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2020.09.27
カンガルーの本棚 菜根譚
高田郁さんの「あきない世傳・金と銀九」(ハルキ文庫)を、読みました。
「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の「三方よし」を信条とする、
呉服商五鈴屋の女主人、幸に、危機がおとずれます。
そんな時に、縁えた儒学者から、菜根譚の一節を授かります。
「衰える兆しは、最も盛んな時に生まれ
新たな盛運の芽生えは、何もかも失ったときに既にある」
江戸中期の商人の物語の中に、
コロナ禍にある今の世の中の、この先の救いを感じます。
毎日の病院運営のヒントを、いただけた思いがしました。
2020年9月27日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2020.09.25
カンガルーの本棚 ソウルメイト
馳星周さんの「ソウルメイト」(集英社文庫)を、読みました。
人と犬との魂のかかわりを描いた7つの物語。
チワワ ボルゾイ 柴犬 コーギー、シェパード、テリア、
そして、バーニーズ・マウンテン・ドッグ
何も語らず、人の心の暗闇に寄り添い、そして去っていく
直木賞受賞作家の、やさしい物語です。
2020年9月25日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2020.09.19
カンガルーの本棚 こどもの心に寄り添って
田中康雄先生の「発達障害だけで子どもを見ないで」(SB新書)を、読みました。
かんしゃくが激しい1才児、寝ない食べない2才児
言葉がなかなか出ない3才児、頑固な3才児など
12の物語に沿って、大人から見ると問題行動を起こす子どもの
こころに深く寄り添って、何をしたいのか、何を伝えたいのかを考えます。
発達にかかわる本を、何冊か読んできましたが、
子どもにやさしい、いちばんの本だと思います。
多くのおかあさん、おかあさんにお読みいただきたい1冊です。
2020年9月19日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2020.09.08
カンガルーの本棚 竜の守る島
有川ひろさんの「アンマーとぼくら」(講談社文庫)を、読みました。
おかあさんと過ごす、3日間の旅
幼くして実母と死別し、沖縄に住むおかあさんと暮らし始める主人公
父の心変わりを受け止められず、おかあさんの愛を素直にうけいれることができない
そんな思い残しを 3日間の旅が修復してくれます。
島の自然と、育まれた深い人情の描写に
人生の育ち直しを考えるのは、主人公だけではないでしょう。
この本を読み、沖縄の地を、沖縄の自然を見たいと、強く思いました。
2020年9月8日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2020.08.15
カンガルーの本棚 これからの人類
更科功先生の「絶滅の人類史」(NHK出版新書)を、読みました。
ネアンデルタール人に比べて、体の大きさも、脳の容量も劣っていた
ホモ・サピエンスが、なぜ生き延びることができたのか
類人猿から続くいのちの歴史の中で、
優れていたものは、社会性と適応力だと、先生は述べられます。
IT化が進み、隣人との付き合いが失われ、
コロナ禍の中で、社会が硬直化するこの先に、
人類の未来はあるのか
本書は 大きな問いを、投げかけています。
2020年8月15日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2020.08.13
カンガルーの本棚 父親になるということ
山極寿一先生の「ゴリラに学ぶ男らしさ」(ちくま文庫)を、読みました。
オス オトコ 男へと、生物学的な差異から
文化的、社会的ジェンダーへと変化してきた歴史を、
ゴリラや類人類の研究を通して、解き明かされます。
男には、次の3つの道徳的使命があります。
①女性を妊娠させる
②被保護者を危険から守る
③親戚一同に食料を提供する
しかし、現代では性差別や、忖度、金持ちの利益しか考えない男など
男の堕落が、目に余るものがあるといわれます。
いったい男たちは、これからどこに向かおうとしているのか
おおきな問いかけを、しめくくりの言葉として
本書は終えられます。
2020年8月13日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2020.08.09
カンガルーの本棚 この星と暮らし続けるために
インフォビジュアル研究会の「14歳から知る気候変動」(太田出版)を、読みました。
地球の気候システムのしくみ
温暖化が引き起こす12のこと
いま人類にできること
3つの章それぞれが、図解と簡潔な文章にまとめられています。
いま、人類が直面している温暖化について、広く考えを整理するためには
わかりやすい解説書です。
猛暑の中で、一読されてはいかがでしょうか
2020年8月9日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2020.08.04
カンガルーの本棚 親から子へと
三上延さんの「ビブリア古書堂の事件手帖ー扉子と空白の時」
(メディアワークス文庫)を、読みました。
古書にまつわる謎解き物語の、新刊書
今回のお話は、横溝正史さんの「雪割草」と「獄門島」の2冊
栞子さんと、娘の扉子さんが、謎解きに挑戦します。
親から子へと、引き継がれていく観察力と推理力
続編が、今から楽しみです。
2020年8月4日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2020.08.01
カンガルーの本棚 欠けては満ちて
森絵都さんの「みかづき」(集英社文庫)を、読みました。
物語は、昭和36年に始まります。
小学校の用務員として勤め始めた吾郎は、
寝泊まりする部屋に子ども達を集めて、勉強を教え始めます。
千明との出会い、そして塾の経営
戦後教育の変革に翻弄されながら、吾郎の子とど、そして孫へと
教育の心は、受け継がれていきます。
満ちては欠けて、また満ちていく月のように
物語もまた、昭和から平成へと流れていきます。
600ページを超える大作ですが、一気に読み進むおもしろさでした。
2020年8月1日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2020.07.19
カンガルーの本棚 新自由主義の終焉
井手英策さんの「欲望の経済を終わらせる」
(インターナショナル新書)を読みました。
小さな政府、自己責任、トリクルダウンと来れば、新自由主義
20年が過ぎ、分断と格差社会以外の何も生まなかった新自由主義が
多くの人々に、なぜ受けいられたのか
井手先生は、歴史からそのわけを解き明かし
次の経済のあり方を展望されます。
経済の本というと、かたぐるしく思われますが、
明るい未来を展望することができ、
ワクワクしながら読み終えることができました。
2020年7月19日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2020.07.01
カンガルーの本棚 ゴリラの子人間の子
山極寿一先生の「スマホを捨てたい子どもたち」(ポプラ新書)を、読みました。
山極先生は、ゴリラの世界的な研究で知られ、
京都大学総長を務められている先生です。
人間の社会を支える共感力は、
共同保育、共食、音楽と踊りという行為で進化してきました。
視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚をみんなで共有して、
楽しい時間を過ごすことで、
信頼という財産を作ることにつながると述べられます。
現実世界で仲間とつながることを避けるスマホ社会は
人間社会の退化につながる危うさを感じると述べられます。
コロナ禍が続き、三蜜を避ける今の社会において、
難しいけれど、乗り越えなければならない課題だと思いました。
ゴリラについての本を、もう少し読みたくなりました。
2020年7月1日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2020.06.28
カンガルーの本棚 大切なことは
稲垣栄洋先生の「はずれ者が進化をつくる」(ちくまプリマー新書)を、読みました。
稲垣先生は雑草の研究者
雑草を観察することで、生物界の多様性、本当に大切なことに想いを馳せられます。
自然界での強さには、競争に勝つこと、環境にじっと耐えること、そして変化を乗り越える力をもつこと、この3つがあるといわれます。
雑草魂は、踏まれても立ち上がるのではなく、
踏まれても大切なことを見失わないことだと、説かれます。
コロナ禍の苦境の中にあって、おすすめの一冊です。
2020年6月28日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2020.06.27
カンガルーの本棚 父親ごっこ
宮部みゆきさんの「ステップファーザー・ステップ」
(青い鳥文庫)を、読みました。
ステップファーザーは、継父がその意味
主人公は、プロの泥棒
ふとしたいきさつから、双子の父親役になります。
次々と起こる事件を、解決していくミステリー小説
子ども向けに編集され直した本ですが、
楽しいひと時を過ごすことができました。
2020年6月27日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2020.06.14
カンガルーの本棚 生き延びた子孫
藤田紘一郎先生の「免疫力 正しく知って、正しく整える」(ワニブックス新書)を、読みました。
新型コロナウイルスの流行で、家庭の中で過す生活が続いています。
子ども達の肌は、日に焼けず白くなり、おなかもぽっちゃり気味
体力の低下が心配です。
藤田先生は、「私たち現代人は、たびかさなる病原体からの攻撃に負けず、命をつないできた祖先の生き残り」と言われます。
生まれながらに強靭な免疫力を持つ私たちが、どのような生活を心がけると良いのか
食生活、腸内細菌、生活リズムなどの視点から、注意すべき点を教えてくださいます。
発刊されたばかりの新書ですが、ご一読されてはいかがでしょうか。
2020年6月14日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2020.06.06
カンガルーの本棚 ゆるし
遠田潤子さんの「オブリヴィオン」(光文社文庫)を、読みました。
ふとしたはずみで、最愛の妻を死なせてしまった森二
父親から虐待され、生き延びて、
あきらめていた末につかんだ幸せな家庭を、
自分の手で壊してしまう 男の絶望
タンゴの名曲「オブリヴィオン」の深い音色がつつみます。
忘却と赦しという、ふたつの意味を持つオブリヴィオンという
言葉に込められた哀しみの中で、
それでも前を向いて歩こうとする、主人公の姿に救われます。
2020年6月6日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2020.05.17
カンガルーの本棚 人とのつながり
カミュの「ペスト」(新潮文庫)を、読みました。
新型コロナ感染症で、社会が大混乱している今、
多くの人に読まれている、カミュの「ペスト」
アルジェリアの都市を襲う病魔と、都市封鎖
不条理な自然の猛威を前に、希望を失い、逼塞する人々を
医師リウーの目で記録されます。
人と人とのつながりが失われて時に、
人とのつながりこそが、
生きていく源であることを教えてくれる1冊です。
2020年5月17日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2020.05.07
カンガルーの本棚 多様性の悩み
ブレディみかこさんの
「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」(新潮社)を、読みました。
移民が多く暮らし、むかしからの階級社会が湯づくイギリスで、
アイルランド人の夫との間に生まれた中学生と日本人の母との物語
学校間格差や、レイシズム LGBTQ
ガイジン ハーフ ダブル ハーフ&ハーフ
ハードな問題を母子で考えて、育っていく
こういう分厚い社会体験が、市民を作っていくのだなと思ってみたり
今の日本という国のありようを、考えさせられる1冊です。
2020年5月7日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2020.05.04
カンガルーの本棚 頭のよさって
斎藤孝先生の「本当の頭のよさってなんだろう?」(誠文堂)を、読みました。
学校がお休みになり、ネット授業が広がってきています。
学校の役割り、学ぶ意味が、今ほど問われている時はないと思います。
試験でいい成績をとること、いい大学に入ること
そんな頭のよさではなく、一生使えるものの考え方を身につけよう
幸せになるために頭を使おうと、斎藤先生は力説されます。
本当の頭のよさってなに?
子どもに問われたときに、おとなが答えを考える助けになる1冊です。
2020年5月4日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2020.05.03
カンガルーの本棚 小さな折り紙
ほしおさなえさんの「活版印刷三日月堂」(ポプラ文庫)を、読みました。
シリーズ6冊目のサブタイトルは「小さな折り紙」
6つの短いお話の中で、最後の「小さな折り紙」に心ひかれました。
こころの奥深くに刻まれた、小さな時の思い出が、
子ども達を、まっとうなおとなに育てていくことを信じて・・
保育を受け継いでいく主人公たちに、敬意を伝えたくなる作品です。
2020年5月3日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2020.05.01
カンガルーの本棚 こどもの頃の
椰月美智子さんの「未来の手紙」(光文社文庫)を、読みました。
少年少女の5つのお話が納められた短編集
どのお話が心に残るかは、あなた次第
わたしは、「しいちゃん」が、お気に入りです。
小学校6年生の女の子のりえちゃんと、おかあさん、おばあさんの日常を描いた物語
「大好き」って言葉は、伝染するんだね
のりえちゃんの言葉に、わたしも大きくうなずいてしまいました。
2020年5月1日
いたやどクリニック 木村彰宏