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2010.11.27
カンガルギー情報 第60回日本アレルギー学会⑦
学会二日目、午後からのシンポジウムは「アトピー性皮膚炎の病態解明と治療の最前線」
フィラグリンの異常とアトピー性皮膚炎、発汗機能、皮膚バリアの新しい捉え方、痒みの病態と治療の展望・・
興味深い講義が続きます。
皮膚のバリア障害は、フィラグリン遺伝子の変異という切り口で研究が始まっています。
しかし、表皮細胞間をシールドする、「タイトジャンクション」が持つ皮膚バリア機能の講義は、とても興味深い内容でした。
講師は慶應大学医学部の久保亮治先生。
皮膚のミクロの写真を駆使され、皮膚に存在する免疫担当細胞(ランゲルハンス細胞)の動きを明解に説明されます。
今回のアレルギー学会で、一番おもしろい講義でした。
皮膚の症状から、免疫異常、そして、その後のアレルギーマーチへの発展へと、すごいことが分かってきたのだなと、感銘をうけました。
2010年11月27日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2010.11.27
カンガルギー情報 第60回日本アレルギー学会⑥
学会二日目、お昼前後のふたつの講義は、「喘息の治療コントロールをどのように行うのか」というテーマです。
ガイドラインに基づいて、初期治療をはじめ、コントロールしていく。
経過中に喘息の症状が出現したり、反対にしばらく症状が落ち着いたときに、治療レベルをどのように増やしたり、減らしたりしていくのか。
この点に議論が集中しました。
ただ疑問に思うことは、症状の有無でコントロールの状態を判断してよいのか、患者さんの自主申告で、コントロール状態を判断してよいのかという点です。
ガイドラインは、アレルギー専門医だけでなく、どのお医者さんにも目安になるように作られた治療指針です。
できる限りシンプルに、誰にでも使える必要があります。
反対に、本来の良好なコントロールからみると、過剰治療と過少治療の両方に振れやすくなります。
身近で、しかも、まだまだ答えがでない課題のように思いました。
2010年11月27日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2010.11.27
カンガルギー情報 第60回日本アレルギー学会⑤
学会二日目、引き続き、「新生児の好酸球性胃腸疾患」についての5つの発表を聞きました。
新生児早期から、哺乳障害、嘔吐、血便などをきたす疾患群があります。
これには、細胞性免疫が深くかかわっているといわれ、どのように診断を下していくのかが、今の課題です。
また、液性免疫がかかわっている、食物アレルギーとの関係も、今後明らかにされるべき課題です。
わたしの臨床研究の出発点は、未熟児の栄養方法でしたが、当時は好酸球性胃腸疾患という概念は見あたりませんでした。
新たな疾患概念が提唱され、診断と治療とが整理されていく。
医学の歴史のひとつをみる思いがしました。
2010年11月27日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2010.11.27
カンガルギー情報 第60回日本アレルギー学会④
11月26日、日本アレルギー学会二日目は、「食物アレルギー急速経口耐性誘導法」の発表を聞きました。
いろいろな大学や病院から、6題の発表です。
食物アナフィラキシーを起こしたことがある子どもに、入院をしていただき、連日4~5回の食物負荷を行う。
一定期間後に、どれくらいの子どもが食べられるようになったのかの報告です。
その中で、いくつかの傾向がみられました。
①はじめの一週間である程度まで増量できた子どもは、その後も順調に増量できやすい
②加熱卵白に比べて、牛乳の増量は、困難なことが多い。
また、いろいろな課題も見えてきました。
①負荷に伴う安全性を、さら確保するには、どのようにすればよいのか
②治療ゴールを、子どもの日常の食生活の改善につなげられているのか
③急速負荷後の、家庭での維持を毎日行うのか、それとも間隔を開けて行うのか
入院をしての急速経口食物体制誘導は、新しい治療の考え方です。
全国的な経験が、積まれていくことが期待されます。
2010年11月27日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏