2010.04.11
カンガルー目線 父が植えた桜
大阪の父の元に、ご機嫌伺いに出かけました。
一人暮らしを始めて、もうすぐ1年になります。
ご近所の方に助けられながらの1年です。
家々の間を縫うように流れる小さな川岸の桜並木を見に行きました。
町内会の役員をしていた父が、川岸を市一番の桜並木にしようと、ご近所の方と一緒に植え始めたとのことです。
昭和53年と言いますから、30年ほど昔のことです。
わたしが大学を卒業し、実家にあまり帰らなくなった頃でしょうか。
時は過ぎ、桜の樹を植えられた方の中で、存命しているのは父だけになりました。
車椅子に乗りながら、「ここは3本植えたけど、1本しか育たなかった。」「ここの木は、枯れてしもたので、切ってしもうた。」と、川沿いの地面を杖でさしては解説を加えます。
小さな広場では、ご近所さんがバーベキューをしながら、花見の宴の真っ最中です。
軍人として生きてきた父に、桜の樹を植え続ける、そんな風流な一面があったとは意外に思いました。
神戸に戻ると、ご近所の桜の花も満開です。
ひとつ一つの樹には、父と同じように願いを託して植えた人があり、春になると咲くのを楽しみにしている人があることを、桜の樹は教えてくれました。
子どもはみな、ひとりで大きくなったような顔をするものですが、桜の樹は植えられ育てられたことを感謝しているように揺れていました。
2010年4月11日