カンガルーの小部屋

  • 2010.12.11

    カンガルーの本棚 若葉たち

    辻内智貴さんの「信さん」(小学館文庫)を読みました。

    昭和30年代、九州のお話しです。

    主人公は、イチジクの樹を見上げながら思います。

    「遮るものの無い豊かな陽ざしをうけて思うがままに育びていく若葉もあれば、陽の当たらぬまま日陰に枯れて行く葉も何処かに有るのだろう。

    人間もまた、そんな若葉に似た一時期を、その一生のうちに誰でもが持つのではないか。この人の世の様々な陽ざしの中に、人は古から抗いようもなく産まれおちつづけてきた。その理不尽さに時にくるしみながらも、それでも、人はそれぞれの天地のなかで、可憐にその一生を紡ぎつづけてもきた・・」

    職員健診にむかう神戸電鉄のなかで、あふれくる涙に戸惑いながら、読みすすみました。

    クリスマスまでに、多くの人が読まれたらいいですね。

                           2010年12月11日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏