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2018.02.21
カンガルーの本棚 アマゾンの光と影
田中道昭さんの「アマゾンが描く2022年の世界」(PHPビジネス新書)を読みました。
ネットで本を注文すれば、翌日には届けられるあのアマゾン
書籍だけでなく、家電や医薬品から食料品まで、
今やアマゾンが扱わないものはないという勢いがある企業です。
アマゾンが、何を考え、どのような戦略で消費者を取り込もうとしているのかを
本書は解説します。
テクノロジーの進化やSNSの発達により見失われたものには、
リアルなつながり、ふれあい、おもいやりなどがある。
ここに依拠することでアマゾンンに対抗することができると、本書は結びます。
流通企業の課題だけではなく、医療にも同じことが言えるのではないかと痛感しました。
2018年2月21日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2018.01.26
カンガルーの本棚 生物としての人間
藤田紘一郎先生の「手を洗いすぎてはいけない」(光文社新書)を、読みました。
藤田先生は、寄生虫学の権威の大先生
自ら寄生虫とともに暮らし、健康への影響を実証されています。
この本を、清潔すぎる国の現状と、
それがもたらす医学的・社会的問題への警鐘の書として読みました。
「健康とは、生物としての自然を大切にすること」という先生の金言を、
肝に銘じて、毎日のアレルギー指導にあたりたいと考えます。
2018年1月26日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2018.01.18
カンガルーの本棚 医療というお仕事
水野操さんの「あと20年でなくなる50の仕事」(青春出版社)を、読みました。
AI(Artificial Intelligence:人工知能)という言葉を聞かない日はありません。
アマゾンで本を申し込むと、読書傾向からおすすめ本が紹介されます。
ビッグデータから、高齢社会の未来予想が描かれます。
AIの活躍が拡がるにつれて、繰り返しの単純な仕事に就く人は
その職をおわれると、水野先生は指摘されます。
気になるのは、医療の仕事
先生は、「医師と患者の間で最も重要なのはコミュニケーション」
「話をじっくりと聞いてくれ、勉強する医師が流行る」と言われます。
異業種の先生からの指摘は、的のど真ん中を射ています。
毎日の外来で、忙しさに流されないように、
本を読み、会話を大切にしようと自戒しました。
2018年1月18日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2018.01.08
カンガルーの本棚 素敵な人たち
佐倉淳一先生の「明日(あした)」(角川文庫)を、読みました。
主人公は、小学2年生の男の子
授業中に立ち歩き、学年主任の先生に叱責されると窓から飛び降りてしまします。
学校の混乱は家族を巻き込み、誰が悪いのかの 責任のなすり合いが始まります。
もう一人の主人公は、PC関連会社で働く青年
パワハラをうけ、傷害事件を起こしてしまいます。
ふたりの出会いは、深夜の恐竜博物館
「明るいあしたは、自分の力で変えることができる」と、語り合います。
ふたりの自閉スペクトラム症(ASD)の男性が、
明るいあしたにむかって歩きはじめる勇気を、
作者は温かく見守ります。
自閉スペクトラム症という難しい課題に向かい合う一人一人の読者が
本当の主人公なのかもしれません。
まだ始まったばかりの2018年。
今年の一押しの一冊になりそうです。
2018年1月8日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2018.01.07
7+8= おとうさんはよろこび
おさきに おさんぽに でかけた ナナちゃんが
「ハッちゃん ゆきが ふってたよ」って、おしえてくれます。
こうえんは もう ナナちゃんいろ。
おとうさんが、あんまり はしゃぐので
ゆきのこうえんを いっしょに はしってあげます。
「おとうさんは よろこび、こうえん かけまわる」って、
うたが きこえてきそうです。
よかったね、おとうさん
2018年1月7日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2018.01.02
カンガルーの本棚 生きていく灯
ほしおさなえさんの「活版印刷三日月堂3」(ポプラ文庫)を、読みました。
下町の小さな活版印刷屋さんをめぐる4つのお話
はじめのお客は、人を年収と勤め先でしか評価できない会社員
2人目は、主人公の母と青春を過ごした同級生
3人目は、学校が少しつらくなってきた高校生
悩みをかかえながら、活版印刷に出合うことで、
迷いの先に、生きていく灯を見出します。
今年最初の1冊は、お正月番組より強く
わたしの心を しっかりととらえてくれました。
2018年1月2日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.12.31
カンガルーの本棚 いったりきたり
朝井まかてさんの「藪医ふらここ堂」(講談社時代小説文庫)を、読みました。
江戸の町で小児医を営む主人公は、
仕事よりも どうすれば楽に暮らせるかと考える毎日です。
弟子に、「小児医の極意は」と聞かれ、
「ふらここだ」と答えます。
「ふらここ」とは、今でいう「ブランコ」のこと
どういうたとえなのかなと、読み進むと、
人は、「正」と「邪」の間を、いったりきたり
こっちが病のある状態、こっちが元気な状態
悪いところもあわせもって生きていく
薬で無理やり取り除くのではなく
徐々に折り合いをつけていく
作者は、主人公のことばに、こう意味を持たせます。
くる年も、「ふらここ」のように、ゆれながら過ごそうと思います。
今年一年、おつきあいくださり、ありがとうございました。
2017年12月31日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.12.29
カンガルーの本棚 家族に寄り添って
河野和彦先生の「認知症治療の9割は間違い」(廣済堂出版)を、読みました。
河野先生は、家族の介護負担を軽くする(介護者優先主義)視点から、
従来型の治療とは異なる治療アプローチを考案され、
多くの認知症のかたの症状を改善されています。
本書は、「コウノメソッド」と呼ばれる認知症の治療を
一般の方にも分かりやすく解説されたものです。
子どもの発達障害にも言及され、興味深く読ませていただきました。
医療生協の川崎理事さんからお聞きし、1日で一気読みしました。
2017年12月29日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.12.14
カンガルーの本棚 燃える思い
知野みさきさんの「雪華燃ゆ」(光文社文庫)を、読みました。
シリーズ3作目は、かなわぬ恋の物語。
着物の下描きを何度も書き直す中で明らかになる 依頼者の悲しい過去
わが身の恋の行く末と重ねあううちに 揺らぐ思い
ページをめくるごとに、江戸の街並みに生きる人々の
確かな息遣いが聞こえてきます。
2017年12月14日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.12.09
カンガルーの本棚 お借りして一気読み
ヴィカス・スワラップさんの「ぼくと1ルピーの神様」
(ランダムハウス講談社)を、読みました。
外来をしているときに、おかあさんから、
「先生、本をよく読まれるのですね」と、手渡された一冊
主人公は、インドの18歳の男の子
クイズ番組に出場し、1億ルピー(日本円にして1.5億円)を手にします。
13の難問に、なぜ正解できたのか。
物語は 男の子の悲しい半生にさかのぼります。
貧しくて、活気あふれるインドの社会
ワクワクどきどきする、最高に楽しめる一冊です。
2017年12月9日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.12.06
カンガルーの本棚 お手軽な奥深さ
吉野源三郎先生原作の「君たちはどう生きるか」(マガジンハウス)を、読みました。
といっても、手に取ったのは羽賀翔一さんの手になるコミック版です。
1937年に書かれた原作は、戦時中のものとは思えない骨太の
ヒューマニズムが貫かれています。
コミックを気軽な気持ちで読み進めていくうちに、
人間のむすびつきについて
貧乏ということについて
偉大な人間とはどんな人か
人間の悩みと過ちと偉大さとについて
などの命題に引き込まれます。
入り口はお手軽に、中は奥深く
若い方だけでなく、いろいろな方におすすめの一冊です。
2017年12月6日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.12.05
カンガルーの本棚 愛と祈りで
渡辺和子先生の「愛と祈りで子どもは育つ」(PHP文庫)を、読みました。
子育てを続けるうえでの大切なことを、
60数編の短い文にまとめられています。
「子育てとは、子どもと一緒に親も成長するということ」
「人生の義務としあわせ、それは愛することを学ぶこと
愛することを知ること」
どの章も意味深く、何度も読みなおします。
忙しい子育ての真っただ中にこそ、おすすめの一冊です。
2017年12月5日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.11.24
カンガルーの本棚 大きな未来へ
椰月美智子さんの「その青の、その先の、」(幻冬舎文庫)を、読みました。
主人公まひるは、高校2年生の女の子、
なかよし4人組と、平凡な毎日を過ぎしています。
彼との出会い、そして彼の事故をきっかけに、
まひるは、 強くなろうと決心します。
「その青のその先に、力強く手を伸ばす。
その先に広がっている、大きな未来に向かって」
小説の最後の2行から、作者の青春への力強い応援歌が聞こえてきます。
がんばれ、まひる
いろんなことがあっても、人生っていいもんだからね。
2017年11月24日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.11.09
カンガルーの本棚 カフーってなに?
原田マハさんの「カフーを待ちわびて」(宝島社文庫)を、読みました。
舞台は太陽の光が降りそそぐ沖縄
そこで暮らす青年と、イヌとの物語。
突然現れた女性が、青年の生活と心を変えていきます。
やがて明らかになる、哀しい過去。
愛し合いながらの すれ違い
カフーとは、なになのか、
うまくいきますようにと、主人公を応援したくなるラストです。
「日本ラブストーリー大賞」に輝く、原田マハさんのデビュー作品です。
2017年11月9日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.11.07
カンガルーの本棚 3組の母娘
原田マハさんの「永遠をさがしに」(河出文庫)を、読みました。
主人公は、15歳の女子高生
母は突然いなくなり、
世界的な指揮者の父との二人暮らし
そこに突然現れた、新しい母
物語は15才の女の子の心を激しく揺さぶりながら 進みます。
やがて明らかになる 3組の母娘の秘密
明日へと羽ばたくその日のために、永遠をさがしに生きていきます。
お休みの日の朝、読書の喜びを満喫させてくれる1冊です。
2017年11月7日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.11.05
カンガルーの本棚 ほのかなしあわせ
原田マハさんの「星がひとつほしいとの祈り」(実業之日本社文庫)を、読みました。
女性を主人公とした、7つの短い物語集
どれも感涙ものですが、斉唱、長良川の2編は心に残ります。
つらい日々の中に、わずかにみいだす希望の灯
しあわせは日々のふとした風景の中にあるのだなと、教えられる一冊です。
2017年11月5日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.10.26
カンガルーの本棚 生きてきた足取り
湊かなえさんの「リバース」(講談社文庫)を、読みました。
ドラマ化された作品なので、読まれた方も多いかと思います。
内向的な主人公が巡りあえた 初めての親友
そして、親友の死
親友が生きてきた足取りをたどるうちに、
主人公は 自らの生きざまを振り返ります。
幾重にも張り巡らされた伏線と、明らかになる真実
日曜の早起きの朝、一気読みの一冊です。
2017年10月26日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.10.24
カンガルーの本棚 山神さまとの契約
朝井まかてさんの「御松茸騒動」(徳間時代小説文庫)を、読みました。
舞台は江戸尾張藩、出世欲の塊だった主人公が 御松茸同心に左遷され
山の暮らしの中で
松茸と赤松との取引、村人と山の神との契約
そして今は失脚し、蟄居中の大殿が民を思うこころに気づきます。
そして、今はなき父に思いを寄せ、その生き方をなぞりはじめます。
まかてさんならでの 時代小説です。
2017年10月24日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.10.20
カンガルーの本棚 発達の多様性
岩波明先生の「発達障害」(文春新書)を、読みました。
「おとなの発達障害」についての本が、書店の平積みコーナーをにぎわせています。
ASD(自閉スペクトラム症)、
ADHD(注意欠如多動性障害)に代表される発達障害という診断名が
一人歩きをしだし、過剰診断と過小診断という
誤診につながっているのではないかと警告をだされます。
その反対に、自らの行動・思考特性を、
育てられ方や個人の努力により乗り越えるべきものととらえて、
必要な援助や配慮を得ることができないまま大きくなった方の悲劇も
ていねいに説明されています。
今を生きる人に必読の1冊です。
2017年10月20日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.10.11
カンガルーの本棚 日本の闇
矢部宏治さんの「知ってはいけない隠された日本支配の構造」
(講談社現代新)を、読みました。
矢部さんは 戦後史の構造を
「古くて都合の悪い取り決め」=「新しくて見かけのよい取り決め」+「密約」
という方程式で読み解かれます。
日本が戦争に巻き込まれないために、戦争に出かけていかないために、
はじまったばかりの衆議院選挙の各党の政策を、しっかりと見ていきたいと思います。
2017年10月11日
いたやどクリニック 木村彰宏