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2023.08.28
カンガルーの本棚 いってみたいな
町田そのこさんの「コンビニ兄弟」(新潮文庫)を、よみました。
北九州の門司港にある、コンビニ
店長の「ミツ」が醸し出す、怪しげなフェロモン
花の蜜のにおいに吸い寄せられるミツバチの群れように
そこはいつも黄色い歓声に包まれています。
そこで繰り広げられる4つのお話し
どのお話しも、奥が深くほろりとさせられます。
大好きな1冊になりました。
2023年8月28日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.08.24
カンガルーの本棚 2度目に訪れて
町田そのこさんの「コンビニ兄弟2」(新潮文庫)を、よみました。
北九州の門司港にある、コンビニは、
今日も黄色い歓声に包まれています。
今回は3つのお話し
祖母と恋バナをする高校生
容姿にも性格にも自信を持てない大学生
そして、女王様の地位から引きずり落ちた女子高生を救ってくれたものは
シリーズ化され、次の1冊が読める日を、心待ちにしています。
2023年8月24日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.08.18
カンガルーの本棚 イクラのような
町田そのこさんの「ぎょらん」を読みました。
死者がこの世に残すと言われる「ぎょらん」
不倫相手や、母、祖母の死
「ぎょらん」は、無念を抱きながら去り行く者の情念か
それとも、残された人が死者へ馳せる思いの塊なのか
語りつながれていく6つの物語が終わるころ、
その答えが少しだけ明らかになります。
人と人とのつながりの深さが、まっすぐに伝わってくる作品です。
2023年8月18日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.08.14
カンガルーの本棚 天使じゃなくってもいい
寺地はるなさんの「彼女が天使でなくなる日」(ハルキ文庫)を読みました。
両親を亡くした主人公は、小さなしまで「もらいご」として育てられます。
民宿兼託児所を営む彼女のもとには、
訳ありのひとが泊りに訪れます。
育児と仕事に疲れ果てたキャリアウーマン
母の意にそむけない娘
高校生のうちの子どもを産んだ妹
他人が考える常識、小さな島をかけめぐる噂話
そこで肩を張らずに生きていく主人公に、
わたしたちも、前を向いて歩いていくことを教えられます。
美しい文体とともに、人生とは何かを教えてくれる小説です。
2023年8月14日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.08.10
カンガルーの本棚 やっと気がついた
寺地はるなさんの「わたしの良い子」を読みました
妹の子ども朔は、「良い子」からはかけ離れた存在
人と交わらず、あつかいにくく、そんな朔と暮らし始めることになった椿
椿自身も世間の「幸せ」や「良い子」を受け入れることができないでいます。
妹との確執の末に、見つけた「良い子」とは。
平均的な生き方を拒否し続ける女性たちを描いた作品です。
2023年8月10日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.08.04
カンガルーの本棚 泣いてもいいよ
寺地はるなさんの「大人は泣かないと思っていた」(集英社文庫)を読みました。
九州の山奥の町に住む人々の物語。
男は男らしく、女は女らしくという因習に縛られて生きる息苦しさ
「大人は泣かないと思っていた」
「小柳さんと小柳さん」
「翼が無いなら跳ぶまでだ」
「あの子は花を摘まない」
「妥当じゃない」
「おれは外套を脱げない」
「君のために生まれてきたわけじゃない」
7つの短いお話のタイトルが、温かく流れる涙の意味を知っています。
もうすっかり、寺地さんにはまってしまいました。
2023年8月4日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.07.27
カンガルーの本棚 家族の価値観
小野寺文宣さんの「その愛の程度」(講談社文庫)を読みました。
子どもの川遊びでの事故をきっかけに、壊れていく家族
新たな出会いもまた、
子どもを育てていく、父と母との思惑が交錯し、
題名の「その愛の程度」が浮かび上がります。
あまりすっきりしない後味が、真夏の読書にはきついかもです。
2023年7月27日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.07.24
カンガルーの本棚 ひょっこりさん
山本甲士さんの「迷犬マジック3」(双葉文庫)を読みました。
シリーズ3作目も、4つのお話しが入っています。
オリンピック強化選手に選ばれたものの、ケガで選手生活を断念し、
アルバイトでその日を送る青年。
せっかくの商品企画を重役会で取り消され、
生きていく方向が見えなくなった女性技術者
両親の家業の店をからかわれ、自信をなくした小学生
そして、市民からのクレーム対応に追われ、
なんで自分がと思い悩む市役所職員
そこに現れるマジックわんこ
人と人とのつながりが軌跡をうみ、前を向いて歩く勇気を与えます。
マジックちゃん、次はわたしの前に現れてね。
2023年7月24日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.07.22
カンガルーの本棚 やってきた女神さま
山本甲士さんの「民宿ひなた屋」(潮文庫)を読みました。
釣り専門誌のライターとして活躍していた主人公。
雑誌が廃刊となり、食い扶持を失った彼は、
両親が経営する故郷の民宿に帰ってきます。
その民宿も、時代の流れに取り残され淘汰されようとしています。
そこにやってきたのが、再婚予定の彼女の連れ子の中学生
ぎくしゃくした関係が、釣りを通じて親密なものに変わり、
そして、数々の奇跡を生まれます。
読み進めていくうちに、無駄な人生経験って一つもないという
作者のメッセージが伝わってきます。
あっという間の読書時間、おすすめの1冊です。
2023年7月22日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.07.21
カンガルーの本棚 ことばがわかるニャン
有川浩さんの「旅猫レポート」(講談社文庫)を読みました。
ひとの心と言葉がわかる「ナナ」と名付けられた三毛猫
わけあって、ご主人様と旅に出かけます。
子猫と出会い、大きな甲斐犬とやり合い
たどり着いた北海道
そこで待っていたのは、ご主人様との別れ
もしかして、ネコって、ひとよりも賢いのかなと思ったりしながら
お休みの日の24時近く、最後の1ページまで。
何度も読み返したくなる1冊です。
2023年7月21日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.07.18
カンガルーの本棚 近くて少し遠い
辻村深月さんの「家族シアター」(講談社文庫)を読みました。
家族にまつわる、7つの短いお話。
近くて、それでいて少し遠い
そんな家族の関係を、描きます。
姉と妹、姉と弟、母と娘、父と息子、姉と妹、祖父と孫、そして父と子の物語
なかでも「タイムカプセルの秋空」「孫と誕生会」は大好きな作品です。
通勤電車のなかで、深く胸に刺さりました。
2023年7月18日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.07.12
カンガルーの本棚 愛しい人との
梶尾真治さんお「黄泉がえりagain」(新潮文庫)を読みました。
前作に続いて、舞台は震災後の熊本。
愛する人を亡くした人の目の前に、祖母が、妻が、恋人が再び現れます。
「黄泉がえり人」の報告は次第に増えていき、
熊本城を作ったという武将までが現れます。
復活は何を意味するのか
愛しい人との再会、そして残された日々を大切に思う気持ちが
今を生きる私たちに、問いかけます。
少し不思議なお話ですが、笑いもあり楽しめる1冊でした。
2023年7月12日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.07.04
カンガルーの本棚 京と東京の
青山美智子さんの「月曜日の抹茶カフェ」(宝島文庫)を読みました。
出会いは、東京のカフェ
定休日にたまたま開けれていた抹茶イベントでの出会いが、
物語の始まりです。
生活に疲れた女性、妻との関係がうまくいかない男性
ランジェリーショップから、温浴施設、紙芝居
舞台は移り、登場する人も変わりながら、
12の短い物語はつながり合い、そして
短い言葉の中に、作者の思いがぎっしりと詰まり、
明日への希望を見出していく。
青山美智子さんの小説は、魔法のような言葉で彩られています。
2023年7月4日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.07.02
カンガルーの本棚 私の声がきこえてますか
町田そのこさんの「52ヘルツのクジラたち」(中公文庫)を読みました。
クジラは広い海の中で、仲間たちとつながるために
10ヘルツから39ヘルツの声で歌うという。
その中で、52ヘルツという高い声で歌うクジラの声は、
仲間たちには届かない。
主人公キナコと、出会った少年や、アンさんも、
仲間たちに届かない声で、叫び続けます。
You tubeでクジラの鳴き声を聞きながら、
1度目は2日間で、2度目は1日で再読しました。
2021年本屋大賞第一位に輝く最高の1冊です。
2023年7月2日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.06.30
カンガルーの本棚 明るくて悲しくて
荻原浩さんの「家族写真」(講談社文庫)を読みました。
家族にまつわる、7つの短い物語
軽やかなタッチの文章で、家族の数だけ家族を描きます。
7つの中で好きな短編は、「しりとりの、り」
家族でドライブに出かけた時に、
会話のなさをどうにかしようと始めたしりとり
短い単語から、やがてこころの奥の言葉が紡ぎだされていきます。
こころが疲れた時にお勧めの1冊です。
2023年6月30日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.06.27
カンガルーの本棚 見ることができたなら
寺地はるなさんの「水を縫う」(集英社文庫)を読みました。
高校生の主人公の楽しみは、刺繍をすること。
母には、彼の趣味がうれしくありません。
結婚を控えた姉のドレスを、彼が作るというのですが。
男のらしさ、女の子らしさという周囲の目の中で生きてきた
主人公や姉、母、そして祖母の屈折した心のうち。
流れる水のように前を向いて生きていく
作者の応援歌が聞こえてきます。
2023年6月27日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.06.24
カンガルーの本棚 あらためてスマホ
榊浩平先生の「スマホはどこまで脳を壊すのか」(朝日新聞新書)を読みました。
人々の暮らしを便利にし、生活を一変させたスマホ
便利さの影に、深刻な問題が現れてきています。
スマホの利用時間と成績との関係では、
勉強時間を増やし、しっかりと眠っても
スマホの利用時間が3時間を超えると、勉強の成果は全く現れない
それどころか、認知機能に関係する大脳の前頭前野の発育が止まってしまう
榊先生は、自らの研究に基づいて
子どもの脳への深刻な影響を強調されます。
オンライン授業やオンライン会議の限界にも言及され、
現代人必読の1冊といえます。
2023年6月24日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.06.21
カンガルーの本棚 悩みのむこうに
伊与原新さんの「八月の銀の雪」(新潮文庫)を読みました。
悩みながら生きる5人の男女が出会う、人生の先輩たちとの物語
就活がうまくいかず、自分を受け入れることができない大学生
子育てにつかれ、自分を見失いつつあるシングルマザー
立ち退かせ屋に務め、出会った老女とハト
恋に破れ、明るくふるまうことで自分を支える女性
仕事場でのミスかくしに耐え切れず、退職した中年男性
それぞれが出会う先輩たちとの会話の中で、
自分が帰る場所、自分が進む場所を見つけていきます。
きびしい現実の中にも、小さな明かりが灯るあたたかな小説です。
2023年6月21日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.06.18
カンガルーの本棚 傷つく脳
川島隆太先生の「スマホ依存が脳を傷つける」(宝島社新書)を読みました。
便利さと引き換えに失ったもの
脳の認知機能を奪い、脳の発育・発達すら損なっていく。
スマホ依存は、ごく普通に起こり始め、子どもの未来を奪っていきます。
脳活ソフトで有名な川島先生が、科学調査をもとに出された警告の書です。
2023年6月18日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.06.15
カンガルーの本棚 みんなの笑顔が
山口慎太郎先生の「子育て支援の経済学」(日本評論社)を読みました。
少子化対策として、子育て支援の方策と政策化が話題になっています。
山口先生は、子育て支援を、給付金などの現金給付と、
保育所の充実などの現物給付をわけ、
数理学的な予測をもとに、
出生率や、母親の就業率にあたえる効果を検証されます。
経済学の専門用語には、なじめないのですが、
各章のおわりに、分かりやすいまとめが書かれています。
読み終えるのに、1週間かかりましたが、
子育て支援を考える時に、貴重な知識をいただくことができました。
感謝の一冊です。
2023年6月15日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏