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2012.09.01
カンガルーの本棚 9月になるまでに
岡田尊司先生の「発達障害と呼ばないで」(幻冬舎新書)を、読みました。
自閉症スペクトラム障害、AD/HDなどの発達障害の原因を、愛着障害の観点から述べられます。
子どもが、養育される環境次第で、良い方にも、悪い方にも変容していくことを、いろいろな角度から論じられます。
発達障害の原因を、養育の因子よりも、遺伝的な背景で説明しようと言う時代の流れからすれば、異色の一冊と言えます。
9月になるまでにと、暑い8月の最後に読んだ1冊は、私に大きな宿題を残しました。
2012年9月1日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2012.08.25
カンガルーの本棚 モルってなあに
高松正勝さん原作、鈴木みそさん漫画の「マンガ化学式に強くなる」(講談社ブルーバックス)を、読みました。というより、ながめました。
原子量。分子量、周期表、イオン結合、化学反応式、そしてモル。
もう、何十年も使わなくなった科学の言葉が飛びかいます。
鈴木さんの、おかしい漫画だけを頼りに、読み進みます。
読み終わった後の感想は、ああ、おもしろかった。
でも、むずかしかった。
これでは、普通の漫画を読むのと変わりありません。
化学の達人になるには、この入門書を、100回は読む必要があるかもしれませんね。
2012年8月25日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2012.08.21
カンガルーの本棚 中学生に戻って
関正生先生の「世界一わかりやすい中学英語の授業」(中経出版)を、読みました。
関先生は、現役の予備校の講師をされています。
英語の基礎の基礎を、とても分かり易く解説されています。
これまで手に取った英語の本の中で、一番おもしろく、分かり易く、
いちいち納得させられる中身がいっぱいです。
英語嫌いのわたしが、2日間で読破。
中学の時にこの本に出会っていたら、英語好きになって、
その後の人生が変わっていたかもしれないなあと思わせる、
おもしろくて、わかりやすい、お勧めの一冊です。
2012年8月21日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2012.08.18
カンガルーの本棚 聞くことの
阿川佐和子さんの「聞く力」(文春新書)を、読みました。
テレビや雑誌で大活躍されている阿川さんの、対談にまつわる数々のエピソード。
クスリと笑ってしまうところや、「そうなんだ」と納得してしまうところなど、
最後まで、一気におもしろく読みました。
あとがきにかえての中に、阿川さんの人柄を見たような気がします。
「そんな話をする当の本人にとっても、自ら語ることにより、それだけで語る意味が生まれてきます。そのために、聞き手がもし必要とされる媒介だとするならば、私はそんな聞き手を目指したいと思います」
2012年8月18日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2012.08.17
カンガルーの本棚 課題図書②
パトリック・ネスの「怪物はささやく」(あすなろ書房)を、読みました。
今年の中学生の課題図書の一冊です。
毎晩決まった時間にコナー少年の元を訪れる、いちいの木の怪物。
怪物の正体はなに?
モノトーンの挿絵も、おどろおどろしく、少年の恐怖が胸に迫ります。
ハードな内容のこの一冊。
苦境にたたされた少年、そして救いは・・
とても思いテーマの小説です。
このハードな小説は、中学生の心に、どう届くのでしょう。
2012年8月17日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2012.08.17
カンガルーの本棚 眠る前の少しの時間に
海原純子さんの「子どもが眠ったあと1分間だけ読む本」(PHP文庫)を、読みました。
毎日の子育ての中で、心や体が疲れ果ててしまった時、
自分に自信がなくなった時
子育てに悩んだ時
子どもの幸せを願う時
などなど、1分で読めるエッセイが、59話載せられています。
1日1話読んでいくと、2か月も楽しめる本です。
子どもが眠った後、あなたの心を少し楽にしてくれる、素敵な本です。
2012年8月17日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2012.08.13
カンガルーの本棚 課題図書①
高橋秀雄さんの「地をはう風のように」(福音館書店)を、読みました。
この夏の中学校の部、課題図書の一冊です。
終戦直後の鬼怒川沿いに住む、小学生の物語。
貧しさに、歯を食いしばって生きていく・・
ほんの50年少し前の、日本の子ども達の物語。
今の中学生は、このお話を読んで、どのように感じるのかと興味がわきました。
2012年8月13日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2012.08.11
カンガルーの本棚 課題図書①
高橋秀雄さんの「地をはう風のように」(福音館書店)を、読みました。
この夏の中学校の部、課題図書の一冊です。
終戦直後の鬼怒川沿いに住む、小学生の物語。
貧しさに、歯を食いしばって生きていく・・
ほんの50年少し前の、日本の子ども達の物語。
このお話を、今の中学生は、どのように読むのかと、興味がわきます。
2012年8月11日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2012.08.09
カンガルーの本棚 5年半ぶりのピクニック
恩田陸さんの「夜のピクニック」(新潮文庫)を、読みました。
映画化もされましたが、高校生生活の一日を描いた作品です。
書店で手に取り、子どもに薦めると、2日で読んで「おもしろかった」と言います。
主人公の話を詳しくしてくるのですが、
私が読んだのは2006年12月のこと。
一晩をかけて、ただひたすらに歩きとおす学校行事の話としか記憶にはなく、
あわてて、5年半ぶりに再読しました。
ふたりの主人公を中心にした心理描写がおもしろく、ぐいぐいと本の世界に引き込まれます
初めてこの本を読んだ時は、子どもは小学1年生。
5年半がたち、子どもは身体も心も大きくなりました。
1冊の本を共有できるっていいものだなと、少しうれしくなりました。
2012年8月9日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2012.07.10
カンガルーの本棚 不幸せな物語
重松清さんの「Long,Long ago」(新潮文庫)を、読みました。
うまくいかない人生を描いた、6つの物語が綴られています。
「カンガルーのポケット」の今月のテーマは、「運」
人には、自分の力ではどうしようもない「運」を感じる時があります。
運がいいとか、悪いとか・・
はたから見ると、「なんでそうなるの」と、不運ばかり続く人がいます。
カンガルーのポケットのテーマは、「不運の社会的救済」です。
でも、重松清さんは不運をも、愛おしくみつめます。
運が良くても、悪くても、それが自分の人生なら、
まるごと受け止めて、愛おしむ深さに脱帽です。
2012年7月10日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2012.06.30
カンガルーの本棚 脳に良くないことって
小西行郎先生の「子どもの脳によくないこと:赤ちゃん学、脳科学を生かす子育て」(PHPサイエンス・ワールド新書)を、読みました。
小児科教授を経て、赤ちゃん学会理事長をされている小西先生が、子どもの脳にとって良くないことを伝授されます。
子どもに育てたい心として、「幸せと感じられる心」「人を敬う心」「感謝できる心」をあげられます。
そのためには、「親がしっかりと生きているさま」を子どもに見せること。
過保護・過干渉をさけ、子どもを信じて、任せてみること。
そのうえで、子どもが必要だとしたときに、どう関わってやれるか。
と、伝えられます。
かんがるうっ子の親として、小児科医として、深く考えさせられる一冊です。
2012年6月30日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2012.06.22
カンガルーの本棚 いろいろな気持ち
石川幹人さんの、「人は感情によって進化した」(ディスカバー携書)を、読みました。
感情と環境との関係について、石川さんは「かっての生活環境にふさわしい形で、感情がつくられている。狩猟採取社会にふさわしい感情が、文明社会にも生きている。」と、述べられています。
捕食者から逃げる「恐怖」は早い段階で、
個体の上下関係を形成する「怒り」や「おびえ」は、群れを形成するようになって、
協力関係が築かれ、それを維持する役割を担う「罪悪感」や「義理」は、更に進化した段階で。
毎日、毎時、毎分ごとに目まぐるしく移り動くの感情を、人類の進化の歴史の中で客観視できる一冊です。
2012年6月22日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2012.06.20
カンガルーの本棚 愛情と無理解と
佐々木正美先生の「アスペルガーを生きる子どもたちへ」(日本評論社)を、読みました。
「アスペルガー症候群は、脳の統合機能の障害だ」と、佐々木先生は推察されます。
親子の関係に言及された箇所で、「親は最大の愛情をもって『理解者になりたい』と思いながらも、同時に偏見者になってしまうというきわどいところがある」と、書かれています。
子どもの障害を認めたくない親の気持ち、なんとか「普通の子ども」にしようと頑張る親の熱意。
それが子どもを追いつめて、二次障害を引き起こしていきます。
子どもの「あるがまま」を認め、子どもにその人生を任せる難しさ。
講演口調の読みやすい文章ながら、そこに書かれている内容の深さと難しさに、沈黙の一冊です。
2012年6月20日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2012.05.13
カンガルーの本棚 旅の終わりに
重松清さんの「十字架」(講談社)を、読みました。
イジメられ、自らの命を断った中学生。
許さない、許せないという、家族の心情、
そして、命の重みを背負って生きる同級生の物語。
文字を追う眼がふるえ、息苦しさを感じます。
この重いお話を書きながら、重松さんはわたし達に何を伝えたかったんだろうと考えます。
忘れられない一冊になりました。
2012年5月13日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2012.05.06
カンガルーの本棚 ころばなぬように
松清さんの「ステップ」(中公文庫)を、読みました
「ステップ」は、ホップ、ステップ、ジャンプの「ステップ」
そして、ステップファミリーの「ステップ」
道上理事長が「重松さんの『ステップ』読みましたか。すごく良かったですよ」と、勧めてくれました。
その時には、机の上の「積んどく」1冊でしたが、講演会続きでなかなか読む順番が回ってきません。
やってきたGWは、「しげまつウィーク」になりました。
「ステップ」は、父と娘が命をつなぐ物語。
一つひとつの章を、道上先生は、どんな気持ちで読まれたのかなと、思いながらの、
あたたかい気持ちになれる1冊でした。
2012年5月6日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2012.05.05
カンガルーの本棚 かあちゃん
重松清さんの「かあちゃん」(講談社文庫)を、読みました。
文庫本の厚さにして2cmを超え、ページ数では500p超えの大作です。
文庫本の帯には、「お母ちゃんは、笑うことを禁じた。死んだお父ちゃんの罪を、一生背負うためにー」と、ありました。
買おうか止めようかとためらいながら、
それでも表紙絵にひかれて、手にとって、あとは一気に読み終えます。
いじめ、いじめられ、それを見守る親たちと、先生。
一人ひとりの子どもや、おとなのうしろには、
それぞれのおかあさんや、おとうさんが、わが子をそっと見守っている。
そんな当たり前の事実の中に、命のつながりを、感じます。
それにしても、重松さんは、子どものこころが、なぜわかるんでしょう。
でも、今の子どもは、「自分の事をそんなに深く考える力なんてないでしょう」と、つい、つっこみを入れたくもなります。
おとなのこころだって、同じことです。
だからこそ、重松さんは、こどもやおとな達のまとまらない思いを、かわってに言葉にされるのかもしれません。
子どもも、おとなも、自分につながるみんなを大切に思っているあなたに、
是非お読みいただきたい、とっておきの1冊です。
2012年5月5日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2012.03.31
カンガルーの本棚 おにぎり3日
高田郁さんの「みをつくし料理帖・夏天の虹」(ハルキ文庫)を、読みました。
春休みに入り、外来診療は記録的な忙しさ。
採血は一日28名の、記録更新。
食物負荷試験。
新入学・新入園の、除去食指示書は、数えきれないほどに書きます。
一日が終われば、診察人数は100名を超え、これまた記録です。
お待ちいただく患者さんに、申し訳ない気持ちでいっぱいです。
夜は、学校の先生との食物アナフィラキシーの対策会議。
講演会、アレルギー教科書の原稿書き・校正と、今までで一番多忙な日々を過ごします。
水・木・金、3日連続お昼抜き。
その都度、受付の岸本さんや、三好事務長が、コンビニまでおにぎりを買いに走ってくれます。
2つのおにぎりを、数分で口に入れ、午後からの診察を始めます。
そのおにぎりの、おいしいこと。
記録的な忙しさで、追いやられるのは、院長としての仕事と、読書です。
それでも、「みをつくし料理帖」を読みました。
一文字一文字ゆっくりと、味わいながら読み進みます。
料理は、人の幸せを願うこと。
おにぎりは、買ってきてくれた方の、ぬくもりの味がしました。
2012年3月31日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2012.03.08
カンガルーの本棚 哀しさと強さとに
角田光代さんの、「八日目の蝉」(中公文庫)を、読みました。
この本を原作とした同名映画が、今年の日本アカデミー賞を総なめしました。
これは読んでみなくてはと書店に向かい、一気に読了。
誘拐犯と、その人を母と信じて育った子どもの、再生の物語。
人間の、というより、女性の哀しさと強さとに、こころを揺さぶられる作品です。
2012年3月8日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2012.01.29
カンガルーの本棚 待ってるよ
大田康介さんの「のこされた動物たち」(飛鳥新書)を、読みました。
副題に「福島第一原発20キロ圏内の記録」とつけられているように、取り残された動物の写真と短文で構成されています。
今はだれも住んでいない家の玄関から動こうとしないイヌたち。
痩せこけて歩くネコたち。
そして、用水路にはまり、抜け出せないでいるウシたち。
写真に写るその目は、飼い主さんが戻ってくるのを「いつまでも、待ってるよ」と、訴えているかのようです。
この1冊の写真集を読むだけで、この星の生き物と原子力発電が、いかに相いれない存在であることかが、わかります。
つらいけれど、目をそむけてはいけない1冊です。
2012年1月29日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2012.01.09
カンガルーの本棚 思い出の一冊に
阿部彩さんの「弱者の居場所がない社会」(講談社現代新書)を、読みました。
阿部さんは、前著「子どもの貧困」(岩波新書)で、一躍時の人となった研究者です。
「貧困」とは、生活水準を保つための資源の不足を表す言葉。
「社会的排除」とは、社会における人の「位置」や、人と人との「関係」、人と社会との「関係」に関わる言葉。社会から追い出されることと説明されています。
216ページの本が、サイドラインで真っ赤になりました。
医療生協がどこに向かうべきなのか、その原点を教えてくれたように思います。
この本を、100歳で亡くなった父の通夜の席で読みました。
じっとしていると眠くなるので、会場内を歩き回りながら読みました。
父と私とは、生き方は違います。
けれど、本が大好きで、書くのが大好きで、人と話しするのが大好きで、そんな好奇心のかたまりのようなところは、父譲りです。
自分が何を願うのか、社会に対して何を貢献していけるのか、これからの生き方を、考え考えながら読みました。
わたしの、読書生活の中でも、思い出となる一冊になりました。
2012年1月9日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏