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2014.07.16
カンガルーの本棚 家族を楽しむ
黒川伊保子さんの「家族脳」(新潮文庫)を、読みました。
母になる事で、タフでしなやかに、より現実的になっていく。
一方、母にならずに成熟していく女性脳は、
ある種の繊細さを失わず、緻密さがあり、
ロマンティックな想像力を時に溢れさせ、
女性愛を社会のために使える。
この一文を読むだけで、都議会での無神経なヤジとは
次元が異なる、黒川さんの奥深い女性観を感じます。
200pにも満たない小論なのですが、
読み応えがある1冊です。
2014年7月16日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.07.11
カンガルーの本棚 眠くなるけれど
重松清さんの「ポニーテール」を、読みました。
両親の再婚で、新しく姉妹になった、フミとマキの物語。
お墓参り、クリスマス、バレンタインデー
流す涙の多さだけ、ゆっくりと本当の家族になっていきます。
この1か月、講演の準備や、書籍の執筆、原著論文の勉強など、
意識して、我慢して、小説を読む時間を削ってきましたが、
「ポニーテール」に出会い、心が洗われる思いがしました。
3時前に目覚め、出勤までの数時間、一気に読み続けました。
次の日が眠くなるけれど、お構いなしに読み続けました。
大勢の方にお読みいただきたい、今年のベストの1冊です。
2014年7月11日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.05.31
カンガルーの本棚 アンパンマンの正義
やなせたかしさんの「わたしが正義について語るなら」
(ポプラ新書)を読みました。
出会いは新聞の書評です。
某中学校の入学試験の問題に取り上げられたという事で、
手に取りました。
子どもが初めに出会うキャラクターは「アンパンマン」
正義の味方と、悪者「バイキンマン」がいて、
分かりやすい筋書きと、ハピーエンド。
子どもに受ける訳を、私なりに解釈していましたが、
この本を読み、やなせたかしさんの人となりを知ると、
アンパンマンに込められた骨太なメッセージに気づかされました。
アンパンマンのテーマソング、
「なんのために 生まれて、なにをして 生きるのか・・」
子育て中の方も、子育てを終えられた方にも、
必読の一冊です。
2014年5月31日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.05.24
カンガルーの本棚 男はつらいよ
黒岩麻里先生の「消えゆくY染色体と男たちの運命」(秀潤社)を、読みました。
アレルギー学会の書籍ブースに立ち寄った時に手に入れました
著者は北海道大学理学研究員の准教授。
Y染色体から見た男たちの行動特性を、おもしろく
またわかりやすく解説されます。
人差し指の長さと薬指の長さの比と男性度
草食男子と性ホルモンの関係
モテル男のY染色体
退化し続けるY染色体などなど、
オトコの生物学的側面を解剖されます。
悩める男性諸君、
また男性とうまく歩調を合わせようと努力されている女性の方々に
お読みいただきたい1冊です。
2014年5月24日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.05.18
カンガルーの本棚 力をもらえる一冊
ひすいこたろうさんの、「キミを救う言葉」(ソフトバンク文庫)
を、読みました。
「キミに力をくれる言葉」の前編です。
ジョン・レノン、スティーブ・ジョブズ、アガサ・クリスティー
エジソン、ガンジー、オードリー・ヘップバーン
彼らはピンチから、どう復活したのか。
軽い読み物ですが、元気をもらえます。
井戸書店さんのお勧めの本です。
2014年5月18日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.05.07
カンガルーの本棚 野球の原点に
高橋秀美さんの「弱くても勝てます」(新潮文庫)を、読みました
放映中の二宮和也さん主演のテレビビドラマの原作です。
副題に「開成高校野球部のセオリー」とあるように、超進学校「開成学園」野球部を取材して書かれたルポです。
「守備は文系、打撃は理系」など、おもしろい発想に感心の連続
文末には、桑田真澄さんの解説記事
この解説がまた優れもの。
[練習は量より質を、服従ではなくリスペクトを、精神の鍛錬から心の調和へと変えること。それが先人の教えであり、体罰問題を解く鍵だと僕は思っています]
スポーツを話題とした、深い内容をもった1冊です。
2014年5月7日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.04.30
カンガルーの本棚 涙を流すのは
有田秀穂先生の、「脳からストレスを消す技術」(サンマーク文庫)を、読みました。
人のストレスには、3つの種類があると言われます。
①身体的ストレス
②快が得られなくなるストレス
③自分のしていることが認められないストレス。
なぜ、社会のために働かなければいけないのか
なぜ、人に優しくしなければいけないのか
なぜ、人と直接触れあうことが大切なのか。
先生は、脳科学の知見から、ストレスとの上手なおつきあいを説かれます。
ストレスフルなあなたに 是非お勧めの1冊です。
2014年4月30日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.04.28
カンガルーの本棚 青春物語
大下英治さんの「日本共産党の深層」(イースト新書)を、読みました。
恐ろしい暴露本かと思いましたが、中身は青春物語です。
吉良よし子さん、松本善明さん、市田忠義さん、小池晃さん
選挙速報の中でしか知らない名前ですが、
彼らが、どのようにして社会改革の道に近付き、活動を始められたのか、
おもしろく、うなづきながら、楽しく読む事が出来ました。
今の政治の閉塞的な状況の中で、一筋の灯りを見るような一冊です。
2014年4月28日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.04.27
カンガルーの本棚 明日が見えないとき
ひすいこたろう氏の「キミに力をくれる言葉」(SB文庫)を、読みました。
カーネル・サンダース、出光佐三、マイケル・ジャクソン
安藤百福、野村望東尼、高杉晋作・・
「人は人のために生きると決断したとき人を超える。人を愛せよ」
「もっとも興奮するのは、他人のために生きるとき」
「青春とは人生のある時期をいうのではなく、心の持ち方である」
文体も軽く、読みやすく ポケット版の偉人伝と言えば、
お手軽すぎるのではと、思われるかもしれません。
この本を手に取るまでは知らなかった、
偉人と呼ばれるその人生を、少し知る事が出来ました。
力も、たくさんいただきました。
板宿駅前「井戸書店」の女性の店員さんお勧めの一冊です。
2014年4月27日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.04.26
カンガルーの本棚 父への挑戦状
岡田尊司先生の「父という病気」(ポプラ新書)を、読みました。
以前ご紹介した「母という病気」の続編です。
子どもにとって、母は、生物学的な安心感を与える存在。
父は、外の空気を子どもに持ち込む社会的な存在。
かっての家父長的な存在が否定された今、
父の存在は、希薄化してしまいました。
子どもが思春期をむかえるころ、
父の役割が高まると岡田先生は書かれているのですが・・
ラスト数ページに込められたメッセージに 心打たれます。
子育てに関わられている全ての男性に、お勧めの一冊です。
2014年4月26日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.04.25
カンガルーの本棚 わたし達の方法で
ヘンリー・S・ストークス氏の 「連合国戦勝史観の虚妄」(祥伝社新書)を、読みました。
読む事がないジャンルの本ですが、
飲み会の席で 友だちに勧められ、読みはじめました。
第二次世界大戦、東京裁判、従軍慰安婦問題、そして三島由紀夫。
著者はイギリス人ですが、日本に在住するうちに歴史認識が180度変わったと言います。
その変化の過程が今一つ伝わりません。
流行りの、「歴史認識の見直しを」という結論だけが、先行して見えます。
日本に住みながら、著者は日本の何を見てこられたのか、
そして、日本の誰との交友関係を大切にされたのか
隣国との関係が難しく感じられる今こそ、
歴史の流れを後戻りさせるのではなく、
わたし達の方法で、平和な未来を切り開いていきたいと思います。
2014年4月25日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.04.22
カンガルーの本棚 涙のツボ
デイビット・セインさん編集の「泣ける英語」(アース・スター)を、読みました。
中学英語で書かれた46のお話を集めた本です。
もちろん、日本語の対訳つき。
アメリカンドリーム、子どもの願い、などなど
英語圏の「涙のツボ」にはまります。
2014年4月22日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.04.09
カンガルーの本棚 歴史の片隅に
伊東潤さんの「城を嚙ませた男」(光文社文庫)を、読みました。
戦国の世に生きた、4人の武将と、彼をとりまく人々。
生き残るために、知恵を働かせ、
願いかなわず、時代の波に飲み込まれていく人々の姿を描いています。
物見 鯨 椿 石つぶて
どの作品も、心を揺さぶります。
板宿駅前「井戸書店」の森店長さんお勧めの、1冊です。
2014年4月9日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.03.30
カンガルーの本棚 サクラ咲く
辻村深月さんの「サクラ咲く」(光文社文庫)を、読みました。
中高生を対象に書かれた、3つの物語を集めたものです。
「自分を主張できない性格」を好きになれない女の子が、
不思議な文通を通じて、季節とともに大きく成長していきます。
あとがきは、あさのあつこさん。
このあとがきを読むだけで、得をした気持ちになります。
いつの間にか、少しだけ少年少女期に戻ってしまう1冊です。
2014年3月30日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.03.29
カンガルーの本棚 あの頃のわたし
重松清さんの「小学五年生」(文春文庫)を、読みました。
20才を大人の区切りとすると、10才の小学五年生は、
50%が大人で、50%が子ども
家族だけの生活から、少しずつ世の中のことが見えてくる年齢です。
重松さんは、その時期の少年を、17の短編で描きます。
あの頃の私は、恥ずかしがり屋で友だちも少なく、
自分が何をしたいのかもわからない、まじめさだけがとりえの子どもでした。
重松さんの小説は、いつも「あの頃のわたし」を思い出させてくれます。
2014年3月29日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.03.24
カンガルーの本棚 母から連なる私探し
岡田尊司先生の「母という病気」(ポプラ新書)を、読みました。
子どもが問題行動を起こしたり、成人になって不適応行動を起こしたりする背景には、
母との問題が潜んでいると精神科医師の岡田先生は述べられます。
人が世の中で生きていくためには、基本的な安全感や信頼感が不可欠です。
安全感や信頼感は、2~3才までの間に、母を中心とする身近な親しい人から 限りなく愛される事を通して築き上げていきます。
その時期に、適切な安全感や信頼感を築き上げる事ができないとすれば、
人は、一生をかけてそれを追い求めます。
岡田先生の本を読むと、母という存在の大きさに圧倒されます。
同時に岡田先生は次のようにも述べられます。
長くなりますが、全文をご紹介します。
「社会の近代化は、母親と子どもを孤立させ、子どもが母親から支配されやすい状況を生んだ。母親は忙しすぎて、子どもにかかわる暇も十分になかったり、不在がちな父親に代わって、子どもを厳しく指導しなければならない。だが、そんなスーパーマンのような母親を子どもは求めているのだろうか。子どもは、明るく優しく、困ったときに、そっと寄り添ってくれるお母さんでいてほしいだけではないのか。
豊かで快適になったはずの社会は、子どもから、本来の母親を奪ってしまってきたように思える。それが、母という病の増加をもたらしている大きな原因ではないだろうか。経済が豊かになっても、幸福になるどころか、生きることすら意味が感じられず、空虚感に苛まされる人が増えている一因が、そこにあるように思えてならない。
母と子どもに関わられている全ての人に、お読みいただきたい1冊です。
2014年3月24日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.03.17
カンガルーの本棚 日本の妖怪
今野晴貴さんの「ブラック企業・日本を食いつぶす妖怪」{文春新書}を、読みました。
ブラック企業は、若者の夢を食いつぶし、
食いつぶす夢がなくなれば、非情にも若者を切り捨ててしまう現代の妖怪です。
捨てられた若者は、精神を病み、社会参加の道も断たれてしまいます。
若年者の離職率の多さを耳にした事があります。
いわく、「労働意欲に欠ける」「昔の自分はもっと我慢をした」「権利ばかり主張する」・・
今野さんは、そう言った現代若者の精神風土では片づけられない企業のひずみを
ていねいに告発されます。
本書は、「大佛次郎論壇賞」を受賞した1冊です。
若者に関わる大勢の方にお勧めです。
2014年3月17日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.03.13
カンガルーの本棚 おもしろい1編
三浦しをんさんの、「きみはポラリス」を、読みました。
さまざまな形の11の恋愛を綴った短編集です。
なかでも「春太の毎日」を、おもしろく読みました。
フムフム、なるほど、そういうことか。
この短編だけでも、読む価値ありの1冊です。
2014年3月13日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.03.05
カンガルーの本棚 過ちを繰り返さないために
小出裕章先生の、「原発ゼロ」(幻冬舎ルネッサンス新書)を、読みました。
小出先生の本を読むのは、これで4冊目ですが、最新作「原発ゼロ」は、
福島原発で、今起きていること、廃炉への道 などを、
分かり易く ていねいに説明されています。
「私たちの時代にやったことは、私たちでケリをつける。未来の子どもたちには決して残さない。」
福島原発の過酷な事故から3年が経とうとしている今、小出先生の決意が伝わります。
2014年3月5日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2014.03.01
カンガルーの本棚 科学者の生き方
カンガルーの本棚 科学者の生き方
日野行介さんの「福島原発事故:県民健康管理調査の闇」(岩波新書)を、読みました。
3月に実施する健診に備えて、兵庫民医連から送られてきた一冊です。
日野さんは、毎日新聞の現役の記者。
原発事故後に組織された「県民健康管理調査」検討委員会のあり方に疑問を抱き、
取材を通じて明らかになったことを1冊にまとめられたものです。
以下、日野さんの書かれたエピローグからの抜粋を転載します。
「隠ぺいや情報操作が明らかになった時、『不安をあおらないため』『パニックを防ぐためだった』と、釈明する。
その理由は、被曝による被害を過小評価したい、ということに尽きるのではないか。
これから何十年にわたって福島第一原発事故の健康被害は問われ続けることになる。
その中で、歴史的な資料として一連の報道が役に立ってくれればと思っている。」
この言葉にジャーナリストの良心を感じます。
健康管理調査検討委員会には、専門家として多くの医師が名を連ねています。
大事故を前に、科学者としての生き方が、問われています。
2014年3月1日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏