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2023.12.03
カンガルーの本棚 また一つ巡り合い
小川糸さんの「ライオンのおやつ」(ポプラ文庫)を読みました。
雫は、若くして不治の病を得ます。
人生最後の時を、瀬戸内の小さな島のホスピスで暮らそうとしますが、
生への執着が、波のように寄せては引き、翻弄される毎日です。
ホスピスで出会ったナース、そして同じ境遇に身を置くゲストたち
手作りの食事をとり、丘から瀬戸内の海を眺めながら、
自分の短い人生も、まんざらではないなと振り返ります。
読後も、いろいろな思いが残る小説です。
2023年12月3日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.12.01
カンガルーの本棚 うつの難しさ
斎藤環先生の「社会的うつ病の治し方」を、読みました。
うつは、成人だけでなく思秋期や小児期にも広がり、大きな社会問題となっています。
環先生は、本人のうつへのかかわり方、家族のかかわり方
そして「人薬ひとぐすり」と呼ばれる、適切な第三者のかかわりが
うつを和らげる道ではないかと述べられます。
かろやかな文体に込められた、深い思い
わたしの血肉となる1冊でした。
2023年12月1日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.11.26
カンガルーの本棚 会ってみたいけれど
荻原浩さんの「逢魔が時に会いましょう」(集英社文庫)を読みました。
民俗学者の手助けのバイトを始めた女子大生。
フィールドワークで出会うのは、座敷童や河童や天狗さん
軽妙なかたりくちと、民俗学のうんちくに、
思わず頬を緩めます。
でも、やっぱり不思議生物には、会いたくないけどなあ
2023年11月26日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.11.24
カンガルーの本棚 傾城の人
朝井まかてさんの「落花狼藉」(双葉文庫)を読みました。
大江戸は、傾城の町「吉原」が形を成していくとき
きらびやかな町並みの裏で、非難の声を一身にあび、
お上から代替えにと沼地を与えられ、また幾度となく大火事にみまわれる中、
それでも吉原を守ろうとする女将の物語。
「亡八」と呼ばれようとも、懸命に生きようとする姿に、心を動かされます。
2023年11月24日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2023.11.23
カンガルーの本棚 それぞれの居場所
朝井まかてさんの「残り者」(双葉文庫)を読みました。
時は慶応4年、江戸城の無血開城その前夜に、大奥に潜んでいた5人の女性
縫い物師、料理番,お中臈、それぞれが大奥に潜んでいたわけは
時は流れ、明治になり再開した5人が過ごした日々
戦争は、それぞれの居場所や生活を奪い
今もなお、悲しみを広げています。
大奥を舞台にした、女たちの物語です。
2023年11月23日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.11.21
カンガルーの本棚 藍と愛
西條奈加さんの「四色の藍」(PHP文芸文庫)を読みました。
夫を殺された下手人を追う主人公「環」
見眼麗しい剣士と、訳ありの色っぽい女、そして洗濯ばあさんとともに、
下手人を追う毎日、
次々と明らかになる人間関係
そして、藍にまつわる愛の物語。
途中で結末が読める展開でしたが、面白く読み終えることができました。
2023年11月21日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.11.17
カンガルーの本棚 ピリリとからい
米澤穂信さんの「満願」(新潮文庫)を、読みました。
夜警、死人宿、万灯、関守など、6編のショートミステリーが詰まっています。
小さな出来事のうらに、人間の本質が見えてきます。
「このミステリーがすごい!」「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」の3冠に輝く作品。
かんがるうっ子の本棚から、拝借して読み始めた1冊です。
2023年11月17日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.11.13
カンガルーの本棚 そのままでいろ
西條奈加さんの「六花落落」(祥伝社文庫)を読みました。
古賀藩の下級役人の主人公のあだ名は「何故なに なおしち」
雪の日に降る雪をともに眺めた藩の重臣との出会いが、
主人公を蘭学への道へと誘う込みます。
時代は幕末へと大きく変わりつつあるとき、
学問一筋に生きていた主人公にかけられた言葉は、「そのままでいろ」
学問と政治とのはざまで揺れ動く生き様を描いた、深い作品です。
2023年11月13日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.11.10
カンガルーの本棚 こころのケアも
坂木司さんの「シンデレラ・ティーズ」(光文社文庫)を読みました。
歯医者さんがとても怖くて嫌いな女子大生サキ
夏休みのバイトにと紹介されて出かけたのが、叔父が務める歯科クリニック
受付係を手伝うことになり、聞こえてくるのはキィーンという身も心も凍り付くあの音
クリニックを訪れる訳ありの患者さんの生活の背景を知るごとに、
歯の治療だけではなく、こころのケアの大切に気づいていきます。
お仕事小説と、ちょっとしたミステリーと、楽しめる1冊です。
2023年11月10日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.11.07
カンガルーの本棚 何かを伝え残して
村瀬健さんの「西由比ケ浜駅の神様」(メディアワークス文庫)を読みました。
真夜中の駅を、脱線事故で大勢に人が亡くなった列車が通るという。
噂話を耳にした、婚約者を亡くした女性や
乳に不義理を重ねていた息子、
孤立していた時に優しくされた女性に想いを続ける青年
そして、事故を起こした列車の運転手の妻
真夜中の幽霊列車に乗り込み、愛しい人に何を伝え、何を伝え残されたのか
深夜の線路を、列車は通りすぎていきます。
いたやど駅前の「井戸書店」の森店長さん、一推しの作品です。
2023年11月7日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.11.04
カンガルーの本棚 江戸の介護人
朝井まかてさんの「銀の猫」(文春文庫)を、読みました。
主人公は、分かれた婚家に残された借財を返すため
介護人を務める「お咲」
武家屋敷や大店の離れにするお年寄り
食事や排せつ、入浴など、自分のことが自分でできなくなって
そこで「お咲」の出番です。
急がず寄り添い、かたくなな心をゆっくりと時ほぐしていきます。
今に通じる江戸時代の物語です。
2023年11月4日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.11.01
カンガルーの本棚 希望を胸に
西條奈加さんの「千年鬼」(徳間文庫)を読みました。
1000年を超える小鬼と少女との物語。
人の胸の中に巣くうという「鬼の芽」は、育つとその人を鬼に変えるという
時を超え、人の姿を超えて、小鬼は少女の「鬼の芽」を摘み取ろうとします。
その果てに待っていたのは、絶望の中にもかすかに見える希望の光です。
弱きものによりそう作者の心が伝わります。
2023年11月1日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.10.24
カンガルーの本棚 つましいながらも
西條奈加さんの「曲亭の家」(ハルキ文庫)を読みました。
南総里見八犬伝の作者、滝沢馬琴の息子のもとに嫁いだ路
物語は、路を主人公にして、その数奇な一生を描いています。
頑迷な馬琴と、かんしゃく持ちの夫と姑
ひと時の気が休まることなく、笑い声も聞かれない家で
愛する人を失い、そして、光を失った馬琴のかわりに、
口述で八犬伝を完成させていく路
晩年に訪れた想いとは
ひとりの女性の持つ強さと幸せに、心打たれる作品です。
2023年10月24日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.10.18
カンガルーの本棚 あたりまえを盾に
西條奈加さんの「心淋しい川」(集英社文庫)を読みました。
江戸の下町を流れる小さな川
川といっても流れはなく、いつもよどみ、悪臭を漂わせている
そのまわりに、ひっそりと建つ、崩れかけた家々
初めて心を許した職人と別れなければいけない「ちほ」
母の帰りを子どもが歌ううたに、昔捨てた女との再会を願う「与吾」
世間から忘れられ、それでも歯を食いしばって生きていく5つの物語
物語が流れていく先には、思いもかけない秘密が隠されていした。
2020年度 第164回直木賞を受賞した作品です。
2023年10月18日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.10.12
カンガルーの本棚 金沢ってどんな味かな
坂木司さんの「アンと愛情」(光文社文庫)を読みました。
デパ地下の和菓子屋さんでバイト店員として働くアンちゃんのシリーズ最新作
今回も、同僚の手作り生和菓子の謎解きに悩んだり
金沢に旅行したりの大忙し。
生和菓子の名前や描写にはうなづきながらも、
もう一つイメージできない自分がいます。
生和菓子の絵本を開きながら、読むともっと楽しめるのでしょうね。
2023年10月12日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.10.11
カンガルーの本棚 素敵なシニアに
小林武彦先生の「なぜヒトだけが老いるのか」(講談社現代新書)を読みました。
多くの動物が、生殖年齢を過ぎると死に向かう自然界の中で、
ヒトやシャチ、ゴンドウクジラなどのごく少数の生き物だけが老後期間を持つといいます。
ヒトでは、人生の40%が老後期間にあたります。
なぜヒトでは老後が可能となったのか
ヒト集団の中に、老後個体が存在する積極的な意味はなになのかなどを
生物学者の小林先生が解説されます。
素敵なシニアに進化し続ける方向を、小林先生は指し示してくださいます。
2023年10月11日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.10.08
カンガルーの本棚 頼ってほしいと
高橋淳さんの「ブラック支援・狙われるひきこもり」(角川新書)を読みました。
引きこもり支援と称して拉致され、いのちを失った一人の男性
新聞記者でもある高橋さんは、ひきこもり支援と称する団体の活動の影で
何が行われていたのか、
そして、引きこもりを続けていた男性が何を考え、
どのように生きようとしていたのかを追い求めます。
豊中市の勝部麗子さんからお聞きした言葉が、
いつまでも心に残ります。
「厳しい状況の人を見捨てる社会は、いち自分も見捨てられるか分からない社会。
今日のその人が、明日の私かも知れない。だから、頼ってほしい」と
2023年10月8日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.10.06
カンガルーの本棚 甘味にひかれて
坂本司さんの「和菓子のアン」(光文社文庫)を読みました。
主人公の梅本杏子さんは、高校を卒業してもやってみたいことが見つからず
たまたま応募したデパ地下の和菓子屋さんで、バイトを始めます。
中身はおっさんの女性店長や、まったく乙女の男子先輩、
しとやかな元ヤンの同僚に囲まれながら、
次第に和菓子の世界に引き込まれていきます。
お店を訪れるお客さんの、何気ない言葉やしぐさから、
謎ときがはじまります。
ミステリーと滑稽さと成長物語と、
ミックス定食のような満腹感を味わえる1冊です。
2023年10月6日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.10.03
カンガルーの本棚 知らなかったとはいえ
宮沢孝幸先生の「ウイルス学者の絶望」(宝島社新書)を読みました。
宮沢先生は、獣医学の中でもウイルス学を専門に研究されている先生です。
コロナウイルスの細胞感染様式や、
mRNAワクチンの限界など、
ウイルスと免疫の基礎からわかりやすく解説され、
今まで学習してきたこと知識にあてはまらない
多くの新しい知見を提供していただきました。
新型コロナウイルス感染症は、いろいろな角度から、知識を広げたいと思います。
2023年10月3日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.10.01
カンガルーの本棚 表からでは
町田そのこさんの「うつくしが丘の不幸の家」(創元文芸文庫)を読みました。
新しく開けた街に立つ「不幸の家」と呼ばれる一軒家。
物語は、その呼び名を知らずに引っ越してきた理容師の一家から始まります。
何故この家が「不幸の家」と呼ばれているのか。
時はさかのぼり、恋人を妊娠させてしまった高校生とその母
幼い娘を抱えたシングルマザーとその友人の不仲と和解
不妊治療に悩む夫婦
そして、誰からも愛されないとい持っている女性
この家に住むと、誰もが不幸になってしまう。
しかし、この家を去るときに、どの家族も笑顔で前を向いて出ていくことを
誰も知らないのです。
町田さんは、悩み絶望し、それでも歩き始める家族をやさしく見つめます。
カンガルーのお勧めの本が、また1冊増えました。
2023年10月1日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏