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2022.08.18
カンガルーの本棚 正義とは
西條奈加さんの「閻魔の世直し」(新潮文庫)を読みました。
大江戸で次々と起こる、裏社会の親玉の死
「閻魔組」と称する一味が、世直しを始めたとの瓦版がまかれます。
江戸と令和という時代は違えども、
正義の名に置いて他人を誅する人心は、おなじ根を持っています。
「社会の病理を無視して厳罰化を進めても、果たして効果はあるのだろうか。」
末國善己氏が本書の解説に寄せる一文に、大きくうなづきます。
2022年8月18日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.08.16
カンガルーの本棚 いい人の影に
西條奈加さんの「善人長屋」(新潮文庫)を読みました。
大江戸は深川にある長屋の別名は「善人長屋」
その実態は、裏社会につながる悪党が住む長屋です。
そこへ、本当の善人が迷い込むことから始まる物語。
それぞれの特技を生かしながら、ふりかかる問題を解決していく痛快さ
新しいタイプの時代劇に、ワクワクします。
2022年8月16日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.08.12
カンガルーの本棚 ラジオのむこうから
湊かなえさんんの「ブロードキャスト」(角川文庫)を読みました。
主人公は、事故で運動部を断念した高校生圭祐
入学したての日に、一度も話したこともない同級生正也から
放送部に入部しようと誘われます。
その声に惚れたとの言葉と共に
全国大会を目指す中で、物語の中の世界ではなく、
生きているこの世界で、どう行動するのかが試されていることに気づきます。
文化部というと、地味に思われがちな部活の中での青春。
数時間の読書タイムが、短く感じられるワクワク作品です。
2022年8月12日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.08.09
カンガルーの本棚 親ガチャの時代に
志水宏吉先生の「ペアレントクラシー」(朝日新書)を読みました。
ペアレントクラシーとは、親の影響力が極めて強い社会
家庭の富と、親の願望とが子どもの将来や人生に
大きな影響を及ぼす社会のことです。
この社会を、子ども、親、教師、教育行政の視点から分析されています。
「幸せとは、好きなことを好きな人と一緒にできること」
「好きなこと」を見出すためには、幅広い確かな学力を
多くの「好きな人」を見つけるためには、豊かな人間性や社会性が必要である
それらを育む経験や機会を提供するのが、公教育の務めであると
筆者は、この信念をもとに、ペアレントクラシーの克服策を
教え子と共に考えられていきます。
今の子どもの世界、特に教育の世界を知るうえで、一読をお勧めします。
2022年8月9日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.08.08
カンガルーの本棚 陽が降り注ぐ岬の家で
伊吹有喜さんの「風待ちのひと」(ポプラ文庫)を読みました。
主人公哲司は40歳を前に、心を病みます
亡き母の遺品整理にと帰った岬の家で、
ペコちゃんと出合い、命を助けられます。
遺品整理を手伝ってもらい、
食事をして、眠り、ゆったりとした生活をする中で、
哲司に生きていくうえで、大切なものがよみがえります。
ひとりの男性と、ひとりの女性をめぐる
1本の映画のような素敵な小説です。
2022年8月8日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.08.07
カンガルーの本棚 2枚目のすごろく
西條奈加さんの「隠居すごろく」(角川文庫)を読みました。
仕事一筋に生き、隠居生活を夢見ていた「徳兵衛」は、
孫の千代太が訪ねてきてから、歯車が狂いだします。
まずは白イヌ、そして、汚い身なりの兄妹
次々に千代太が連れてくるお客に翻弄されながら、
人生の意味について、悟ります。
450ページを超える大作ですが、お勧めの1冊です。
2022年8月7日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.08.06
カンガルーの本棚 ドイツ人の生き方
キューリング恵美子さんの「ドイツ人はなぜ自己肯定感が高いのか」
(小学館新書)を読みました。
国際比較では、日本人の自己肯定感の低さが注目されています、
一方「自分自身にまんぞくしてる」ドイツ人は81%
この差はどこから来るのか
自分のために生きる
そのままの自分を受け入れて、自分を大切にする
自分に自信をもつ、自分の意見をしっかりと持つ
自分自身が居心地よく、楽しく過ごせるように心がける
仕事、お金よりも自分や家族の時間を優先する
他人と自分を比べない
この観点から、キューリングさんはドイツ人の生き方を伝えられます。
この生き方が平均的なドイツ人だとすれば、
わたし達は何をしているのでしょうね
島国に住むわたし達に投じられた、生き方を問う1冊です。
2022年8月6日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.08.05
カンガルーの本棚 おとなにも難しい
浜矩子先生の「子どもと考える経済のはなし」(クレヨンハウス)を読みました。
お金ってなに
経済ってなに
大人にもむずかしい、問いかけです。
ひととひととが信頼関係をもって作るもの
ひとをしあわせにするもの
浜先生は、お金や経済への問いかけに、明確に答えられます。
子ども向けにかかれた絵本ですが、
短い文章の中に、お金の本質が詰まった1冊です。
2022年8月5日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.08.04
カンガルーの本棚 痛快ではあるけれど
池井戸潤さんの「オレたち花のバブル組」(文春文庫)を読みました。
堺雅人さん主演の、ご存知「半沢直樹」シリーズの、原作本です。
貸付先とのやりとり、金融庁との駆け引き
そして銀行社内での裏取引
TVシーンを思い出し、痛快ですが
やはり、カンガルーにはそれ以上ではありません。
暑い夏に、熱い小説は、お似合いではなかったようです。
2022年8月4日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.08.03
カンガルーの本棚 こどもは天使
河合隼雄先生の「こころと人生」(創元こころ文庫)を読みました。
人生を大きく4つの時期に区切り、
その時期のこころの転機を、やさしい言葉で解説されます。
子どもの眼でものを見る大切さ
青春期の、心に住む多様な羊たち
中年期の、創造の病
そして、老いに備え、自分の死を受け入れる老齢期
四天王寺夏季大学の講演をまとめられた1冊です。
2022年8月3日
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2022.08.02
カンガルーの本棚 ともかくもっと運動を
アンデシュ・ハンセンさんの「最強脳」(新潮新書)を読みました。
この本の要点は、最後に書かれた3つ
①脳の成長は止まることがない
脳はいつでも変えられるし、成長させられます
②脳を助ける一番良い方法は運動です
③脳はどんな運動をしているかは気にしません。
ともかく運動さえすればよいのです。
ハンセンさん著「一流の脳」のジュニア版として、この本が出版されました。
わたしは、スクワットしながら、この本を読みましたよ。
2022年8月2日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.08.01
カンガルーの本棚 わたしの取説
平松類先生の「老人の取扱説明書」(SB新書)を読みました。
ご高齢の方とご一緒する時に、「あれっ」と思わされることがあります。
都合の悪いことは聞こえないふりをする
突然「うるさい」と怒鳴り出す。
同じ話を何度もする
信号が赤になっても、ゆっくり渡っている。 などなど
それには、老化に伴う身体の変化が隠されていたのです。
平松先生は、本人だけでなく、ご家族や老いを感じ始めた方への
ガイドブックとして、この本を書かれています。
情報満載の、実用書です。
2022年8月1日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.07.31
カンガルーの本棚 逃げながら
宮下絵都さんの「たった、それだけ」を読みました。
母とわたしを捨てて、失踪した父
その父を、いつまでも待ち続ける母
ルイと名付けられた女の子が、転校を繰り返し
自分を見つめ、自分を取り戻していく
どんなに現実が厳しくても、明日はもう少し明るくなるかもと
少しだけ、主人公に「よかったね」と
声をかけたくなる小説です
2022年7月31日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.07.30
カンガルーの本棚 母のねがい
森沢明夫さんの「おいしくて泣くとき」(ハルキ文庫)を読みました。
幼い時に母をなくした心也は、
もうからない大衆食堂を経営する父が、
なぜこども食堂にこだわりを持つのか分かりません。
中学も卒業する年になり、心也は同級生の夕花と石村と心を通い合わせます。
虐待を受ける夕花を助けるために、心也と石村がとった行動とは
時は流れ、おとなになった心也が窮地に陥った時に現れたのは
母から子へと受け継がれた思いやりが、奇跡をおこします。
人と人とのつながりの大切さを、もう一度思い起こさせてくれる作品です。
2022年7月30日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.07.29
カンガルーの本棚 親の言葉がけひとつで
坪田信貴先生「人に迷惑をかけるなと言ってはいけない」(SB新書)を読みました。
お前さえいなければ、何もしなくていいから、おとなしくしていなさい
今のままでいてね、我慢しなさい、お兄ちゃんなんだから
今、忙しいから、黙って言うことを聞け、口答えするな
自分の要求を口にするな、あの子と遊んではダメ
などなど、子どもに対してよく口にする言葉の裏に隠された毒薬とは
先生は長年坪田塾で塾長をされている経験から、
子どもを伸ばす言葉かけを伝授してくださいます。
子育てにお悩みの方に おすすめの1冊です。
2022年7月29日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.07.28
カンガルーの本棚 同じ時に生を受け
辻村深月さんの「ツナグ想い人の心得」(新潮文庫)を読みました。
死んだ人と再会したいと強く願う依頼人と、
死んだ人の魂とを結ぶ使者・歩美
苦労かけられどおしだった父との再会を果たした青年が手に入れた勇気とは
娘をなくした母が、再会した娘に告げた言葉とは
修業時代の料亭のお嬢様に、70年近く立った今でも
どうしても会って見せたいものは
それぞれの時代に生まれ、ともに時間を過ごすことができなかった人が
今、想うこと
人の想いを強く描いた作品です。
2022年7月28日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.07.27
カンガルーの本棚 人の心のよわさと強さと
信田広晶先生の「知っておきたいうつの真実」(幻冬舎新書)を読みました。
信田先生は、「しのだの森ホスペタル」の精神科の先生です。
うつ病の初期は症状が体に現れます
新型うつ病を決して侮ってはいけません
いい加減な人でもうつ病になります
うつ病治療は外来治療が原則なのですか
うつ病の克服は、自分を知ることによって成し遂げられます
悩みを解決するのはカウンセラーではなくあなた自身です。
うつ病治療はその人のスピリットに働きかけることで成就します。
うつ病からの回復には自分にも優しくできることがとても大切です
自分軸で生きることが大事です
笑いは最も根源的でシンプルな抗うつ薬です
などなど、診断から薬物治療、心理療法、生活習慣まで
幅広くうつ病に対する提言が書かれています。
うつという病を俯瞰するうえで、お勧めの1冊です。
2022年7月27日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.07.26
カンガルーの本棚 続きは三つの輪で
田中世紀さんの「やさしくない国ニッポンの政治経済学」(講談社選書メチエ)を読みました。
新聞で目にした論説「他人に優しくない国」に興味を持ち
知識を深めようと探した一冊です。
なぜ現代の日本人は、他人を助けようとしないのか
田中先生は、いろいろな統計からその理由を解き明かそうとされます。
その要点は神戸医療生協機関誌「三つの輪」の9月号で紹介します。
お楽しみにしていてくださいね。
2022年7月26日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.07.25
カンガルーの本棚 不思議なお薬屋さん
東直子さんの「薬屋のタバサ」(新潮文庫)を読みました。
主人公の女性由美は、薬屋タバサで暮らし始めます。
魔法使いのような名前をもつタバサは、
男性の薬剤師であり医師でもあり
不思議な薬屋に、様々な人が訪れては去っていく。
出会いと別れの中で、やがて二人に訪れる生活とは
はじまりから、最後のページまで 謎解きのような
ふしぎな 不思議な小説です。
2022年7月25日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.07.19
カンガルーの本棚 不思議な力で
森絵都さんの「カザアナ」(朝日文庫)を、読みました。
時は近未来、観光立国を目指し、
相互監視が広がるある国の出来事
そこに、850年の時を経て、
不思議な力を持つ若者が現れます。
虫の気を読み、みずからの気と通い合わせる虫読
石を読み、その地に眠る記憶をあてる石読
空を読み、風雨の動きをあてる空読
鳥と通い合う鳥読
その力を持って、時の権力者に立ち向かう
不思議なお話です
2022年7月19日
いたやどクリニック 木村彰宏