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2014.12.16
カンガルーの本棚 鎮西一の
葉室麟さんの「無双の花」(文春文庫)を、読みました。
関ヶ原の戦いに敗れた後、旧領地に戻れた唯一人の武将
という後ろ書きに引かれて、本書を手に取りました。
豊臣時代から、徳川時代へと、大きく歴史が移り変わる時に、
極めて現実かつ未来志向な生き方(解説・植野かおり氏より)を
貫いた主人公の姿が、葉室さんの筆でいきいきと蘇ります。
痛快な気持ちにさせてくれる1冊です。
2014年12月16日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.12.14
カンガルーの本棚 跳びはねる理由
東田直樹さんの「続・自閉症の僕が跳びはねる理由」
(エスコアール)を読みました。
東田さんのことは、NHKで放送された番組で知りました。
キーボードを使い、自分の考えをしっかりと伝える青年として、
驚きと感動の気持ちで、番組を見つめました。
著書を読んでみたいと思ったものの、書店では売り切れ続出。
ようやく三宮まで出かけて、手に入れました。
「ひとりひとりが大切な人であるように、
僕が自閉症として生まれてきたことには、
きっと大きな意味があるに違いありません。」
終わりの言葉で、東田さんはこのように自分を見つめています。
簡単な言葉で綴られたメッセージの中に、
深い意味が込められている1冊です。
2014年12月14日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.12.07
カンガルーの本棚 大人になっていく君に
重松清さんの「きみの町で」(朝日出版社)を、読みました。
初めて人生の「なぜ?」と出会ったとき――きみなら、どうする?
一緒に立ち止まって考え、並んで歩いてゆく、8つの小さな物語です。
(本書の紹介記事より)
「こども哲学」という絵本シリーズの付録として書かれましたが、
大人のわたし達にも、深い問いかけを投げかけます。
2014年12月7日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.11.13
カンガルーの本棚 女の子の眼には
重松清さんの「峠うどん物語」(講談社文庫)を、読みました。
祖父母が営むうどん屋さんの前に、市の斎場ができます。
それからは、悲しみを背負った人たちが、
心を温めるために、店の暖簾をくぐります。
お手伝いに訪れる中学二年生の主人公は、
いろいろな出会いを重ねながら、少しずつ大人に近付いていきます
生と死を うどんの湯気と一緒に考えさせられる 1冊です。
2014年11月13日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.09.25
カンガルーの本棚 蟻のごとく
藤沢周平氏の「蝉しぐれ」(文春文庫)を、読みました。
子どもが通う学校の課題図書に選ばれた作品ですが、
読後に子どもから、借り受けました。
東北の小藩内の勢力争いで父を失う 文四郎少年。
父の亡骸を大八車に乗せ坂道を登る場面には、涙を禁じ得ません。
20年の時を過ぎ、愛する人との再会も、
人の世のはかなさを感じさせます。
昭和61年に連載されたと言いますから、
30年近く前の作品です。
誕生日の月に、思い出となる1冊に出会いました。
2014年9月25日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.09.22
カンガルーの本棚 夜空を見上げ
葉室麟さんの「銀漢の賦」(文春文庫)を、読みました。
銀漢とは、漢詩の中で表現される「天の川」のこと。
3人の若者は、星空に、大人の世界を垣間見ます。
藩に起きる政変や一揆。
敵になり、味方になりながら、時は流れます。
「頭に霜を置き、年齢を重ねた漢(おとこ)も、
銀漢かもしれない」
葉室麟さんの本が、また好きになりました。
第十四回松本清張賞受賞作です。
2014年9月22日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.09.19
カンガルーの本棚 川あかり
葉室麟さんの「川あかり」(双葉文庫)を、読みました。
藩で一番の臆病者と言われた七十郎が、刺客になる。
雨続きで川止めになり、盗賊宿で過ごすうちに
青年は、様々な体験をしていきます。
川明けの前夜、宿の娘にこう告げられます。
「もうじき、川明かりが見えます。
日が暮れて、あたりが暗くなっても川は白く輝いているんです。
なんにもいいことがなくっても
ひとの心には光が残っていると・・・」
おかしくって、わくわくして、しんみりとして、
最高の時代小説です。
2014年9月19日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.09.18
カンガルーの本棚 うしの鳴き声
晴居彗星さんの「おとうさん、牛になる」(福音館出版)を読みました。
「おとうさんが、うっとうしく感じられるようになったあなたに」という
書店のポップと、表紙に引き寄せられて、手に取りました。
朝起きると、おとうさんは牛になっていた。
全編、モー、ウモアウという、うしの鳴き声
牛になったおとうさんの運命は、
娘や息子の生活は、
どこのご家庭でも起こりうる不思議な物語です。
2014年9月18日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.09.15
カンガルーの本棚 こころに残る会話
葉室麟さんの「蜩ノ記」(祥伝社文庫)を、読みました。
講演会の準備に明け暮れていたので、久しぶりの読書です。
映画化され、公開日が近いとあって、書店の目立つところに
平積みされています。
舞台は、豊後羽根藩。
ラスト近く、主人公と、住職との会話がこころに残ります。
「もはや、この世に未練はござりませぬ」
「未練がないと申すは、この世に残る者の心を気遣うてはおらぬと
言っておるに等しい。この世をいとおしい、去りとうない、
と思うて逝かねば、残された者が行き暮れよう」
第146回直木賞受賞作です。
2014年9月15日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.08.15
カンガルーの本棚 目をそむけないで
大山典宏さんの「隠された貧困:生活保護で救われる人たち」を、
読みました。
児童養護施設出身者
高齢犯罪者
薬物依存者
外国人貧困者
ホームレス・孤立高齢者
彼らにとって、生活保護が最後の命綱であることを、
実例を通して報告されます。
困難に陥った原因は一切問わずに、
「無差別・平等」に保護の対象とする・・
目をそむけないで、
本書は、見えない貧困を取り上げた、骨太の1冊です。
2014年8月15日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.08.10
カンガルーの本棚 言葉の不思議
今井むつみ先生の「ことばの発達の謎を解く」
(ちくまプリマー新書)を、読みました。
今井先生は、認知科学の研究者です。
本書では、赤ちゃんが 喃語から ものの名前(名詞)を覚え、
ものの動き(動詞)、ものの性質(形容詞)へと知識を増やし、
伝える言葉へと発達していく道筋を、科学的に証明されています。
言葉の発達についての専門書は、数多く読んできましたが、
わかりやすく解明されている本には、初めて出会いました。
ちくまプリマー新書は、中高生を対象としたシリーズです。
「ことばを大事にしてください。
ことばを使う時、一つ一つのことばの意味を深く考え、
大切に使ってください」
今井先生のラストメッセージが、胸に沁み入ります。
2014年8月10日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.07.25
カンガルーの本棚 ナナの気持ちは
アネラさんの「犬の気持ち、通訳します」(東邦出版)を、読みました。
アネラさんは、ハワイで活躍中のアニマルコミュニケーターさんです。
動物と会話ができる、その実話を、1冊の本にまとめられました。
飼い主さんに捨てられた犬、病気に侵された犬。
彼ら、彼女らが、何を考え、何を思っているのか、
アネラさんは、通訳します。
ナナ、あなたは何を考えていますか。
ハッちゃん、君は何を思っていますか。
わたしには、心を通訳する力はないけれど、
時間が許すかぎり、一緒に遊びたいと思います。
犬と会話ができるのか、客観的なデータはないのですが、
犬好きの人を、不思議な気持ちにさせる1冊です。
2014年7月25日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.07.16
カンガルーの本棚 家族を楽しむ
黒川伊保子さんの「家族脳」(新潮文庫)を、読みました。
母になる事で、タフでしなやかに、より現実的になっていく。
一方、母にならずに成熟していく女性脳は、
ある種の繊細さを失わず、緻密さがあり、
ロマンティックな想像力を時に溢れさせ、
女性愛を社会のために使える。
この一文を読むだけで、都議会での無神経なヤジとは
次元が異なる、黒川さんの奥深い女性観を感じます。
200pにも満たない小論なのですが、
読み応えがある1冊です。
2014年7月16日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.07.11
カンガルーの本棚 眠くなるけれど
重松清さんの「ポニーテール」を、読みました。
両親の再婚で、新しく姉妹になった、フミとマキの物語。
お墓参り、クリスマス、バレンタインデー
流す涙の多さだけ、ゆっくりと本当の家族になっていきます。
この1か月、講演の準備や、書籍の執筆、原著論文の勉強など、
意識して、我慢して、小説を読む時間を削ってきましたが、
「ポニーテール」に出会い、心が洗われる思いがしました。
3時前に目覚め、出勤までの数時間、一気に読み続けました。
次の日が眠くなるけれど、お構いなしに読み続けました。
大勢の方にお読みいただきたい、今年のベストの1冊です。
2014年7月11日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.05.31
カンガルーの本棚 アンパンマンの正義
やなせたかしさんの「わたしが正義について語るなら」
(ポプラ新書)を読みました。
出会いは新聞の書評です。
某中学校の入学試験の問題に取り上げられたという事で、
手に取りました。
子どもが初めに出会うキャラクターは「アンパンマン」
正義の味方と、悪者「バイキンマン」がいて、
分かりやすい筋書きと、ハピーエンド。
子どもに受ける訳を、私なりに解釈していましたが、
この本を読み、やなせたかしさんの人となりを知ると、
アンパンマンに込められた骨太なメッセージに気づかされました。
アンパンマンのテーマソング、
「なんのために 生まれて、なにをして 生きるのか・・」
子育て中の方も、子育てを終えられた方にも、
必読の一冊です。
2014年5月31日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.05.24
カンガルーの本棚 男はつらいよ
黒岩麻里先生の「消えゆくY染色体と男たちの運命」(秀潤社)を、読みました。
アレルギー学会の書籍ブースに立ち寄った時に手に入れました
著者は北海道大学理学研究員の准教授。
Y染色体から見た男たちの行動特性を、おもしろく
またわかりやすく解説されます。
人差し指の長さと薬指の長さの比と男性度
草食男子と性ホルモンの関係
モテル男のY染色体
退化し続けるY染色体などなど、
オトコの生物学的側面を解剖されます。
悩める男性諸君、
また男性とうまく歩調を合わせようと努力されている女性の方々に
お読みいただきたい1冊です。
2014年5月24日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.05.18
カンガルーの本棚 力をもらえる一冊
ひすいこたろうさんの、「キミを救う言葉」(ソフトバンク文庫)
を、読みました。
「キミに力をくれる言葉」の前編です。
ジョン・レノン、スティーブ・ジョブズ、アガサ・クリスティー
エジソン、ガンジー、オードリー・ヘップバーン
彼らはピンチから、どう復活したのか。
軽い読み物ですが、元気をもらえます。
井戸書店さんのお勧めの本です。
2014年5月18日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.05.07
カンガルーの本棚 野球の原点に
高橋秀美さんの「弱くても勝てます」(新潮文庫)を、読みました
放映中の二宮和也さん主演のテレビビドラマの原作です。
副題に「開成高校野球部のセオリー」とあるように、超進学校「開成学園」野球部を取材して書かれたルポです。
「守備は文系、打撃は理系」など、おもしろい発想に感心の連続
文末には、桑田真澄さんの解説記事
この解説がまた優れもの。
[練習は量より質を、服従ではなくリスペクトを、精神の鍛錬から心の調和へと変えること。それが先人の教えであり、体罰問題を解く鍵だと僕は思っています]
スポーツを話題とした、深い内容をもった1冊です。
2014年5月7日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.04.30
カンガルーの本棚 涙を流すのは
有田秀穂先生の、「脳からストレスを消す技術」(サンマーク文庫)を、読みました。
人のストレスには、3つの種類があると言われます。
①身体的ストレス
②快が得られなくなるストレス
③自分のしていることが認められないストレス。
なぜ、社会のために働かなければいけないのか
なぜ、人に優しくしなければいけないのか
なぜ、人と直接触れあうことが大切なのか。
先生は、脳科学の知見から、ストレスとの上手なおつきあいを説かれます。
ストレスフルなあなたに 是非お勧めの1冊です。
2014年4月30日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.04.28
カンガルーの本棚 青春物語
大下英治さんの「日本共産党の深層」(イースト新書)を、読みました。
恐ろしい暴露本かと思いましたが、中身は青春物語です。
吉良よし子さん、松本善明さん、市田忠義さん、小池晃さん
選挙速報の中でしか知らない名前ですが、
彼らが、どのようにして社会改革の道に近付き、活動を始められたのか、
おもしろく、うなづきながら、楽しく読む事が出来ました。
今の政治の閉塞的な状況の中で、一筋の灯りを見るような一冊です。
2014年4月28日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏