カンガルーの小部屋

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  • 2015.10.18

    カンガルーの本棚 揺れ動くこころ

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    湯本香樹実さんの「春のオルガン」(新潮文庫)を、読みました。

    小学校を卒業したばかりの12歳のトモミは、

    祖母の死や隣家とのトラブルに、こころを傷めます。

    わからないこと、理解できないこと、

    どうしようもないことの前で

    トモミは、立ちすくみます。

    湯本さんのあとがき、

    角田光代さんの解説がとてもいい。

    おとなへと旅立つ少女の勇気を教えてくれる1冊です。

               2015年10月18日

               いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.10.14

    カンガルーの本棚 しあわせのお手伝い

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    宮下奈都さんの「メロディ・フェア」を、読みました。

    化粧品会社のビューティーパートナーに就職した結乃は、売り上げは伸びず、

    どの商品を勧めればよいのか、迷うことばかりの新人さん

    そんな彼女に転機が訪れます。

    メイクで、人をハッピーに変える

    ほんの少しのお手伝いが、結乃をワクワクさせ、成長させていきます。

    映画「小さな恋のメロディー」に使われた、

    ビージーズの名曲「メロディ・フェア」を聞きながら、

    お化粧とは縁遠いわたしも、こころはすっかりメイクアップです。

               2015年10月14日

               いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.10.04

    カンガルーの本棚 この道のむこうに

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    三浦しをんさんの「仏果を得ず」を、読みました。

    文楽の道を究めようとする青年

    とりまく師匠、相方、恋人

    話は笑いのうちにすすみ、半分徹夜で読み切ります。

    大切なものの順位、

    青年は、文楽、彼女

    恋人は、子ども、仕事、彼

    この頃よく大切なものの順位を考えます。

    あなたなら、どのように大切なものの順位をつけますか

                2015年10月4日

                いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.09.27

    カンガルーの本棚 電車に乗って

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    有川浩さんの「阪急電車」を、読みました。

    阪急今津線を舞台にした、各駅小説

    宝塚から西宮北口までと、折り返してまた宝塚に

    人と人との出会いがとても楽しく、

    グーグルの地図を開きながら、街並みを想像します。

    人の矜持がさりげなく描かれ、

    お気に入りの一冊BOXに入れることにしました。

                 2015年9月27日

                 いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.09.24

    カンガルーの本棚 新しいことば

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    宮下奈都さんの「窓の向こうのガーシュウィン」を、読みました。

    体が弱く、誰とのかかわりも持てないままひっそりと暮らす19歳の少女。

    介護ヘルパー先の老人と、額装を仕事にする男性との出会いの中で、

    彼女の中の何かが変わり始めます。

    ありがとう、ごめんなさい

    おはよう、ただいま

    日常の言葉が、はじめて生まれたかのように、少女の胸の中で踊り始めます。

    不思議な、温かな成長の物語です。

               2015年9月24日

               いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.09.17

    カンガルーの本棚 母の強さ母の弱さ

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    椰月美智子さんの「かっこうの親、もずの子ども」を、読みました。

    不妊治療の末に授かった命

    子どもの病気やけんかなど、仕事と育児の中で起きる様々な葛藤

    迷い揺れ動く心と、愛する息子の日ごとの成長を見守る中で深まる愛情

    女性の目でしか捉えることができない細やかな子どもの描写に

    守ろうとする母の強さと、

    失いたくないという母の弱さが伝わります。

    読み終えて、すぐに周りの人にお勧めしたくなる1冊です。

              2015年9月17日

              いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.09.15

    カンガルーの本棚 めぐりあえる幸せ

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    椰月美智子さんの「しずかな日々」(講談社文庫)を、読みました。

    5年生になった男の子の、ひと夏のお話。

    ホースでかける水の冷たさや、

    お塩をふりかけてほおばるスイカの甘さ

    最終ページに書かれた

    「人生は劇的ではない。ぼくはこれからも生きていく」

    この1行が、こころに残ります。

    今年の100冊目も、大当たりの1冊になりました。

              2015年9月15日

              いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.09.09

    カンガルーの本棚 生きづらさを抱えながら

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    穂高明さんの「かなりや」(ポプラ文庫)を、読みました。

    虐待を受けていた女子高校生、パワハラで苦しむ青年

    パニック障害で動けなくなる女性、

    そして、忙しい日々の中に、こころをすり減らしていく医師

    生きづらさを抱えた人を、

    お寺の住職の家族が、やさしく支えていきます。

    今年99冊目になる本は、いつまでも記憶に残りそうな1冊です。

               2015年9月9日

               いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.09.07

    カンガルーの本棚 てこじいと一緒

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    湯本香樹実さんの「西日の町」(文春文庫)を、読みました。

    10才の少年と母が暮らすアパートに、

    「てこじい」が、転がり込んできます。

    何も言わず、いつも壁に寄りかかり一日を過ごす「てこじい」

    母の気がおかしくなりかけたとき、

    「てこじい」は、バケツ一杯の赤貝を 海から採ってきます。

    大人になった少年は、

    その貝殻を見るたびに、西日さすアパートを思い出します。

    祖父と、母と、少年との、大切な時間を思い出します。

             2015年9月7日

             いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.09.05

    カンガルーの本棚 となりの他人

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    穂高明さんの「これからの誕生日」(双葉文庫)を、読みました。

    バス事故で友だちを失い、ひとり生き残った千春を襲う罪悪感。

    探そうとして見つけられない 生きていく意味

    そんな千春の心を、まわりの人の目を通して描きます。

    藤田香織さんが解説の中で書かれているように、

    「相手の立場になって物事を考える」難しさを、

    この小説は、それでも温かく伝えてくれます。

              2015年9月5日

              いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.09.02

    カンガルーの本棚 向こうへの手紙

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    湯本香樹実さんの「ポプラの秋」(新潮文庫)を、読みました。

    大きなポプラの樹に誘われて、母とふたりで暮らし始めたアパート。

    小学生の千秋は、不思議なおばあさんに出合います。

    おばあさんと交わした ふたりの秘密とは・・・

    あたたかな、そして明日に踏み出す

    静かな1歩へとつながる物語です。

              2015年9月2日

              いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.09.01

    カンガルーの本棚 スタンド・バイ・ジー

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    湯本香樹実さんの「夏の庭」を、読みました。

    いつも戸が閉まり、夏というのに一日こたつに座って過ごす

    一人暮らしのおじいさん

    ぼくは、友だちと3人で、おじいさんを見張ることにします。

    やがて、3人とおじいさんの間に生まれる友情

    夏が過ぎ、庭にコスモスが咲くころ、

    少年たちは 大人へと歩き始めます。

    日本児童文学者協会新人賞 受賞作品です。

                   2015年9月1日

                 いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.08.24

    ンガルーの本棚 月明かりの下を

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    穂高明さんの「月のうた」を、読みました。

    母を亡くした家族の再生の物語。

    娘、継母、母の友人、そして夫と、

    語り手を代えながら、それぞれの思いが描かれます。

    4つに分かれた章のタイトルは、

    「星月夜」「アフアの花祭り」「月の裏側で」「真昼の月」

    おすすめの本が、ひとつ増えました。

               2015年8月24日

               いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.08.21

    カンガルーの本棚 生と死の揺らめき

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    湯本香樹実さんの「岸辺の旅」(文春文庫)を、読みました。

    3年前に失踪した 夫が帰ってくる。

    夫に誘われるまま、見知らぬ旅をする日々。

    旅を続ける中で、生と死の境界が揺らめいていく

    ゆるやかな文体に引き込まれ、わたしも岸辺の旅人となります。

    不思議な、ふしぎな、こころ休まる小説です。

                 2015年8月21日

                 いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.08.17

    カンガルーの本棚 作り直し

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    羽田圭介さんの「スクラップ・アンド・ビルド」(文芸春秋九月特別号)

    を、読みました。

    30歳になろうとする無職の青年と、祖父との物語。

    心と体を鍛えることにより再生していく青年と、

    それが叶わない老人と・・

    介護とは何か、年老いてなお望むものは何か

    作り上げては壊していく

    人生の哀しみが描かれます。

    青年の、真直ぐではないが優しい気持ちに触れることができる1冊です。

                  2015年8月17日

                  いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.08.14

    カンガルーの本棚 話題の一冊

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    又吉直樹さんの「火花」(文芸春秋九月特別号)を、読みました。

    どうすれば世間に受け入れてもらえるのか

    努力と結果の乖離の中で、もがき悩む若手芸人たち。

    コンビを解散する最後のステージで、

    逆説的な表現で心情を吐露する場面に心打たれました。

    読み終えたあと、ほろ寂しさが残ります。

               2015年8月14日

               いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.08.13

    カンガルーの本棚 降る雨はいつか上がり

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    葉室麟さんの「霖雨」(PHP文芸文庫)を、読みました。

    江戸時代も末期、飢饉が続き、大塩平八郎の乱がおきるなど、

    社会不安が高まる時代。

    豊後日田で生きる兄弟の物語です。

    「ひとを生かそうとする道でしか世の中は変えられぬと思うのだ」

    降りしきる雨の中で伝える広瀬淡窓の言葉に、心打たれました。

    今年91冊目となる1冊は、わたしの記憶の奥深くに残ります。

                 2015年8月13日

                 いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.08.09

    カンガルーの本棚 重い1ページ

    1

    「絶歌」(太田出版)を、読みました。

    小児科の田村先生にお借りしたのですが、10日経っても少しも読み進みません。

    重い重い1ページ

    4分の1ほど読み、あまりにも心がこもらない文章に自分なりに納得し、

    もう読まないと宣言したものの、やはり気になり中盤から後半戦へ

    母親との会話、2人の弟との交流の中で、少しずつ彼の混乱、弱さ、本心が現れてきます。

    「人を殺すことは、なぜよくないのか」

    彼は問い続け、自分なりの答えを見つけます。

    この本を読みながら、さだまさしさんの「償い」を思い出しました。

    亡くなられた お二人の方に、あらためて哀悼の意を表します。

    彼が、自分のなした罪から逃げることなく、元少年Aからふつうの大人に変わられることを切に希望します。

                    2015年8月9日

                    いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.07.14

    カンガルーの本棚 不断の努力で

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    出口汪先生の「やりなおし高校国語」(ちくま新書)を読みました。

    以下、出口先生の「おわりに」からの引用です。

    「一人一人のパソコンの中に世界中の膨大な情報が流れ込む。それらを整理し、活用するのは論理力と、その土台となる国語力なのだ。」

    本書では、このような観点から、近代の名文を取り上げ解説を進めていかれます。

    その一つに丸山眞男氏の「「である」ことと、「する」こと」を選ばれています。

    以下、丸山先生の文からの引用です。

    権利のうえに眠る者

    「日本国憲法の第十二条を開いてみましょう。そこには、(この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない)と記されてあります。・・・この憲法の規定を若干読みかえてみますと、(国民はいまや主権者となった。しかし主権者であることに安住して、その権利の行使を怠っていると、ある朝目ざめてみると、もはや主権者でなくなっているといった事態が起こるぞ)という警告になっているわけなのです。」

    国語の勉強をするつもりが、図らずも「戦争法案」に対峙する話に出合うことになりました。

    豊かな国語力は、平和の上にこそ築かれていくものであることを教えられました。

                     2015年7月14日

                     いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.06.22

    カンガルーの本棚 わたしを信じて

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    中脇初枝さんの「わたしをみつけて」(ポプラ文庫)を、読みました。

    数日前に読んだ作品の感動が冷めないうちに、

    書店へ直行しました。

    主人公は、前作と同じ設定の街で働く看護士さん。

    生後すぐに、産婦人科の門の前に捨てられ、

    拾われたのが3月という理由で、つけられた名前は「弥生」

    新しく配属されてきた看護士長との出会いで、

    彼女は気づきます。

    自分は、一人ではなかったことを・・

    この本に出合えてよかったと思える1冊です。

                2015年6月22日

                いたやどクリニック 木村彰宏

     

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