-
2015.12.17
カンガルーの本棚 希望の街
重松清さんの「希望ヶ丘の人びと」(講談社文庫)を、読みました。
亡くなった妻が育った街、「希望ヶ丘」
そこに移り住む家族の物語
希望を無くした人は寄せ付けない、居場所のない街「希望ヶ丘」
あとがきの中で作者はこう書きます。
ニュータウンや家族が抱える病理があることは認めながらも
明るさや元気へと向かう物語
破天荒な登場人物の行動に、にやりとしながら、
希望とは、家族とは、子育てはと、考えさせられる1冊です。
2015年12月17日
いたやどクリニック 木村彰宏
-
2015.12.06
カンガルーの本棚 強くなれ
有川浩さんの「レインツリーの国」(新潮文庫)を、読みました。
ラノベ(ライトノベルズ)で知り合った二人。
ていねいに言葉を紡ぐ彼女には、
彼と会えない秘密がありました・・・
レインツリーは、「アメリカネムノキ」
花言葉は、歓喜・胸のときめき
「この~木、なんの木、気になる 気になる」という
日立のコマーシャルソングで知られる木
その花言葉に込められた願い。
読み進みながら、つらくて、あたたかくて
また1冊、おすすめ本が増えました。
2015年12月6日
いたやどクリニック 木村彰宏
-
2015.11.12
カンガルーの本棚 下町のプライド
池井戸潤さんの「下町ロケット」(小学館文庫)を、読みました。
宇宙ロケットのエンジンを制御するバルブシステムをめぐる、
競合会社、大企業の暗躍
「夢だけ追っかけても飯は食っていけないし、
飯だけ食えても夢がなきゃつまらない」
クリニックのことなのかと、大きくうなずくカンガルーがいます。
岸田事務長さんへの、課題図書に指定しました。
最高のエンターテインメント小説です。
2015年11月12日
いたやどクリニック 木村彰宏
-
2015.11.07
カンガルーの本棚 いつまでも歌いたい
宮下奈都さんの「終わらない歌」(実業之日本社文庫)を、読みました。
前作から3年がたち、主人公たちは高校生から、大学生あるいは社会人に、
音楽の道に進んだ玲は、自分の才能に行き詰まりを覚え、
「私は情熱がほしい。どんな障害をも越えていく情熱。
たぶんそれこそが、
才能だとか、個性だとか、それから努力だとか、
素質だとか、可能性、環境、遺伝、機会、
そんなようななんだか別々のようでいて実はとてもよく似た、
たちの悪いばけものに立ち向かう
唯一の武器なんかじゃないか」と思います。
やがて訪れる転機。
胸が熱くなる、青春小説です。
2015年11月7日
いたやどクリニック 木村彰宏
-
2015.11.03
カンガルーの本棚 そして歩きはじめる
宮下奈都さんの「よろこびの歌」(実業之日本社文庫)を読みました
主人公の玲は、高校2年生。
志望校に落ち、どうにでもなれという気持ちで通い始めた女子高校
同級生となじまず、なじもうとせず、余生を過ごそうとします。
合唱コンクールが、音楽を目指していた彼女の背中を押します。
なにのために歌うのか、誰のために歌うのか。
それは、未来のわたしに聞かせるため。
挫折を味わった少女が、未来への一歩を踏み出す瞬間を描きます。
高校時代から、ずいぶんと無駄な歩みを積み重ねてきた私の背中を
優しく後押ししてくれる小説です。
2015年11月3日
いたやどクリニック 木村彰宏
-
2015.10.29
カンガルーの本棚 勇気が出るレシピ
井吹有喜さんの「四十九日のレシピ」(ポプラ文庫)を、読みました。
妻を亡くした夫、母を亡くした娘。
訪れる失意と虚脱の日々に、残された手紙を見つけます。
「四十九日には、明るく盛大に送ってほしい」
妻が、そして母が望んでいたこと。
突然現れたヤンキー娘と、準備が始まります。
「あしあとの記」を作る中で、空白の白さが目立ちます。
やがて、物語は・・
家族の再生を願う、心温まる1冊です。
2015年10月29日
いたやどクリニック 木村彰宏
-
2015.10.28
カンガルーの本棚 それぞれの青春
椰月美智子さんの「恋愛小説」を、読みました。
20代の男女が織りなす恋愛模様。
笑いころげ、泣きはらし、裏切り、裏切られ、
優しく、身勝手で、おとなになり 思い返すときに、
それは「狂気の恋」そして、「ぎりぎりの恋」
身近に過ごせば、迷惑な主人公たちが、憎めなく
いつまでも心のなかを、駆け巡ります。
2015年10月28日
いたやどクリニック 木村彰宏
-
2015.10.25
カンガルーの本棚 レッツ・ビギン
重松清さんお「空より高く」(中公文庫)を、読みました。
廃校予定の高校に通う3年生。
先生の口から出る言葉は、「最後の・・」という枕詞
閉ざされた未来にとまどう彼らが、少しずつ目ざめます。
レッツ・ビギン
若い人たちだけではなく、
我々世代のお尻をも軽やかに後押ししてくれる1冊です。
2015年10月25日
いたやどクリニック 木村彰宏
-
2015.10.18
カンガルーの本棚 揺れ動くこころ
湯本香樹実さんの「春のオルガン」(新潮文庫)を、読みました。
小学校を卒業したばかりの12歳のトモミは、
祖母の死や隣家とのトラブルに、こころを傷めます。
わからないこと、理解できないこと、
どうしようもないことの前で
トモミは、立ちすくみます。
湯本さんのあとがき、
角田光代さんの解説がとてもいい。
おとなへと旅立つ少女の勇気を教えてくれる1冊です。
2015年10月18日
いたやどクリニック 木村彰宏
-
2015.10.14
カンガルーの本棚 しあわせのお手伝い
宮下奈都さんの「メロディ・フェア」を、読みました。
化粧品会社のビューティーパートナーに就職した結乃は、売り上げは伸びず、
どの商品を勧めればよいのか、迷うことばかりの新人さん
そんな彼女に転機が訪れます。
メイクで、人をハッピーに変える
ほんの少しのお手伝いが、結乃をワクワクさせ、成長させていきます。
映画「小さな恋のメロディー」に使われた、
ビージーズの名曲「メロディ・フェア」を聞きながら、
お化粧とは縁遠いわたしも、こころはすっかりメイクアップです。
2015年10月14日
いたやどクリニック 木村彰宏
-
2015.10.04
カンガルーの本棚 この道のむこうに
三浦しをんさんの「仏果を得ず」を、読みました。
文楽の道を究めようとする青年
とりまく師匠、相方、恋人
話は笑いのうちにすすみ、半分徹夜で読み切ります。
大切なものの順位、
青年は、文楽、彼女
恋人は、子ども、仕事、彼
この頃よく大切なものの順位を考えます。
あなたなら、どのように大切なものの順位をつけますか
2015年10月4日
いたやどクリニック 木村彰宏
-
2015.09.27
カンガルーの本棚 電車に乗って
有川浩さんの「阪急電車」を、読みました。
阪急今津線を舞台にした、各駅小説
宝塚から西宮北口までと、折り返してまた宝塚に
人と人との出会いがとても楽しく、
グーグルの地図を開きながら、街並みを想像します。
人の矜持がさりげなく描かれ、
お気に入りの一冊BOXに入れることにしました。
2015年9月27日
いたやどクリニック 木村彰宏
-
2015.09.24
カンガルーの本棚 新しいことば
宮下奈都さんの「窓の向こうのガーシュウィン」を、読みました。
体が弱く、誰とのかかわりも持てないままひっそりと暮らす19歳の少女。
介護ヘルパー先の老人と、額装を仕事にする男性との出会いの中で、
彼女の中の何かが変わり始めます。
ありがとう、ごめんなさい
おはよう、ただいま
日常の言葉が、はじめて生まれたかのように、少女の胸の中で踊り始めます。
不思議な、温かな成長の物語です。
2015年9月24日
いたやどクリニック 木村彰宏
-
2015.09.17
カンガルーの本棚 母の強さ母の弱さ
椰月美智子さんの「かっこうの親、もずの子ども」を、読みました。
不妊治療の末に授かった命
子どもの病気やけんかなど、仕事と育児の中で起きる様々な葛藤
迷い揺れ動く心と、愛する息子の日ごとの成長を見守る中で深まる愛情
女性の目でしか捉えることができない細やかな子どもの描写に
守ろうとする母の強さと、
失いたくないという母の弱さが伝わります。
読み終えて、すぐに周りの人にお勧めしたくなる1冊です。
2015年9月17日
いたやどクリニック 木村彰宏
-
2015.09.15
カンガルーの本棚 めぐりあえる幸せ
椰月美智子さんの「しずかな日々」(講談社文庫)を、読みました。
5年生になった男の子の、ひと夏のお話。
ホースでかける水の冷たさや、
お塩をふりかけてほおばるスイカの甘さ
最終ページに書かれた
「人生は劇的ではない。ぼくはこれからも生きていく」
この1行が、こころに残ります。
今年の100冊目も、大当たりの1冊になりました。
2015年9月15日
いたやどクリニック 木村彰宏
-
2015.09.09
カンガルーの本棚 生きづらさを抱えながら
穂高明さんの「かなりや」(ポプラ文庫)を、読みました。
虐待を受けていた女子高校生、パワハラで苦しむ青年
パニック障害で動けなくなる女性、
そして、忙しい日々の中に、こころをすり減らしていく医師
生きづらさを抱えた人を、
お寺の住職の家族が、やさしく支えていきます。
今年99冊目になる本は、いつまでも記憶に残りそうな1冊です。
2015年9月9日
いたやどクリニック 木村彰宏
-
2015.09.07
カンガルーの本棚 てこじいと一緒
湯本香樹実さんの「西日の町」(文春文庫)を、読みました。
10才の少年と母が暮らすアパートに、
「てこじい」が、転がり込んできます。
何も言わず、いつも壁に寄りかかり一日を過ごす「てこじい」
母の気がおかしくなりかけたとき、
「てこじい」は、バケツ一杯の赤貝を 海から採ってきます。
大人になった少年は、
その貝殻を見るたびに、西日さすアパートを思い出します。
祖父と、母と、少年との、大切な時間を思い出します。
2015年9月7日
いたやどクリニック 木村彰宏
-
2015.09.05
カンガルーの本棚 となりの他人
穂高明さんの「これからの誕生日」(双葉文庫)を、読みました。
バス事故で友だちを失い、ひとり生き残った千春を襲う罪悪感。
探そうとして見つけられない 生きていく意味
そんな千春の心を、まわりの人の目を通して描きます。
藤田香織さんが解説の中で書かれているように、
「相手の立場になって物事を考える」難しさを、
この小説は、それでも温かく伝えてくれます。
2015年9月5日
いたやどクリニック 木村彰宏
-
2015.09.02
カンガルーの本棚 向こうへの手紙
湯本香樹実さんの「ポプラの秋」(新潮文庫)を、読みました。
大きなポプラの樹に誘われて、母とふたりで暮らし始めたアパート。
小学生の千秋は、不思議なおばあさんに出合います。
おばあさんと交わした ふたりの秘密とは・・・
あたたかな、そして明日に踏み出す
静かな1歩へとつながる物語です。
2015年9月2日
いたやどクリニック 木村彰宏
-
2015.09.01
カンガルーの本棚 スタンド・バイ・ジー
湯本香樹実さんの「夏の庭」を、読みました。
いつも戸が閉まり、夏というのに一日こたつに座って過ごす
一人暮らしのおじいさん
ぼくは、友だちと3人で、おじいさんを見張ることにします。
やがて、3人とおじいさんの間に生まれる友情
夏が過ぎ、庭にコスモスが咲くころ、
少年たちは 大人へと歩き始めます。
日本児童文学者協会新人賞 受賞作品です。
2015年9月1日
いたやどクリニック 木村彰宏