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2022.03.14
カンガルーの本棚 ピッチに立てなくても
小野寺史宜さんの「ホケツ!」(祥伝社文庫)を読みました。
両親を亡くし、叔母と暮らす大地は、高校3年生。
一度もピッチに立てないサッカー部員。
レギュラーの練習相手に、いろんなポジションをこなし、
家庭でも、主張することなく控えめに生きている。
そんな彼を、仲間は心の中で頼り、悩みを打ち明ける。
神さまでも、仏様でもない少年大地が、
逆境の中でも、前を向いて走る先に待っているのは
2022年3月14日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.03.08
カンガルーの本棚 名前のつながり
小野寺史宜さんの「ひと」(祥伝社文庫)を、読みました。
両親を亡くし、東京の大学を中退した聖輔は、孤立し
その日の暮らしにも困ります。
総菜屋さんで働きはじめた聖輔は、
店主や仕事仲間、そしてバンドの仲間とのつながりの中、
亡くなった父の夢を追いかけ始めます。
大切なのは、形があるものではなく、人と人とのつながり
当たり前だけれども、忘れがちな大切なことを、
物語は教えてくれます。
2022年3月8日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.03.04
カンガルーの本棚 長い旅路の果てに
乾ルカさんの「花が咲くとき」(祥伝社文庫)を、読みました。
小学6年生の大介は、成果主義の両親の中で希望を持てないで暮らしています。
隣家の老人が運転する車に忍び込み、家出を試みます。
東京から舞鶴、山口、そして長崎へと
2人の旅は進みます。
そこで出会うおとなたちに、仕事の意味、お金を稼ぐ大変さ、
恥ずかしさとはなどを学び取り、
少しずつおとなの世界に足を踏み入れていきます。
旅の終着駅、長崎で2人を待っていたものは・・
少年の目を通して、人の良心と戦争の愚かさを伝える作品です。
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2022.03.02
カンガルーの本棚 小さな大発見
清邦彦先生の「女子中学生の小さな大発見」(新潮文庫)を読みました。
清先生は、中学の理科の先生です。
「日常に、ふと感じた小さな疑問」を大切にと、
生徒から集めた研究テーマを整理した本です。
テーマや結果へのコメントは一切ありません。
答えを教えないこと
その勇気に込められたメッセージに共感です。
2022年3月2日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.02.28
カンガルーの本棚 出合いそして
椰月美智子さんの「消えてなくなっても」(角川文庫)を読みました。
タウン誌の取材に、「あおの」は山奥の治療院を訪れます。
そこで出会った節子先生と暮らすうちに、
ストレス障害で苦しんでいた心が癒されるのを感じます。
年の近い「つきの」との出会い
そして、二人の名前に隠された秘密とは
運命を受け入れることの悲しさと温かさと
不思議な物語の中に、生きる力を感じます。
2022年2月28日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.02.26
カンガルーの本棚 夢を信じて
重松清さんの「いとしのヒナゴン」(文春文庫)を、読みました。
故郷に帰ったノブは、山中で目撃されたという「ヒナゴン」を見つける
担当課で働き始めます。
過疎の村の将来を決める町村合併の嵐の中で、
夢を信じて、夢を追いかけるノブに、
様々な出来事が襲いかかります。
そんなとき、伝説の「ヒナゴン」は
2017年に出版された同名小説の改訂版ですが
はじめて読んだかのようにおもしろく
1日で一気読みしました。
2022年2月26日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.02.24
カンガルーの本棚 磨かれた包丁
森沢明夫さんの「エミリの小さな包丁」(角川文庫)を、読みました。
都会での裏切りと中傷の嵐の中で、傷つき明日が見えなくなったエミリは
母のふるさとの漁村で暮らし始めます。
透き通る空、波のざわめき、凛と響く風鈴の音
そして、なにより祖父の手作りの料理に、心が立ち上がりの始めます。
出会いと別れ
旅立つ時に祖父から手渡された小さな包丁に込められた願いとは
家族の再生を願う、あたたかい小説です。
2022年2月24日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.02.15
カンガルーの本棚 心は磨かれる
森沢明夫さんの「ぷくぷく」(小学館文庫)を、読みました。
主人公は、まあるい金魚鉢の中で暮らす琉金の「ゆき」
ご主人の「イズミ」との二人暮らしの物語
「違いと、嫌いとは別物」
「こころは傷つかない、ただ、磨かれるだけ」
物語のなかから、珠玉の言葉が語りかけます。
こころが前むきになれる1冊です。
2022年2月15日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.02.09
カンガルーの本棚 読書の力
榎本博明先生の「本を読む子は○○がすごい」(日経プレミアムシリーズ)を読みました。
本を読む人と読まない人の二極化が進んでいます。
不読率(本を1冊も読まない人の割合)は、
最近の調査では大学生の48%にのぼるといいます。
言葉は、コムにケーションの道具としての生活言語と、
思考の道具としての学習言語に分けることができます。
日常会話は楽しめても、深く考えることができない大学生が
この先の日本の進路のかじ取りを、どうしていくのか
先生は、その処方箋についても言及されます。
読書が持つ力を考えるうえでの、示唆に富む1冊です。
2022年2月9日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.02.01
カンガルーの本棚 10年に一度の
遠田潤子さんの「ドライブインまほろば」(双葉文庫)を、読みました。
ドライブインを営む比奈子のもとに、男の子と女の子が逃げてきます。
過酷な運命を背負った男の子は、
10年に一度現れ、それを見た者はもう一度生まれ変わることができるという
「10年池」を探します。
男の子を追う男と、男の子を守ろうとする比奈子との間に生まれる共感と否定
家族の再生を願う作品です。
2022年2月1日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.01.27
カンガルーの本棚 秘められた愛
持地佑希子さんの「七月七日のペトリコール」(集英社文庫)を読みました。
高校生の和泉の携帯に、不思議な電話がかかってきます。
それは、12年まえの自分からの電話
事故で亡くなった親友の命を救うため、
高校生の自分とともに、未来を変える行動をおこします。
現在と過去とを行き来する中で、
そして、その結末は・・
秘められた愛が、奇跡を引き起こします。
2022年1月27日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.01.24
カンガルーの本棚 あたたかい手
大沼紀子さんの「てのひらの父」を、読みました。
舞台は、都内の下宿屋さん
就活中の主人公と、司法試験浪人の女の子、
キャリアウーマンの3人が暮らす下宿屋さんに
突然あらわれた、いかつい顔の管理人
ドタバタの毎日を過ごす中で
複雑な家族の問題をかかえる3人に、
あたたかな父の手のぬくもりが、よみがえります。
2022年1月24日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.01.18
カンガルーの本棚 名前がかわっても
瀬尾まいこさんの「そして、バトンは渡された」(文春文庫)を読みました。
主人公の優子は、3つの名前をもつ女の子
母親がなくなり、再婚した継母を残して、実父は海外移住
継母は2人の男性と結婚し、その都度住まいと名前が変わります。
でも、5人の親に共通しているのは、優子を大切に育てる思い
5人分の愛情を受け、優子は育ちます。
そして、新しい家族を作るために旅立ちます。
映画化された作品の原作です。
2022年1月18日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.01.15
カンガルーの本棚 水曜日はポストに
森沢明夫さんの「水曜日の手紙」(角川文庫)を読みました。
育児につかれ、パン屋さんになる夢を忘れていた直美
仕事に追われ、絵本作家になる夢をあきらめていた洋輝
ふたりが書いた「水曜日の手紙」
離れて暮らしていても、同時代を生きる縁が
ふたりの生き方を変えていきます。
2022年1月15日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.01.13
カンガルーの本棚 君は今何を思っていますか
持地佑季子さんの「クジラは歌をうたう」(集英社文庫)を読みました。
ふるさとの沖縄を捨て、東京で暮らす拓海が、ある日気づきます。
高校の時に想いを寄せていた睦月のブログが、12年ぶりに更新されたことを
自分しか知らない死んだはずの睦月のブログが、
なぜ、誰の手により更新されたのか
明らかになる謎の数々
クジラは誰のために歌うのだろう
青春の心の傷をやさしく歌う名作です。
2022年1月13日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.01.11
カンガルーの本棚 言葉が分かる犬
知念実希人さんの「優しい死神の飼い方」(光文社文庫)を読みました。
天上から追い払われ、犬に姿を変えた主人公?
ひらわれて過ごす緩和ケア病院で解き明かされていく謎の数々
心は死神、体は犬という主人公のとまどいに、
おかしさを禁じえません。
外来に通っている、中学生の男の子いち押しのミステリーです。
2022年1月11日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.01.09
カンガルーの本棚 名曲にのせて
林民夫さんの「糸」(幻冬舎文庫)を、読みました。
花火大会で出会った中学生のふたり
虐待を受けていた葵は、漣から引き離され姿を消します。
時が流れ、それぞれの人生を歩むふたりは
運命の糸に手繰り寄せられるかのように、
巡り会い、抱きあいます。
ページの間から、切々とした歌声が聞こえ始めます。
2022年1月9日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.01.05
カンガルーの本棚 おもいでの一枚
熊澤尚人さんの「おもいで写真」(幻冬舎文庫)を読みました。
故郷に住む祖母のもとに帰ってきた結子は、
幼なじみの一郎の勧めで、おとしよりの「遺影写真」を撮る仕事をはじめます。
「縁起でもない」と拒み続けられる日々
ふとしたきっかけで、おもいでの場所で、「おもいでの写真」を撮ることになります。
満面の笑みを浮かべるおばあさんを収めた一枚の写真が
結子と、富山の寒村に住むおとしよりの心を結び付けていきます。
そして、失った過去が、静かに動き始めます。
2022年1月5日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2021.12.31
カンガルーの本棚 犬と人との
山口花さんの「犬から聞いた素敵な話」(小学館文庫)を読みました。
前半の7つのお話は、人の目線から
後半の7つのお話は、犬の目線から
出合い、心を通わせ、そして分かれていく
どのお話にも、人と犬との幸せな時間が流れています。
ハッちゃん、そっちの世界では
ナナちゃんと 仲良くなれたかな
さびしくなったら、クークーって知らせてくださいね。
2021年12月31日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2021.12.30
カンガルーの本棚 金の角が見える
藤岡陽子さんの「金の角を持つ子どもたち」(集英社文庫)を読みました。
主人公俊介は小学6年生。
サッカーをやめた日、最難関の中学受験を決意します。
俊介はなぜ、中学受験をしようとしたのか
それを支える父と母、そして塾の先生。
全力で未来に取り組む子どもたちに、金の角が見えるという
中学受験をするという意味を深く考えさせられる1冊です。
2021年12月30日
いたやどクリニック 木村彰宏