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2011.10.17
カンガルーの本棚 ものおじしない
宮西達也さんの「にゃーご」(鈴木出版)を読みました。
授業参観に出かけた日、子どもは休み時間を図書室で過ごします。
つられて入った図書館で、大きな大きな絵本を見つけました。
40.8×50cmもある大きな本は、ねことネズミのお話です。
「何読んでるの」
後から来た、1年生のふたごちゃんが尋ねます。
「にゃーご だよ」と、大きなページをめくりながら、声を出して読むことにします。
ものおじしない、ふたごちゃん。
わたしは、そんな子どもが大好きです。
2011年10月17日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2011.10.16
カンガルーの本棚 子規さんと遊ぶ1週間
夏井いつきさんの「子規365日」(朝日新書)を読みました。
松山への講演旅行で立ち寄った子規記念博物館で、買い求めた一冊です。
365日、その日その日にちなんだ一句を、夏井さんが自由に解説されています。
目に映った一瞬の情景を、言葉のカメラで写し撮り、575の17文字に編集するすごさ。
子規さんと遊ぶ、1週間です。
2011年10月16日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2011.10.01
カンガルーの本棚 卵の緒
瀬尾まいこさんの、「卵の緒」(新潮文庫)を読みました。
表題作のほかに、「7’s blood」が収められています。
小学5年の男の子と、高校3年の少女が綴る、家族の物語。
不思議な語り口で、小さな家族の世界に引き込まれていきます。
9月に読んだ17冊の本は、私の心をいつまでも温かくしてくれます。
2011年10月1日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2011.09.30
カンガルーの本棚 はじめの一歩
雨宮処凛さんの「14歳からの原発問題」(河出書房新社)を、読みました。
「素朴に怖いから、誰かに犠牲を強いるのは嫌だから、動物たちが置き去りにされる姿をもう二度と見たくないから、『原発のない世界』を夢みたいし、目指したい。」
雨宮さんは、「あとがき」でこのように書かれています。
3月11日までは、原発の本など手に取ったことがなかったわたし。
雨宮さんの半年の心の軌跡が、わたしの心の奥深くで響きあいます。
知ることから、感じるところから、それが「はじめの一歩」です。
2011年9月30日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2011.09.28
カンガルーの本棚 子どもの貧困
新日本出版社の「誰かボクに食べものちょうだい」を、読みました。
新聞の連載記事を、一冊にまとめたものです。
保育所、小学校、中学校、そして高校。
こどもの生活現場に足を運び、「教育と貧困」を見つめます。
取材先の小学校の校長先生の言葉が、心に残りました。
「子どもがおとなへのあこがれをもてるようにすること。
おとな自身が夢をもって子どもに語れることが大切です。
自分が勉強することが将来どのようにつながっていくのかを、子ども自身が描けるようにすることです」
小児科医師として、知っていくこと、声に出していくことの多さに気づかされました。
2011年9月28日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2011.09.25
カンガルーの本棚 ヒロシマ・ナガサキ・フクシマ
田口ランディさんの「ヒロシマ・ナガサキ・フクシマ 原子力を受け入れた日本」(ちくまプリマー新書)を、読みました。
原発・原爆についての、田口ランディさんからのメッセージです。
新書の帯には、「唯一の被爆国が、なぜ原発大国に?」とあります。
「相手と自分が違う事を認め、自分の中に起こる理不尽な怒りや差別をコントロールできるようにならないと、私たちはすぐに誰かが唱える正義や、明るい未来や、絶対の安全に、まどわされてしまうのです。」
「私たちはあまり歴史から学ぼうとしていません。その結果が、この現状なのです。歴史の中で自らの存在を俯瞰しないので、自分たちが何を望んでいるのかも判然としなくなってしまいました。」
田口ランディさんの歴史観に、共感を覚えました。
2011年9月25日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2011.09.24
カンガルーの本棚 専門家とは
児玉龍彦先生の「内部被曝の真実」(幻冬舎新書)を読みました。
神戸医療生協の道上理事長の推薦図書です。
この本は、2011年7月27日衆議院厚生労働委員会での意見陳述をまとめられたものです。
児玉先生は、東京大学アイソトープ総合センター長をされています。
「専門家とは、歴史と世界を知り、本当の危機が顕在化する前にそれを防ぐ知恵を教える人でなければならない」と、述べられます。
そのうえで、「放射能汚染を広範に徹底的に調べ、除染していかなければならない」と提唱されます。
放射能研究一筋に生きてこられた児玉先生の言葉に、それを受け継ぐわたし達の責任の重さを感じます。
2011年9月24日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2011.09.23
カンガルーの本棚 優しさとは
小出裕章さん、黒部信一さん共著の「原発・放射能、子どもが危ない」(文春新書)を読みました。
終章近く、小出さんはこのように書かれています。
「優しさとは、他者の命の尊厳を認めて生きること。自分よりも弱い者の尊厳を認めて生きること」
「歴史の流れにちゃんと自分が責任を取れたか」と、自問されます。
生き方の問題として、原子力発電が、子どもの未来と共存できないことを、くりかえし訴えられます。
科学的な警告の書であるとともに、人の生き方に迫る好書です。
2011年9月23日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2011.09.22
カンガルーの本棚 放射能から子どもを守る本
武田邦彦さんの、「子どもを放射能汚染から守りぬく方法」(主婦と生活社)を読みました。
しばらく小説の世界を漂っていましたので、久しぶりのノンフィクションです。
体外被曝と対外被曝について、
なぜ年間1ミリシーベルトの被爆限界以下でなければならないのか。
わかりやすい言葉で説明されています。
道上理事長の読書力に啓発されて、しばらくは「放射能と健康」についての読書が続きそうです。
2011年9月21日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2011.09.15
カンガルーの本棚 100冊目はお医者さん
小林公夫さんの「本物の医師になれる人、なれない人」(PHP新書)を読みました。
今年100冊目にあたります。
毎年、100冊以上の本を読もうと心に決めて、2007年から5年連続の目標達成です。
記念すべき100冊目は、医師に求められる適性についての解説です。
小林さんは、医学と法学とにまたがる分野の専門家です。
小林さんは、3つの章で
①患者さんの自己決定権の尊重(患者さんの心を解きほぐし、解放させる能力)
②治療を進めるうえでの注意力・判断力
③新しい治療法に挑戦する挑戦新・開拓精神
について述べられます。
そのうえで、さらに医師に求められる能力・資質として
①利益衡量能力
②情報収集能力
③生命倫理への気配り
④優れた人間性
⑤人権への配慮
⑥空間把握能力・推理能力
⑦不確実性に立ち向かう姿勢
の7つをあげられます。
毎日の診断治療や、学会発表、講演活動など、医師としての生活を過ごす中で、つい忘れがちになる大切な事を、考えさせられる一冊です。
2011年9月15日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2011.09.14
カンガルーの本棚 電気のつくりかた
山﨑耕造さん監修の「これからの電気のつくりかた」(ローレンスムック)を読みました。
火力・水力・風力・太陽光・地熱・波力・バイオマスなどなど
いろいろな発電方法の現状を、図解とともに紹介されています。
エレルギーとは、物を動かす能力。
わたし達の身の周りに、さまざまな形態で存在し、全体量は増えもせず、減りもしないで、ただ形態が変わるだけ。
物理学の基本命題も、わかりやすく解説されています。
どのような道筋で、エネルギー政策を転換していくのか(ロードマップ)
空想ではなく、科学として考えていく上で、参考にしたいと思います。
2011年9月14日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2011.09.13
カンガルーの本棚 湖水地方の物語
さだまさしさんの、「茨の木」(幻冬舎文庫)を読みました。
父が残した、バイオリンのルーツを探す旅の物語です。
イギリスの湖水地方の静かなたたずまい。
旅の途上で出会う人の心の温かさ。
綴られた言葉を読み進むうちに、見知らぬ風景が広がり、
見知らぬ風景の中に、人の心の優しさを知る。
主人公と共に、美しい旅を重ねるひと時でした。
2011年9月13日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2011.09.09
カンガルーの本棚 言葉のわかるボンネットバス
森沢明夫さんの「海を抱いたビー玉」(小学館文庫)を読みました。
大切にされ、「人の心」を持ったボンネットバスの物語です。
わたしの家には、言葉がわかる二匹の柴犬がいます。
言葉がわかるバスだなんてと、不思議な気持ちで読み進めました。
瀬戸内の小島から、越後の湯沢へと旅する中での、出会いと別れ。
小さな海色のビー玉に導かれ、物語は進みます。
「思う、言う、成る」
なんども繰り返される魔法の言葉は、わたしを勇気づけます。
2011年9月9日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2011.09.05
カンガルーの本棚 神様カルテ
夏川草介さんの「神様のカルテ」(小学館文庫)を読みました。
書店では、一番目立つところに平積みされているヒット作です。
青年研修医は、昔も今も超人的な仕事量。
仕事をすればするほど、世間が狭くなっていきます。
人の心と真剣につきあうためには、人間的な生活が必要です。
危うさをいっぱい秘めた、研修医時代を思い出させる一冊です。
2011年9月5日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2011.09.02
カンガルーの本棚 アントキノイノチ
さだまさしさんの「アントキノイノチ」(幻冬舎文庫)を読みました。
書店へ足を運ぶごとに、「積んどく」書籍が増えていきます。
本の小山の中から、次はどれを読もうかなと迷う時、モントリオール世界映画祭での受賞を耳にしました
「アントキノイノチ」
プロレスの人の名前をもじった、さだまさしさんの一冊です。
通勤時間に、午前診が終わった短いお昼休みに、人の命の重さを考えました。
現実に耐えきれずに、自らを断つ命。
遺品整理の仕事を通じて、生まれ変わる若い命。
さださんの、温かな目が青年を見つめます。
「元気ですかあ~」
1cmの文庫本の中から、主人公の声が聞こえてきます。
2011年9月2日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2011.08.31
カンガルーの本棚 経済がわかる本
池上彰さんの「経済のニュースが面白いほどわかる本」(中経の文庫)を読みました。
何度解説を読んでも、分かりにくい経済の問題を、6つの章にわけて、解説されます。
税金は、みんなで国にプールしたお金。
このお金を、どういう優先順位で使っていくのかを決めていくのが、政治の役割。
こう考えると、政治と自分との関係が整理されます。
円高、株価、TPPなど、池上さんの解説を読んでも、腑に落ちないところもあります。
8月最後の一冊は、いつもと変わった傾向の本で、締めくくりました。
2011年8月31日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2011.08.28
カンガルーの本棚 小夜心星(さよしんぼし)
高田郁さんの「みをつくし料理帖」(小夜しぐれ・心星ひとつ:ハルキ文庫)を読みました。
何を食べてもおいしいと感じる私ですが、さすがにこの暑さだけはいけません。
たまに見るテレビのグルメ番組は、リポーターの薄っぺらな表現に、興ざめします。
音と映像とで見せるテレビでさえ、料理そのものを伝える事は難しいことです。
まして小説は、絵もなければ、音もありません。
高田さんの小説からは、料理の香や温かさまでが伝わってくるのが不思議です。
「お前さんの料理は食べる者を元気にしてくれる。喜びの少ない年寄りに、生きていてよかった、と思わせてくれるからね」
「ここで旨い料理を口にすると、それだけで俺あ息がつけるんだ。まだ大丈夫だ、生きていける、ってな。」
小説の中の江戸っ子だけではなく、読者の心までを温かく満腹にしてくれる一冊です。
2011年8月28日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2011.08.18
カンガルーの本棚 原発はいらない
小出裕章さんの「原発はいらない」(幻冬舎)を読みました。
小出さんの本を読んだのは、「原発のウソ」に続く2冊目です。
日本各地に存在する原発、計画中の原発の危険性が簡潔に述べられています。
また、原発の経済性や環境への負荷などの問題も、マスコミなどで流されている論調とは別の視点かえら、解説されています。
福島原発の事故以降、「原発に依存しない社会」を目指す動きは、大きく拡がっています。
一方、経済危機の時代にエネルギー政策を転換させることへの不安も残っています。
どの課題を優先させ、どのように折り合いをつけていくのかを論議する際に、必読の書です。
2011年8月18日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2011.08.14
カンガルーの本棚 ひとときの涼風
重松清さんの「季節風・秋」(文春文庫)を読みました。
冬から始まった「季節風シリーズ」も、この本で終わりです。
ゆっくりと読みたいような、早く読み進みたいような、そんな心温まる12の掌編集。
転校生の心の動きを描いた「サンマの煙」
人には同じゴールがない事をさりげなく描いた「よーい、どん!」
そして、別れていく家族として最後の夕食を描いた「少しだけ欠けた月」
秋の気配さえ感じ取れない猛暑の中。
小説の中には、心をいやす涼風が吹いています。
2011年8月14日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏
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2011.07.31
カンガルーの本棚 7月最後の
重松清さんの「季節風・夏」(文春文庫)を読みました。
7月最後の日に、滑り込みの形で読みました。
これで、7月の読書は9冊目。
「年に100冊以上を読むぞ」という、年初の誓いは、いいペースで進行中です。
この短編集は、夏にちなむ12のお話。
わたしは、この中で、父の再婚を描いた「ささのは さらさら」
死に行く父をみつめる「タカシ丸」が好きです。
文庫本のあとがきの中で、重松さんは次のように書かれています。
「思えば、四季の中で夏ほど『終わり』の似会う季節はない。『終わり』があるからこそ、光り輝くものがある。『終わり』があるからこそ、新しいなにかが始まるだろう。『終わり』があるからこそ、生きることのすべては、かけがえのないものになる。」
「僕たちは誰もがいま、とても大きな『終わりの後の始まりの前』にいるのだろう。でも、いつか、僕たちは歩きだす。『終わりの後の始まり』を生きる。生きて行こう。生きていかなければならない。『終わりの後』を持ち得なかった何万人ものひとびとのためにも」
夏の一日、人と家族を思いやる一冊に、巡り合えました。
2011年7月31日
いたやどクリニック小児科 木村 彰宏