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2011.01.22
カンガルーの本棚 春になる
お正月の読みはじめは、コンビニで買った「テストの珍解答」(鉄人社)
全国の試験解答から集められた、解答集です。
「雪が溶けたら何になるでしょうか?」
青森県の小学校の問題に、女の子は「春」
以前このブログでもご紹介した、答えが載っていました。
雪道を歩きながら、子どもに
、この本のことを伏せて、同じ質問をします。
答えは、「・・・春」
やったね、大正解です。
おとうさんは、「春」って、書く子どもが大好きですよ。
2011年1月22日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2010.12.24
カンガルーの本棚 春はまだ
重松清さんの、「季節風・春」を読みました。
春は、別れの季節、そして、はじまりの季節です。
そんな春を、12の物語でたどります。
わたしは、「めぐりびな」、そして、「せいくらべ」に、こころ引かれました。
「めぐりびな」は、母の苦労と愛の深さが描かれています。
「せいくらべ」は、小学校5年生の女の子と、隣家の若夫婦の交流が描かれています。
ページをめくる手に、電車の走る振動が重なる中、ひとの優しさが、深くこころに伝わります。
2010年12月24日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2010.12.17
カンガルーの本棚 夢時計
川口雅幸さんの「夢時計」(星雲社)を読みました。
新刊コーナーに積まれていた、レトロな暖かい色の表紙にひかれて、手に取りました。
主人公は小学6年生の男の子。
ふとしたことから、自分が産まれた時の家族の時間に戻ります。
そこで、おじいさんが語ります。
「神様が人間にタイムマシンを作らせないのは、後悔や失敗を過去の塗り替えなどでなおざりにせず、その思いを、後世、未来へとしっかり紡いでいかせるためだと、わしは思うんだ」
変えたい過去、変えたい自分。
それは、過去の自分ではなく、未来につながる今の自分を変えていくこと。
深いメッセージを、受け取りました。
2010年12月17日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2010.12.11
カンガルーの本棚 若葉たち
辻内智貴さんの「信さん」(小学館文庫)を読みました。
昭和30年代、九州のお話しです。
主人公は、イチジクの樹を見上げながら思います。
「遮るものの無い豊かな陽ざしをうけて思うがままに育びていく若葉もあれば、陽の当たらぬまま日陰に枯れて行く葉も何処かに有るのだろう。
人間もまた、そんな若葉に似た一時期を、その一生のうちに誰でもが持つのではないか。この人の世の様々な陽ざしの中に、人は古から抗いようもなく産まれおちつづけてきた。その理不尽さに時にくるしみながらも、それでも、人はそれぞれの天地のなかで、可憐にその一生を紡ぎつづけてもきた・・」
職員健診にむかう神戸電鉄のなかで、あふれくる涙に戸惑いながら、読みすすみました。
クリスマスまでに、多くの人が読まれたらいいですね。
2010年12月11日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2010.12.09
カンガルーの本棚 ぼんやり
辰濃和男さんの「ぼんやりの時間」(岩波新書)を読みました。
数か月前に、購入しながらつんどく状態。
年が変わる前に、ようやく読了です。
「ぼんやりすること、休むこと、懶惰であること、閑なこと、それらをたのしむことのすばらしさ」
辰濃さんは、この本の主題をこのように記しています。
「休むこと」は決して負の営みではなくて、自分の生きる力を強いものにするための積極的な営みなのだと思う。
辰濃さんの主張は、その通りだと思います。
その一方で、ページをめくる手を休めない自分がいます。
今はまだ忙しいけれど、いつかきっと、のんびりと雲を見上げて過ごす毎日がくるよね。
自分の中の矛盾に、気づかせてくれる名著です。
2010年12月9日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2010.12.07
カンガルーの本棚 野の風
井戸書店の森店長さんに勧められ、辻内智貴さんの「野の風」を読みました。
「野の風」、「帰郷」、「花」の、三作品が収められています。
「野の風」は、父の危篤を機会に、家族の絆を取り戻していく物語。
「帰郷」は、夫の故郷を尋ねる物語。
どこかで読んだようで、それでいて、はじめての、しんみりとさせられるお話しです。
2010年12月7日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2010.12.01
カンガルーの本棚 さよなら大江戸
佐伯泰英さんの「鎌倉河岸捕物控・紫房の十手」を読みました。
政次・亮吉・彦四郎・しほが大江戸を駆け回る捕物帖。
幼なじみ四人の、成長のドラマが並行して描かれます。
秋から始まった、わたしの中での捕物帖ブーム。
何に引かれるのかと振り返ると、人情と、単純さ。
人情は、ある面ではルール違反。
権力の独走とも言えます。
単純さは、勧善懲悪。
裁判員制度抜きで、即決刑が決まります。
閉塞的な今の社会状況への、反発から痛快さを求めるのかも知れません。
「鎌倉河岸」シリーズは、既刊17冊を読了。
まだまだ続編が期待されます。
が、いつまでも大江戸に留まる訳にはいきません。
今年の101冊目は、今の日本に戻ることにしましょうか。
2010年12月1日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2010.11.18
カンガルーの本棚 いまは冬
重松清さんの、「季節風・冬」を読みました。
冬を題材に綴る、12の物語です。
その中でも、わたしは「じゅんちゃんの北斗七星」という小編に、心ひかれました。
40年も前に会わなくなった、隣家のじゅんちゃん。
北の空を見上げながら、思い出します。
みんなとは、すこし違っていたじゅんちゃん。
となりのおじさんと、おばさんは、小学生になる主人公に、「これからも、じゅんと仲良くしてやってね」と、何度もくり返します。
その言葉の重さと苦さを、主人公は大人になり、親になってから、少しづつ噛みしめます。
重松さんは、こう述べられています。
「ひとの想いを信じていなければ、小説は書けない気がする」
ひとの心を想像すること、思いやることを教えてくれる小編集でした。
2010年11月18日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2010.11.03
カンガルーの本棚 大江戸捕物帖
捕物帖に、はまっています。
9月の末から読み始め、14冊。
今は佐伯泰英さんの「鎌倉河岸捕物控シリーズ」(ハルキ文庫)の8冊目です。
「鎌倉河岸捕物控・街歩き読本」なる一冊を見つけました。
今に残る大江戸の香を訪ねる、解説書です。
10月25日の夕方、テレビをつけると、「鉄腕DASH」。
今回は、江戸名物すごろく対決。
サイコロをふって、出た目を進み、そこに書かれている大江戸の名物を探す番組です。
読んだばかりの店の名が、次々に登場します。
創業300年、350年の老舗ばかり。
捕物帖の世界に、ますますのめり込んでいく予感がしました。
2010年11月3日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2010.10.19
カンガルーの本棚 傷ついたキャンパス
島誠一郎さんが書かれた、「無言館を訪ねて」(講談社)、「傷ついた画布の物語」(新日本出版社)を読みました。
先日、信州上田市の戦没画学生美術館「無言館」で、買い求めた2冊です。
残された一枚の絵が描かれるまでに、ひとりの青年が歩んできた道のり。
描くことを断ち切られた青春を受けとめる、父や母、妻や子どもたちの慟哭。
残された絵は、その悲しみを何も語りません。
ただ、静かに人間の生き方を、問いかけます。
愛犬を連れたお散歩の途中で、丘の上の「無言館」が、急に目の前に現れそうな気がします。
2010年10月19日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2010.09.24
カンガルーの本棚 今朝の春
高田郁さんの、みおつくし料理帖新作「今朝の春」(ハルキ文庫)を読みました。
宝塚出身の高田さんは、リュック姿で、板宿駅前の井戸書店さんにも、気軽に来られるとのことです。
ブログの管理人さんも、大ファンの作家です。
「今朝の春」は、4つの短編いずれもが、季節は厳冬。
西日を浴び歩きながらページをめくる手は、冬の寒さを感じます。
作品の中で、いくつかの素敵な言葉を見つけました。
「料理に向かう時、いつも心に陽だまりを抱いていよう・・」
「勝ちたい一心で精進を重ねるのと、無心に精進を重ねた結果、勝ちを手に入れるのとでは、『精進』の意味が大分と違うように思いますねえ」
高田さんの次の作品が、楽しみです。
2010年9月24日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2010.09.21
カンガルーの本棚 アメリカ・アメリカ
池上彰さんの「そうだったのか!アメリカ」(集英社文庫)を、読みました。
「そうだったのかシリーズ」の4冊目です。
今回のテーマは、アメリカの今と昔。
私はアメリカが嫌いです。
私はアメリカが大好きです。
そんな相矛盾する言葉から、始まります。
「銃社会」「差別との戦い」「メディアの大国」「移民の国」「帝国主義国家」
さまざまな視点から、アメリカの今と昔が、書き進められていきます。
読み進むうちに、アメリカの若さが見えてきました。
若さ故のバイタリティー、自由、柔軟さ、そして傲慢さ。
そんなアメリカが、わたしも大嫌いで、大好きになりました。
2010年9月21日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2010.09.20
カンガルーの本棚 ガリレオ
子どものマイブーム、東野圭吾さんの「探偵ガリレオ」(文春文庫)を読みました。
子どもがはじめて手にした、文庫本。
読み終えたばかりの、本を借りました。
子どもの前で読んでいると、「おとうさん、どこ読んでるの?」「犯人誰か知ってる?」と気になる様子。
お願いですから、探偵ものは、犯人を教えないでくださいね。
2010年9月20日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2010.09.05
カンガルーの本棚 すこしずつ
俵万智さんの「101個目のレモン」(文春文庫)を読みました。
5月半ばに手元に置き、少しずつ読み進めました。
あとがきのなかで、俵さんは「すべてをひっくるめた自分自身の三十代が、ここには詰まっているような気がします。」と、書かれています。
そんなエッセイ集の中で、「絵画あれこれ」というタイトルに集められたエッセイが、わたしは好きです。
「書きたいものがあるとき、書きたくてしかたがないとき、原稿用紙の白は、無限の可能性をもって歓迎してくれる。けれど、書きたいものが見えないとき、書きたくても書けないとき、その白は、残酷で冷たい鏡となる。」
12月に発行予定の共同執筆3冊目の「学校生活に必要な食物アレルギーの知識(仮題)」
この31日にようやく脱稿し、編集者に送付しました。
ものを書くと言うこと。
とても魅力的で、苦しいものですね。
2010年9月5日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2010.09.03
カンガルーの本棚 コミック版
大倉かおりさん画の「坊ちゃん」(集英社)を読みました。
子どもが買っておいた夏目漱石原作のコミック版です。
あらすじは知っているものの、原作を最後まで読み通したことはありません。
いつも、おもしろさが分かる前に、投げ出していました。
コミック版は、小一時間ほどで読むことができます。
原作の入門としては、十分に楽しむことができました。
これに味を占めて、同じコミック版で「三四郎」「ビルマの竪琴」「二十四の瞳」に挑戦。
いずれも、まずまずの満足度です。
もし、そのあと原作にたどり着かなくても、全く知らないよりはいいのかも知れません。
これからも「コミック版コーナーにも、足を向けようかなっ」という気持ちになりました。
2010年9月3日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2010.09.03
カンガルーの本棚 伝える技術
池上彰さんの「わかりやすく<伝える>技術」(講談社現代新書)を読みました。
この夏は、池上さんの本が、マイブームです。
ほかの方の解説図書と、どこが違うのだろうかと考えていました。
池上さんは、NHKの出身です。
「NHKでは、放送では解説するけれど、判断するのは視聴者。視聴者がそれぞれの意見を持ってください、というスタンスで望みます。」と述べておられます。
なるほど、そういう経験を積まれる中で、培われた文体だったのかと納得しました。
この著書で、次の箇所に惹かれました。
「あなたの話を聞いている相手は、自分とは生まれも育ちも違うわけだし、持っている常識が違います。そんな人たちにどういうふうに話をすればいいのか、伝えようとする相手のことを一生懸命考えます。当然のことながら、相手のことがよくわかっていないと、どいう伝え方をしていいかわかりません。そこで、相手はどういう人なのだろう?どういうことを言えばわかってもらえるかな?と考える。これがつまり、相手への『想像力』と言うことなのです。」
伝えることは、相手を知ること、相手を想像すること。
その上で、伝え方の工夫をすること。
伝えることの奥深さを学びました。
2010年9月3日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2010.08.31
カンガルーの本棚 銀二貫
高田郁さんの「銀二貫」を読みました。
何度となく、大坂の町を焼き尽くす大火。
天神さんの再建に寄進するために用意された「銀二貫」が、人を救い、人を育てます。
「情けは人のためならず」という言葉があります。
お金に込められた人情が、人の世を暮らしやすくするのでしょう。
読後に、ほんわりとした温かい気持ちになれることうけあいの時代小説です。
2010年8月31日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2010.08.29
カンガルーの本棚 露の玉垣
乙川優三郎さんの「露の玉垣」(新潮文庫)を読みました。
乙川さんの時代小説は、社会の底辺で苦悩する人々を描くことを常としています。
「露の玉垣」は、新発田藩という小藩で生まれ死んでいった人々の記録です。
くり返される水害と、その後に続く貧困は、武家社会にも重くのしかかります。
家老・溝口半兵衛は、災害と貧困にうごめく新発田藩200年の家臣の記録を書きつづることで、明日への勇気と希望をみいだそうとします。
島内景二氏は、「露の玉は、はかない。だが、はかないがゆえに、朝日や夕日、そして月光を浴びて輝く美しさには、比類がない。けれども、誰にもその美しさを知られることなく、草深い野で結んでは消えてゆく露の、何と多いことか。」と、解説されます。
偉人豪傑の歴史の裏に、ひっそりと生き抜いた人々の歴史もまた、今わたしたちが生きていることに、つながっているのですね。
2010年8月29日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2010.08.22
カンガルーの本棚 追伸
真保裕一さんの「追伸」(文春文庫)を読みました。
久しぶりのミステリー小説です。
2組の夫婦の間に交わされる、往復書簡。
その中で、少しずつ事件の真相が明らかにされていきます。
しかし、テーマは謎解きではありません。
作者は登場人物にこう語らせます。
「僕にも祖父母がおり、幼い時分には可愛がってもらった記憶がありながら、彼らに何ひとつ戦争の話を聞かずにきました。彼らの人生と僕の未来は一切無関係なのだと言いたげに、今日まで厚かましく生きてきたような心苦しさを、今さらながら感じています。
祖父母や両親は、自分たちの経験してきた苦労を語りたがらず、ひたすら子や孫の未来を信じ、祈り続けるものなのでしょう。我々もつい昔の苦労話など聞きたくないと考えてしまいます。
でも、そこには必ず懸命にその時代を生き抜いた人々がいて、多くの語られない物語が残されているはずなのです。」
暑い夏、いい本に出会いました。
2010年8月22日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2010.08.20
カンガルーの本棚 アルマ号
水野宗徳さんの「さよなら、アルマ」(サンクチュアリ出版)を読みました。
駅前の「井戸書店」さんで、手に取った一冊です。
図書館でみつけられた一枚の写真。
出征兵士が送られるように、幕の前に座る一匹の軍犬。
日本軍だけでも、10万頭を越える犬が、戦場にかり出されたと言われています。
愛犬とお散歩に出かけることも、プロ野球の阪神戦の結果が気になることも、大相撲で理事長代理が深々と頭を下げて謝罪することも、みんな平和な時代だから許されるのでしょう。
そんな、当たり前のことに気づかしてくれる、一冊です。
2010年8月20日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏