カンガルーの小部屋

2012.01.03

カンガルーの本棚 新春も長英さんから

佐藤昌介さんの「高野長英」(岩波新書)を、読みました。

本著は、高野長英が、政治犯として収監される前後の、思想的遍歴に焦点を当てて描かれています。

純粋に医学的な研究心から、蘭学に傾倒し、その語学力を買われて「渡辺崋山」に出会います。

やがて、崋山の影響を受けて、国防論にも興味をいだき、「夢物語」を記します。

幕府の権力闘争の中で、「夢物語」が反政府的と断じられ、「永牢」の刑を受けます。

脱獄後の逃亡生活の中で、西洋兵書の翻訳を重ねるうちに、封建社会に対し、対決姿勢を強めていきます。

本書は1997年に発刊されましたが、1984年に吉村昭氏により書かれた「長英逃亡」と対比して読み進めると、長英の人物像がより鮮明にイメージする事ができます。

3月の前進座のお芝居が、またひとつ楽しみになりました。

2012年1月3日

いたやどクリニック小児科 木村 彰宏