カンガルーの小部屋

2010.02.03

聴診器のむこうに ワニいる?

「先生、ワニ いる?」と、診察室に入ってくるなり5才の男の子が尋ねます。

4才の時に、初めて診察をした時、とても嫌がりおかあさんのお膝からのけぞって逃げようとするので、「ワニがいるよっ。引き出しの中で悪い子を待ってるからね。」と、少し脅かしました。そして見えないように片足を使って机をカタカタと揺らしました。その子はとても驚いて身を固くして、「ワニがいる!」っと、素直に診察に応じてくれました。

それ以来、診察に入ってくると決まって「先生、ワニ、いる?」と尋ねます。

「今日はいい子にしているみたいだから、ワニさんはガブリしません。」とか、「ワニさんはお昼寝中です。」とか、いろいろと理由を考えます。

今日もまた、「先生、ワニ、いる?」と尋ねられました。

そこで考えて、「ワニさんは出張中です。節分が近いから、オニさんに会いにいきました。」と話ました。「なんで?」ときくので、「悪い子がいたら、オニさんに頼んで、代わりに噛んでもらおうとお話しにいきました。」と続けます。「なんでオニなの?」となおも追及しますので、「ワニ、オニ、ワニ、オニ 似てるでしょ。ワニさんとオニさんとはお友だちなんですよ。」と必死でかわしました。

冗談を本気で受けとめて、怖がってくれる素直さをありがたく思います。ただこのお話しの先を、どこに着陸させようかと少し心配にもなっています。

                       2010年2月3日

                       いたやどクリニック小児科 木村彰宏