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2024.05.03
カンガルーの本棚 自分の手で扉を開けて
坂木司さんの「動物園の鳥」(創元推理文庫)を、読みました。
動物園に、虐待された猫が相次いで発見される
動物を愛する女性と、ホームレス、
さらにはひきこもり探偵が学校に行けなくなった原因の男が登場し、
今回の謎解きが進みます。
降りの中に閉じこもったままの、ひきこもり探偵は
はたして自分の手で、鳥のかごをあけて、
大空に飛び立つことができるのか
シリーズ第3話も、心の奥底を描く作品です。
2024年5月3日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.05.01
カンガルーの本棚 こころの奥底に
坂木司さんの「仔羊の巣」(創元推理文庫)を、読みました。
ひきこもり探偵の今回の謎解きは
元気をなくした同僚の女性の、心の中
地下鉄のホームで、不可解な行動をとる中学生
やさしさに迷う主人公は祖母の言葉を思い出します。
「優しくしてあげればいいんだよ。
一番近くにいるひとからはじめて、
まだ手が届くようだったら、もう少し先の人に優しく
そういう風にしていけば、遠くにも届くだろう」
謎解きに込められた作者のメッセージに、心がひかれます
2024年5月1日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.04.25
カンガルーの本棚 部屋の中から
坂木司さんの「青空の卵」(創元推理文庫)を読みました。
ひきこもりの青年と、彼が唯一信頼する青年の物語。
夏から、秋、冬、そして春への季節がめぐる中で、
身近に起きる不思議な事件を、ひきこもりの青年は
その謎を、部屋の中から解き明かしていきます。
一風変わった友情物語に、引き込まれていく小説です。
2024年4月25日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.04.19
カンガルーの本棚 イベント続きの冬がきて
坂木司さんの「ウインターホリデー」(文春文庫)を読みました。
突然父親になった青年は、夏休みがおわり、子どもと別れの季節を迎えます。
そして、寒い季節が訪れて、クリスマス、お正月、バレンタインデー、ホワイトデーと
イベント続きの冬を過ごします。
時折訪れる我が子に翻弄されながら、
またひとつ父になっていく姿に、苦笑しつつ、一気読みします。
2024年4月19日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.04.05
カンガルーの本棚 ヤンキーとうさん
坂木司さんの「ワーキングホリデー」(文春文庫)を読みました。
主人公の青年は、元ヤンキーで、今はホストを稼業中。
そこに現れた小学生は、突然「おとうさん」と叫びます。
ホストをやめ、宅配便に勤め先を変えた青年は、
はじめて出会う我が子と、短い夏を過ごします。
次第に父になっていく青年の言葉と行動がおもしろおかしくて、
一気読みの1冊です。
2024年4月5日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.03.29
カンガルーの本棚 笑って泣いて
小川糸さんの「サーカスの夜に」(新潮文庫)を、読みました。
大きくなれない病気を抱えた少年は、
小さい時に見たサーカスに入ることを夢見ます。
トイレ掃除、食事係、
そこで出会う芸人たちに教えられ、綱渡りの芸を極めようと思い立ちます。
人を笑わせるってことは、人を傷つけたり哀しませたりすることよりも百倍も千倍も難しい
人生の哀しみを知らなくっちゃ、
相手を笑わせることなんてできないもの。
孤独を知っているからこそ、みんなでバカ笑いできる幸せを
ありがたく思えるのよ。
団員の言葉を胸に、少年は今日も綱に挑みます。
2024年3月29日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.03.26
カンガルーの本棚 からっぽの箱に
寺地はるなさんの「希望のゆくえ」(新潮文庫)を、読みました。
失踪した「希望」という名の弟を、たずね探す「誠実」という名の兄
弟が働いていた会社の同僚や、失踪後に住んでいたアパートの家主
そして、同居していた女性を探しだし、
弟の消息を尋ねるうちに、弟が抱えている心の闇に気づきます。
お菓子の空き箱に、大切なものを詰めるように、心の闇を埋めていく、
その先に、一筋の希望の光を見る思いがします。
難しいテーマが描かれた小説です。
2024年3月26日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.03.23
カンガルーの本棚 忍者で復活
山本甲士さんの「ひなた商店街」(潮文庫)を読みました。
アクションスターの夢が破れ、故郷の実家に戻った主人公
働き始めたおでん屋は、ひなびた商店街に残された5店舗のひとつです。
再開発の波が押し寄せ、いつ取り壊されてもおかしくない店に、
テレビの食レポが収録に訪れます。
なにか目新しいものをと頼まれて、
忍者のコスプレに身を包み、昔言葉でおでんを売ると、これがおおうけ。
他のお店も同じ路線で悪乗りをすると、これが若者や外国人にもバズります。
商店街の再生をかけて、今日も忍者姿の主人公は跳びまわります。
少し出来すぎの流れですが、楽しめる作品でした。
2024年3月23日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.03.17
カンガルーの本棚 次の百年へと
高田郁さんの「あきない世傳金と銀 幾世の鈴」(ハルキ文庫)を読みました。
本編に続く、その後の4つの物語
小間物商の友の精進
最愛の妹の今
そして、世の中に役に立ち「生き金」への決断
創業から百年が、数々の出会いと別れがあり、
守り続けた五鈴屋を、次の世代にどう託していくのか
幸の物語は続きます。
2024年3月17日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.03.12
カンガルーの本棚 明日を夢見て
朝井まかてさんの「グッドバイ」(朝日文庫)を読みました。
物語の舞台は、幕末は長崎の街
あぶら商を引き継いだ主人公大浦慶は、商売の先行きに不安を感じ、
外国との茶葉貿易に乗り出します。
そこで顔見知りとなるテキストルやウイリアム・オルト、そしてグラバー
茶葉工場と店舗を訪れる坂本龍馬、大隈重信、近藤長次郎などの幕末の志士たち
歴史の歯車がぐるりと回り、あるものは志を遂げ、あるものは志半ばで倒れ
その誰もがまだ10代、20代の若者であったことに驚きます。
広がっていく茶葉の商売、そして裏切りに会い、
山のような借財のなかで立ち上がっていく慶
幕末を彩る、もう一つの女性の物語です。
2024年3月12日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.02.27
カンガルーの本棚 18才のころに
伊吹有喜さんの「犬がいた季節」(双葉文庫)を読みました。
四日市市にある高校に、暮らすことを許された1匹の犬「コーシロー」
美術部の部員がお世話をすることになり、卒業後は後輩に引き継がれていきます。
1998年から、コーシローがなくなる2000年まで、
「コーシロー」が出会う高校3年生は
進路に悩み、恋にたじろぎ、友情を手に入れて、学校を後にします。
そして開かれた開校百年目の祝賀会で再開した彼らは、
18才のころに言えなかった、互いへの言葉を口にします。
作者伊吹さんが出身校をモデルにした、青春ドラマです。
2023年2月27日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.02.18
カンガルーの本棚 あたらしい視点で
エドワード・ブルモア先生の「うつは炎症で起きる」(草思社)を読みました。
エドワード先生は、ケンブリッジ大学の精神科医長を務められている、
神経科学の世界的なエキスパートです。
世界的に大きな社会問題となっている「うつ」
先生は、従来言われているストレスからくる「こころの病気」だけでなく、
体の炎症で作られるサイトカインが、脳神経細胞に作用しておきる道筋を解き明かされます。
200ページを超える大作ですが、おもしろく読了しました。
まだ1月ですが、今年の読書のベスト3になるかなと思います
2023年2月18日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.02.06
カンガルーの本棚 信じにくいけれども
アレクサンドラ・アンリオンさんの
「コロナワクチン その不都合な真実」(詩想社新書)を読みました。
新型コロナウイルスにたいするmRNAワクチン
その限界と副反応についての解説書です。
わかりやすい文体だけに、医学書のような説得力には欠けますが、
書かれていることが真実だとすれば、とんでもないこと
引用文献を検討し、もうすこし知識を増やそうと思います。
友人の小児科医の推薦図書です。
2024年2月6日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.01.24
カンガルーの本棚 教育の行く末
日経新聞社編の「低学歴国日本」(日経プレミアシリーズ)を読みました。
大学院進学率、引用論文数、教育や研究にかけられている公費額
世界の先進国と比べ、周回遅れとなっているこの国の現状が
具体的な数字を用いて、明らかにされていきます。
その背景にある、学歴社会、閉鎖的な教育界、先生たちの過酷な労働環境
この国の教育の行く末を憂い、問題提起する1冊です。
2024年1月24日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.01.22
カンガルーの本棚 ごはんが結ぶご縁
小野寺史宜さんの「とにもかくにもごはん」(講談社文庫)を読みました。
夫の突然の死をきっかけに、
「クロード子ども食堂」を開いた波子さん
食堂を訪れる小学生、中学生、そしてお年寄り
手伝いは、大学生や主婦の面々
食べるひとも、作る人も、それぞれに事情を抱え
ごはんをご縁に、ぶつかりあり、つながりあいます。
おいしくよろこぶ顔がある限り、ありがとうをうけとる笑顔がある限り、
「クロード子ども食堂」は、今日もみんなを待っています。
2023年1月22日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.01.17
カンガルーの本棚 風呂敷を首に巻いたネコ
重松清さんの「さすらい猫ノアの伝説」(講談社文庫)を読みました。
風呂敷を首に巻いた黒猫「ノア」のさすらいの物語。
ひとつ目は、新人の先生を守ろうとする子どもたちのお話し
二つ目は、天候を繰り返す少女の、出会いと別れのお話しです。
「忘れものはなんですか。大切なものはなんですか」
風呂敷に入っていた、紙が問いかける謎
その謎を問い続けることで、子どもたちは少し大人に育っていきます。
いつまでも心に残る、重松清さんの作品です。
2023年1月17日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.01.14
かんがるうの本棚 悲しみのむこうに
小川糸さんの「さよなら、私」(幻冬舎文庫)を、読みました。
収められている短い3つのお話しのひとつめは
友人を亡くした女性が、職を捨てモンゴルへと旅立ち受け入れたものは、
ふたつめは、自分を捨てた母への恨みをひきずる女性が、
異国の地の森で、見つけたものは、
みっつめは、幼子を亡くした母が取った行動は
悲しみの私にさよならをして、生きていこうとする
3つのお話しのどれもが、心の奥底の糸を揺さぶります。
大切にしたい作品の一つに入れることにしました。
2023年1月14日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.01.10
カンガルーの本棚 重く悲しい物語
小川糸さんの「とわの庭」(新潮文庫)を読みました。
主人公「とわ」は、目が見えません。
音と、においと、肌で、この世の中を受け止めていきます。
母とふたりの生活に終止符が打たれた後、
孤独と、飢えと戦う日々が始まります。
勇気を振り絞って、歩き始めたいっぽ、にほ、さんぼ
盲導犬との出会い、ご近所さんとのふれあいのなかで、
「とわ」は、いきているすごさに気づきます。
物語の中とはいえ、「とわ」のつらさを受け止めるには、
読み続ける勇気が必要です。
この世の中から、悲しい思いをする子どもが、ひとりでもなくなりますように。
2024年1月10日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.01.04
カンガルーの本棚 耽美な世界に
乙川優三郎さんの「麗しき果実」(徳間文庫)を読みました。
時は江戸後期の文政年間
宍道湖近くで生まれた主人公「理野」が、
兄とともに、江戸へ蒔絵修行に出かけるところから始まります。
原羊遊斎、酒井抱一、中山胡民、鈴木其一など、
著名な人々との出合いが、理野を育て悩ませます。
芸術の奥義に挑もうとする主人公の心意気が、胸に迫ります。
蒔絵や日本画の、専門用語に囲まれて、
理解が追い付かずに、ページをめくる手がとまり
読み上げるのに、1週間という時間と、想像力を要した作品です。
2024年1月4日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.12.31
カンガルーの本棚 今年出会った本の世界
2023年おおみそかの日
積んでいた本に手を伸ばし、大晦日に2冊読了しました。
それでも2023年に読み終えたのは新書24冊、小説74冊の合わせて98冊
目標の100冊には届きません。
お世話になった作家さんは、
南杏子さん、西條奈加さん、重松清さん、青山美智子さん、凪良ゆうさん
小野寺文宣さん、原田マハさん、寺地はるなさん、町田そのこさん、
高田郁さん、坂本司さん、朝井まかてさん、小川糸さん
心に残った書籍は、
新書部門では、心の病の脳科学
文庫部門では、52ヘルツのクジラたち、大人は泣かないと思っていた、
ぎょらん、ライオンのおやつ
今年も、新しい世界に出会うことができました。
ありがとうございました。
2023年12月31日
いたやどクリニック 木村彰宏