カンガルーの小部屋

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  • 2024.10.11

    カンガルーの本棚 遊園地の魔女

    寺地はるなさんの「ほたるいしマジカルランド」(ポプラ文庫)を読みました。

    舞台は、大阪にある遊園地「マジカルランド」

    悩みを抱えながら、そこで働く人の毎日の生活をコミカルにえがきます。

    それぞれが不器用で、他所では働けそうにない人ばかり。

    遊園地の魔女は、そんな彼らに輝ける場所を見つけ、励まします。

    人を幸せにする魔女には、カンガルーは成れそうにもありません。

    2024年10月11日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.10.05

    カンガルーの本棚 鏡に写して

    椰月美智子さんの「ミラーワールド」(角川文庫)を読みました。

    その世界は、女性が権力を握り、男は家庭に入り女性を支えます。

    政治家も、企業の役員もみな女性

    男性に対するセクハラが、公然と行われています。

    その世界にあっても、女男平等の声をあげる人たち

    少しずつ少しずつ、その声が届き始めます。

    男という言葉を女に、女という文字を男に変えるだけで、

    違って見えるこの世界。

    わたしたちの心の奥底に、知らないままに沈殿している、男女不平等の価値観を

    一気に洗い出してくれる1冊です。

    2024年10月5日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.10.02

    カンガルーの本棚 風呂敷を巻いたネコ

    重松清さんの「さすらい猫ノアの伝説」(講談社文庫)を読みました。

    風呂敷を首に巻いた黒猫「ノア」の二つのお話し。

    ひとつ目は、新人の先生を守ろうとする子どもたちのお話し

    二つ目は、転校を繰り返す少女の、出会いと別れのお話しです。

    「忘れものはなんですか。大切なものはなんですか」

    風呂敷にネコと一緒に入っていた、紙が問いかける謎

    その謎を問い続けることで、子どもたちは少し大人に育っていきます。

    いつまでも心に残る、重松清さんの作品です。

    2024年10月2日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.09.28

    カンガルーの本棚 半身で働こう

    三宅香帆さんの「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」(集英社新書)を読みました。

    働いていると時間が無くなるので、本が読めなくなるって、そんなのあたりまえ

    そう思って読み進めると、読書を軸に書かれた社会論であることに気づきました。

    その時代その時代に何をもって本は読まれたのか

    そしてSNS全盛の時代に、なぜ本は読まれなくなったのか

    作者は自由時間の制約とともに、

    必要な情報だけを最短、最小の時間で取り入れる文化の限界を指摘されます。

    人とつながるために、情報だけでなく

    ノイズ(歴史や他作品の文脈、想定していない展開)をいとわないを受け入れる余裕

    そのためには、半身で働く大切さを強調されます。

    自分と趣味の合う読書アカウントをSNSでフォローする

    帰宅途中のカフェ読書を習慣にする

    書店に行く

    今まで読まなかったジャンルに手を出す

    無理をしない

    新聞の書評にこの本の奥深さに触れられていたのを思い出し、手に取った一冊。

    読書を通じて人生の過ごし方を教えてくれる新書です。

    2024年9月28日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.09.12

    カンガルーの本棚 公の考えは

    宮地美陽子さんの「首都防衛」(講談社現代新書)を読みました。

    テーマはズバリ、巨大地震発生後の東京の生き残り方

    南海トラフ地震、首都直下型地震、そして富士山の噴火

    その時、どのような被害が予測され、

    国や東京都などの行政は、どのように対応するのか

    また、今どのような準備が行われているのかが書かれています。

    物足りなさは、個人の準備をどのようにするのか

    大地震発生時「場所別行動リスト」が載せられていますが

    もう少しページを割いて、提言してほしかったかな

    今後も、同趣旨の震災関連の本が出版されるでしょうから、

    その時にフォローするということで、この本を閉じました。

    2024年9月12日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.09.08

    カンガルーの本棚 多くの人に知ってもらいたいと

    椰月美智子さんの「昔はおれと同い年だった田中さんとの友情」(双葉文庫)を読みました。

    そう、先日ご紹介したNHKドラマの原作本です。

    ドラマが終り、楽天ブックスで原作本を探しましたが見つからず

    翌朝一番に、いたやど駅前の本屋さんに駆け込むと、

    「おいてありますよ」の一声

    手に取って、お昼休みに読みました。

    ドラマとは違う伝わり方に、改めて戦争の悲惨さと、

    戦争は起こしてはならないという気持ちが強くなりました。

    児童小説の域を超えた、国民的名作にこの夏出会うことができました。

    2024年9月8日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.09.02

    カンガルーの本棚 まずは外見から

    山本甲士さんの「わらの人」(文春文庫)を読みました。

    街中にある散髪屋さんの女性の店長は、ひとりでお店を切り盛りしています。

    あまりにも心地よいマッサージに、心と体をゆだねていると、

    耳もとで、なにやらボソボソと声がします。

    夢心地の中で、適当に相槌を打ち、

    目覚めて鏡に映る姿を目にすると、

    そこには、まるで別人の姿が座っています。

    パワハラに負けそうになっている女性の事務員

    建設会社の不正行為に憤りながら、事故で記憶喪失に陥ってしまった男性

    就活がうまくいかず、実家の家業を継いでみようかと悩んでいる女子大生

    会長の孫のパワハラに、心が折れそうになっている男性

    街を夕顔で飾ろうと奮闘する、おじいちゃんと孫

    だれもが散髪屋さんで知らぬ間にイメージチェンジをされ、

    勇気をもって自分の人生を切り開いていく

    痛快で、大きな教訓をいただけた一冊です。

    2024年9月2日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.08.29

    カンガルーの本棚 持ってるのか、いないのか

    山本甲士さんの「海獣ダンス」(小学館文庫)を読みました。

    主人公は、町役場で働く青年です。

    東京の大企業を退職し、地元の街に帰ってきた男性が出会うのは

    海辺を泳ぐ、謎の海洋生物

    町おこしに躍起になる町長のもと、いろいろな企画を立ち上げ

    そして、口にできない秘密を知ってしまいます。

    平凡な人生を過ごそうとする青年が、

    もしかして、持ってる人だったりしてと、

    ありそうで、なさそな楽しい一冊です。

    2024年8月29日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.08.22

    カンガルーの本棚 富士山のことも知っておこうか

    鎌田浩毅先生の「富士山噴火と南海トラフ」(講談社ブルーバックス)を読みました。

    日向沖地震の後に出された、「南海トラフ巨大地震注意」

    防災グッズを求めて、ホームセンター巡りをすると、

    防災グッズコーナーの棚は、ほとんどが空の状態です。

    鎌田先生は、巨大地震の後にやってくる「富士山噴火」への警鐘を鳴らされます。

    火山流、溶岩流、火山弾、火砕流、そして泥流

    噴火後に続く災害は、この国を分断します。

    情報網が混乱し、流通がとまり、移動が難しくなる

    そんな時代が来ないことを願うばかりですが、

    まずは知識を身につけて、備えを確かめる。

    本書は、マスコミでは取り上げない、

    巨大地震後のもう一つの危機を伝えてくれます

    2024年8月22日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.08.18

    カンガルーの本棚 十手をふところに

    宮部みゆきさんの「初ものがたり完本」(PHP文芸文庫)を読みました。

    本所深川あたりを預かる岡っ引き親分が出くわす、9つの人情物語。

    殺しの謎解きから、大店のうちわもめ

    人を手にかけ、行方をくらまし、

    その裏にある、悲しい暮らし

    やりきれない気持ちの親分が足を運ぶのは、

    意味ありの屋台の親父の元

    大江戸の夜は、静かにふけていきます。

    2024年8月18日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.08.01

    カンガルーの本棚 出会いと別れと

    高橋由太さんの「ちびねこ亭の思い出ごはん2」(光文社文庫)を読みました。

    今回登場するニャンコは、黒猫、ハチワレ猫、ソラ猫、三毛猫のみなさんです。

    恋人と会うために、母と会うために

    今日も 思い出ごはんを食べに、

    海辺の小さな食堂のドアが開きます。

    会いたい人と会うことで、

    その人が抱えている悲しみが、すこし溶けだしていくようです。

    通勤電車の中で、お昼休みの時間に、するりと読める一冊です。

    2024年8月1日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.07.30

    カンガルーの本棚 やさぐれた芯の強さ

    伊集院静さんの「あづま橋」(講談社文庫)を読みました。

    5つのお話しの主人公は、みな訳ありの女性

    足音だけでその人がわかるホームレス

    バーのカウンターで居眠りをする女

    自分の過去を、娘には話せない母

    幸せな人生を歩んでこなかった女性たちが、

    それでも決して失わない矜持

    作者は、そんな女性を静かに見守ります。

    2024年7月30日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.07.11

    カンガルーの本棚 瀬戸内の島で

    伊集院静さんの「機関車先生」(講談社文庫)を読みました。

    瀬戸内に浮かぶ小島の小学校に、ひとりの先生が赴任します。

    あだ名は、機関車先生

    優しくて、力強く、そして幼いころの病気で声を失ったせんせいを待ち受けていたのは

    避けることができない島人の暮らしの、きびしい現実。

    心の言葉で子どもたちの哀しみを受け止める機関車先生。

    おとなになった時の子どもたちの胸に、機関車先生が走り続けることを願います。

    はじめて触れる伊集院作品は、最高でした。

    2024年7月11日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.07.08

    カンガルーの本棚 とりえのないところが

    西條奈加さんの「婿どの相逢席」(幻冬舎文庫)を読みました。

    主人公の鈴之助は、大きな料理屋の後継ぎ娘と夫婦になることになります。

    知恵も力も外見も、なんのとりえもない男が娘に見初められ

    大店に玉の輿で入ったものの、

    そこで待ち受けていた秘密とは

    人を包み込む主人公の性格が、家族を再生へと導いていきます。

    読み終えてほっこりとする作品です。

    2024年7月8日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.07.06

    カンガルーの本棚 あるアレルギー専門医の生き方

    眞田幸昭先生の「アレルギーと上手につきあうためのヒント」(三省堂書店)を読みました。

    眞田先生は、アレルギー専門医として、

    地域のお医者さんとして活躍されてきました。

    その間に書き溜められた書簡をまとめられ、このほど上梓されました。

    アレルギーの話だけでなく、音楽や山歩きなどの趣味のお話し

    そして、なによりも「すべての差別に対峙する」という生き方が書かれています。

    先輩として、ひとりの臨床医として、素晴らしい人生を歩んでこられました。

    この本が、多くの方の目にとまるよう願います。

    2024年7月6日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.06.29

    カンガルーの本棚 ネコの手を

    高橋由太さんの「ちびねこ亭の思い出ごはん」(光文社文庫)を読みました。

    岬にある小さな食堂で出されるご飯を食べると、亡くなった人に会えるという

    交通事故で兄を亡くした女性、

    ほのかな思いを寄せる女子に、心ない言葉を投げかけたまま別れた小学生

    それぞれの思いを、思い出ご飯が救います。

    あなたは、誰と思い出のご飯を食べようと思いますか。

    2024年6月29日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.06.27

    カンガルーの本棚 見知らぬ手紙

    森沢明夫さんの「水曜日の手紙」(角川文庫)を読みました。

    水曜日に書いた手紙を送ると、見知らぬ誰かにその手紙が届き、

    別の見知らぬ誰かからの手紙が戻ってくるという

    主人公は、子育てとバイトに明け暮れる毎日に疲れ切った女性

    そして絵本作家になるという夢を捨て、会社勤めを続ける中年男性

    友の暮らしをうらやみ、内向きに内向きに自分を否定する毎日

    ふとしたことから知った水曜日の手紙に、自分の夢や悩みを託し

    少しずつ人生が変わり始めます。

    生きる強さと暖かさに満ちた作品です。

    2024年6月27日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.06.19

    カンガルーの本棚 こころで泣いて

    重松清さんの「かぞえきれない星の、その次の星」(角川文庫)を読みました。

    笑顔の奥にある悲しみを描いて11の短いお話

    「送り火のあとで」と題された短編は、

    病気で母をなくし、新しい母を迎えた姉と弟の物語

    亡き母の精霊を迎え送るお盆の送り火に、家族の悲しみがひろがり、

    そして希望の残り火が、灯り続けます。

    2024年6月19日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.06.15

    カンガルーの本棚 貧しさのゆえに

    桐野夏生さんの「燕は戻ってこない」(集英社文庫)を読みました。

    北の果て、北海道は北見市から東京に出てきた主人公は、

    正規職員の職を得ることができず、

    10円、20円を節約して食べるだけの生活に疲れ果てます。

    思い余って手をだしたのが、「代理母」の契約

    悩み、苦しみ、そして生まれた双子を前に出した答えとは

    NHK連続ドラマに魅せられて手に取った、問題作です

    2024年6月15日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.06.10

    カンガルーの本棚 川を渡るとき

    西條奈加さんの「三途の川の落しもの」(幻冬舎文庫)を読みました。

    小学校6年生の少年は、自分の体から魂が抜け出ていく体験をします。

    歩き続けて着いたところは、三途の川の河原。

    現世への未練を残した人の訳を探しに、現生に戻る旅を続けるうちに、

    少年は、自分の身に起きた出来事を思い出していきます。

    不思議な、そして温かな物語です。

    2024年6月10日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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