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2024.05.30
カンガルーの本棚 老いてなお楽しみが
内藤誼人先生の「老いを楽しむ心理学」(ワニブックス)を読みました。
高齢者は、「心身が衰えて健康面での不安が大きい」
「収入が少なく、経済的な不安が大きい」「古い考え方にとらわれがちである」
「まわりとのふれあいが少なく孤独である」
といったネガティブなイメージが上位を占めます。
心理学者の内藤先生は、数々の研究論文を参考にされながら、
あたらしい高齢者像を提唱されます。
老いてなお楽しむことができるように、熟読の1冊です。
2024年5月30日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.05.25
カンガルーの本棚 疲労とウイルスと
近藤一博先生の「疲労とはなにか」(講談社ブルーバックス)を読みました。
忙しすぎる国日本で、社会問題にもなっている疲労
そして、慢性疲労症候群、うつ病
さらには、コロナ感染後遺症による疲労、うつ、ブレインフォグ
その奥底に流れる、脳内炎症をコントロールし、また炎症を引き起こす
ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)
近藤先生は、臨床で経験された疑問から出発され、
疲労の謎に深く迫られます。
これまでに読んだ科学書の中で、1番の解説書に出会うことができました。
2024年5月25日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.05.22
カンガルーの本棚 南の島の小さなホテルで
坂木司さんの「ホテルジューシー」(角川文庫)を読みました。
女子大生の浩美は、ひと夏のアルバイト先を沖縄のホテルに決めます。
手伝いにと行った那覇のホテルジューシー
そこで待っていたのは、昼間は寝てばかり
日が暮れると超切れきれのオーナー代理
次々に起こる事件を解決する中で、
人の目を基準に、いい子で生きてきた自分が、
少しずつ変わっていくのを感じます。
お仕事小説&成長物語の、面白編です。
2024年5月22日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.05.16
カンガルーの本棚 家族のあれこれ
西條奈加さんの「みやこさわぎ」(創元推理文庫)を読みました。
婚約直後に失踪する女性、
家族を置いて行方不明になる母親
送られてきた鮎の謎
今回も、スーパーばあちゃんが大活躍
ノゾミ君と、ばあちゃんが住む下町に、出かけてみたくなりました。
2024年5月16日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.05.09
カンガルーの本棚 消えた両親
西條奈加さんの「いつもが消えた日」(創元推理文庫)を読みました。
後輩ユウト君の両親と姉が、突然消えてしまった。
ユウト君を自宅に引き取り、お世話するかたわら、
消えた家族を探すノゾミ君と、おばあちゃん
数少ない手がかりをもとに、無事家族救出作戦は成功するのでしょうか
スーパーおばあちゃんの活躍が今回も光ります。
2024年5月9日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.05.07
カンガルーの本棚 スーパーばあちゃん
西條奈加さんの「無花果の実のなるころに」(創元推理文庫)を読みました。
大江戸は神楽坂に住む中学生ノゾミ君のおばあちゃんは、
「生粋の江戸っ子」、でも料理はまるっきりできません。
転勤で北海道に住んでいる両親にかわり、
おばあちゃんのお世話係兼料理人となった
ノゾミ君のまわりで次々と起きる不可解な事件。
そのひとつ一つを、スーパーばあちゃんが解決していきます。
何とも言えない掛け合いのおかしさに、満足の1冊です。
2024年5月7日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.05.03
カンガルーの本棚 自分の手で扉を開けて
坂木司さんの「動物園の鳥」(創元推理文庫)を、読みました。
動物園に、虐待された猫が相次いで発見される
動物を愛する女性と、ホームレス、
さらにはひきこもり探偵が学校に行けなくなった原因の男が登場し、
今回の謎解きが進みます。
降りの中に閉じこもったままの、ひきこもり探偵は
はたして自分の手で、鳥のかごをあけて、
大空に飛び立つことができるのか
シリーズ第3話も、心の奥底を描く作品です。
2024年5月3日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.05.01
カンガルーの本棚 こころの奥底に
坂木司さんの「仔羊の巣」(創元推理文庫)を、読みました。
ひきこもり探偵の今回の謎解きは
元気をなくした同僚の女性の、心の中
地下鉄のホームで、不可解な行動をとる中学生
やさしさに迷う主人公は祖母の言葉を思い出します。
「優しくしてあげればいいんだよ。
一番近くにいるひとからはじめて、
まだ手が届くようだったら、もう少し先の人に優しく
そういう風にしていけば、遠くにも届くだろう」
謎解きに込められた作者のメッセージに、心がひかれます
2024年5月1日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.04.25
カンガルーの本棚 部屋の中から
坂木司さんの「青空の卵」(創元推理文庫)を読みました。
ひきこもりの青年と、彼が唯一信頼する青年の物語。
夏から、秋、冬、そして春への季節がめぐる中で、
身近に起きる不思議な事件を、ひきこもりの青年は
その謎を、部屋の中から解き明かしていきます。
一風変わった友情物語に、引き込まれていく小説です。
2024年4月25日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.04.19
カンガルーの本棚 イベント続きの冬がきて
坂木司さんの「ウインターホリデー」(文春文庫)を読みました。
突然父親になった青年は、夏休みがおわり、子どもと別れの季節を迎えます。
そして、寒い季節が訪れて、クリスマス、お正月、バレンタインデー、ホワイトデーと
イベント続きの冬を過ごします。
時折訪れる我が子に翻弄されながら、
またひとつ父になっていく姿に、苦笑しつつ、一気読みします。
2024年4月19日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.04.05
カンガルーの本棚 ヤンキーとうさん
坂木司さんの「ワーキングホリデー」(文春文庫)を読みました。
主人公の青年は、元ヤンキーで、今はホストを稼業中。
そこに現れた小学生は、突然「おとうさん」と叫びます。
ホストをやめ、宅配便に勤め先を変えた青年は、
はじめて出会う我が子と、短い夏を過ごします。
次第に父になっていく青年の言葉と行動がおもしろおかしくて、
一気読みの1冊です。
2024年4月5日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.03.29
カンガルーの本棚 笑って泣いて
小川糸さんの「サーカスの夜に」(新潮文庫)を、読みました。
大きくなれない病気を抱えた少年は、
小さい時に見たサーカスに入ることを夢見ます。
トイレ掃除、食事係、
そこで出会う芸人たちに教えられ、綱渡りの芸を極めようと思い立ちます。
人を笑わせるってことは、人を傷つけたり哀しませたりすることよりも百倍も千倍も難しい
人生の哀しみを知らなくっちゃ、
相手を笑わせることなんてできないもの。
孤独を知っているからこそ、みんなでバカ笑いできる幸せを
ありがたく思えるのよ。
団員の言葉を胸に、少年は今日も綱に挑みます。
2024年3月29日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.03.26
カンガルーの本棚 からっぽの箱に
寺地はるなさんの「希望のゆくえ」(新潮文庫)を、読みました。
失踪した「希望」という名の弟を、たずね探す「誠実」という名の兄
弟が働いていた会社の同僚や、失踪後に住んでいたアパートの家主
そして、同居していた女性を探しだし、
弟の消息を尋ねるうちに、弟が抱えている心の闇に気づきます。
お菓子の空き箱に、大切なものを詰めるように、心の闇を埋めていく、
その先に、一筋の希望の光を見る思いがします。
難しいテーマが描かれた小説です。
2024年3月26日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.03.23
カンガルーの本棚 忍者で復活
山本甲士さんの「ひなた商店街」(潮文庫)を読みました。
アクションスターの夢が破れ、故郷の実家に戻った主人公
働き始めたおでん屋は、ひなびた商店街に残された5店舗のひとつです。
再開発の波が押し寄せ、いつ取り壊されてもおかしくない店に、
テレビの食レポが収録に訪れます。
なにか目新しいものをと頼まれて、
忍者のコスプレに身を包み、昔言葉でおでんを売ると、これがおおうけ。
他のお店も同じ路線で悪乗りをすると、これが若者や外国人にもバズります。
商店街の再生をかけて、今日も忍者姿の主人公は跳びまわります。
少し出来すぎの流れですが、楽しめる作品でした。
2024年3月23日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.03.17
カンガルーの本棚 次の百年へと
高田郁さんの「あきない世傳金と銀 幾世の鈴」(ハルキ文庫)を読みました。
本編に続く、その後の4つの物語
小間物商の友の精進
最愛の妹の今
そして、世の中に役に立ち「生き金」への決断
創業から百年が、数々の出会いと別れがあり、
守り続けた五鈴屋を、次の世代にどう託していくのか
幸の物語は続きます。
2024年3月17日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.03.12
カンガルーの本棚 明日を夢見て
朝井まかてさんの「グッドバイ」(朝日文庫)を読みました。
物語の舞台は、幕末は長崎の街
あぶら商を引き継いだ主人公大浦慶は、商売の先行きに不安を感じ、
外国との茶葉貿易に乗り出します。
そこで顔見知りとなるテキストルやウイリアム・オルト、そしてグラバー
茶葉工場と店舗を訪れる坂本龍馬、大隈重信、近藤長次郎などの幕末の志士たち
歴史の歯車がぐるりと回り、あるものは志を遂げ、あるものは志半ばで倒れ
その誰もがまだ10代、20代の若者であったことに驚きます。
広がっていく茶葉の商売、そして裏切りに会い、
山のような借財のなかで立ち上がっていく慶
幕末を彩る、もう一つの女性の物語です。
2024年3月12日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.02.27
カンガルーの本棚 18才のころに
伊吹有喜さんの「犬がいた季節」(双葉文庫)を読みました。
四日市市にある高校に、暮らすことを許された1匹の犬「コーシロー」
美術部の部員がお世話をすることになり、卒業後は後輩に引き継がれていきます。
1998年から、コーシローがなくなる2000年まで、
「コーシロー」が出会う高校3年生は
進路に悩み、恋にたじろぎ、友情を手に入れて、学校を後にします。
そして開かれた開校百年目の祝賀会で再開した彼らは、
18才のころに言えなかった、互いへの言葉を口にします。
作者伊吹さんが出身校をモデルにした、青春ドラマです。
2023年2月27日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.02.18
カンガルーの本棚 あたらしい視点で
エドワード・ブルモア先生の「うつは炎症で起きる」(草思社)を読みました。
エドワード先生は、ケンブリッジ大学の精神科医長を務められている、
神経科学の世界的なエキスパートです。
世界的に大きな社会問題となっている「うつ」
先生は、従来言われているストレスからくる「こころの病気」だけでなく、
体の炎症で作られるサイトカインが、脳神経細胞に作用しておきる道筋を解き明かされます。
200ページを超える大作ですが、おもしろく読了しました。
まだ1月ですが、今年の読書のベスト3になるかなと思います
2023年2月18日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.02.06
カンガルーの本棚 信じにくいけれども
アレクサンドラ・アンリオンさんの
「コロナワクチン その不都合な真実」(詩想社新書)を読みました。
新型コロナウイルスにたいするmRNAワクチン
その限界と副反応についての解説書です。
わかりやすい文体だけに、医学書のような説得力には欠けますが、
書かれていることが真実だとすれば、とんでもないこと
引用文献を検討し、もうすこし知識を増やそうと思います。
友人の小児科医の推薦図書です。
2024年2月6日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2024.01.24
カンガルーの本棚 教育の行く末
日経新聞社編の「低学歴国日本」(日経プレミアシリーズ)を読みました。
大学院進学率、引用論文数、教育や研究にかけられている公費額
世界の先進国と比べ、周回遅れとなっているこの国の現状が
具体的な数字を用いて、明らかにされていきます。
その背景にある、学歴社会、閉鎖的な教育界、先生たちの過酷な労働環境
この国の教育の行く末を憂い、問題提起する1冊です。
2024年1月24日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏