カンガルーの小部屋

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  • 2010.05.24

    カンガルーの本棚 発達が気になる子のサポート入門

    阿部利彦先生の「発達が気になる子のサポート入門」(学研新書)を読みました。

    学習障碍(LD)、広汎性発達障碍{PDD}、注意欠陥多動性障碍(ADHD)などの発達障碍を、阿部先生は「オリジナル発達」と呼ばれます。

    オリジナル発達の子どもが育つクラスは、

    「クラスの子どもたちが皆、日頃から愛され、満たされて、あたたかい心を持ち、他者に寛容で、失敗も許し、困っている子にはさりげなく手伝ってくれるクラス」だと言われます。

    「子どもはまわりのおとなを真似し、モデルとして成長する。子どもの傍らのおとなが、よい生き方を示してあげること。それが本来の教育の姿ではないでしょうか。」

    そのためには「自分の発言や行動が間違っていたと悟ったときに謝る勇気を示し、また他者の失敗に寛容であること、また困ったときには遠慮なく援助を求め、求められた側は援助に応えること、そして、助けられたことに感謝し、また自分に助けを求めてくれた人に感謝できること」そんなおとなのよき生き様を子どもに見せることが大切だと結ばれます。

    発達が気になる子どもとおつき合いされている方への入門書として、一押しの一冊です。

                          2010年5月24日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.05.13

    カンガルーの本棚 お味なおし

    俵万智さんの「考える短歌」(新潮新書)を読みました。

    短歌は、5・7・5・7・7の31文字の中に、自らの心象風景をあらわす文学です。

    初句を印象的にしよう。

    数字を効果的に使おう。

    など、いくつかのkey wordを手がかりに、投稿された短歌を添削されていきます。

    元のままでも十分に味わえる歌を、俵さんが少しお味なおしされるだけで、さらにおいしくいただける不思議さ。

    感性の鋭さと言葉の達人、俵万智さんならではの名著です。

                           2010年5月13日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.05.10

    カンガルーの本棚 アリス・アリス

    稲木昭子さんと沖田知子さんの共著「謎解き『アリス物語』」を読みました。

    映画「アリス・イン・ワンダーランド」の不思議さに少しでも迫ろうと、映画を観たその日に買い求めました。

    英語原文と、日本語訳を対比させながら、作者ルイス・キャロルが原作に仕掛けた謎に迫ります。

    児童文学と言えば、何かしら教訓めいたものが込められているのが通例ですが、「アリス」には教訓めいたものは読みとれません。

    数学者のキャロルは、英語表現を少しずらすことで、おもしろさとからくりを仕掛けます。

    「不思議の国のアリス」と「鏡の国のアリス」のガイドブックと、キャッチコピーには書かれていますが、わたしには最後まで道に迷う「不思議の国のアリス」でした。

                           2010年5月10日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.05.05

    カンガルーの本棚 ちいさな言葉

    俵万智さんの「ちいさな言葉」を読みました。

    作者が「たくみん」君とかわす、楽しい言葉の世界です。

    この本を読みながら、9時を過ぎる帰宅電車に乗りました。

    途中駅で座席があくと、荷物を持ったおかあさんが、女の子を座らせます。

    お膝に抱っこしてもらい、女の子は歌いだします。

    「ぐーちーはーて、ぐーちーはーて、なんつーろー、なんつーろー」と歌いながら、両手をパッと開きます。

    言葉というものを覚え始めたばかりの、ある瞬間だけに許される天使のうたごえに聞こえます。

    子どもの愛らしさと、それを受けとめるおとなの感性の素晴らしさに出会える良書です。

                           2010年5月5日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.05.02

    カンガルーの本棚 たくさんのなみだ

    リンダブックスの「99のなみだ 光」を読みました。

    雨・空・風・花・月と続いたシリーズものの最新作です。

    わたしたちは、いろいろな時に涙を流します。

    悲しい時、くやしい時、いたい時、そして、うれしい時。

    この短編集の中には、12の違った色のなみだが流れています。

    その中でも、わたしは「父とパパと」が好きです。

    子どもが生まれて戸惑う若いパパのもとに、父が訪れて・・

    ひとつ一つの小編は、手の上に乗るくらいの大きさです。

    短い時間の中でも、ひとの優しさを感じることができる短編集です。

                           2010年5月2日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.04.20

    カンガルーの本棚 こどもたちへ おとなたちへ

    水谷修先生の「こどもたちへ おとなたちへ」(小学館文庫)を読みました。

    水谷先生は、子ども達の非行や薬物乱用を防ぐために、長年「夜回り」を続けられています。

    夜回りの中で、水谷先生は、こどもたちや、おとなたちへ、どうしても伝えたいメッセージを、29編にまとめられました。

    わたしは先生がおとなたちにむけた次の一編に、つよく心をうたれました。

    「今は、きつい時代です。

    多くの大人たちが、無理に無理をかさねて、

    我慢に我慢をつづけて、

    やっとのことで、生きています。

    自分のこころを閉ざして。

    でも、大人たち、

    子どもたちには、こころを開こう。

    いっぱい泣いて、いっぱい笑って、

    いっぱい話して、いっぱい抱きしめて。

    きっと子どもたちが、

    たくさんの優しさくれます。」

                           2010年4月20日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.04.19

    カンガルーの本棚 子どもは話し方で・・

    福田健さんの「子どもは話し方で9割変わる」(アステ新書)を読みました。

    はじめに15の設問が書かれています。

    □疲れて帰っても、元気よく「ただいま」と声をかけているか

    □近所の人に自分から挨拶しているか

    □一日一回、家族と会話の時間を設けているか

    □「ダメ」ち言う前に、理由を説明しているか

    □自分ひとり、喋っていないか

    □親として、自分の気持ちを正直に伝えているか

    □妻から相談された場合、面倒がらずに相談相手になっているか

    □学校や先生の悪口を子どもの前で言っていないか

    □忙しくて話が聞けないとき、「あっちに行ってなさい」と、追い払っていないか

    □言葉だけでなく、奥にある子どもの気持ちを聞き取れているか

    □家族で決めたルールを子どもが破ったとき、厳しく叱っているか

    □できないことを叱るより、できたところをほめているか

    □子どもに意見を言うように促しているか

    □いじめにあったとき、「いつでもお前の見方だよ」と、子どもを支えているか

    □勉強の出来不出来で、子どもを評価していないか

    福田さんは、大人が子どもとの間で、ていねいなコミュニケーションを持つことができるように、具体例を多く引きながら解説されています。

    上記の15の設問に、あまりチェックが入らない方に、おすすめの一冊です。

                           2010年4月19日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.04.13

    カンガルーの本棚 名文どろぼう

    「名文どろぼう」とは、物騒な書名です。

    筆者は読売新聞のコラム「編集手帳」を執筆されている竹内政明さんです。

    古今東西の作家から、これはよしという名文を盗みに盗んで200余話。

    くすり、ほろり、なっとくと、いろいろな味を楽しめました。

    巻末に竹内さんが愛誦されている詩を載せられています。

    「風鈴」杉山平一

    かすかな風に

    風鈴が鳴ってゐる

    目をつむると

    神様 あなたが

    汗した人のために

    氷の浮かんだコップの

    匙をうごかしてをられるのが

    きこえます

    詩のあとに竹内さんは、このように書かれています。

    「心ならずも誰かに勇気を与えてしまったときだけは、思い出したようにウィスキーをロックで飲む。ひとり、グラスの氷を揺らし、神様の風鈴を真似てみる夜更けもある。」

                                  2010年4月13日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.04.04

    カンガルーの本棚 悪いのは・・

     

    香山リカさんの「悪いのは私じゃない症候群」を読みました。

    日本社会は古くは「おわびの構造」「自責の構造」が支配的とされてきましたが、最近「他罰的な行動」を取る人が増えてきたと言われています。

    職場で、社会で、そして家族の中で、「自分は何も悪くない。悪いのは○○だ」という考えを、香山先生は「悪いのは私じゃない症候群」と名付けられました。

    この他罰主義の広がりを、香山先生は自己責任論の裏返しだと分析されます。

    少しでも自分に非があれば、「それは自己責任だろう。自分で何とかしろよ」と冷たく言われ、誰も助けてくれない。

    「自己責任だ」と責められ、攻撃されることを回避するために、先制攻撃合戦が始まる。やられる前に先にやる。攻撃は最大の防御なり。こうした他罰主義の背景には、強い恐怖や不安が隠れているのではないかと、香山先生は続けられます。

    このような「悪いのは私じゃない症候群」への処方箋として、香山先生は「分かち合いの精神」を主張されます。

    「幸福とは、他者にとって自分の存在が必要だと思えること。」

    「助け合うことは自分が幸せになるために必要だから。」

    医療生協の設立の精神にも通じる、大切な視点だ思いました。

                           2010年4月4日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.03.30

    カンガルーの本棚 通勤電車でよむ詩集

    小池昌代さんの編著「通勤電車でよむ詩集」を読みました。

    小池さんは、「詩を読むということは、読むというより、思い出す作業に似ている」と、はしがきに書かれています。

    この詩集には40数編の詩が収められています。

    そのなかで、わたしのベストをご紹介します。

    「胸の和泉に 塔和子」

    かかわらなければ

      この愛しさを知るすべはなかった

      この親しさは湧かなかった

      この大らかな依存の安らいは得られなかった

      この甘い思いや

      さびしい思いも知らなかった

    人はかかわることからさまざまな思いを知る

      子は親とかかわり

      親は子とかかわることによって

        恋も友情も

        かかわることから始まって

    かかわったが故に起こる

    幸や不幸を

    積み重ねて大きくなり

    くり返すことで磨かれ

    そして人は

    人の間で思いを削り思いをふくらませ

    生を綴る

    ああ

    何億の人がいようとも

    かかわらなければ路傍の人

      私の胸の泉に

    枯れ葉いちまいも

    落としてはくれない

                           2010年3月30日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.03.25

    カンガルーの本棚 もうひとつの「おくりびと」

    高田郁さんの「出世花」を読みました。

    書店のポップアップに「もうひとつのおくりびと」と書かれています。

    江戸時代の底辺に生きる人々をやさしい目で見つめ、まっとうに生きようとする主人公。

    前回ご紹介しました「想い雲」の中で、作者は主人公の澪に「天災を除いて世の中で一番恐ろしいのは、妖怪でも化け物でもなく、生きているひとだと思う。だが、恐ろしいのもひとだけれど、同時にこの上なく優しく、温かいのもひとなのだ。」と語らせています。

    その原点が「出世花」という作品にあるように思います。

                           2010年3月25日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.03.22

    カンガルーの本棚 みおつくし料理帖パート2

    連休中に、高田郁さんの「みおつくし料理帖」の続編を読みました。

    「花散らしの雨」と、「想い雲」の2冊です。

    それぞれが4つの短編から成り立っています。

    親子の愛、兄弟の愛、そして幼くして別れた幼なじみとの愛。

    澪や澪を取りまく人々の細やかな人情の流れとともに、物語は進んでいきます。

    なかでも、大坂で別れた野江とのつかの間の再開を描いた「想い雲」は、秀逸です。

    吉原中町の喧噪や、お囃子の音、白狐の面に託された想い。

    映画の一シーンを見る思いがしました。

                           2010年3月22日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.03.21

    カンガルーの本棚 みおつくし料理帖

    高田郁さんの、みおつくし料理帖シリーズ第一作目「八朔の雪」を読みました。

    かかりつけの本屋さんに平積みされ、気になっていた一冊です。

    作者のサイン入りと銘打って、最新作が並べられていたのがご縁となりました。

    下がり眉の澪(みお)が、天性の味覚と負けん気で、料理の腕を磨いていきます。

    澪を見守るおとな達の細やかな人情が、涙腺を刺激します。

    小説にはいろいろな読み方がありますが、主人公の生き方に肩入れができればページが進みます。

    読み進むうちに、電車や大型店の中の喧噪も、大江戸のざわめきに変わります。

    専門書を読む気持ちを後回しにさせる、こころにくい一冊です。

                           2010年3月21日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.03.20

    カンガルーの本棚 青春とはなんだ

    重松清さんの「青春夜明け前」(講談社文庫)を読みました。

    文庫本の帯に、「妻よ、娘たちよ、そして、あの頃好きだったカノジョたちよ。これが男子だ!」と書かれています。

    ご存じのように、重松さんは、子どもや家族の気持ちを描くと当代ピカイチの作家。

    子ども達の気持ちを、子ども達以上にご存じです。

    この本は、エロくてほろ苦い青春少し手前を、おもしろく描いた7編の短編集です。

    男の子のことが、少し分からなくなってきたおかあさん方に、おすすめです。

    でも、あくまでも小説の中の出来事ですので、信じすぎないよう、ご用心、ご用心。

                           2010年3月20日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.03.18

    カンガルーの本棚 読書の達人

    松岡正剛氏の「多読術」(ちくまプリマー新書)を読みました。

    正剛氏は、1944年生まれ。ネット上で書籍紹介「千夜千冊」を展開されています。

    正剛氏の読書観、読書術が、ぜいたくに詰まったのがこの新書です。

    「本は、著者と読者とで作られます。読書は、他者との交際なのです。」と、正剛氏は語ります。

    プリマー新書は「中・高生をターゲットとして編集されている」と、自分なりに位置づけているのですが、大人が読んでも「なるほどすっきり」と思わせてくれる打率が高いシリーズです。

    正剛氏の「多読術」も、期待にたがわず、ワクワクさせてくれる一冊です。

                           2010年3月18日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.03.17

    カンガルーの本棚 文章を書くこころ

    外山滋比古先生の「文章を書くこころ」(PHP文庫)を読みました。

    外山先生は、1923年生まれ。言語学者、評論家、エッセイストとして知られています。

    駄文悪筆のわたしが言うのも変なことなのですが、いつも書くことには悩まされます。

    医学論文や学会発表の文章、教科書や解説書の文章、経営会議の文章、カンガルーのポケットなどのエッセイ文、そしてこのブログ記事。

    どれもがわたしで、どれもが違うわたし。

    外山先生は、この本で文章を料理にたとえられます。

    「料理はまず、食べてもらえなければならない。何を言いたいのか明確でなければならない。

    料理は、栄養があり、はらもふくれないといけない。しっかりとした中身がなくてはならない。

    料理でいちばん大切なのは、おいしいと言うことである。読者におもしろかったと後を引く気持ちを与えなければならない。

    おもしろく読んでもらおうというサービス精神が必要である。

    しかし、ことばの表現は心であって技巧ではない。

    文章を書くには、心を練る必要がある。」

    外山先生の文章には、通読するだけでは分かり得ない深い内容が込められています。

    不器用なわたしには、おいしいお料理だけでなく、おいしい文章を書くことも、まだまだ時間がかかりそうです。

                           2010年3月17日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.03.12

    カンガルーの本棚 大人の発達障害

    星野仁彦先生の「発達障害に気づかない大人たち」(祥伝社新書)を読みました。

    発達障害とは、「注意欠陥・多動性障碍(ADHD)」「「アスペルガー症候群」「自閉症」「学習障碍」などといった障碍の総称です。

    発達障害は、従来は子ども期の問題とされてきましたが、大人期にまで問題を持ち越し、社会的不適応からさまざまな二次障碍をおこすことが分かってきました。

    本書は、大人期の発達障害に焦点を合わせて解説された入門書です。

    大人期の発達障害の治療は、本人が自分の特性について気づき、自らの特性を認めて(認知)、受け入れること(受容)からはじまると、星野先生は繰り返し述べられています。

    しかし、障碍という言葉には抵抗を感じ、認知や受容をためらう方も稀ではありません。

    そこで星野先生は、発達障害という言葉の代わりに「発達アンバランス症候群」という言葉を提唱され、大人の方が受け入れることができるよう説明されています。

    学校や職場、またご家庭で、対人関係がうまくいかないとお思いの方に、ご一読をおすすめします。

                           2010年3月12日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.03.08

    カンガルーの本棚 アメリカ・アメリカ

    堤未果さんの「ルポ貧困大国アメリカⅡ」(岩波新書)を読みました。

    非常に大きな反響をよんだパートⅠの続編ですが、今回のルポもマスメディアではあまり語られることのないアメリカの影の部分をていねいに取り出して描かれています。

    ルポ記は、次の4点にそって進められていきます。

    ①教育ローンの課題

    ②高齢者年金の問題

    ③医療改革の課題

    ④刑務所労働市場の実状

    教育ローンの課題をみますと、アメリカという国では、4年制大学に進まなければ、一生低賃金の不安定労働にあまんじなければならないという不安があります。そのために民間の学資ローン会社から多額の借り入れをしてでも大学をめざします。しかし、大学を卒業しても、正規雇用の道は限られており、多額のローンの返済に追われ、若者は社会からドロップアウトしていきます。貧困の世代間連鎖の構図が、ここに見て取れます。

    実力さえあれば社会でのし上がっていくことが可能であった、かってのアメリカンドリームは、絵空事になってしまったと堤さんは述べられています。

    アメリカの医療の現状については、パートⅠでも取り上げられた課題です。

    チェンジを合い言葉に登場したオバマ大統領は、国民皆保険の設立を大きな政策論点のひとつとして掲げました。

    しかし、まだ政権交代から1年という短い期間ですので、即断はできませんが、国民皆保険へは平坦な道のりではないように思えます。

    たまたま3月7日付け読売新聞朝刊の一面、「地球を読む」で竹森俊平氏の「米医療改革案」を読む機会がありました。

    先日行われたマサチューセッツ州の上院議員選挙で、医療制度改革に反対してきた共和党の候補が当選したとのこと。

    国民の医療に対する考え方、伝統という面からの切り込みですが、堤さんのルポでも取り上げられた家族の病気をきっかけにした中間層の没落、不安の構造を、竹森さんは短い論文の中に、端的にまとめられています。

    堤さんや竹森さんが描かれているアメリカの現状は、明日の日本の姿を見るようで、重苦しい気持ちにさせられます。

    しかし、堤さんの本は、次のような希望の言葉で締めくくられています。

    「民主主義はしくみではなく、ひとなのだ」と。

    アメリカの現状からなにを学び、どのように行動するのか、そしてわたし達の子どもに、どのような国のあり方を伝え残していくのかについて、深く考えさせられる一冊です。

                            2010年3月8日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏 

  • 2010.03.01

    カンガルーの本棚 日本語の不思議さ

    海野凪子さんの「日本人の知らない日本語2」を読みました。

    殆どがマンガで構成されていますので、読むと言うよりは、見ると言う方が正確かも知れません。

    外国の方に日本語を教える、日本語学校の先生が出会った数々のエピソードが紹介されています。

    言葉の誤解、文化の違いから生じる、抱腹ものの出来事。

    その中にも、日本語の成り立ちや、日本の文化がやさしく説明されています。

    濁点や半濁点の成立のなぞ。らぬき言葉の必然性などのうんちくが、おもしろおかしく語られています。

    肩が凝らない、それでいてなかなか味のある一品です。

                           2010年3月1日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2010.02.28

    カンガルーの本棚 日本がもし

    池上彰さんの「日本がもし100人の村だったら」(マガジンハウス)を読みました。

    読みましたと言うよりも、眺めましたというべきかもしれません。

    見開きの左半分は、大きな文字と数字。

    そして、右半分は写真とイラスト。

    以前「世界がもし100人の村だったら」という本を読みましたが、この本はその姉妹編。

    数字に表されたいろいろな事実。

    そして数字にかくされたいろいろな喜びと悲しみ。

    この国の形が、小さな本の中から浮かび上がってきます。

    たのしい本ではありません。でも、とても大切な一冊です。

                           2010年2月28日

                           いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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