カンガルーの小部屋

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  • 2016.12.17

    カンガルーの本棚 100冊目は怒る富士

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    新田次郎さんの「怒る富士・上下」(文春文庫)を、読みました。

    宝永の大噴火により、砂に埋もれた村々

    幕府は税金を課さない代わりに、救済もしないという「亡所」の扱いをします。

    村人は、「棄民」とされ、死んでいく自由を与えられます。

    これに立ち向かう関東郡代の伊奈忠順

    お話は史実とフィクションとを織り交ぜながら進みます。

    前進座の特別公演が、2017年3月14日に神戸で決まりました。

    小説の世界が舞台でどう展開するのか楽しみです。

    今年100冊目の読書になりました。

           2016年12月17日

           いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.12.10

    カンガルーの本棚 憲法の番人

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    佐藤功さんの「憲法と君たち」(時事通信社)を、読みました。

    1955年に書かれた本の、復刻版です。

    押し付け憲法という中傷は、その当時からありましたが、

    日本国憲法の作成に深くかかわられた著者は、人類の英知の到達点だと明確に否定されます。

    以下、本文中より抜粋します。

    「裁判所も憲法の番人だし、また国会も、内閣も、議員や政党もじつはみんな憲法の番人なはずなのだが、国民はそれらの番人のそのまた番人だということになる、最後に憲法を守るのは国民の仕事だ

    多くの日本人が、あの戦争で命を捨てた。また、あの原子爆弾で二十何万の人が死んだ。

    こういうふうに考えれば、今の日本の憲法を、どんなふうに変えてもいいということにはならないということが、君たちにもわかるだろう。

    民主主義と、基本的人権と、そうして平和、この三つはどうしても変えてはならないことだということ・・

    憲法が君たちを守る。君たちが憲法を守る。」

    著者の熱いメッセージは、今の時代にこそ、私たちの心に響きます。

          2016年12月10日

          いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.11.30

    カンガルーの本棚 父の素顔

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    朝井まかてさんの「阿蘭陀西鶴」(講談社文庫)を、読みました。

    「好色一代男」「好色五人女」「日本永代蔵」「世間胸算用」など、江戸初期に浮世草子の作者として一世を風靡した井原西鶴の半生を、娘の目から描いた作品です。

    「好色一代男」を語る場面では、「読む者はな、それを己に重ね合わせて胸を躍らせたり口惜しがったりできる。・・・物語というのは自分の好きな時に好きなように読んで、百人おったら百通りの世之介が生まれるわけや」と、物語の本質を伝えます。

    それでも、家族を顧みず、家族に貧しい暮らしを強いる父を許すことができず、父を見る目は冷たく凍ります。

    母が早くして亡くなってからは、養子に出された二人の弟と離れて、父と二人の生活を余儀なくされます。

    その中で、父の家族への情愛に気づき始めます。

    人情時代小説を書くと、当代一の作者の期待通りの作品です。

            2016年11月30日

            いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.11.29

    カンガルーの本棚 いちから人権学習

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    「人権読本」(岩波ジュニア新書)を、読みました。

    フリーライター鎌田慧さんによる、15の解説文。

    1人の人間として:子どもの権利

    弱いおとしよりをどう支えるのか:高齢者福祉

    子どもの虐待とDV:家庭内の暴力

    そばに居ることから:障碍者とともに生きる

    など、社会が抱える問題を人権の視点から解説されます。

    どの解説文も、深く重く、人がともに生きることを、考えさせられます。

          2016年11月29日

          いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.11.28

    カンガルーの本棚 託された命

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    葉室麟さんの「陽炎の門」(講談社文庫)を、読みました。

    幼な友達の冤罪に、自分がかかわったのではないかと自責の念に苦しむ主人公

    その真相が明らかになった時、彼は敢然と黒幕に立ち向かいます。

    ことが成り終え、罪業深き自分を見つめる時、

    「散っていった者たちから、命を託されたのだと存じます」との

    妻からの一言に救いを見出します。

    託された命をどのように生きていくのか、作者からの問いかけが胸に届きます。

             2016年11月28日

             いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.11.23

    カンガルーの本棚 いつか訪ねてみたい

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    森沢明夫さんの「虹の岬の喫茶店」(幻冬舎文庫)を、読みました。

    切り立った岬にある喫茶店。

    青く塗られたお店の窓からは、遠くに富士が望めます。

    そこを訪れる悩みを抱えた人たち

    子どもと訪れる妻を亡くした男性

    就活がうまくいかずに、失意のままに立ち寄る青年。

    「おいしくなあれ」と心を込めて煎れられたコーヒーと、

    その人の人生にふさわしく選ばれた音楽

    喫茶店の老主人と過ごすうちに、明日への希望に光がさしこみます。

    どこにでもありそうで、なかなか出会えない

    そして、いつか訪れてみたい喫茶店。

    そんな気持ちになる小説です。

          2016年11月23日

          いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.11.20

    カンガルーの本棚 ドタバタの悲しさ

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    荻原浩さんの「母恋旅烏」(双葉文庫)を、読みました。

    夢破れ、いまはレンタル家族業を営む大衆演劇一家

    おかしさあり、涙ありの ドタバタ喜劇そのものの家族関係

    やがて、ひとりひとりと 家族を離れ・・

    おもしろうて やがて悲しき 作品です。

         2016年11月20日

         いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.11.04

    カンガルーの本棚 マニュアル人生

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    村田沙耶香さんの「コンビニ人間」(文芸春秋社)を、読みました。

    主人公は、コンビニに開店当時から務める30台のアルバイト店員。

    コンビニを訪れるお客の足音や、商品の音に

    生きている、必要とされていると 実感します。

    泣いている子どもに感じる 簡単に泣き止ませる方法や

    季節に応じた服の選び方など、

    その行動は、コンビニに居場所を見つけたアスペルガーの女性そのもの。

    発達を勉強している友だちからお借りし、一気読みしました。

    世の中の いろいろな考え方、感じ方を持つ方への理解が深まる一冊です。

              2016年11月4日

              いたやどクリニック 木村彰宏  

     

  • 2016.11.01

    カンガルーの本棚 見上げる星は

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    荻原浩さんの「メリーゴーランド」(新潮文庫)を、読みました。

    主人公は、地方公務員の中年男性

    お荷物になったテーマパークの再生を命じられます。

    旧態依然としたお役所の中で、彼の魂がはじけます。

    おもしろくて、やがて悲しき物語の最後に用意されていたのは、

    家族と見上げる夜空の星。

    「さわやかだけど、ほろ苦い」

    巻末の書評の最後のページまでが、いとおしくなる作品です。

          2016年11月1日

          いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.10.18

    カンガルーの本棚 ジェントルゴースト

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    荻原浩さんの「押入れのちよ」(新潮文庫)を、読みました。

    ジェントルゴーストとは、優霊のこと。

    死んでなお、残された人に尽くすゴーストたち。

    もちろん こわ~いお話も入っています。

    9編の不思議な物語を、お休みの一日堪能しました。

             2016年10月18日

             いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.10.13

    カンガルーの本棚 母娘ふたりで

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    中江有里さんの「結婚写真」(小学館文庫)を、読みました。

    主人公は中学2年生の娘と、若い恋人がいるシングルマザー

    わかりあい、つきはなし、揺れ動くこころ。

    しあわせは、誰かが運んでくるのじゃなくって、

    しあわせは、自分の中にあるはず。

    こう言い切る大人になった主人公のすがすがしい決意に、共感します。

    親と子の関係に悩むあなたに、お勧めの一冊です。

          2016年10月13日

          いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.10.12

    カンガルーの本棚 ややこしや

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    大沼紀子さんの「真夜中のパン屋さん・シリーズ」を、読みました。

    主人公は高校3年の女子生徒。

    真夜中にだけ開くパン屋さんで繰り広げられる人間模様。

    午前0時から始まり、午前4時までと続くシリーズは、

    飛躍がすごすぎて、ついていくのに苦労が必要です。

    それでも主人公を助け、温かく見守る人々に、救いを感じます。

    おいしそうなパンの描写とともに、こころがホッとする小説です。

            2016年10月12日

            いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.09.30

    カンガルーの本棚 なぜにゴリラ

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    アレルギーの勉強会にでかけると
    小児科の中村先生に 呼び止められます。
    「自費出版したのですけど・・」と、
    いただいたのが「ウガンダにゴリラを訪ねて」
    先生の紀行文に、ご主人が撮られた写真
    読み進めるうちに、気分はすっかりウガンダです。
    中村先生、ありがとうございます。
    2016年9月30日
    いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.09.29

    カンガルーの本棚 あったやもしれぬ

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    荻原浩さんの「誰にでも書ける一冊の本」(光文社文庫)を、読みました。

    主人公は広告制作会社を経営する中年男性。

    郷里に残した父の、危篤の報が届きます。

    母から手渡されたのは、父が書き残した原稿の山

    読み進めるうちに、父の生き方が浮かび上がってきます。

    150ページにも満たないこの小説が、生きるという意味を問いかけます。

           2016年9月29日

           いたやどクリニック 木村彰宏 

     

  • 2016.09.23

    カンガルーの本棚 あの日に帰りたい

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    荻原浩さんの「あの日にドライブ」(光文社文庫)を、読みました。

    主人公は、大手銀行から、タクシードライバーに転職した中年男性。

    不規則勤務で体は悲鳴をあげ、家族との関係もきしみはじめる

    昔の自分に戻れるとしたら、いつ頃に自分からやり直せばよいのか

    誰もが一度は考える問いに、答えは見つかりません。

    ほろ苦く、それでいて一筋さす光を感じさせる作品です。

          2016年9月23日

          いたやどクリニック 木村彰宏   

     

  • 2016.09.09

    カンガルーの本棚 赤に染まる街

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    重松清さんの「赤ヘル1975」(講談社文庫)を、読みました。

    1975年の春から秋にかけての、広島の少年たちの物語。

    父に連れられて、広島の街に住むことになったマナブ少年。

    出合う人の心の中に、消えないでいる戦争の災禍

    「よそもの」と言われながらも、少年はこの街を分かろうとし、

    「ひろしま」を好きになっていく。

    この年、広島カープは、念願のリーグ優勝を果たし。

    少年たちも友情を深めていきます。

    2016年の今年、25年ぶりのリーグ優勝を目前にしたカープ

    当時の中学生は、中年になり、

    いま、何を思っているのか、とても気になります。

            2016年9月9日

                    いたやどクリニック 木村彰宏

  • 2016.08.15

    カンガルーの本棚 止めることはできなかったのか

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    NHK取材班の「日本人はなぜ戦争へと向かったのか」

    (外交・陸軍編)(新潮文庫)を、読みました。

    世界から孤立し、戦争への道を進んだ日本。

    歴史を後から振り返り、

    止めることはできなかったのかという思いは、

    誰しも一度はいだかれたことかと思います。

    外交情報の共有のなさ、

    組織防衛が第一優先の国家機関

    排他的かつ刹那的な国民感情

    などが、取材資料から明らかになります。

    終戦の日に、お勧めの1冊です。

          2016年8月15日

          いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.08.03

    カンガルーの本棚 積み続けること

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    エドワード・ムーニー・Jrの「石を積むひと」(小学館文庫)を読みました。

    妻を亡くし、孤独に生きていく男の物語。

    妻が残してくれた手紙を道しるべに、若者の再生に力を尽くします。

    親子とはなにか、夫婦とはなにか

    子育ての原点を考えさせられる作品です。

          2016年8月3日

          いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.07.10

    カンガルーの本棚 戦争へと進む道

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    加藤陽子先生の「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」

    (新潮文庫)を、読みました。

    東大教授の加藤先生が、私立中高校の生徒に、

    日本の近代史を講義します。

    日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、満州事変、日中戦争、

    太平洋戦争

    この国が経験してきた戦争への過程と、戦後とが

    多くの資料とともに解き明かされます。

    加藤先生はあとがきの中に、このように書き記されます。

    「戦争となれば真っ先に犠牲となるはずの普通の人々が、

    なぜ、自己と国家を過度に重ね合わせ、

    戦争に熱狂してしまうのか」

    500ページ近くの大作を、投票日までに読み上げようと、

    数日間、殆どの時間をこの本と対峙することに使いました。

    「過去を正確に描くことでより良き未来の創造に加担すると

    いう、歴史家の本分にだけは忠実であろうと心がけました。」

    加藤先生の力作が、多くの方に読まれることを望みます。

            2016年7月10日

            いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.07.03

    カンガルーの本棚 家族のありかた

    重松清さんの「ファミレス」(角川文庫)を、読みました。

    3組の中年オヤジが直面する家族の問題。

    結婚をして、子どもが生まれ、年収が増え、家も大きくなる

    そんな右肩上がりの家族のありかたが、

    子どもが独立することで、微妙に崩れていきます。

    ファミレスは、ファミリーレストランなのか

    それとも、ファミリーレスの略なのか

    軽快な重松ぶしに乗りながら、家族のありかたを考えさせられます。

           2016年7月3日  

                   いたやどクリニック 木村彰宏 

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