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2017.08.18
カンガルーの本棚 鷹と少女
遠田潤子さんの「月桃夜」(新潮文庫)を、読みました。
海の上で鷹が少女に語るか哀しみの物語
時代が違えども、同じ境遇で絶望していた二人が、
少しずつ心を通わせあい、生きる意味を見つけ出していきます。
遠田さんのお話は、この1か月の間で4冊目です。
人の生き死にが多く とても強烈ですが
最後に救いの場面が用意されています。
次の本はいつなのかと、首がながくなります。
2017年8月18日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.08.13
カンガルーの本棚 哀しみの連鎖
遠田潤子さんの「アンチェルの蝶」(光文社文庫)を読みました。
主人公の男は、場末の居酒屋の主人
人生に絶望し、自堕落な生活を送っています。
突然現れた少女との生活に、明日への希望を見出します。
虐待を受け続けた少年の、哀しい再生の物語です。
2017年8月13日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.07.30
カンガルーの本棚 小学生の頃
重松清さんの「一人っ子同盟」(新潮文庫)を、読みました。
主人公は、小学6年生の男の子
お話の時代は、どの家庭も子どもが多く、一人っ子は男の子と同級の女の子だけ
季節が進む中で、男の子にはお兄さんがいたこと、
女の子は家族構成が変わったことが話されます。
あとがきの中で作者は、「こどものもどかしさ」を描こうとしたと述べています。
作中の子どもたちが、
幸せなおとなになっていますようにと、願いを込められます。
毎日外来の診察で出会う子ども達が、どんなおとなに育っていくのか、
わたしも 子ども達のしあわせを 祈りたいと思います。
2017年7月30日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.07.03
カンガルーの本棚 キミスイ
住野よるさんの「君の膵臓をたべたい」(双葉文庫)を、読みました。
主人公の高校生の男の子と、つきあい始めたばかりの彼女
真反対の性格のふたりが、よりそい 求めあい
そして、衝撃のラスト
荒削りな文章から伝わる 若者の悲しみ
題名に込められて思いが伝わります。
2017年7月3日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.07.02
カンガルーの本棚 哀しみの連鎖
遠田潤子さんの「鉄の鉄樹」(光文社文庫)を、読みました。
庭師の主人公の愛と再生の物語
食べること、灰皿、苔の庭 バイオリン
散りばめられた言葉がつながるとき、愛の物語が
そして、主人公につながる人々の 再生の物語が聞こえだします。
「これはすごい」
すごい小説に出合いました。
2017年7月2日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.07.01
カンガルーの本棚 父の秘密
遠田潤子さんの「あの日のあなた」(ハルキ文庫)を、読みました。
主人公「ある」くんの、父の急逝から始まる家族の物語。
名前に隠された出生の秘密
女子高生との出会い
人と人とのつながりと、喪に服すことの意味
重いけれど、こころの奥底まで揺さぶられる 小説との出会いです。
2017年7月1日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.06.12
カンガルーの本棚 不思議な体験
椰月美智子さんの「消えてなくなっても」(角川文庫)を、読みました。
カッパや、カラス天狗など この世のものでない者たちが現れて、
生の世界と死の世界とが重なり合い、主人公の心が清められていく。
読み終えた後の懐かしさとすがすがしさ。
不思議な心もちにさせてくれる1冊です。
2017年6月12日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.05.22
カンガルーの本棚 夜明けの一冊
おしおさなえさんの「活版印刷三日月堂 海からの手紙」(ポプラ文庫)を読みました。
小さな印刷所をめぐる 4つの物語
ちょうちょ、あわゆき、かいがら、そして西部劇と、鍵になる出会い
先生から男の子、男の子から若い女性 そして中年男性へと
不思議な物語はつなります。
4月になり、新入学、自然学校の説明、アレルギー学会の準備と忙しく、
1冊の本も読めないうちに、5月も半ばも過ぎました。
4時に目を覚まし、夜明けに読み終えた一冊は、
わたしを本の世界に戻してくれる魔法の力を持っていました。
2017年5月22日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.04.24
カンガルーの本棚 蝉の鳴き声
佐伯泰英さんの「声なき蝉・上・下」(双葉文庫)を、読みました。
累計2000万部が販売されたという「居眠り磐音」シリーズの最新版
主人公は かわって磐音の息子、空也の修行の物語。
日曜の朝、二時から起きだし、明け方までに下巻を読み終えるしあわせ。
巻末の作者 佐伯氏のメッセージが こころに残ります。
「書店が近くにある読者諸氏にお願い申します。書店さんが近くにない方は、
大きな町を訪れた折にふらりと本屋の書棚を覗いてください。
そして、だれの本でもいい、手にとって紙の本の感触を改めて確かめてください。
電子書籍など出版物が生き残る道は残されているのだろう。
だが、その前に書店さんで
『ああ、今の本の傾向はこんなふうか』と
自分の目と手で確かめていただきたい。
それが書店さんを元気づけ、小説家を生き残らせる道なのです。」
2017年4月24日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.04.23
カンガルーの本棚 夏が来て
東直子さんの「いとの森の家」(ポプラ文庫)を、読みました。
主人公は、小学4年生の女の子
父親の都合で、人里離れた村に引っ越してきます。
そこでの出会いと、豊かな自然の中で、
少女は少しずつ、自分が歩む道を見つけていきます。
虫や猫たち、そして土のにおいが
手を延ばせば届きそうに思えるほどに、
作者の美しい語り口に引き込まれます。
新しい作家との出会いは、なによりのごちそうです。
2017年4月23日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.04.15
カンガルーの本棚 なりたいもの
東直子さんの「とりつくしま」(ちくま文庫)を、読みました。
「とりつくしま」とは、亡くなった人の魂が、
この世に戻ってきて とりつく「もの」のこと。
母は、息子の野球に使うロージンに
幼子は、母と通った公園の青いジャングルジムに
妻は、夫が大切にしているマグカップに
夫は、妻が書き続ける日記帳に
少女は、片思いの男の子の彼女が使うリップに
娘は、恩師が使う白檀の扇子に
文庫本には、「・・・」になって「・・・」をしてみたい、という栞が挟まれています。
11の短いお話は、亡くなった人の想いのすべてを込めて 終わります。
2017年4月15日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.04.09
カンガルーの本棚 ことばの力
原田マハさんの「本日は、お日柄もよく」(徳間文庫)を、読みました。
主人公は、どこにでもいる普通のOL
親友の結婚式でやらかした失態からであった、ことばの魔術師
導かれるままに ことばの魔力に引き込まれ、
幼馴染の門出に ちからを尽くします。
「困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、
想像してみるといい。
三時間後の君、涙がとまっている。
二十四時間後の君、涙は乾いている。
二日後の君、顔を上げている。
三日後の君、歩き出している。」
小説を読み、励まされ、わたしも主人公のように、
自分の道を こころ新たに歩いていこうと思います。
2017年4月9日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.03.25
カンガルーの本棚 うつコミック
田中圭一さんの「うつヌケ」(角川書店)を、読みました。
うつをテーマにした、コミック本です。
大槻ケンヂさんや、熊谷達也さんなど著名人の
18のうつ脱出実体験が収録されています。
生真面目で、責任感が強い人ほど、うつになりやすいと言われています。
本書は、コミック版ですが、軽くて深い中身の1冊です。
2017年3月25日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.03.23
カンガルーの本棚 2年半ぶりの再会
三上延さんの「ビブリア古書堂の事件手帳7」
(メディアワークス文庫)を読みました。
古書にまつわる人間模様を描く作品シリーズの
今回のテーマはシェークスピア
最後に隠されている どんでん返し
シリーズ前作は、2014年12月発刊ですから、
2年3か月ぶりの新作ですが、一気読みで楽しめる作品です。
2017年3月23日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.03.20
カンガルーの本棚 新たな出発
宮部みゆきさんの「小暮写眞館」(新潮文庫)を、読みました。
写るはずがないものが、写っている写真。
持ち込まれた写真の謎解きを続けるうちに、
亡くした妹の記憶をよみがえらせる英一青年
出会いと別れ、そして希望への旅立ち
ミステリー仕立ての温かい物語です。
2017年3月20日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.03.08
カンガルーの本棚 白やぎさんと黒やぎさん
湊かなえさんの「往復書簡」(幻冬舎文庫)を、読みました。
手紙のやり取りの中で暴かれる、隠されていた事実
思い出したくない事実が明らかになるにつれて、大きくなる心の揺らぎ
そして、物語の最後は・・
3つの短い物語のどれもが、心に残ります。
2017年3月8日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.03.02
カンガルーの本棚 カブキブって
榎田ユウリさんの「カブキブ」(角川文庫)を読みました。
主人公は、歌舞伎大好きな高校生
親友を誘い、演劇部の花形を引き抜き、知り合い、知り合いの知り合いを巻き込んで、
歌舞伎同好会を立ち上げます。
初めておこなう公演直前のドタバタ劇
そして・・
井戸書店の森店長さんに勧められた全五巻
おもしろくて、元気になれるシリーズです。
2017年3月2日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2017.01.08
カンガルーの本棚 アニメで生理学
清水茜さんの「はたらく細胞④」(講談社)を、読みました。
主人公は、なにをやってもドジな赤血球の女の子
次々と現れる外敵から、免疫細胞が身体を守るお話です。
今回の敵は、黄色ブドウ球菌、デングウィルス、キャンピロバクタ
好中球、NK細胞、ランゲルハンス細胞とともに、
身体の平和のために、熱いハート戦います。
見ているだけで楽しく、生理学の基礎が学べます。
2017年1月8日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2016.12.31
カンガルーの本棚 道を究める者たち
木内昇さんの「櫛挽道守」(集英社文庫)を、読みました。
幕末の木曽路を舞台に、櫛作りに命を懸ける職人たちの物語。
女の身で、父の技を受け継ごうとする主人公「登瀬」。
弟の早世、妹の不本意な結婚生活、そして夫を受け入れることができない日々
物語は、主人公の弟が書き残した絵草子を読み、
こらえていた思いに涙することで、夫が背負ってきた苦難に気づき、
夫婦が競うように櫛づくりの高みを目指すところでページを終えます。
今年105冊目となる小説は、
読み終えた後も、しばらく心の高まりが鎮まらない作品でした。
また一冊、心に残る本に巡りあえました。
今年一年、ブログにお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
2017年も、引き続きよろしくお願いいたします。
2016年12月31日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2016.12.28
カンガルーの本棚 お礼のお駄賃
森浩美さんの「家族連写」(PHP文芸文庫)を、読みました。
8つの掌編からなる、家族の物語。
その中の一つ「お駄賃の味」に、ひかれました。
貧しくて、いつもおなかをすかせていた少年時代。
お手伝いを頼まれて、その代償にといただいた親子丼のおいしさ。
時を経て、主人公の心に、その時の温かい味がよみがえります。
人と人とのつながりの温かさを教えてくれる作品です。
2016年12月28日
いたやどクリニック 木村彰宏