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2019.10.27
カンガルーの本棚 今しておくことは
杉浦孝宣先生の「不登校・ひきこもりの9割は治せる」(光文社新書)を読みました。
不登校の小中学生は16万5千人と増え続け、大きな社会問題となっています。
登校圧力が子どものストレスになるという考え方が拡がり
不登校の子どもと、どのように接していけばよいのか、
迷いは、迷いにつながります。
まずは、しっかりと休養し、充電を始めることが大切ですが
杉浦先生はそのうえで、次の3つのことを提唱されます
①規則正しい生活をする
②自律して自信をつける
③社会貢献をする
社会参加する道筋は、たやすく見えるものではないですが
家族以外の第3者の支援が鍵になるといえます。
混とんとしているときだからこそ、一石を投じる一冊です
2019年10月27日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2019.09.26
カンガルーの本棚 麒麟がくる
海音寺潮五郎さんの「明智光秀をめぐる武将列伝」(文春文庫)を、読みました。
2020年NHK大河ドラマの主人公は、明智光秀
それにちなみ、作者の武将列伝を
コンパクトに編集されたのが本書です
斎藤道三、織田信長、石田三成、豊臣秀吉、前田利家、黒田如水、徳川家康
史実から掘り起こした人物像を、フィクションを排して教科書風に淡々と
どちらかといえば、感情移入しにくい文体ですが、
戦国時代に生きた武将の生き様を、興味深く読みました。
2019年9月26日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2019.09.25
カンガルーの本棚 伝えたいことが
宮口幸治先生の「ケーキの切れない非行少年たち」(新潮新書)を、読みました。
書店に平積みされた、表紙の帯の図柄に引かれて手に取り購入
そのまま、2日で読み切るおもしろさ
犯罪に手を染める青年たちの心の闇を描き出しています
ASD・ADHD、被虐待体験、そして認知機能の未熟さ
一般的に知的発達障害と言われる検査結果からは
拾い上げることができない軽度の知的な遅れが、
社会適応を妨げ、社会からのドロップアウトにつながっていることを
宮口先生は、医療少年院に勤務された体験から、解き明かされます。
正常ですといわれ、何の援助も受けられずに育った少年たちの心の叫び
伝えたいことが、本書には詰まっています。
明日からの診療の質を変えてくれる1冊です。
2019年9月25日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2019.09.16
カンガルーの本棚 何も知らない
池上彰さんの「高校生からわかるイスラム世界」(集英社文庫)を、読みました。
9.11同時多発テロのあと、イスラム原理主義=テロリストという
短絡的な思考回路が、世界中を席捲しています。
池上先生は、まずイスラム教の歴史を ユダヤ教、キリスト教との関係で整理され、
イスラムの守るべき教えと、イスラムの文化を紹介されます。
中東問題、湾岸戦争という現代史を
イスラム世界の側から問い直すと、何も知らなかったことに驚きます。
多くのイスラム教徒や原理主義者たちとテロリストたちを
同一視してはならないと、池上先生は言葉強く述べられます。
知っているつもりで知らなかった。
読後にこんな思いにさせられる 知的な1冊です。
2019年9月16日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2019.09.08
カンガルーの本棚 神か悪魔か
池上彰さんの「高校生からわかる原子力」(集英社文庫)を、読みました。
原子力という言葉を聞くと、東京電力原発事故のあとは拒絶感が先に立ちます
池上先生は、まず物理学の歴史から立ち入り
戦争に使われ、広島・長崎の惨劇をうんだこと
戦後は一転して、平和利用のキャンペーンが張られ、
「トイレなきマンション」と揶揄されながら、
原子力発電所依存政策がとり続けられ、
袋小路に迷い込んでしまっている歴史を
短い文章の中に簡潔に説明されています。
原子力は、神か悪魔か
それは あなたたちが決めることですと、締めくくられます。
わたし達が生きている時代だけでなく、
これから続いていく子孫のために、答えを先送りする時間はありません。
分かりやすい本だけに、多くの人にお読みいただければと思います。
2019年9月8日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2019.09.01
カンガルーの本棚 マルクスからの伝言
池上彰さんの「高校生からわかる資本論」(集英社文庫)を、読みました。
資本論って、そうあの資本論です。
カンガルーが学生の時には、社会の在り方について活発な論議があり
資本論も必読の書でした。
が、難しい表現が多く、読了には時間を要しました。
池上さんの手により、わかりやすく解説された本を手にし、
休日一日をかけて、読了しました、
長時間労働、過労死、非正規雇用、派遣切りなどなど
若者を苦しめている現代の課題が、150年も前にマルクスにより
解明されていたとは驚きです。
読後どう行動するのかは その人にゆだねるとして、
今の政治のありかたに、苦々しくお思いの方にお勧めに一冊です。
2019年9月1日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2019.08.26
カンガルーの本棚 三方よし
高田郁さんの「あきない世傳 金と銀 碧流編」(ハルキ文庫)を、読みました
呉服屋に奉公に出た主人公さちは、時代の流れにもまれながら
大江戸に新しい店を開き、働き始めます。
近江商人の心得「三方よし」を信条に、江戸の人々とのつながりを深めます
今の時代にもつながる「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の三つの「良し」。
がんばれ さち と
読み進めながら、なんども声援を送ります。
2019年8月22日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2019.08.24
カンガルーの本棚 キラキラしてる
小川糸さんの「キラキラ共和国」(幻冬舎文庫)を、読みました。
ポッポちゃんとあだ名される主人公の鳩子さんは、
代筆業がお仕事
いろいろな悩みを抱え、自分ではいい伝えられない人に代って
思いを文にして届けます。
そんなポッポちゃんに、新しい家族ができました
喜びの中に 不安と哀しみと
鎌倉のまちがキラキラと輝き、こころを暖かくしてくれる一冊です。
2019年8月24日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2019.08.18
カンガルーの本棚 女性の矜持
朝井まかてさんの「残り者」(双葉文庫)を、読みました。
物語は慶応4年4月10日 前日の大奥からはじまります
江戸城明け渡しの前日 1000人を超える女官が
あわただしく住まいを移す中
5人の女性が大奥に残ります
なぜ彼女らが残ろうとしたのか
それぞれが胸に抱えてきたものが明かされていきます。
戦争により、日常の精進が失われていく哀しさ
きらびやかな文体のなかに
それに抗する女性の矜持とたくましさが伝えくる一冊です
2019年8月18日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2019.08.04
カンガルーの本棚 おもしろくて哀しくて
朝井まかてさんの「福袋」(講談社文庫)を、読みました。
舞台は 江戸時代後期の江戸の町
売れない役者が最後に切るおおみえ
風呂屋家業にぞっこんの女の子 など
下町で暮らす人々の、7つの物語
おもしろくて、やがて哀しきかな
作者ならではの文体で描かれる風俗描写もおもしろく
読み始めると 本から手を離せなくなる一冊です
2019年8月4日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2019.08.01
カンガルーの本棚 深い根っこが
筒井富美先生の、「女医問題ぶった斬り」(光文社新書)を、読みました。
東京医科大学に端を発した女子受験生の医学部入試差別問題
なぜ大学が、そのような女子差別を行うようになったのか
筒井先生は女性医師の目を通して、
さまざまな角度から鋭く分析されます。
偏差値一辺倒の医学部志願者の増加
少子高齢化社会の到来
医師の大都市偏在の問題
研修医制度や新専門医制度の改革が行われるたびに、
新たな問題が起こります。
女性医師のライフスタイル
そして、医師の働き方改革
医師を取り巻く環境が激変する中で、どの受験生を選ぶのか
大きな課題に対する答えは見つかりません。
医学教育にご関心がおありの方、必読の書です。
2019年8月1日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2019.07.31
カンガルーの本棚 終わりの始まりは
水野和夫氏・山口二郎氏共著の
「資本主義と民主主義の終焉」(祥伝社新書)を、読みました。
平成史を、政治と経済から読み解きます。
終焉のはじまりは、「構造改革」「自己責任論」にあると、論じられます、
高齢化年金問題、長時間労働、モラルの危機
子育ての見通しのなさ などなど
この国がかかえる課題の根源が見えてきます。
時間をかけて じっくりと読みたい良書です。
2019年7月31日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2019.07.23
カンガルーの本棚 熱い声援
こかじさらさんの「負けるな、届け!」(双葉文庫)を、読みました。
主人公はリストラに会った中年女性
再就職のあてもなく、生きる道に迷います。
偶然出会った都市マラソン、
熱い声援を送る中で
自分がやってきたことを、きちんと認めてくれるひとの大切さに気付きます。
そして、舞台はフランス・ボルドー郊外で開かれる
「メドック・マラソン」に
必死に走るランナーと、沿道で熱い声援を送る仲間たち。
胸がわくわくする小説です。
2019年7月23日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2019.06.13
カンガルーの本棚 男はつらいよ
福岡伸一先生の「できそこないの男たち」(光文社新書)を、読みました。
聖書には「イブはアダムの肋骨から造り出された」と書かれていますが、
福岡先生は、生物の原型はメスである。
オスは、遺伝子を運ぶ 使い走りのお役目のために造られたのではないか
先生は、その根拠を 昆虫などいろいろな生物を例にあげながら
解説されます。
目から鱗が落ちるとは こういうことなのか
男性優位社会にあって、男性の虚勢を見る思いがします。
生物学から 人類学へ
知的興味は尽きません。
2019年6月13日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2019.06.11
カンガルーの本棚 生命を奏でる
福岡伸一先生の「動的平衡2」(小学館新書)を、読みました。
遺伝子による生命活動を予測する、
あるいは仕分けをする研究が進んでいます。
福岡先生は、ゲノムは楽譜に過ぎないといわれます。
どの楽器でその音楽を奏で、
どのタイミングで、どの強さでその音符を表現するのか
それに 他の楽器とのハーモニー
こうして楽譜から、ことなる音楽が誕生します。
生命活動もこれに似て、ゲノムに規定されながらも
その表現は、ふたごでも同じではない。
人生は、環境とその人の生き方により、いかようにも変化する
福岡先生は人生の深い意味を伝えられます。
どのページからも 知的好奇心が刺激される わくわくの1冊です。
2019年6月11日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2019.05.29
カンガルーの本棚 生命とは何か
福岡伸一先生の「動的平衡」(小学館新書)を、読みました。
記憶について、食べる意味、病原体との共生
そして、生命とは何か
題名どおり、本の中身は硬い内容がぎっしりと詰まっています。
それでもおもしろくて、一気読み
分子生物学からみた生命観は、
わたしの中の未熟な生命観を、木っ端みじんに壊してくれました。
再生と、つぎの平衡状態へと
読後もいろいろな考えが頭の中を駆けめぐります
知的好奇心をいっぱいくすぐられる一冊です。
2019年5月29日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2019.05.05
カンガルーの本棚 藪の中で
池永陽さんの「下町やぶさか診療所」(集英社文庫)を、読みました。
舞台は東京下町の診療所
診察よりも愚痴話で混雑します。
ふとしたことから 訳ありの女子高生を引き取って
物語は動き始めます。
認知症の妻を介護する夫
交通事故で命を落とした夫に復讐を企てる妻
末期がんを宣告された幼馴染
そして、女子高生の秘密とは
お読みになった後、
あなたも やぶさか診療所に通いたくなるかもしれません
2019年5月5日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2019.05.02
カンガルーの本棚 病気になるわけ
栃内新さんの「進化から見た病気」(講談社BLUE BACKS)を、読みました。
ヒトは、病気とどう付き合ってきたのか
生活習慣病とよばれる文明病は、なぜ起きるのか
遺伝病の考え方
そして、おばあさんの役割りとは
本書は、「進化医学」の考えを、分かりやすく伝えてくれます。
医学にたずさわる人も、病気でお悩みの方も
一読されることを おすすめします。
2019年5月2日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2019.05.01
カンガルーの本棚 頼るちから
吉田穂波先生の「つらいのに頼れないが消える本」(あさ出版)を、読みました。
本当に困って助けを借りたい時でも、
相手の迷惑になるのではないか
相手の負担になるのではないか
甘えていると思われるのではないか
と思ってしまい、お願いすることに二の足を踏んでしまう
そんな経験を みなさんもされたことがおありかと思います。
本書はそんなあなたに
「助けを求めて、助けを受け入れる心構えやスキル」を指南してくれます
頼る事は相手への信頼と承認と尊敬の証
令和の世が、助け合いの心で満ち溢れますようにと願いながら
この本をお勧めします。
2019年5月1日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2019.04.26
カンガルーの本棚 武骨なやさしさ
大沼紀子さんの「てのひらの父」(ポプラ文庫)を、読みました。
都内の女性専用のまかない付の下宿館にすむ、3人の女性が主人公
就職浪人、司法試験浪人、アパレル会社に勤めるわけありの女性たち
下宿のお世話をするのは、武骨な大男
はらはら ドキドキ そしてやさしい涙
こんなふしぎな下宿館があれば、
かんがるうっ子を、住まわせるのになあ
2019年4月26日
いたやどクリニック 木村彰宏