カンガルーの小部屋

 カテゴリー 一覧

  • 2010.06.28

    かんがるう目線 68回総代会

    6月27日(日)、神戸医療生協の第68回目の総代会が開かれました。

    250人の総代さんが集まられて、決算、予算案、そしてこの一年の活動方針を話し合います。

    神戸駅から会場に向かう途中、見なれた顔を発見。

    参加者の会場までの誘導役に、事務長さんが立ち番です。

    裏方さん、ご苦労さまです。

    今回印象に残ったことは、消費税についての報告です。

    神戸医療生協がこの一年間に払っている消費税相当分は7000万円。

    今の消費税5%が、選挙で論議されているように10%になると、さらに7000万円の税負担が増えることになります。

    医療機関の収入は、診療報酬で決まっていますので、消費税が上がったからと言って診療報酬が上がるわけではありません。

    消費税が倍になると、来年度は単純に計算して、赤字に転落します。

    家計にも大きな負担が増えて、病院にかかられることができなくなると、本当に経営的には苦しくなります。

    患者さんはかかりにくいし、医療機関は経営が成り立たなくなる。

    そして、医療崩壊がまた進んでいく。

    福祉のための増税だと言われていますが、医療や福祉の足元が大きく掘り崩されていくような不安を感じる消費税増税には反対です。

                           2010年6月28日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.06.25

    カンガルー目線 笑顔のねむい朝

    「みるか みないか それが問題だ」

    それでも3時半すぎには、何かに起こされるかのように目が醒めました。

    サッカーワールドカップ、デンマーク戦。

    7月の講演会のスライド準備をしながら、観戦しました。

    3:1での勝利。

    日本中のサッカー少年。

    おめでとうございます。

    さあ、着替えて、お散歩に出かけることにしましょう。

                           2010年6月25日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.05.05

    かんがるう目線 こどもの日に寄せて

    こどもの日は、「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」ことを趣旨として、1948年公布・施行の祝日法によって制定されました。

    こどもの数は、年々少なくなってきています。

    2010年4月1日の統計では、1694万人(男の子868万人、女の子826万人)となっています。

    「こどもの人権を重んじ、こどもの幸福をはかる・・」とは、重い言葉です。

    人権について言えば、こどもはおとなの従属物であるという考え方が、この国には根強く残っています。

    ある時は、「しつけ」という言葉で、ある時は「あなたのためだから」という言葉で、おとなはこどもを意のままにしようとします。

    こどもの幸せについていえば、お金や住居など、こどもが育つハード面で改善が遅れています。

    でも、こどもはこどもと過ごす時間の中にこそ、おとなと過ごす時間の中にこそ、幸せを感じます。

    「こどもの人権を重んじ、こどもの幸福をはかる・・」

    こどもと時間を共有しながら、こども世代だけではなく、おとな世代の人権、幸福も考える一日でありたいと思います。

                           2010年5月5日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.05.01

    かんがるう目線 研修医の先生に 頭と手と目と心と口と足と

    4月の1か月間、研修医の先生に来ていただきました。

    今日は、いたやどクリニックでの研修の最後の一日です。

    お昼休みに、ささやかな送る会を開きました。

    職員ひとり一人のメッセージが書かれた熊のぬいぐるみを送りました。

    誰かに何かを伝えることは、伝える側の勉強です。

    相手のためではなく、自分の修行のためです。

    夜に開かれた送別会では、院長としてのメッセージを送りました。

    何を研修するのか。

    頭と、手と、心と口と、医師としての研修は、その4つが必要だと思います。

    頭は、学問です。

    最新の医学知識を吸収する努力をあきらめないこと。

    学会や研究会に時間が許す限り出席してください。

    医学のことだけでなく、世の中の動きにも敏感であってください。

    手は、技術です。

    患者さんの苦痛を最小限にするためには技術が必要です。

    自分の手先を磨くことも忘れないでください。

    目は、真実を見抜く力です。

    権威やしがらみに惑わされず、何が患者さんにとっての益なのかの視点を曇らせないでください。

    心は、共感力です。

    医師という仕事は誰のためにあるのかという命題を、一生考え続けてください。

    自分が中心となってすべきこと、まわりの人の助けを求めなければならないこと、

    患者さん目線を忘れずに、謙虚な医師であり続けてください。

    口は、説得力です。

    自分を伝えるための口は要りません。

    患者さんの悩みや想いを代弁するためには説得力がいります。

    人前で話すことをいとわないこと。人前に自分の文章をさらすことをいとわないこと。

    その中でこそ、説得力は磨かれます。

    最後に足は、行動です。

    社会の理不尽さに出会ったときには、それを変えようとする気力を持ち続けてください。

    はじめの一歩を踏み出す壁を、乗り憩えてください。

    頭と手と目と心と口と足と・・

    いつか先輩たちを乗り越えた先生に出会えることを、とても楽しみにしています。

    いたやどクリニックに研修に来てくださり、本当にありがとうございました。

                           2010年4月30日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.04.24

    かんがるう目線 むずかしいことを

    先日亡くなられた井上ひさしさんの名言が、新聞のコラムに紹介されていました。

    「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに」

    劇作家として活躍された井上やすしさんの神髄を、この言葉に感じました。

    わたしも、アレルギーの講演をさせていただくときに、難しいことはやさしくと、心がけているのですが、本当によく理解していないと、難しいことは何時までたっても、難しいままです。

    井上ひさしさんの「つめあか」限定セットが売り出されたら、真っ先に購入しようと思っています。

                           2010年4月24日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.04.22

    かんがるう目線 ある免疫学者の死

    新聞の訃報欄で、多田富雄先生が4月21日に亡くなられたことを知りました。

    多田先生は、免疫学者、エッセイストとして知られています。

    15年ほど前、神戸で講演をお聞きしたときに、「世の中には、なんというすごい先生がおられるのだろう。」と、身体がふるえるような感動を覚えました。

    さっそく先生の著書「免疫の意味論」(青土社 1993年発行)を買い求め、何回も読み直しました。

    それまでも、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎の診療を行っていましたが、今から見れば我流での模索の日々を過ごしていたように思います。

    多田先生には、その道のトップの理論を傾聴することで自分の考えを見つめ直すという、学問の原点を教えていただきました。

    こころからご冥福をお祈りいたします。

                           2010年4月22日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.04.11

    カンガルー目線 父が植えた桜

    大阪の父の元に、ご機嫌伺いに出かけました。

    一人暮らしを始めて、もうすぐ1年になります。

    ご近所の方に助けられながらの1年です。

    家々の間を縫うように流れる小さな川岸の桜並木を見に行きました。

    町内会の役員をしていた父が、川岸を市一番の桜並木にしようと、ご近所の方と一緒に植え始めたとのことです。

    昭和53年と言いますから、30年ほど昔のことです。

    わたしが大学を卒業し、実家にあまり帰らなくなった頃でしょうか。

    時は過ぎ、桜の樹を植えられた方の中で、存命しているのは父だけになりました。

    車椅子に乗りながら、「ここは3本植えたけど、1本しか育たなかった。」「ここの木は、枯れてしもたので、切ってしもうた。」と、川沿いの地面を杖でさしては解説を加えます。

    小さな広場では、ご近所さんがバーベキューをしながら、花見の宴の真っ最中です。

    軍人として生きてきた父に、桜の樹を植え続ける、そんな風流な一面があったとは意外に思いました。

    神戸に戻ると、ご近所の桜の花も満開です。

    ひとつ一つの樹には、父と同じように願いを託して植えた人があり、春になると咲くのを楽しみにしている人があることを、桜の樹は教えてくれました。

    子どもはみな、ひとりで大きくなったような顔をするものですが、桜の樹は植えられ育てられたことを感謝しているように揺れていました。

                           2010年4月11日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.03.24

    カンガルー目線 ご卒業おめでとうございます

    細やかな雨が降っています。

    テレビでは2月中旬から3月上旬の気温になるとのこと。

    市内では、今日、小学校の卒業式を迎えます。

    おとうさん、おかあさんは、お仕事のお休みをされたでしょうか。

    おかあさんは、いつもより念入りのお化粧をされ、いつもよりおしゃれな服に袖をとおされます。

    背が伸び始めたばかりの男の子は、「卒業式っ。そんなのいつもどおりのことさ」と、少しおとなぶっているのでしょうか。

    髪型が気になりだした女の子は、お友だちとどんな約束をしようかと、想いをめぐらしているのでしょうか。

    それぞれが、それぞれの想いをいだきながら、卒業式の朝を迎えます。

    外は細やかな雨が降っています。

    君たち、あなたたちの人生の歩みの中で、この雨の日の卒業式が、忘れることのできない一日となりますように。

    ご卒業、おめでとうございます。

                           2010年3月24日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏 

  • 2010.03.09

    カンガルー目線 医師の元気な素

    先日ご紹介しました、堤未果さんの「ルポ貧困大国アメリカⅡ」の中で、ご紹介したい一節があります。

    著作権の問題がありますので、あくまでも堤さんの本の一節を抜き出させていただいたと言うことをご了承ください。(p153~154)

    「すべてを数字で測り、利益と効率至上主義が医療現場から奪ったものは、目にみえるものばかりではありません。」

    「今のシステムが奪った、目に見えないものとはたとえば何ですか?」

    「患者と医師の間のつながりや、医師のなかに存在するはずの誇り、充実感などです。第三世界の医師がなぜ、同じように労働時間が長くても心が壊れないのか、わかりますか?患者と医師の間に人間同士の触れ合いがあるからです。間に医療保険会社という株主が介在しない世界では、患者は医師を人として信頼し、医師は患者との交流を通して、命を救っているという充実感と誇りを受け取るのです。これは数字では測れない、けれど人間が日々生きていくためには失ってはならないものの一つです」

    堤さんとデイビッド・ワーナー氏の対話には、医師と患者さんとの関係についての深い洞察力を感じます。

    医学の進歩とは、医科学のレベルや医療技術の面で最高の峰への挑戦が行える環境を作ること。そして獲得された最高の到達点を、できる限り多くの人が当たり前に利用できるようにシステムを作っていくこと。

    この二つの挑戦の中にこそ、医師と患者さんとの信頼と絆がより一層強くなる秘密がかくされ、それが医師の元気の素になっていくのだと確信しました。

                           2010年3月9日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.02.24

    おおきな土鍋

    午前の診察が終わり、疲れたときには、お昼休みのご飯をパスしてその時間をお昼寝にあてようかと思うときがあります。

    でも、ご飯を食べないと、午後からの診察が持ちません。

    今日は、かかりつけの定食屋さん「あじくら」に、迷いながらも足を運びました。

    今日の定食メニューは、サンマの焼いたのと、カキフライと、鶏の炒めたもの。おなかに重い気がして、もう一つ気乗りがしません。その旨を告げますと、特性のおじやを作ってくださいました。

    両方の手のひらよりもおおきな土鍋に、いっぱいのおじや。

    「どうぞ、お食べ」と勧められても、見ただけで、とてもおなかに収まりそうにもありません。

    食べ進むうちに、からだが温かくなり完食。

    おかげで午後からの診察の元気が生まれ、大感謝です。

    いたやどクリニック小児科の元気の素は、「あじくら」のママですよ。

                           2010年2月24日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.02.21

    かんがるう目線 臨床美術

    起きぬけの頭で、おもしろいテレビ番組を見ました。

    「カラダのキモチ」という番組です。

    今日のテーマは、臨床美術。上手な絵を書く技法ではありません。脳の司令塔と言われる前頭前野を活性化させる美術です。

    通常、わたし達がリンゴや、とら、家、月、星を書くときには、その特徴を象徴化した記号として書いているとのことです。この書き方では、前頭前野は殆ど活性化されません。

    臨床美術では、リンゴの香り、味、質感を感じ取ります。つぼみから、実になり大きく育っていく過程を想像します。そして、それを絵で表現します。それがしっかりと脳を使うと言うことだとのこと。

    「ネガポジ画」という手法にも、ふれられていました。

    ものを描くときに、その形ではなく、ものが占有している周囲の空間の形から描いていく、

    発想の転換です。とてもおもしろい考え方だと思いました。

    相手の気持ちになって考える、今までと反対の立場から世の中を見てみる。これはなにも臨床美術の世界に限ったことではありません。

    おさんぽで、ハッちゃんにおやつをあげるシーンを「ネガポジ」発想で書いてみましょうか。

    「今日は道路が凍っていて、肉珠が冷たいなっ。でも、公園の草のところは、だんだんと柔らかくなってきたかな。あれ、おかあさんが、袋をごそごそとしだしたぞ。お菓子かな。ササミのにおいだ。やった!おやつだ!おやつだ!あれっ、なぜくれないんだろ。そうか、お座りしなくっちゃ。おかあさん、見て、見て。僕お座りしているよ。はやく、ちょうだい、ちょうだい・・」やっぱりイヌものの文章ではパターン化しすぎて、脳の活性化は今ひとつですね。

    記号化しない考え方、今までの自分の経験にとらわれすぎない考え方。

    そんな毎日が過ごせると、素敵だなと思いました。

                           2010年2月21日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.02.20

    かんがるう目線 大切な先生

    高橋選手の活躍から一夜明けた朝刊一面のコラム記事に、こころを奪われました。

    「イタリア映画「道」の音楽「ジェルソミーナ」を少し聴いただけで、もう涙目にかわる友人がいます。哀調をおびた不滅の旋律が、映画の記憶を掘り起こします。・・中略・・ 

    映画は、うわべのつくろいをはぎ取った人間存在の、裸の姿を描いているようにみえます。そして「ジェルソミーナ」の曲には、かなしみとともに、人間のよりよい再生への希望が込められているようです。

    人はしばしば、「ジェルソミーナ」の曲にみずからの人生の「道」を重ね合わせます。「氷上の芸術家」と評される、フィギアスケートの高橋大輔選手は、バンクーバー・オリンピックの演技の曲に、映画「道」の音楽を選びました。・・中略・・

    バンクーバーまでの道のりは、険しかったでしょう。選手生命を奪われかねないけがを体験しました。不調にも苦しみました。しかし、万感こもる滑りが、表現力のゆたかさを際たたせたようです。・・後略・・」(2月20日付潮流より)

    映画音楽に詳しくないわたしには、なぜジェルソミーナなのかなと、不思議に思いました。

    コラムを読みすすむうちに、作者は、ジェルソミーナの曲に重ね合わせて、高橋選手の滑りの中に、「人間のよりよい再生への希望」を感じ取ったのでしょう。

    限られた紙面のなかに、作者の深い人間性を感じます。

    朝刊のコラム、そして、4こまマンガは、わたしの大切な先生です。

                           2010年2月20日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.02.20

    かんがるう目線 もう一つのメダル

    「先生、男子フィギアがはじまってますよ。」午前の外来を終えたその時に、看護師さんが声をかけてくれます。

    お昼休み時ということもあり、待合室のテレビ前は、患者さんと職員とで満員。

    いよいよ高橋大輔選手の登場。4回転ジャンプを跳ぶのかどうかに注目が集まります。

    前日の番組で、松岡修造さんが、「4回転ジャンプを跳ぶかどうかは、こころの声に聞け」と解説されていたことを思い出します。

    序盤の4回転ジャンプはうまくいきません。思わず両手で顔を覆ってしまいました。しかし、その後の演技は、手の動き、足の運び、顔の表情、そのひとつ一つに楽しさと美しさが満ちあふれていました。

    他の誰のためでもなく、自分のために、この瞬間を楽しんでいるかのようです。

    見ているわたしのこころも、幸せな気持ちが伝わります。

    もう一つのメダル。大きな怪我の中から再起を誓い、強く高く保ち続けた「こころの声」。

    人間が持つ力の奥深さの中に、もう一つのメダルがかくされているのを感じました。

                         2010年2月20日

                         いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.01.23

    かんがるう目線 やったね 明石市

    昨朝のミーティングで、看護師長が「子宮頚がんの予防ワクチン、明石市で公費負担になるのよ」と教えてくれました。

    子宮頚がんは、毎年1万人以上がかかり、約3500人が亡くなるといいます。

    子宮頚がんの99%は、ヒト・パピローマ・ウィルスの感染が原因とされます。

    12月22日に発売されたワクチン「サーバリックス」はこのうち、60~70%の子宮頚がんウィルスの予防に効果があるとされています。

    ただこのワクチンは、3回打って初めて十分な免疫ができるのですが、3回接種で4万円~6万円かかります。今は、全額自己負担です。

    この自己負担額の高さのために、なかなかお勧めできないでいました。

    1月22日の神戸新聞によると、「明石市在住の小6~中3の女子が対象で、事業費8080万円を2010年度予算案に計上する。助成は県内の自治体で初めてという。対象者は指定の医療機関で無料で受けられる。」と報道されています。

    年初の小児科の集まりで、Hibワクチンやサーバリックスワクチンが話題になり、「公的助成が進むよう、小児科医師もしっかりと社会的な発言をしていきましょう」というお話しをした所でしたので、今回の明石市の決断は本当にうれしく思いました。

    明石市だけでなく、神戸市などいろいろな自治体で同様の動きが起きることを、強く期待します。

                           2010年1月23日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

3/3