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2015.07.14
カンガルーの本棚 不断の努力で
出口汪先生の「やりなおし高校国語」(ちくま新書)を読みました。
以下、出口先生の「おわりに」からの引用です。
「一人一人のパソコンの中に世界中の膨大な情報が流れ込む。それらを整理し、活用するのは論理力と、その土台となる国語力なのだ。」
本書では、このような観点から、近代の名文を取り上げ解説を進めていかれます。
その一つに丸山眞男氏の「「である」ことと、「する」こと」を選ばれています。
以下、丸山先生の文からの引用です。
権利のうえに眠る者
「日本国憲法の第十二条を開いてみましょう。そこには、(この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない)と記されてあります。・・・この憲法の規定を若干読みかえてみますと、(国民はいまや主権者となった。しかし主権者であることに安住して、その権利の行使を怠っていると、ある朝目ざめてみると、もはや主権者でなくなっているといった事態が起こるぞ)という警告になっているわけなのです。」
国語の勉強をするつもりが、図らずも「戦争法案」に対峙する話に出合うことになりました。
豊かな国語力は、平和の上にこそ築かれていくものであることを教えられました。
2015年7月14日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2015.06.22
カンガルーの本棚 わたしを信じて
中脇初枝さんの「わたしをみつけて」(ポプラ文庫)を、読みました。
数日前に読んだ作品の感動が冷めないうちに、
書店へ直行しました。
主人公は、前作と同じ設定の街で働く看護士さん。
生後すぐに、産婦人科の門の前に捨てられ、
拾われたのが3月という理由で、つけられた名前は「弥生」
新しく配属されてきた看護士長との出会いで、
彼女は気づきます。
自分は、一人ではなかったことを・・
この本に出合えてよかったと思える1冊です。
2015年6月22日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2015.06.21
カンガルーの本棚 ひとすじの希望が
中脇初枝さんの「きみはいい子」(ポプラ文庫)を、読みました。
急速に開発が進む住宅街で、綴られる6つの物語。
学級崩壊
児童の虐待
生涯がある子どもを育てること
母親の介護
重いテーマに、読み進める手が、何度も止まります。
ラストの ひとすじの希望の光を信じて・・
文庫本の帯には、次のようなキャッチコピー
「誰かの子どもだった、すべての人に」
お読みいただきたい1冊です。
2015年6月21日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2015.06.17
カンガルーの本棚 給食をおかわりして
下野新聞社編「貧困の中の子ども:希望って何ですか」(ポプラ新書)を読みました。
地域を歩き、隠れている子どもの貧困を浮き彫りにしたルポです。
給食が唯一の食事
兄弟でお代わりをして、翌日の給食が待ち遠しくって
お休みの日は、すきっ腹をかかえて お布団の中
希望ってなんですか
本書は、その問いかけに次の言葉を掲げます。
「貧困の中にいる子に寄り添い続けることは難しい。
でも寄り添う心を持つことは、きっとできる。
今よりも子どものことを考える社会になるということ。
『希望って何ですか』
子どもから問われたら、そういう社会こそが「希望」なのだと
答えたい。」
子どもに関わるすべての大人たちに、読んでいただきたい1冊です。
2015年6月17日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2015.06.10
カンガルーの本棚 ふつうの幸せ
加藤元さんの「嫁の遺言」(講談社文庫)を、読みました。
不器用に生きる人々を描いた 7つの短い物語。
登場人物はみなお金がなく、きれいなマンションとは無縁で
家庭にも恵まれず
それでも、どうしようもない人生を、
愚痴ることなく、覚悟して生きている。
人としての矜持を教えてくれる1冊です。
2015年6月10日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2015.03.22
カンガルーの本棚 母の名前を
加藤元さんの「泣きながら、呼んだ人」(小学館文庫)を
読みました。
4人の主人公とその母とが織りなす 4つの物語。
巻末の松本大介さんの解説が秀逸です。
「かって泣きながら呼んだ人からの自立。
母の思いと母への思いは断ち切られることなく、
次の世代へと続いてゆくのかも知れない」
子どもに何を与え、何を背負わせてしまうのか、
親子の出会いと、生きていく不思議さは、
語りつくすことはできません。
2015年3月22日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2015.03.08
カンガルーの本棚 永遠に在り
高田郁さんの「あい 永遠に在り」(ハルキ文庫)を読みました。
江戸時代末期、農村から身を起こし、
医師となって人々を助け、
そして北海道の開拓を夢見、
土に帰っていく関寛斎夫婦の物語。
一本の山桃の樹にこめられた愛の物語。
「人たる者の本分は、眼前にあらずして、永遠に在り」
本書の中で繰り返し描かれる言葉が、心に残ります。
2015年3月8日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2015.03.05
カンガルーの本棚 取り戻す過去
後藤健二さんの「ダイヤモンドより平和がほしい」(汐文社)を
読みました。
アフリカ大陸西海岸に位置する、シエラレオネ。
世界一美しいダイヤモンドの産地と、世界一平均寿命が短い国。
ムリア少年は、両親を殺され麻薬を打たれ、少年兵士にされます。
武装集団から逃げ出した少年は、保護施設に入り学びをはじめます
ぼくはここにいる。
どうか愛して欲しい。
どうか受け入れてほしい
少年の慟哭が聞こえます。
少年をみつめる後藤さんのあたたかな眼差しを感じます。
第53回産経児童出版文化賞受賞作です。
2015年3月5日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2015.02.25
カンガルーの本棚 わかりあえたら
東田直樹さんの「自閉症の僕が跳びはねる理由」(エスコアール)
を読みました。
どうして目を見て話さないの?
みんなといるよりひとりが好きなのはなぜ?
フラッシュバックってどんな感じですか?
跳びはねるのはなぜ?
いろんな物を回しているのはなぜ?
自閉症の子どもの行動を、東田さんは自分の体験に基づいて
解き明かしてくれます。
自閉症の子どもと仲良くなりたいあなたへの おすすめ1冊です。
2015年2月25日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2015.02.24
カンガルーの本棚 子どもの自立を妨げるもの
尾木直樹先生の「親子共依存」(ポプラ新書)を読みました。
テレビでみた「尾木ママ」の会話がおもしろく、手に取りました。
思春期の子どもの自立を妨げるもの3つ。
親の過保護、過干渉、無関心。
しかし、親側からすれば、就活不安や絆社会など、
そうせざるを得ない社会的背景があるとも述べられます。
子どもが主役の教育
ギャップ・イヤーの導入
奨学金制度の充実など、
子どもの自立を促す提案もなされています。
思春期の子どもさんがいる親御さん、必読の1冊です。
2015年2月24日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2015.02.21
カンガルーの本棚 デジタル・ヘロイン
岡田尊司先生の「インターネット・ゲーム依存症」(文春新書)を
読みました。
500万人とも言われる「インターネット・ゲーム依存症」
通勤電車の中でも、まわりを見ればスマホ・スマホ・スマホ
年配の方も、ゲームに熱中です。
熱中と依存症の境界は・・・
スマホやゲーム機を取り上げるだけでは解決できない依存症
本書は、その現状と対策とが掘り下げて述べられています。
不登校やひきこもりとの親和性が強く、
人格崩壊にもつながりかねない「インターネット・ゲーム依存症」
現代人必読の1冊です。
2015年2月21日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2015.02.19
カンガルーの本棚 彼が残したもの
後藤健二さんの「もしも学校に行けたら」(汐文社)を
読みました。
アフガニスタンの内戦の後、いち早く現地に入り、
後藤さんは 人々の暮らしを その目で確かめます。
以下、後藤さんのあとがき(P132)からの引用です。
『「対テロ戦争」「テロとの戦い」とわたしたちがまるで
記号のように使う言葉の裏側で、
こんなにたくさんの人たちの生活が
ズタズタに破壊されていることを、知らないでいたのです、
あるいは知らせずにいたのです。
自分は、いかに盲目的だったかと激しく自分を責めました。・・
その中で、唯一の希望は子どもたちです。
わたしたちにできることは、さまざまな方法で、
彼らに手をさしのべ続けることなのではないか、そう思います。』
後藤さんの著書が、読み拡がることを願います。
2015年2月19日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2015.02.14
カンガルーの本棚 静かな物語
初野晴さんの「向こう側の遊園」(講談社文庫)を、読みました。
「ハルチカシリーズ」の明るさ、騒々しさに比べ、
静かで悲しくて、不思議なヒトと動物の物語。
次に手に取る本も、初野作品に決まりです。
2015年2月14日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2015.02.13
カンガルーの輪舞曲 みんなの力で
2月13日 奈良県の栄養教諭研修会に出かけました。
県下から、100名近くの学校栄養士さんが集まられました。
食物アナフィラキシー対策の実務は、栄養士さんと養護の先生が
担っておられます。
ともすれば、教科の先生の中では孤立しがちとお聞きします。
食物アナフィラキシーが起きたときには養護の先生が
中心になられますが、
起こさないための対策の中心は栄養士さん。
ロールプレイングを通じて、お互いの仕事への理解を
深めていただけたでしょうか。
食物アナフィラキシーを起こす子どもが、安全に学校生活を
過ごすために、先生方のお力添えを、よろしくお願いいたします。
同行いただいた新田栄養士さん、本田栄養士さん
お疲れさまでした。
2015年2月13日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2015.02.12
カンガルーの本棚 おもしろ深い青春
初野晴さんの「ハルチカシリーズ3・4」(角川文庫)を
読みました。
3作目のタイトルは、「空想オルガン」
収められている4つの短編の中で「十の秘密」がおもしろい。
4作目のタイトルは、「千年ジュリエット」
4つの短編の内「エデンの谷」は、音楽教育の現状
「失踪ヘビーロッカー」は、どたばたサスペンス
そして「千年ジュリエット」は、悲しい物語。
どの短編も、社会的な問題を含みながらも、おもしろく、ほろ苦く
かんがるうっ子と、読後感想で大盛りあがりしました。
もう一度読んでみたいなと思うシリーズ作品です。
2015年2月12日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2015.02.08
カンガルーの本棚 強さと優しさと
初野晴さんの「退出ゲーム」「初恋ソムリエ」(角川文庫)を
読みました。
「ハルチカ・シリーズ」の1作目と2作目の作品です。
廃部寸前の吹奏楽部に入部したチカとハルタ。
2人を難問が次々とおそいます。
かんがるうっ子に勧められ、読みだしたものの
おもしろくて止まりません。
大矢博子さんの解説文を読むと、納得です。
「いったい強さって、何? 優しさって?
私なりの答えはこうだ。
強さとは、知性である。
優しさとは、想像力である。
危機に面したとき、慌てずに正しく状況判断できる知識と、
その知識を系統立てて使える知恵。
それを強さと呼ぶのではないか。
目には見えない他人の心や背景を、我がことのように受け止め、
思いやれる想像力。
それを優しさと言うのではないか・」
大矢さんは、「ハルチカ・シリーズ」を、このように評されます。
かんがるうっ子 一押しの シリーズです。
2015年2月8日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2015.01.27
カンガルーの本棚 貧しさの再生産
新井直之さんの「チャイルド・プア」(TOブックス)を
読みました。
新井さんはNHK報道番組のディレクターさんです。
2012年10月に放送された番組が、書籍化されたものです。
車上生活を強いられた中学生
母親を失って引きこもった19歳
ホームレスだった25歳 などなど
社会の底辺で苦しむさまざまな若者が登場します。
「子どもの貧困」は、見えないのではない。
大人が見えなくしているのではないか。
新井さんは静かに訴えます。
子どもを知る手掛かりとなる1冊です。
2015年1月27日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2015.01.25
カンガルーの本棚 ほろにがいRUN
米澤穂信さんの「ふたりの距離の概算」(角川文庫)を
読みました。
古典部に属するホータロー・える・里志・摩耶花の高校生の物語。
そこに、新入生が入部することからドラマは始まります。
マラソン大会のコースを走りながら、謎ときは進みます。
友だち、そして恋ばな。
終わってみれば、ほろ苦い青春のひとこま。
何十年も前の世界に引き戻されます。
かんがるうっ子との共通の話題が、ひとつ増えました。
2015年1月25日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2015.01.23
カンガルーの本棚 それぞれの想い
米澤穂信さんの「遠まわりする雛」(角川文庫)を、読みました。
神山高校古典部に在籍する、4人の高校生の物語。
バレンタインや、ひな祭りに起きる小さな事件の
謎ときを通して描かれる主人公の心の揺れ。
紙面から、青春の香が立ちのぼります。
かんがるうっ子 いち押しの一冊です。
2015年1月23日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2015.01.19
カンガルーの本棚 マクロな一冊
水野和夫さんの「超マクロ展望・世界経済の真実」
(集英社新書)を読みました。
年末に手にした「資本主義の終焉と歴史の危機」の作者です。
本作は、哲学者・萱野稔人氏との対談集です。
行き詰りつつある世界経済。
新自由主義にもとずく成長戦略への疑問。
明日の経済は、どの方向を目指すのか などなど
毎日の生活や診療活動の向こうに待っているものを
本書は教えてくれます。
2015年1月19日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏