カンガルーの小部屋

  • 2018.03.21

    カンガルーの本棚 鍵となる言葉は

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    橋本健二先生の「新・日本の階級社会」(講談社現代新書)を、読みました。

    先生は、格差社会から、格差が固定化されている階級社会に変わったと、

    論を進められます。

    2016年に首都圏で行われた次の4つの質問から、

    ①日本では以前と比べ、貧困層が増えている

    ②いまの日本では収入の格差が大きすぎる

    ③貧困になったのは努力しなかったからだ

    ④努力しさえすれば、誰でも豊かになることができる

    社会の格差や自己責任に対する意識を、階級ごとに分類されます。

    格差については、20~30%の人がそう思わない

    自己責任については、35~40%の人が、

    貧困は自己責任の結果だと答えています。

    この二つの視点を結びつけると、次のような言葉が浮かび上がってきます。

    ①お金持ちは、努力をしたからだ

    ②貧困層は、努力が足りなかったからだ

    橋本先生は、自己責任という言葉に、鋭く迫られます。

    ①超お金持ちは、親からの資産を引き継ぎ、努力しなくてもお金持ちでいられる

    ②努力しても、病気や天災などの不幸で、貧困層に転落していく

    多くの人の心の中にある

    努力をすれば、結果はついてくる

    あいつは、努力しないからヘマばっかりしているという、自然な気持ちが、

    貧困層への無理解と、自己責任論を生み出していると言われます。

    努力しなくてもお金持ちのままでいられる、反対に努力をしても報われない

    理不尽さに、目を向けさせてくれる 良書です。

         2018年3月21日

         いたやどクリニック 木村彰宏