していますと、「それじゃ、説明になっていないでしょ」と、奥さんにつっこまれました。
「画面は光だから、すぐに伝わるでしょ。声は音だから、伝わるのに時間がかかるの。かみなりでも、まず光ってからゴロゴロと音がきこえるでしょ・・」と解説が続きます。
なるほど、そう言う説明がいるのかと納得しながら、光と音とが、駆けっこしている姿を思い浮かべます。
もう一度テレビを見ますと、衛星中継遊びをしたくなりました。
子どもに「・・・エーごはん、たべましたでしょうか?」と聞きますと、「食べました。」と答えます。間をおきながら「・・・そうですか。」と答えますと、すぐさま「おとうさんは?」と聞き返してきます。
「・・・エー、はなれているから、ゆっくりきこえるように、しゃべってくださいね。」と言いますと、「だって、すぐ隣りにいるもん。」時間差を楽しむバンクーバーごっこは、入賞できずに不発に終わりました。
2010年2月13日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2010.02.12
7+8= フリーズ ナナちゃん
夜になり、冷たい雨になりました。
ぬれるのが大嫌いな白柴ナナは、雨の日はブルー犬になります。
ぬれないようにとピンクのレインコートを着せられるのですが、これがまた天敵のように大嫌い。ピンク色のコートが近づくだけで、家の中を逃げ回ります。ようやく捕まえて着せると今度はフリーズしてしまい、全く動かなくなります。先日など、お散歩に出かけるのに時間がかかり、レインコートを着せたままにしていますと、3分、5分とそのままの姿で微動だにせず、フリーズ。
一方、ハッちゃんは雨などおかまいなし。溝の中にわざわざ飛び込んで、ジャブジャブと流れる水を追いかけて遊びます。
おさんぽから帰ると、ハッちゃんは濡れ赤柴。この後がまたまた大変です。
風邪をひかさないようにと、タオルで体を拭くのですが、これがハッちゃんは大嫌い。おやつでなだめながら、左手で大急ぎで雨を拭き取ります。右手のおやつが無くなると、尻尾が少しずつ垂れはじめ、何となく怪しげなムード。このタイミングで拭くのを止めれば良いのですが、少しタイミングが遅くなると、いきなりガブリです。
これが怖くて、わたしの方が雨の日恐怖症になります。
雨の日のお散歩。大好きなのがハッちゃん。苦手なのがわたし。大嫌いなのがナナ。
そういえば、天気予報の番組になると、ナナが耳をすましているようです。
2010年2月12日
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2010.02.11
アレルギーと発達のコラボレート
東神戸病院の森岡先生の肝いりで、兵庫食物アレルギー研究会の新年会を開きました。
兵庫食物アレルギー研究会は、年に10回の例会を持ち、この1月で189回目を迎えました。
今日は新年会ということで、お酒を片手に食物アレルギーのこと、アレルギー学会のこと、日頃困っていることなどを話し合いました。
食物アレルギーが小児アレルギー学会の中でどのように認知されていったのか、兵庫県でいの一番に食物アレルギーとアトピー性皮膚炎との関わりを学会発表された尼崎医療生協の冨永先生の思い、双子のアレルギーについて意見を求められた中尾先生などなど、話はつきません。
会の最後には、発達障碍との関わりについて話が進みました。
PDD(自閉症)、AD/HD(注意欠陥多動障碍)などの発達障碍の視点から、まわりの先生(小児科医師)のこと、自分たちの中のおかしなところに話が拡がり、収まりそうにもありません。
お昼の2時から始めた会も、夕方近くに。
大阪から参加された西野先生、笹井先生、谷内先生、奈良から参加された石丸先生。遠いところからお越しいただき、ありがとうございました。お楽しみいただけましたでしょうか。
同じ臨床上の悩みを持つ医師の集まりは、明日からの診療に元気を与えてくれそうです。
2010年2月11日
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2010.02.11
散歩のたのしみ 一番水仙
休日の朝、いつもよりゆっくりと起きだしますと、「おとうさん、ナナがおとうさんのカバンの中を食べとるで~」という子どもの声。見ると、ナナがわたしのカバンに肩までからだを突っ込み、何やら探しています。
昨夜、居酒屋さんで、食べ残ったお肉をビニール袋に入れ、カバンの中に持ち帰ってきたのを思い出しました。
「なになに、いいにおい」というナナを、とりあえずはお散歩に連れ出します。
吐く息が少し白く見える寒い朝。ナナは、早く帰ってお肉を食べたいそぶり。
緑道を上の公園の方に歩いていきますと、日当たりのよい場所の水仙が、咲きはじめています。
写真を撮ろうとしますと、「はやく、はやく」とナナがリードを引っ張ります。
ナナちゃん、あなたはやっぱり「花より、お肉」なのですね。
2010年2月11日
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2010.02.11
キジねこ きっちゃん
散歩の後、歩数を稼ぐために家のまわりを何回か歩いていました。
お隣の医院の前で、キジねこ「きっちゃん」に会いました。
時刻は夜の11時近く、逃げるかと思いましたが、近寄るとわたしの脚にすり寄ってきます。わたしの前でゴロリと寝ころんで、おなかを見せて甘えます。身体をなぜるとゴロゴロゴロ。
わたしは正統のいぬ派ですので、ねこ族は今ひとつなのですが、このときばかりは「うい やつじゃのお」とすっかり親父気分。
急いで家に戻り、煮干しを手にきっちゃんを探しましたが、見つかりません。
寒い夜更けに、どこに行ったのでしょうか。
お昼間に会うときには、ハッちゃん連れの時が多いのですが、ハッちゃんはきっちゃんを追い回すのが大好きです。
それをわたしが止めますので、きっちゃんは、少しはわたしのことを信頼してくれたのでしょうか。
今度会うときには、煮干しも食べてくださいね。
2010年2月11日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2010.02.10
こきりんニュースの原稿 大募集
こきりんニュースは、きりんニュースの子ども版です。
きりんニュースは、病気の解説を中心に編集されたお母さん向けの情報新聞です。
こきりんニュースは、子ども達が書いてくれた絵や作文を掲載し、子ども達が作った、子ども向けの新聞です。
何年か前までは定期的に発行していたのですが、忙しくなると休刊してしまいました。
今回、インフルエンザの流行が落ち着いてきましたので、もう一度発行しようと思います。
そこで、こきりんニュースに掲載する原稿を大募集いたします。
どんな紙に書いていただいてもよいのですが、クリニックでもかわいい用紙を準備しています。
学校のこと、幼稚園、保育所のこと、おうちでの出来事、病気のこと、どんなことでも自由にお書きください。
診察の待ち時間にお書きいただいてもいいですし、おうちで書いてきて持ってきていただいても結構です。
たのしい絵や作文をたくさんお待ちしています。
2010年2月10日
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2010.02.10
聴診器のむこうに 店長!
アトピー性皮膚炎への軟膏の塗り方の説明を終わり、次の説明に移ろうとした丁度その時、おかあさんから「店長!」というお声がかかりました。あまりにも絶妙のタイミングでしたので、思わず「ハイっ」と返事をしました。そのあと「失礼ですけれど、居酒屋さんかどこかにお勤めですか?」とお聞きしますと、「パン屋さんに勤めているんです。」と答えられました。
いつもは「先生!」とか「院長!」という呼称で呼ばれることが多いのですが、「店長!」という響きも捨てたものではありません。
少なくとも「先生」と呼ばれるよりは居心地よく思いました。
外来に来られた時には、一度「店長!」と呼んでみてくださいね。
「ハイっ、まいど。」とお答えするかもしれません。お楽しみに。
2010年2月10日
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2010.02.10
7+8= 雨あがりのボール
雨あがりの朝、湿度が高い空気が体の中に流れ込みます。
数日前から症状が強くなった花粉症の目や鼻には、優しい空気です。
下の公園に出かけますと、ハッちゃんが植え込みにダッシュ。
誰かが無造作にペットボトルを投げ込んでいるのが見えますので、引き戻そうとリードを持つ手に力を入れますと、口にはしっかりとテニスボールをゲット。
その後、もう一つボールを見つけました。
これで通算記録は296個目に更新されました。
ハッちゃんは4才半になりました。子犬の時から大きく、ペットショップでも売れ残り、バーゲン犬として飼われていました。
ハッちゃんは、ハイブリッド(雑種)ではありません。一応、血統書付きの柴犬ですが、3万円のバーゲン値札が付いていました。甘いマスクに惹かれて思い連れて帰りましたが、予想外のやんちゃ犬。家族みんな、何度も手や足やお尻を噛まれました。
「安いだけのことはあるなあ」とあきらめていましたが、今では立派なボール犬。
ハイブリッド(雑食)のご飯を食べながら、花粉症にもならずに、今日もボール探しに邁進しています。
2010年2月10日
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2010.02.09
7+8= ナナちゃん なく
今日、2月9日は、七十二候(古代中国で考案された季節を現す方法)では「黄鶯睍睆」
:里でうぐいすが鳴く頃とされています。
いつものように、ベストの上にコートを重ね着して散歩に出かけますと、汗が流れます。
暖かくなり、においがつよく沸き上がるせいでしょうか。
ナナはしきりに草木のにおいを嗅ぎ、歩こうとしません。
先を促すと、クウンと甘えた声をだします。
からだも、こころも、ゆるゆると、とけだしそうな朝です。
2010年2月9日
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2010.02.08
散歩のたのしみ 雨の予感
仕事を終え、遅く散歩に出かけますと、急に風が吹いてきました。
ナナが上の公園に行こうと言いますので、坂道を登っていきますと、キューっという音が聞こえます。
木の間に何かいるのか、木々の幹がこすれあう音なのか、わからないまま公園を歩いていますと、雲が低くたれ込めてきます。
今まで輝いていた星々が、灯りを消すようにひとつ、また一つと消えていきます。
ひゅー、バタン、とてとてとて、いろいろな音が暗闇の中から聞こえます。
風に転がる枯れ葉を追いかけて、ハッちゃんが急にリードを引っ張りました。
「雨になるのかなあ」
空はすっかりと灯りを消し、眠りにつきはじめました。
おやすみなさい。
2010年2月8日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2010.02.08
聴診器のむこうに ぼくデートしたよ
「ぼく デートしたよっ。」診察室に入るなり、年長さんの男の子が叫ぶように教えてくれました。「パティオで、それでお椅子をさがして・・」と続けます。
おかあさんが「並んで座ろうと思ってベンチを探したんですけど、開いてるとこがなくて」とフォローしてくださいました。手をつないで歩いて、「それでどんなお話しをしたの?」と聞きますと、「わすれた・・」
あまりのうれしさに、何をお話ししたのかは、すっかりと忘れてしまったようです。
その後、入学前のアレルギー検査をしましたが、泣かずに頑張り、看護師さんにほめられました。
生まれた時から、おとなになるまでの子どもの成長とおつき合いできる幸せは、小児科医に許された特権なのかもしれません。
この仕事が、またひとつ好きになりました。
2010年2月8日
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2010.02.08
カンガルーの本棚 万寿子さんの庭
小説を読みました。書店で一番目立つ棚にならべられている文庫本ですので、みなさんも目にされたことがあるかもしれません。
黒野伸一さんの「万寿子さんの庭」という本です。
本を紹介する帯には、「二十歳と78才の女性の友情」という意味のことを書かれているのがわたしの興味を引きました。
軽やかなテンポの文体と、ユーモアあふれるふたりの出会いとともだちどうしの深まり。そして、話は悲しい結末に向かいます。
ひとりの人間が年老いていくこと。おじいちゃんでもなく、おばあちゃんでもなく、ひとりの固有名詞をもった人間が年老いていくこと。その切なさと、最後の瞬間まで人間としての尊厳を保とうとする願いがこころにしみてきました。
わたしは小児科医です。子どもとの関わりで毎日を過ごしています。
クリニックにはショートステイもあり、デイケアも併設しています。熱心な内科の先生が24時間の在宅見守りもされています。
日頃から、高齢者の生活や健康について、いろいろとお話しをお聞きするのですが、やはり自分の中では小児科医という持ち場に対する割り切りがあるのでしょう。
この小説は、言い訳ばかりのわたしのこころの奥深くの、何かを揺さぶります。
作家が男性であるということにも驚きを感じました。
女性同士の友情を、これほどまでにていねいに描くことができるものなのかと感嘆しました。
一人暮らしをしている父に、次のお休みには会いに行こうと、そう思いました。
2010年2月8日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏