カンガルーの小部屋

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  • 2012.01.08

    カンガルーの本棚 患者さんこそが教科書

    帚木蓬生さんの、「風花病棟」(新潮文庫)を、読みました。

    10人の良医たちを主人公にした、短編集です。

    あとがきで、作者の蓬生さんは、自らが急性骨髄性白血病に罹ったと、告白されています。

    帚木蓬生さんは、著名な精神科のお医者さんです。

    病んだ治療者の視点から、医師という職業を選んだ人間の喜怒哀楽を描かれています。

    「患者こそが教科書」

    「逃げんで、踏みとどまり、見届ける」

    帚木蓬生さんの臨床医としての座右の銘が、そこかしこに散りばめられています。

    新春に読むにふさわしい本に、巡り合えてよかったと思いました。

    2012年1月8日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

     

  • 2012.01.03

    カンガルーの本棚 新春も長英さんから

    佐藤昌介さんの「高野長英」(岩波新書)を、読みました。

    本著は、高野長英が、政治犯として収監される前後の、思想的遍歴に焦点を当てて描かれています。

    純粋に医学的な研究心から、蘭学に傾倒し、その語学力を買われて「渡辺崋山」に出会います。

    やがて、崋山の影響を受けて、国防論にも興味をいだき、「夢物語」を記します。

    幕府の権力闘争の中で、「夢物語」が反政府的と断じられ、「永牢」の刑を受けます。

    脱獄後の逃亡生活の中で、西洋兵書の翻訳を重ねるうちに、封建社会に対し、対決姿勢を強めていきます。

    本書は1997年に発刊されましたが、1984年に吉村昭氏により書かれた「長英逃亡」と対比して読み進めると、長英の人物像がより鮮明にイメージする事ができます。

    3月の前進座のお芝居が、またひとつ楽しみになりました。

    2012年1月3日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2011.12.30

    カンガルーの本棚 時代の先駆者

    吉村昭さんの、「長英逃亡・上・下」(新潮文庫)を、読みました。

    幕末の蘭学者、高野長英を描いた作品です。

    高野長英は、渡辺崋山らの「蛮社の獄」に連座して、江戸小伝馬町の牢獄に収監されます。

    家族に会いたい、もう一度蘭学で身に着けた知識を、日本国に役立てたいという思いから、脱獄をはかります。

    物語は、脱獄後、江戸で惨殺されるまでの、六年有余の長英の足取を追います。

    越後、陸奥、宇和島、江戸と逃亡する生活は、いつ捕まるかも知れないと言う不安との闘いです。

    当代第一人者の蘭学者であり、奢るところもあったといわれる長英が、支えられ助けられる中で、人々の人情を知り、人間らしく変貌していきます。

    作者は、逃亡中の生活こそが、長英が最も人間らしく生きた歳月だと述べています。

    来る年の3月21日は、高野長英を題材にした、前進座の「水沢の一夜」が公演されます。

    どのようなお芝居になるのか、楽しみです。

    「長英逃亡」は、2011年の読書記録の152冊目になります。

    多くの良書に出会えたことを、うれしく思います。

    吉本新喜劇的に締めくくるのなら、「このへんで、許しといたろか」

    来年も、よろしくお願いいたします。

    2011年12月30日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

     

  • 2011.12.26

    カンガルーの本棚 150冊目は池上さん

    池上彰さんの「知識ゼロからの世界経済地図入門」(幻冬舎)を、読みました。

    アメリカ、ヨーロッパ、中国、アジア、中東、アフリカ、そして日本。

    複雑に絡み合う世界経済を、図表を駆使して、分かりやすく説明されています。

    今年150冊目の読書は、クリニックの経営を考えるうえでも、役立つでしょうか。

    2011年12月26日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2011.12.10

    カンガルーの本棚 乙川さん

    乙川優三郎さんの、「闇の華たち」を、読みました。

    乙川さんの小説は、封建制度の下で押しつぶされそうになりながらも生きていく、男女の愛をテーマにしたものが多いのですが、この短編集にもいろいろな女性たちが登場します。

    遠くに、かすかな明るい日射しを見出すような終末に、救いを感じます。

    次の一冊をと待ち遠しくなるのは、乙川さんのそんな優しさに出会う楽しみからなのでしょうか。

    2011年12月10日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2011.12.08

    カンガルーの本棚 ジブリの鈴木さん

    鈴木敏夫さんの「ジブリの哲学:変わるものと変わらないもの」(岩波書店)を、読みました。

    鈴木さんは、スタジオジブリの代表取締役を兼ねられる「名プロデューサー」。

    宮崎駿監督や、高畑勲監督と共に、「となりのトトロ」や「火垂るの墓」などの、数々の名作を世に送りだされました。

    この本は、鈴木さんが発表されてきた、数々のエッセイや論文を編集したもの。

    TVのトーク番組や、新聞の書評を通じて知りました。

    その中で鈴木さんは、思春期とは、「価値が定まらない時期」と定義されています。

    「以前のように思春期を脱して大人になっていくのではなく、思春期を内包したまま年を重ねていく。」

    そして、「還暦を迎え、本当なら年齢相応のジジイになっていないといけないはずが、いつまでたっても、若い気分が抜けない。そして、その心地よさと居心地の悪さが、僕には同居している。そういう自分のことが少し理解できたような気がした。」と、書かれています。

    ジブリおたくの方には、垂涎の一冊です。

    2011年12月8日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2011.12.03

    カンガルーの本棚 カンガルーでもわかるTPP

    中野剛志さんの、「TPP亡国論」(集英社新書)を、読みました。

    国論を二分しているTPP。

    カンガルーにも分かる言葉で、わかりやすく解説されています。

    内需を拡大する事で、デフレからの脱却を図るべき時期に、農業従事者を失業に追いやり、内需を冷え込ます愚かさ。

    食料品は、一国の戦略物質であるのに、その生命線を他国に明け渡す愚かさ。

    様々な経済的視点から、痛快にTPP反対論を述べられています。

    254pの新書本ですが、あまりのおもしろさに、一日で読み終えました。

    TPPを考える上で、必読の一冊です。

    2011年12月3日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2011.12.02

    カンガルーの本棚 毛布ネコ

    重松清さんの、「ブランケット・キャッツ」を、読みました。

    レンタルCDや、レンタカーのように、レンタルされるネコの物語。

    7匹のネコが出会う、2泊3日の飼い主さんは、大切に人生を生きてきた人々。

    学校や、職場や、家庭の中で、うまくいかないことがいっぱい起きて、それでも生きていく姿を、ネコ達が見つめます。

    重松さんの小説には、悲しくて、せつなくて、そして少し希望の光が見え隠れします。

    2011年12月2日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2011.11.30

    カンガルーの本棚 ネコ派

    沼田まほかるさんの「猫鳴り」(双葉文庫)を、読みました。

    モンと名付けられたネコが、ひらわれて育てられ、年老いて息を引き取るまでの物語。

    これでもかというくらいに、たたみかけるような描写に、気持ちが後ろ向きになりながらも、命から目を離せなくなる3部構成。

    イヌの物語なら、つらくて、終わりのページまで、読み通せなかったかもしれません。

    2011年11月30日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

     

  • 2011.11.28

    カンガルーの本棚 カンガルーでもわかる言葉で

    山家悠紀夫先生の「暮らし視点の経済学」(新日本出版社)を、読みました。

    保険医協会の代議員会で購入してから、一週間。

    時間をかけて、ゆっくりと読みました。

    この10年の間に、日本経済が直面した大きな社会変動。

    サブプライム問題、リーマンショック、そして3.11大震災。

    構造改革を旗印に挙げる政権が続き、庶民の暮らしが立ち行かなくなった結果もたらされた大不況。

    いのちと暮らしの危機をどのように克服していけばよいのか、本書はカンガルーにもわかる言葉で解説されています。

    2011年11月28日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2011.11.20

    カンガルーの本棚 祈りの言葉

    姜尚中さんの「あなたは誰?私はここにいる」(集英社新書)を、読みました。

    NHKの日曜美術館の司会をされる中で出会われた、絵画や陶器。

    その一つひとつに、姜尚中さんが、心の解説をそえられます。

    第8章「祈りの形」の中に、「言葉は虚しくても、祈りの態度は伝わるのです」という一節が載せられています。

    東日本大震災後の日本を生きる上で、大切な言葉と思いました。

    2011年11月20日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2011.11.17

    カンガルーの本棚 ラッキーデー

    朱川湊人さんの「本日、サービスデー」(光文社文庫)を、読みました。

    不思議な5つの短編を集めた文庫本です。

    気にしないでいるようで、少しは気になるのが、朝のテレビの星占い。

    一番の運勢だと、5分ぐらい、ハッピーな気分をもらえます。

    今日が、一生に一度のラッキーデーだとしたら。

    考えるだけで、楽しくなります。

    「蒼い岸辺にて」は、やさしい小説です。

    心が弱った時に、一読されることをお勧めします。

    2011年11月17日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2011.11.13

    カンガルーの本棚 プロフェッショナルとは

    NHK出版新書の「人生と仕事を変えた57の言葉」を読みました。

    NHKで放送された、「プロフェッショナル仕事の流儀」の中で出会った57の言葉。

    壁にぶつかった時、有頂天になった時、人は自分を見失います。

    その時出会った一つの言葉が、人を大きく変える事があります。

    何の気なしに発せられた言葉が、人の心の中で熟成され、人を勇気づける事があります。

    57の言葉との出会い、そして、重く受け止められた記録集。

    この秋、お勧めの一冊です。

    2011年11月13日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2011.11.10

    カンガルーの本棚 カイロ本

    森浩美さんの「ほのかなひかり」(角川文庫)を、読みました。

    どこにでもありそうな小さな出来事を、優しい目でみつめ、心温かくする作品に仕上げられています。

    8つの短編は、どれもがもう一度読みたくなるものばかり。

    中でも、

    「褒め屋」「思い出バトン」「聖夜のメール」は、特にお勧めです。

    解説文に書かれている、キャッチコピー。

    「これからの寒い季節、カイロの代わりに森浩美さんの文庫本をポケットに忍ばせてみませんか?心の底からあたたかくなります。」に完全同意です。

    2011年11月10日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2011.11.09

    カンガルーの本棚 トトロの本棚

    宮崎駿監督の「本へのとびら・岩波少年文庫を語る」(岩波新書)を読みました。

    少年文庫の中から、悩みに悩まれ50冊を厳選。

    ひとつひとつの作品に、短い読書評がよせられています。

    後半は、宮崎監督のインタビュー記事。

    3月11日のあと、世界は「風が吹きはじめた時代」に入ったと、言われます。

    そのうえで、「生きていてよかったんだ、生きていいんだと、子どもたちにエールを送るのが、児童文学なんだ」と、書かかれています。

    大震災、そして世界経済不安。

    この不確かな時代にあって、子どもたち「やり直しがきく」と、熱いメッセージを送られる宮崎監督。

    おとなのわたしも、励まされる一冊です。

    2011年11月9日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2011.11.06

    カンガルーの本棚 日本一の社説ツー

    水谷もりひとさんの「日本一心を揺るがす新聞の社説2」(ごま書房新社)を、読みました。

    パート1を読み終え、その足で学会開催地の福岡の書店で買い求めた一冊です。

    これまでに「みやざき中央新聞」に掲載された社説の中から、厳選されたもの。

    43編の中で、わたしは次の2編に感動しました。

    「勇気を出して『ありがとう』『ごめんね』」

    「お墓の前で『いのちのまつり』」

    どの作品に思いを入れるのかは、読者のその時のあり様に左右されます。

    「ありがとう」「ごめんね」は、今のわたしの心を映す言葉なのでしょうか。

    2011年11月6日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2011.10.29

    カンガルーの本棚 日本一の社説集

    水谷もりひとさんの「日本一心を揺るがす新聞の社説」(ごま書房新社)を、読みました。

    かかりつけの地下鉄板宿駅前の「井戸書店」さんの、推薦本。

    毎週月曜日に発行されている、みやざき中央新聞の41本の社説集です。

    「抱っこの宿題、忘れんでね」

    「こころを込めて、いただきます」

    「生まれ変わって、今がある」

    「感動は何年経っても色あせない」などなど、わたしの心の深くに刻まれる名文の数々。

    今年読んだベストワン候補の一冊です。

    続編を、すぐに買いに行かなくては・・・。

    2011年10月29日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

     

  • 2011.10.28

    カンガルーの本棚 うちの旦那は

    野波ツナさんの、「旦那さんはアスペルガーⅠ:ⅱ」(コミックス出版)を、読みました。

    コミックスなので、ゴロリと横になって読んでも、1時間もしないうちに最後のページにたどりつく、お気軽さです。

    アスペルガー症候群の男性を夫にもった妻の「とまどい」が、描かれています。

    子ども期のアスペルガー症候群は、少しずつ知られてきましたが、彼らが大人になった時に、家族はどのように感じ暮らすのか、当事者だけにしか分からない重いテーマ。

    もしかして、我が家の事だったりしてと、ドキドキの1冊です。

    2011年10月28日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2011.10.26

    カンガルーの本棚 安川先生には読ませたくない本

    洋泉社の、「脱原発の教科書」(原発を止めても大丈夫なこれだけの理由)を、読みました。

    原発を廃絶すると、電力供給が不安定になる。

    電気代が、かなり高くなる。

    企業が国外に流出して、産業の空洞化が進む。

    などなど、原発を守ろうとする論調が、マスコミを通じて流されています。

    本書では、各分野の専門家が、脱原発への疑問に対して、ひとつひとつ丁寧に解説されています。

    いたやどクリニックでは、11月27日(日)に、秋の文化祭を開きます。

    その中で、「原発は必要か?。木村先生vs安川先生」の公開討論会が企画されています。

    脱原発派は、クリニック副院長の安川先生。

    そして、原発推進派は、きむらが、意見を闘わせます。

    お互い、相手に負けないようにと学習中。

    205ページになるこの本は、安川先生には読ませたくありません。

    どんな討論会になるのかは、当日のおたのしみです。

    2011年10月26日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2011.10.25

    カンガルーの本棚 思いのたけを文章に

    近藤勝重さんの「書くことが思いつかない人のための文章教室」(幻冬舎新書)を、読みました。

    毎日新聞編集委員、「サンデー毎日」編集長を歴任されている近藤さんが、文章を書く指南をされます。

    「思う」ことより、「思い出す」ことを言葉にする。

    記憶を全体から、部分、さらには細部へとたどっていくという、手法を紹介されます。

    神戸医療生協の機関紙「三つの輪」にページをいただいている「カンガルーのポケット」も、この11月号で45回目の連載となります。

    2か月に一度のエッセイですが、毎号何を話題にしようかと、悩むものです。

    近藤さんの文章に励まされながら、次の号に挑戦です。

    2011年10月24日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

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