カンガルーの小部屋

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  • 2012.08.13

    カンガルーの本棚 課題図書①

    高橋秀雄さんの「地をはう風のように」(福音館書店)を、読みました。

    この夏の中学校の部、課題図書の一冊です。

    終戦直後の鬼怒川沿いに住む、小学生の物語。

    貧しさに、歯を食いしばって生きていく・・

    ほんの50年少し前の、日本の子ども達の物語。

    今の中学生は、このお話を読んで、どのように感じるのかと興味がわきました。

    2012年8月13日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2012.08.11

    カンガルーの本棚 課題図書①

    高橋秀雄さんの「地をはう風のように」(福音館書店)を、読みました。

    この夏の中学校の部、課題図書の一冊です。

    終戦直後の鬼怒川沿いに住む、小学生の物語。

    貧しさに、歯を食いしばって生きていく・・

    ほんの50年少し前の、日本の子ども達の物語。

    このお話を、今の中学生は、どのように読むのかと、興味がわきます。

    2012年8月11日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2012.08.09

    カンガルーの本棚 5年半ぶりのピクニック

    恩田陸さんの「夜のピクニック」(新潮文庫)を、読みました。

    映画化もされましたが、高校生生活の一日を描いた作品です。

    書店で手に取り、子どもに薦めると、2日で読んで「おもしろかった」と言います。

    主人公の話を詳しくしてくるのですが、

    私が読んだのは2006年12月のこと。

    一晩をかけて、ただひたすらに歩きとおす学校行事の話としか記憶にはなく、

    あわてて、5年半ぶりに再読しました。

    ふたりの主人公を中心にした心理描写がおもしろく、ぐいぐいと本の世界に引き込まれます

    初めてこの本を読んだ時は、子どもは小学1年生。

    5年半がたち、子どもは身体も心も大きくなりました。

    1冊の本を共有できるっていいものだなと、少しうれしくなりました。

    2012年8月9日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2012.07.10

    カンガルーの本棚 不幸せな物語

    重松清さんの「Long,Long ago」(新潮文庫)を、読みました。

    うまくいかない人生を描いた、6つの物語が綴られています。

    「カンガルーのポケット」の今月のテーマは、「運」

    人には、自分の力ではどうしようもない「運」を感じる時があります。

    運がいいとか、悪いとか・・

    はたから見ると、「なんでそうなるの」と、不運ばかり続く人がいます。

    カンガルーのポケットのテーマは、「不運の社会的救済」です。

    でも、重松清さんは不運をも、愛おしくみつめます。

    運が良くても、悪くても、それが自分の人生なら、

    まるごと受け止めて、愛おしむ深さに脱帽です。

    2012年7月10日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2012.06.30

    カンガルーの本棚 脳に良くないことって

    小西行郎先生の「子どもの脳によくないこと:赤ちゃん学、脳科学を生かす子育て」(PHPサイエンス・ワールド新書)を、読みました。

    小児科教授を経て、赤ちゃん学会理事長をされている小西先生が、子どもの脳にとって良くないことを伝授されます。

    子どもに育てたい心として、「幸せと感じられる心」「人を敬う心」「感謝できる心」をあげられます。

    そのためには、「親がしっかりと生きているさま」を子どもに見せること。

    過保護・過干渉をさけ、子どもを信じて、任せてみること。

    そのうえで、子どもが必要だとしたときに、どう関わってやれるか。

    と、伝えられます。

    かんがるうっ子の親として、小児科医として、深く考えさせられる一冊です。

    2012年6月30日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2012.06.22

    カンガルーの本棚 いろいろな気持ち

    石川幹人さんの、「人は感情によって進化した」(ディスカバー携書)を、読みました。

    感情と環境との関係について、石川さんは「かっての生活環境にふさわしい形で、感情がつくられている。狩猟採取社会にふさわしい感情が、文明社会にも生きている。」と、述べられています。

    捕食者から逃げる「恐怖」は早い段階で、

    個体の上下関係を形成する「怒り」や「おびえ」は、群れを形成するようになって、

    協力関係が築かれ、それを維持する役割を担う「罪悪感」や「義理」は、更に進化した段階で。

    毎日、毎時、毎分ごとに目まぐるしく移り動くの感情を、人類の進化の歴史の中で客観視できる一冊です。

    2012年6月22日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2012.06.20

    カンガルーの本棚 愛情と無理解と

    佐々木正美先生の「アスペルガーを生きる子どもたちへ」(日本評論社)を、読みました。

    「アスペルガー症候群は、脳の統合機能の障害だ」と、佐々木先生は推察されます。

    親子の関係に言及された箇所で、「親は最大の愛情をもって『理解者になりたい』と思いながらも、同時に偏見者になってしまうというきわどいところがある」と、書かれています。

    子どもの障害を認めたくない親の気持ち、なんとか「普通の子ども」にしようと頑張る親の熱意。

    それが子どもを追いつめて、二次障害を引き起こしていきます。

    子どもの「あるがまま」を認め、子どもにその人生を任せる難しさ。

    講演口調の読みやすい文章ながら、そこに書かれている内容の深さと難しさに、沈黙の一冊です。

    2012年6月20日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2012.05.13

    カンガルーの本棚 旅の終わりに

    重松清さんの「十字架」(講談社)を、読みました。

    イジメられ、自らの命を断った中学生。

    許さない、許せないという、家族の心情、

    そして、命の重みを背負って生きる同級生の物語。

    文字を追う眼がふるえ、息苦しさを感じます。

    この重いお話を書きながら、重松さんはわたし達に何を伝えたかったんだろうと考えます。

    忘れられない一冊になりました。

    2012年5月13日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2012.05.06

    カンガルーの本棚 ころばなぬように

    松清さんの「ステップ」(中公文庫)を、読みました

    「ステップ」は、ホップ、ステップ、ジャンプの「ステップ」

    そして、ステップファミリーの「ステップ」

    道上理事長が「重松さんの『ステップ』読みましたか。すごく良かったですよ」と、勧めてくれました。

    その時には、机の上の「積んどく」1冊でしたが、講演会続きでなかなか読む順番が回ってきません。

    やってきたGWは、「しげまつウィーク」になりました。

    「ステップ」は、父と娘が命をつなぐ物語。

    一つひとつの章を、道上先生は、どんな気持ちで読まれたのかなと、思いながらの、

    あたたかい気持ちになれる1冊でした。

    2012年5月6日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2012.05.05

    カンガルーの本棚 かあちゃん

    重松清さんの「かあちゃん」(講談社文庫)を、読みました。

    文庫本の厚さにして2cmを超え、ページ数では500p超えの大作です。

    文庫本の帯には、「お母ちゃんは、笑うことを禁じた。死んだお父ちゃんの罪を、一生背負うためにー」と、ありました。

    買おうか止めようかとためらいながら、

    それでも表紙絵にひかれて、手にとって、あとは一気に読み終えます。

    いじめ、いじめられ、それを見守る親たちと、先生。

    一人ひとりの子どもや、おとなのうしろには、

    それぞれのおかあさんや、おとうさんが、わが子をそっと見守っている。

    そんな当たり前の事実の中に、命のつながりを、感じます。

    それにしても、重松さんは、子どものこころが、なぜわかるんでしょう。

    でも、今の子どもは、「自分の事をそんなに深く考える力なんてないでしょう」と、つい、つっこみを入れたくもなります。

    おとなのこころだって、同じことです。

    だからこそ、重松さんは、こどもやおとな達のまとまらない思いを、かわってに言葉にされるのかもしれません。

    子どもも、おとなも、自分につながるみんなを大切に思っているあなたに、

    是非お読みいただきたい、とっておきの1冊です。

    2012年5月5日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2012.03.31

    カンガルーの本棚 おにぎり3日

    高田郁さんの「みをつくし料理帖・夏天の虹」(ハルキ文庫)を、読みました。

    春休みに入り、外来診療は記録的な忙しさ。

    採血は一日28名の、記録更新。

    食物負荷試験。

    新入学・新入園の、除去食指示書は、数えきれないほどに書きます。

    一日が終われば、診察人数は100名を超え、これまた記録です。

    お待ちいただく患者さんに、申し訳ない気持ちでいっぱいです。

    夜は、学校の先生との食物アナフィラキシーの対策会議。

    講演会、アレルギー教科書の原稿書き・校正と、今までで一番多忙な日々を過ごします。

    水・木・金、3日連続お昼抜き。

    その都度、受付の岸本さんや、三好事務長が、コンビニまでおにぎりを買いに走ってくれます。

    2つのおにぎりを、数分で口に入れ、午後からの診察を始めます。

    そのおにぎりの、おいしいこと。

    記録的な忙しさで、追いやられるのは、院長としての仕事と、読書です。

    それでも、「みをつくし料理帖」を読みました。

    一文字一文字ゆっくりと、味わいながら読み進みます。

    料理は、人の幸せを願うこと。

    おにぎりは、買ってきてくれた方の、ぬくもりの味がしました。

    2012年3月31日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2012.03.08

    カンガルーの本棚 哀しさと強さとに

    角田光代さんの、「八日目の蝉」(中公文庫)を、読みました。

    この本を原作とした同名映画が、今年の日本アカデミー賞を総なめしました。

    これは読んでみなくてはと書店に向かい、一気に読了。

    誘拐犯と、その人を母と信じて育った子どもの、再生の物語。

    人間の、というより、女性の哀しさと強さとに、こころを揺さぶられる作品です。

    2012年3月8日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2012.01.29

    カンガルーの本棚 待ってるよ

    大田康介さんの「のこされた動物たち」(飛鳥新書)を、読みました。

    副題に「福島第一原発20キロ圏内の記録」とつけられているように、取り残された動物の写真と短文で構成されています。

    今はだれも住んでいない家の玄関から動こうとしないイヌたち。

    痩せこけて歩くネコたち。

    そして、用水路にはまり、抜け出せないでいるウシたち。

    写真に写るその目は、飼い主さんが戻ってくるのを「いつまでも、待ってるよ」と、訴えているかのようです。

    この1冊の写真集を読むだけで、この星の生き物と原子力発電が、いかに相いれない存在であることかが、わかります。

    つらいけれど、目をそむけてはいけない1冊です。

    2012年1月29日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2012.01.09

    カンガルーの本棚 思い出の一冊に

    阿部彩さんの「弱者の居場所がない社会」(講談社現代新書)を、読みました。

    阿部さんは、前著「子どもの貧困」(岩波新書)で、一躍時の人となった研究者です。

    「貧困」とは、生活水準を保つための資源の不足を表す言葉。

    「社会的排除」とは、社会における人の「位置」や、人と人との「関係」、人と社会との「関係」に関わる言葉。社会から追い出されることと説明されています。

    216ページの本が、サイドラインで真っ赤になりました。

    医療生協がどこに向かうべきなのか、その原点を教えてくれたように思います。

    この本を、100歳で亡くなった父の通夜の席で読みました。

    じっとしていると眠くなるので、会場内を歩き回りながら読みました。

    父と私とは、生き方は違います。

    けれど、本が大好きで、書くのが大好きで、人と話しするのが大好きで、そんな好奇心のかたまりのようなところは、父譲りです。

    自分が何を願うのか、社会に対して何を貢献していけるのか、これからの生き方を、考え考えながら読みました。

    わたしの、読書生活の中でも、思い出となる一冊になりました。

    2012年1月9日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

     

  • 2012.01.08

    カンガルーの本棚 患者さんこそが教科書

    帚木蓬生さんの、「風花病棟」(新潮文庫)を、読みました。

    10人の良医たちを主人公にした、短編集です。

    あとがきで、作者の蓬生さんは、自らが急性骨髄性白血病に罹ったと、告白されています。

    帚木蓬生さんは、著名な精神科のお医者さんです。

    病んだ治療者の視点から、医師という職業を選んだ人間の喜怒哀楽を描かれています。

    「患者こそが教科書」

    「逃げんで、踏みとどまり、見届ける」

    帚木蓬生さんの臨床医としての座右の銘が、そこかしこに散りばめられています。

    新春に読むにふさわしい本に、巡り合えてよかったと思いました。

    2012年1月8日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

     

  • 2012.01.03

    カンガルーの本棚 新春も長英さんから

    佐藤昌介さんの「高野長英」(岩波新書)を、読みました。

    本著は、高野長英が、政治犯として収監される前後の、思想的遍歴に焦点を当てて描かれています。

    純粋に医学的な研究心から、蘭学に傾倒し、その語学力を買われて「渡辺崋山」に出会います。

    やがて、崋山の影響を受けて、国防論にも興味をいだき、「夢物語」を記します。

    幕府の権力闘争の中で、「夢物語」が反政府的と断じられ、「永牢」の刑を受けます。

    脱獄後の逃亡生活の中で、西洋兵書の翻訳を重ねるうちに、封建社会に対し、対決姿勢を強めていきます。

    本書は1997年に発刊されましたが、1984年に吉村昭氏により書かれた「長英逃亡」と対比して読み進めると、長英の人物像がより鮮明にイメージする事ができます。

    3月の前進座のお芝居が、またひとつ楽しみになりました。

    2012年1月3日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2011.12.30

    カンガルーの本棚 時代の先駆者

    吉村昭さんの、「長英逃亡・上・下」(新潮文庫)を、読みました。

    幕末の蘭学者、高野長英を描いた作品です。

    高野長英は、渡辺崋山らの「蛮社の獄」に連座して、江戸小伝馬町の牢獄に収監されます。

    家族に会いたい、もう一度蘭学で身に着けた知識を、日本国に役立てたいという思いから、脱獄をはかります。

    物語は、脱獄後、江戸で惨殺されるまでの、六年有余の長英の足取を追います。

    越後、陸奥、宇和島、江戸と逃亡する生活は、いつ捕まるかも知れないと言う不安との闘いです。

    当代第一人者の蘭学者であり、奢るところもあったといわれる長英が、支えられ助けられる中で、人々の人情を知り、人間らしく変貌していきます。

    作者は、逃亡中の生活こそが、長英が最も人間らしく生きた歳月だと述べています。

    来る年の3月21日は、高野長英を題材にした、前進座の「水沢の一夜」が公演されます。

    どのようなお芝居になるのか、楽しみです。

    「長英逃亡」は、2011年の読書記録の152冊目になります。

    多くの良書に出会えたことを、うれしく思います。

    吉本新喜劇的に締めくくるのなら、「このへんで、許しといたろか」

    来年も、よろしくお願いいたします。

    2011年12月30日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

     

  • 2011.12.26

    カンガルーの本棚 150冊目は池上さん

    池上彰さんの「知識ゼロからの世界経済地図入門」(幻冬舎)を、読みました。

    アメリカ、ヨーロッパ、中国、アジア、中東、アフリカ、そして日本。

    複雑に絡み合う世界経済を、図表を駆使して、分かりやすく説明されています。

    今年150冊目の読書は、クリニックの経営を考えるうえでも、役立つでしょうか。

    2011年12月26日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2011.12.10

    カンガルーの本棚 乙川さん

    乙川優三郎さんの、「闇の華たち」を、読みました。

    乙川さんの小説は、封建制度の下で押しつぶされそうになりながらも生きていく、男女の愛をテーマにしたものが多いのですが、この短編集にもいろいろな女性たちが登場します。

    遠くに、かすかな明るい日射しを見出すような終末に、救いを感じます。

    次の一冊をと待ち遠しくなるのは、乙川さんのそんな優しさに出会う楽しみからなのでしょうか。

    2011年12月10日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

  • 2011.12.08

    カンガルーの本棚 ジブリの鈴木さん

    鈴木敏夫さんの「ジブリの哲学:変わるものと変わらないもの」(岩波書店)を、読みました。

    鈴木さんは、スタジオジブリの代表取締役を兼ねられる「名プロデューサー」。

    宮崎駿監督や、高畑勲監督と共に、「となりのトトロ」や「火垂るの墓」などの、数々の名作を世に送りだされました。

    この本は、鈴木さんが発表されてきた、数々のエッセイや論文を編集したもの。

    TVのトーク番組や、新聞の書評を通じて知りました。

    その中で鈴木さんは、思春期とは、「価値が定まらない時期」と定義されています。

    「以前のように思春期を脱して大人になっていくのではなく、思春期を内包したまま年を重ねていく。」

    そして、「還暦を迎え、本当なら年齢相応のジジイになっていないといけないはずが、いつまでたっても、若い気分が抜けない。そして、その心地よさと居心地の悪さが、僕には同居している。そういう自分のことが少し理解できたような気がした。」と、書かれています。

    ジブリおたくの方には、垂涎の一冊です。

    2011年12月8日

    いたやどクリニック小児科 木村 彰宏

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