カンガルーの小部屋

2011.08.28

カンガルーの本棚 小夜心星(さよしんぼし)

高田郁さんの「みをつくし料理帖」(小夜しぐれ・心星ひとつ:ハルキ文庫)を読みました。

何を食べてもおいしいと感じる私ですが、さすがにこの暑さだけはいけません。

たまに見るテレビのグルメ番組は、リポーターの薄っぺらな表現に、興ざめします。

音と映像とで見せるテレビでさえ、料理そのものを伝える事は難しいことです。

まして小説は、絵もなければ、音もありません。

高田さんの小説からは、料理の香や温かさまでが伝わってくるのが不思議です。

「お前さんの料理は食べる者を元気にしてくれる。喜びの少ない年寄りに、生きていてよかった、と思わせてくれるからね」

「ここで旨い料理を口にすると、それだけで俺あ息がつけるんだ。まだ大丈夫だ、生きていける、ってな。」

小説の中の江戸っ子だけではなく、読者の心までを温かく満腹にしてくれる一冊です。

2011年8月28日

いたやどクリニック小児科 木村 彰宏