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2024.03.17
カンガルーの本棚 次の百年へと
高田郁さんの「あきない世傳金と銀 幾世の鈴」(ハルキ文庫)を読みました。
本編に続く、その後の4つの物語
小間物商の友の精進
最愛の妹の今
そして、世の中に役に立ち「生き金」への決断
創業から百年が、数々の出会いと別れがあり、
守り続けた五鈴屋を、次の世代にどう託していくのか
幸の物語は続きます。
2024年3月17日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.03.12
カンガルーの本棚 明日を夢見て
朝井まかてさんの「グッドバイ」(朝日文庫)を読みました。
物語の舞台は、幕末は長崎の街
あぶら商を引き継いだ主人公大浦慶は、商売の先行きに不安を感じ、
外国との茶葉貿易に乗り出します。
そこで顔見知りとなるテキストルやウイリアム・オルト、そしてグラバー
茶葉工場と店舗を訪れる坂本龍馬、大隈重信、近藤長次郎などの幕末の志士たち
歴史の歯車がぐるりと回り、あるものは志を遂げ、あるものは志半ばで倒れ
その誰もがまだ10代、20代の若者であったことに驚きます。
広がっていく茶葉の商売、そして裏切りに会い、
山のような借財のなかで立ち上がっていく慶
幕末を彩る、もう一つの女性の物語です。
2024年3月12日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.02.27
カンガルーの本棚 18才のころに
伊吹有喜さんの「犬がいた季節」(双葉文庫)を読みました。
四日市市にある高校に、暮らすことを許された1匹の犬「コーシロー」
美術部の部員がお世話をすることになり、卒業後は後輩に引き継がれていきます。
1998年から、コーシローがなくなる2000年まで、
「コーシロー」が出会う高校3年生は
進路に悩み、恋にたじろぎ、友情を手に入れて、学校を後にします。
そして開かれた開校百年目の祝賀会で再開した彼らは、
18才のころに言えなかった、互いへの言葉を口にします。
作者伊吹さんが出身校をモデルにした、青春ドラマです。
2023年2月27日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.02.18
カンガルーの本棚 あたらしい視点で
エドワード・ブルモア先生の「うつは炎症で起きる」(草思社)を読みました。
エドワード先生は、ケンブリッジ大学の精神科医長を務められている、
神経科学の世界的なエキスパートです。
世界的に大きな社会問題となっている「うつ」
先生は、従来言われているストレスからくる「こころの病気」だけでなく、
体の炎症で作られるサイトカインが、脳神経細胞に作用しておきる道筋を解き明かされます。
200ページを超える大作ですが、おもしろく読了しました。
まだ1月ですが、今年の読書のベスト3になるかなと思います
2023年2月18日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.02.06
カンガルーの本棚 信じにくいけれども
アレクサンドラ・アンリオンさんの
「コロナワクチン その不都合な真実」(詩想社新書)を読みました。
新型コロナウイルスにたいするmRNAワクチン
その限界と副反応についての解説書です。
わかりやすい文体だけに、医学書のような説得力には欠けますが、
書かれていることが真実だとすれば、とんでもないこと
引用文献を検討し、もうすこし知識を増やそうと思います。
友人の小児科医の推薦図書です。
2024年2月6日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.01.24
カンガルーの本棚 教育の行く末
日経新聞社編の「低学歴国日本」(日経プレミアシリーズ)を読みました。
大学院進学率、引用論文数、教育や研究にかけられている公費額
世界の先進国と比べ、周回遅れとなっているこの国の現状が
具体的な数字を用いて、明らかにされていきます。
その背景にある、学歴社会、閉鎖的な教育界、先生たちの過酷な労働環境
この国の教育の行く末を憂い、問題提起する1冊です。
2024年1月24日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.01.22
カンガルーの本棚 ごはんが結ぶご縁
小野寺史宜さんの「とにもかくにもごはん」(講談社文庫)を読みました。
夫の突然の死をきっかけに、
「クロード子ども食堂」を開いた波子さん
食堂を訪れる小学生、中学生、そしてお年寄り
手伝いは、大学生や主婦の面々
食べるひとも、作る人も、それぞれに事情を抱え
ごはんをご縁に、ぶつかりあり、つながりあいます。
おいしくよろこぶ顔がある限り、ありがとうをうけとる笑顔がある限り、
「クロード子ども食堂」は、今日もみんなを待っています。
2023年1月22日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.01.17
カンガルーの本棚 風呂敷を首に巻いたネコ
重松清さんの「さすらい猫ノアの伝説」(講談社文庫)を読みました。
風呂敷を首に巻いた黒猫「ノア」のさすらいの物語。
ひとつ目は、新人の先生を守ろうとする子どもたちのお話し
二つ目は、天候を繰り返す少女の、出会いと別れのお話しです。
「忘れものはなんですか。大切なものはなんですか」
風呂敷に入っていた、紙が問いかける謎
その謎を問い続けることで、子どもたちは少し大人に育っていきます。
いつまでも心に残る、重松清さんの作品です。
2023年1月17日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.01.14
かんがるうの本棚 悲しみのむこうに
小川糸さんの「さよなら、私」(幻冬舎文庫)を、読みました。
収められている短い3つのお話しのひとつめは
友人を亡くした女性が、職を捨てモンゴルへと旅立ち受け入れたものは、
ふたつめは、自分を捨てた母への恨みをひきずる女性が、
異国の地の森で、見つけたものは、
みっつめは、幼子を亡くした母が取った行動は
悲しみの私にさよならをして、生きていこうとする
3つのお話しのどれもが、心の奥底の糸を揺さぶります。
大切にしたい作品の一つに入れることにしました。
2023年1月14日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.01.10
カンガルーの本棚 重く悲しい物語
小川糸さんの「とわの庭」(新潮文庫)を読みました。
主人公「とわ」は、目が見えません。
音と、においと、肌で、この世の中を受け止めていきます。
母とふたりの生活に終止符が打たれた後、
孤独と、飢えと戦う日々が始まります。
勇気を振り絞って、歩き始めたいっぽ、にほ、さんぼ
盲導犬との出会い、ご近所さんとのふれあいのなかで、
「とわ」は、いきているすごさに気づきます。
物語の中とはいえ、「とわ」のつらさを受け止めるには、
読み続ける勇気が必要です。
この世の中から、悲しい思いをする子どもが、ひとりでもなくなりますように。
2024年1月10日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.01.04
カンガルーの本棚 耽美な世界に
乙川優三郎さんの「麗しき果実」(徳間文庫)を読みました。
時は江戸後期の文政年間
宍道湖近くで生まれた主人公「理野」が、
兄とともに、江戸へ蒔絵修行に出かけるところから始まります。
原羊遊斎、酒井抱一、中山胡民、鈴木其一など、
著名な人々との出合いが、理野を育て悩ませます。
芸術の奥義に挑もうとする主人公の心意気が、胸に迫ります。
蒔絵や日本画の、専門用語に囲まれて、
理解が追い付かずに、ページをめくる手がとまり
読み上げるのに、1週間という時間と、想像力を要した作品です。
2024年1月4日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.12.31
カンガルーの本棚 今年出会った本の世界
2023年おおみそかの日
積んでいた本に手を伸ばし、大晦日に2冊読了しました。
それでも2023年に読み終えたのは新書24冊、小説74冊の合わせて98冊
目標の100冊には届きません。
お世話になった作家さんは、
南杏子さん、西條奈加さん、重松清さん、青山美智子さん、凪良ゆうさん
小野寺文宣さん、原田マハさん、寺地はるなさん、町田そのこさん、
高田郁さん、坂本司さん、朝井まかてさん、小川糸さん
心に残った書籍は、
新書部門では、心の病の脳科学
文庫部門では、52ヘルツのクジラたち、大人は泣かないと思っていた、
ぎょらん、ライオンのおやつ
今年も、新しい世界に出会うことができました。
ありがとうございました。
2023年12月31日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2023.12.23
カンガルーの本棚 ありがとうのひとことで
南杏子さんの「ディア・ペイシェント」(幻冬舎文庫)を読みました。
大学病院を辞めて、市中の総合病院に勤めだした主人公の女性医師
多忙な診療と、週一で回ってくる当直と
身も心も疲れ果て、さらに現れたのがモンスター・ペイシェント
先輩医師に励まされながら、乗り切ろうとするのですが・・
医師も、看護師も、事務職も
医療機関で働く人の現実をリアルに描いています。
救いは、患者さんから届けられる「ありがとう」のひとこと
現役の医師作家ならではの小説です。
2023年12月23日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.12.05
カンガルーの本棚 笑顔の奥底に
南杏子さんの「ヴァイタル・サイン」(小学館文庫)を、読みました。
主人公は、都内の病院で働く中堅ナース
認知症の患者さん、ガン末期の患者さんの看護をしながら、
仕事と母の介護に追われ、幾度となく絶望に襲われます。
研修会で聴いた「感情労働」という言葉、
気持ちはあっても、尽くせない自分
過酷なナースの世界に、胸がふさがります。
クリニックに働きながら、何も知らない自分が恥ずかしくなります。
患者さんも、そこで働く人も、みんなが笑顔で過ごせるようにと考えます。
2023年12月5日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.12.03
カンガルーの本棚 また一つ巡り合い
小川糸さんの「ライオンのおやつ」(ポプラ文庫)を読みました。
雫は、若くして不治の病を得ます。
人生最後の時を、瀬戸内の小さな島のホスピスで暮らそうとしますが、
生への執着が、波のように寄せては引き、翻弄される毎日です。
ホスピスで出会ったナース、そして同じ境遇に身を置くゲストたち
手作りの食事をとり、丘から瀬戸内の海を眺めながら、
自分の短い人生も、まんざらではないなと振り返ります。
読後も、いろいろな思いが残る小説です。
2023年12月3日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.12.01
カンガルーの本棚 うつの難しさ
斎藤環先生の「社会的うつ病の治し方」を、読みました。
うつは、成人だけでなく思秋期や小児期にも広がり、大きな社会問題となっています。
環先生は、本人のうつへのかかわり方、家族のかかわり方
そして「人薬ひとぐすり」と呼ばれる、適切な第三者のかかわりが
うつを和らげる道ではないかと述べられます。
かろやかな文体に込められた、深い思い
わたしの血肉となる1冊でした。
2023年12月1日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.11.26
カンガルーの本棚 会ってみたいけれど
荻原浩さんの「逢魔が時に会いましょう」(集英社文庫)を読みました。
民俗学者の手助けのバイトを始めた女子大生。
フィールドワークで出会うのは、座敷童や河童や天狗さん
軽妙なかたりくちと、民俗学のうんちくに、
思わず頬を緩めます。
でも、やっぱり不思議生物には、会いたくないけどなあ
2023年11月26日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.11.24
カンガルーの本棚 傾城の人
朝井まかてさんの「落花狼藉」(双葉文庫)を読みました。
大江戸は、傾城の町「吉原」が形を成していくとき
きらびやかな町並みの裏で、非難の声を一身にあび、
お上から代替えにと沼地を与えられ、また幾度となく大火事にみまわれる中、
それでも吉原を守ろうとする女将の物語。
「亡八」と呼ばれようとも、懸命に生きようとする姿に、心を動かされます。
2023年11月24日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2023.11.23
カンガルーの本棚 それぞれの居場所
朝井まかてさんの「残り者」(双葉文庫)を読みました。
時は慶応4年、江戸城の無血開城その前夜に、大奥に潜んでいた5人の女性
縫い物師、料理番,お中臈、それぞれが大奥に潜んでいたわけは
時は流れ、明治になり再開した5人が過ごした日々
戦争は、それぞれの居場所や生活を奪い
今もなお、悲しみを広げています。
大奥を舞台にした、女たちの物語です。
2023年11月23日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.11.21
カンガルーの本棚 藍と愛
西條奈加さんの「四色の藍」(PHP文芸文庫)を読みました。
夫を殺された下手人を追う主人公「環」
見眼麗しい剣士と、訳ありの色っぽい女、そして洗濯ばあさんとともに、
下手人を追う毎日、
次々と明らかになる人間関係
そして、藍にまつわる愛の物語。
途中で結末が読める展開でしたが、面白く読み終えることができました。
2023年11月21日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏