カンガルーの小部屋

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  • 2024.11.16

    カンガルーの本棚 ひとりの男の生き方

    遠田潤子さんの「雨の中の涙のように」(光文社文庫)を読みました。

    アイドルから役者に転身し、年代を問わずに人気を博する青年、葉介

    彼と出会う様々な年代の、そして住む土地の人々が織りなす物語

    葉介に秘められた過去とは

    その謎が、次第に明らかになっていきます。

    華やかな芸能界で生きるひとりの男の生き方を描いた、胸にしみる作品です。

    2024年11月16日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.10.31

    カンガルーの本棚 クラスの一人ひとり

    森絵都さんの「クラスメイツ前期・後期」(角川文庫)を読みました。

    中学1年A組の24人の生徒たち

    目立つ生徒、控えめな生徒 その一人ひとりの生徒が主人公の物語です。

    おとなになっていく道筋を、おそれながら、悩みながら

    それぞれが、言葉にしたり、行動であらわしたりして 歩いていきます。

    カンガルーが過ごした青春も、視点を変えればいろいろな見え方があるんだなと、

    ちょっぴり感傷的になりました。

    子どもの心の奥底を描く、名作です。

    2024年10月31日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.10.29

    カンガルーの本棚 甘すぎてささらない

    坂本司さんの「ショートケーキ」(文春文庫)を読みました。

    ショートケーキをめぐる、5つの短いお話しです。

    ママ友3人の奮闘を描く「ままならない」

    おいしいものを食べていても、頭の中は赤ちゃんのことでいっぱい

    そうなのかと納得するも、ショートケーキのお話と私の相性があいません。

    わたしが、ケーキにそれほど執着しないためなのかな。

    まっ、人それぞれに好みがあるのは、仕方ないことなのですね。

    2024年10月29日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.10.25

    カンガルーの本棚 下絵からの出会い

    青山美智子さんの「赤と青とエスキース」(PHP文芸文庫)を読みました。

    物語は、オーストラリアのメルボルンから始まります。

    留学先の大学や下宿にもなじめず、下を向いて歩く日々を過ごしていた女子大生レイは

    留学が終わるまでの期間限定で付き合いはじめたブーと呼ばれる男の子から、

    友人の貧しい画家の、モデルになってほしいと頼まれます。

    描かれたエスキースは、日本に渡り、ふたりを結び付けます。

    エスキースとは、フランス語で「下絵」や「素描」という意味ですが、

    ふたりの出会いと、その後の人生を表しているように思いました。

    一枚のエスキースがつなぐ、素敵な恋の物語です。

    2024年10月25日

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  • 2024.10.23

    カンガルーの本棚 ことばの魔法

    森絵都さんの「あしたのことば」(新潮文庫)を、読みました。

    お話しは、子どもがであう「ことばの」不思議

    「どっち」とたずねられ「どっちかなあ」「どっちもかなあ」と、

    すぐには答えが出せない小学生

    苦手な子とのつきあいに悩む女の子は、「馬があわへんだけや」ということばに救われます。

    友だちとうまくいかなくなり、長いメールを書く中で、

    その子も自分が口にしたことばに、縛られているのかもしれないと気づきます。

    大勢の中ではことばを交わさないクラスの子が、

    とても豊かな音への感性を持っていることに気づき、親しくなっていくお話や

    笑い転げるほど楽しい遊びをした後で、

    ともだちから「またあした」とことばをかけてもらい、

    この街で暮らす自信を持ち始める転校生

    どの子も、ほんのちいさな言葉に悩み、救われます。

    やさしい文体の中に、ことぼの魔法がたくさん詰まったおすすめの1冊です。

    2024年10月23日

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  • 2024.10.20

    カンガルーの本棚 下絵からの出会い

    青山美智子さんの「赤と青とエスキース」(PHP文芸文庫)を読みました。

    物語は、オーストラリアのメルボルンで始まります。

    留学先の大学や下宿にもなじめず、下を向いて歩く日々を過ごしていた女子大生レイは

    留学が終わるまでの期間限定で付き合いはじめたブーと呼ばれる男の子から、

    友人の貧しい画家の、モデルになってほしいと頼まれます。

    描かれたエスキースは、日本に渡り、ふたりを結び付けます。

    エスキースとは、フランス語で「下絵」や「素描」という意味ですが、

    ふたりの出会いと、その後の人生を表しているように思いました。

    一枚のエスキースがつなぐ、素敵な恋の物語です。

    2024年10月20日

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  • 2024.10.11

    カンガルーの本棚 遊園地の魔女

    寺地はるなさんの「ほたるいしマジカルランド」(ポプラ文庫)を読みました。

    舞台は、大阪にある遊園地「マジカルランド」

    悩みを抱えながら、そこで働く人の毎日の生活をコミカルにえがきます。

    それぞれが不器用で、他所では働けそうにない人ばかり。

    遊園地の魔女は、そんな彼らに輝ける場所を見つけ、励まします。

    人を幸せにする魔女には、カンガルーは成れそうにもありません。

    2024年10月11日

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  • 2024.10.05

    カンガルーの本棚 鏡に写して

    椰月美智子さんの「ミラーワールド」(角川文庫)を読みました。

    その世界は、女性が権力を握り、男は家庭に入り女性を支えます。

    政治家も、企業の役員もみな女性

    男性に対するセクハラが、公然と行われています。

    その世界にあっても、女男平等の声をあげる人たち

    少しずつ少しずつ、その声が届き始めます。

    男という言葉を女に、女という文字を男に変えるだけで、

    違って見えるこの世界。

    わたしたちの心の奥底に、知らないままに沈殿している、男女不平等の価値観を

    一気に洗い出してくれる1冊です。

    2024年10月5日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.10.02

    カンガルーの本棚 風呂敷を巻いたネコ

    重松清さんの「さすらい猫ノアの伝説」(講談社文庫)を読みました。

    風呂敷を首に巻いた黒猫「ノア」の二つのお話し。

    ひとつ目は、新人の先生を守ろうとする子どもたちのお話し

    二つ目は、転校を繰り返す少女の、出会いと別れのお話しです。

    「忘れものはなんですか。大切なものはなんですか」

    風呂敷にネコと一緒に入っていた、紙が問いかける謎

    その謎を問い続けることで、子どもたちは少し大人に育っていきます。

    いつまでも心に残る、重松清さんの作品です。

    2024年10月2日

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  • 2024.09.28

    カンガルーの本棚 半身で働こう

    三宅香帆さんの「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」(集英社新書)を読みました。

    働いていると時間が無くなるので、本が読めなくなるって、そんなのあたりまえ

    そう思って読み進めると、読書を軸に書かれた社会論であることに気づきました。

    その時代その時代に何をもって本は読まれたのか

    そしてSNS全盛の時代に、なぜ本は読まれなくなったのか

    作者は自由時間の制約とともに、

    必要な情報だけを最短、最小の時間で取り入れる文化の限界を指摘されます。

    人とつながるために、情報だけでなく

    ノイズ(歴史や他作品の文脈、想定していない展開)をいとわないを受け入れる余裕

    そのためには、半身で働く大切さを強調されます。

    自分と趣味の合う読書アカウントをSNSでフォローする

    帰宅途中のカフェ読書を習慣にする

    書店に行く

    今まで読まなかったジャンルに手を出す

    無理をしない

    新聞の書評にこの本の奥深さに触れられていたのを思い出し、手に取った一冊。

    読書を通じて人生の過ごし方を教えてくれる新書です。

    2024年9月28日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.09.12

    カンガルーの本棚 公の考えは

    宮地美陽子さんの「首都防衛」(講談社現代新書)を読みました。

    テーマはズバリ、巨大地震発生後の東京の生き残り方

    南海トラフ地震、首都直下型地震、そして富士山の噴火

    その時、どのような被害が予測され、

    国や東京都などの行政は、どのように対応するのか

    また、今どのような準備が行われているのかが書かれています。

    物足りなさは、個人の準備をどのようにするのか

    大地震発生時「場所別行動リスト」が載せられていますが

    もう少しページを割いて、提言してほしかったかな

    今後も、同趣旨の震災関連の本が出版されるでしょうから、

    その時にフォローするということで、この本を閉じました。

    2024年9月12日

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  • 2024.09.08

    カンガルーの本棚 多くの人に知ってもらいたいと

    椰月美智子さんの「昔はおれと同い年だった田中さんとの友情」(双葉文庫)を読みました。

    そう、先日ご紹介したNHKドラマの原作本です。

    ドラマが終り、楽天ブックスで原作本を探しましたが見つからず

    翌朝一番に、いたやど駅前の本屋さんに駆け込むと、

    「おいてありますよ」の一声

    手に取って、お昼休みに読みました。

    ドラマとは違う伝わり方に、改めて戦争の悲惨さと、

    戦争は起こしてはならないという気持ちが強くなりました。

    児童小説の域を超えた、国民的名作にこの夏出会うことができました。

    2024年9月8日

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  • 2024.09.02

    カンガルーの本棚 まずは外見から

    山本甲士さんの「わらの人」(文春文庫)を読みました。

    街中にある散髪屋さんの女性の店長は、ひとりでお店を切り盛りしています。

    あまりにも心地よいマッサージに、心と体をゆだねていると、

    耳もとで、なにやらボソボソと声がします。

    夢心地の中で、適当に相槌を打ち、

    目覚めて鏡に映る姿を目にすると、

    そこには、まるで別人の姿が座っています。

    パワハラに負けそうになっている女性の事務員

    建設会社の不正行為に憤りながら、事故で記憶喪失に陥ってしまった男性

    就活がうまくいかず、実家の家業を継いでみようかと悩んでいる女子大生

    会長の孫のパワハラに、心が折れそうになっている男性

    街を夕顔で飾ろうと奮闘する、おじいちゃんと孫

    だれもが散髪屋さんで知らぬ間にイメージチェンジをされ、

    勇気をもって自分の人生を切り開いていく

    痛快で、大きな教訓をいただけた一冊です。

    2024年9月2日

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  • 2024.08.29

    カンガルーの本棚 持ってるのか、いないのか

    山本甲士さんの「海獣ダンス」(小学館文庫)を読みました。

    主人公は、町役場で働く青年です。

    東京の大企業を退職し、地元の街に帰ってきた男性が出会うのは

    海辺を泳ぐ、謎の海洋生物

    町おこしに躍起になる町長のもと、いろいろな企画を立ち上げ

    そして、口にできない秘密を知ってしまいます。

    平凡な人生を過ごそうとする青年が、

    もしかして、持ってる人だったりしてと、

    ありそうで、なさそな楽しい一冊です。

    2024年8月29日

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  • 2024.08.22

    カンガルーの本棚 富士山のことも知っておこうか

    鎌田浩毅先生の「富士山噴火と南海トラフ」(講談社ブルーバックス)を読みました。

    日向沖地震の後に出された、「南海トラフ巨大地震注意」

    防災グッズを求めて、ホームセンター巡りをすると、

    防災グッズコーナーの棚は、ほとんどが空の状態です。

    鎌田先生は、巨大地震の後にやってくる「富士山噴火」への警鐘を鳴らされます。

    火山流、溶岩流、火山弾、火砕流、そして泥流

    噴火後に続く災害は、この国を分断します。

    情報網が混乱し、流通がとまり、移動が難しくなる

    そんな時代が来ないことを願うばかりですが、

    まずは知識を身につけて、備えを確かめる。

    本書は、マスコミでは取り上げない、

    巨大地震後のもう一つの危機を伝えてくれます

    2024年8月22日

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  • 2024.08.18

    カンガルーの本棚 十手をふところに

    宮部みゆきさんの「初ものがたり完本」(PHP文芸文庫)を読みました。

    本所深川あたりを預かる岡っ引き親分が出くわす、9つの人情物語。

    殺しの謎解きから、大店のうちわもめ

    人を手にかけ、行方をくらまし、

    その裏にある、悲しい暮らし

    やりきれない気持ちの親分が足を運ぶのは、

    意味ありの屋台の親父の元

    大江戸の夜は、静かにふけていきます。

    2024年8月18日

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  • 2024.08.01

    カンガルーの本棚 出会いと別れと

    高橋由太さんの「ちびねこ亭の思い出ごはん2」(光文社文庫)を読みました。

    今回登場するニャンコは、黒猫、ハチワレ猫、ソラ猫、三毛猫のみなさんです。

    恋人と会うために、母と会うために

    今日も 思い出ごはんを食べに、

    海辺の小さな食堂のドアが開きます。

    会いたい人と会うことで、

    その人が抱えている悲しみが、すこし溶けだしていくようです。

    通勤電車の中で、お昼休みの時間に、するりと読める一冊です。

    2024年8月1日

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  • 2024.07.30

    カンガルーの本棚 やさぐれた芯の強さ

    伊集院静さんの「あづま橋」(講談社文庫)を読みました。

    5つのお話しの主人公は、みな訳ありの女性

    足音だけでその人がわかるホームレス

    バーのカウンターで居眠りをする女

    自分の過去を、娘には話せない母

    幸せな人生を歩んでこなかった女性たちが、

    それでも決して失わない矜持

    作者は、そんな女性を静かに見守ります。

    2024年7月30日

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  • 2024.07.11

    カンガルーの本棚 瀬戸内の島で

    伊集院静さんの「機関車先生」(講談社文庫)を読みました。

    瀬戸内に浮かぶ小島の小学校に、ひとりの先生が赴任します。

    あだ名は、機関車先生

    優しくて、力強く、そして幼いころの病気で声を失ったせんせいを待ち受けていたのは

    避けることができない島人の暮らしの、きびしい現実。

    心の言葉で子どもたちの哀しみを受け止める機関車先生。

    おとなになった時の子どもたちの胸に、機関車先生が走り続けることを願います。

    はじめて触れる伊集院作品は、最高でした。

    2024年7月11日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.07.08

    カンガルーの本棚 とりえのないところが

    西條奈加さんの「婿どの相逢席」(幻冬舎文庫)を読みました。

    主人公の鈴之助は、大きな料理屋の後継ぎ娘と夫婦になることになります。

    知恵も力も外見も、なんのとりえもない男が娘に見初められ

    大店に玉の輿で入ったものの、

    そこで待ち受けていた秘密とは

    人を包み込む主人公の性格が、家族を再生へと導いていきます。

    読み終えてほっこりとする作品です。

    2024年7月8日

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