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2023.10.03
カンガルーの本棚 知らなかったとはいえ
宮沢孝幸先生の「ウイルス学者の絶望」(宝島社新書)を読みました。
宮沢先生は、獣医学の中でもウイルス学を専門に研究されている先生です。
コロナウイルスの細胞感染様式や、
mRNAワクチンの限界など、
ウイルスと免疫の基礎からわかりやすく解説され、
今まで学習してきたこと知識にあてはまらない
多くの新しい知見を提供していただきました。
新型コロナウイルス感染症は、いろいろな角度から、知識を広げたいと思います。
2023年10月3日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.10.01
カンガルーの本棚 表からでは
町田そのこさんの「うつくしが丘の不幸の家」(創元文芸文庫)を読みました。
新しく開けた街に立つ「不幸の家」と呼ばれる一軒家。
物語は、その呼び名を知らずに引っ越してきた理容師の一家から始まります。
何故この家が「不幸の家」と呼ばれているのか。
時はさかのぼり、恋人を妊娠させてしまった高校生とその母
幼い娘を抱えたシングルマザーとその友人の不仲と和解
不妊治療に悩む夫婦
そして、誰からも愛されないとい持っている女性
この家に住むと、誰もが不幸になってしまう。
しかし、この家を去るときに、どの家族も笑顔で前を向いて出ていくことを
誰も知らないのです。
町田さんは、悩み絶望し、それでも歩き始める家族をやさしく見つめます。
カンガルーのお勧めの本が、また1冊増えました。
2023年10月1日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.09.23
カンガルーの本棚 おとなの恋の物語
町田そのこさんの「コンビニ兄弟3」(新潮文庫)を、読みました。
シリーズ3作目も、妖艶な店長が人々を引き付ける門司港のコンビニが舞台です。
3つの物語の最後に登場するのは、
バッチリ決まった女性に振り回されるコンビニ店員のとまどいと、
隠された真実。
軽妙な語り口のうちに、外見からはうかがうことができない
それぞれの生い立ちと、悲しみが浮かび上がります。
第4作はいつ頃かなと、また首が長くなってしまいました。
2023年9月23日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.09.20
カンガルーの本棚 本を読んだだけでは難しい
安藤俊介さんの「アンガーマネジメントを始めよう」(だいわ文庫)を読みました。
自分やまわり人、世間に「怒りの感情」を持つことは、自然なことです。
しかし、その「怒りの感情」が人を傷つけ、
まわりまわって、自分の立場を損なうことは、まれではありません。
安藤先生は、怒りのマネジメントを
人間関係、仕事、自分の生き方、暮らし方などにわけ、
そのコントロール方法を伝授されます。
なるほどと、納得がいく方法と、
それはあんまりだわと思うところが混在し、
整理がつかないままに、最後の1ページに目を通しました。
本を読んだだけでは難しい。
では、どうすればよいんだろう。
2023年9月20日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.09.11
カンガルーの本棚 寒村からフランスへ
三國清三さんの「三流シェフ」(幻冬舎)を読みました。
北海道の寒村に生まれた三國さんは、体一つで札幌の一流ホテルの厨房に飛び込み
料理の道を歩み始めます。
その道は、東京帝国ホテル、ジュネーブ大使館へと続き
やがてフランス各地の超一流レストランでの修業が待っていました。
がむしゃらに料理と格闘していた先に、
待っていた言葉はシェフからの「洗練されていない」のひとこと
講演会を主催していただいた小学校の養護の先生からいただいた、
三國シェフの壮絶な自叙伝です。
2023年9月11日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.09.07
カンガルーの本棚 4つの恋の物語
高田郁さんの「あきない世傳 金と銀 契り橋」(ハルキ文庫)を読みました。
12作続いたシリーズの最新作。
主人公と出会い、かかかり、助け合う、
4人の登場人物に焦点を合わせたスピンオフ作品集です。
どの小編もあたたかく、じれったさを感じながらも、
登場人物に 幸せになったほしいと願う私がいます。
続編がいつ出るのかと、いまから心待ちの作品です。
2023年9月7日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.09.02
カンガルーの本棚 どうすればいいんだろう
末木新先生の「死にたいと言われたら」(ちくまプリマー新書)を読みました。
本の帯に書かれた「かぎりなく冷たく、根底のところで温かい」言葉にひかれ、
本書を手に取りました。
中高生向けに書かれていますが、その内容は深く、多くのことを考えさせられます。
自殺に至る3つの危険要因
自殺企図歴などの潜在能力
所属感の減弱
負担感の知覚
そのひとつ一つに焦点をあてられ、解説されていきます。
重いテーマのむこうに、わたしたちができること、
社会がなすべきことが見えてくるようです。
心が元気なうちにこそ、手に取ってほしい1冊です。
2023年9月2日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.08.30
カンガルーの本棚 最高の一冊
林朗子先生編の「心の病の脳科学」(講談社ブルーバックス)を読みました。
統合失調症や、うつ病、ASD、ADHD、PTSDなど、
現代人を悩ましている心の病。
その人の頭の中で何が起きているのか、
従来の心理学的アプローチだけでなく、最新の実験的手法により
その現象を明らかにしようと試みる16人の脳科学者の解説集です。
脳内の炎症で、正常な神経回路が形成されなくなる
体の炎症がまた、脳内の炎症と深くかかわっている
アレルギー性炎症を専門にしているカンガルーにとって、
脳を含めた体全体の炎症を考えさせられる、示唆に富んだ1冊です。
ここ数年のうちで、一番ワクワクドキドキさせられた1冊になりました。
2023年8月30日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.08.28
カンガルーの本棚 いってみたいな
町田そのこさんの「コンビニ兄弟」(新潮文庫)を、よみました。
北九州の門司港にある、コンビニ
店長の「ミツ」が醸し出す、怪しげなフェロモン
花の蜜のにおいに吸い寄せられるミツバチの群れように
そこはいつも黄色い歓声に包まれています。
そこで繰り広げられる4つのお話し
どのお話しも、奥が深くほろりとさせられます。
大好きな1冊になりました。
2023年8月28日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.08.24
カンガルーの本棚 2度目に訪れて
町田そのこさんの「コンビニ兄弟2」(新潮文庫)を、よみました。
北九州の門司港にある、コンビニは、
今日も黄色い歓声に包まれています。
今回は3つのお話し
祖母と恋バナをする高校生
容姿にも性格にも自信を持てない大学生
そして、女王様の地位から引きずり落ちた女子高生を救ってくれたものは
シリーズ化され、次の1冊が読める日を、心待ちにしています。
2023年8月24日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.08.18
カンガルーの本棚 イクラのような
町田そのこさんの「ぎょらん」を読みました。
死者がこの世に残すと言われる「ぎょらん」
不倫相手や、母、祖母の死
「ぎょらん」は、無念を抱きながら去り行く者の情念か
それとも、残された人が死者へ馳せる思いの塊なのか
語りつながれていく6つの物語が終わるころ、
その答えが少しだけ明らかになります。
人と人とのつながりの深さが、まっすぐに伝わってくる作品です。
2023年8月18日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.08.14
カンガルーの本棚 天使じゃなくってもいい
寺地はるなさんの「彼女が天使でなくなる日」(ハルキ文庫)を読みました。
両親を亡くした主人公は、小さなしまで「もらいご」として育てられます。
民宿兼託児所を営む彼女のもとには、
訳ありのひとが泊りに訪れます。
育児と仕事に疲れ果てたキャリアウーマン
母の意にそむけない娘
高校生のうちの子どもを産んだ妹
他人が考える常識、小さな島をかけめぐる噂話
そこで肩を張らずに生きていく主人公に、
わたしたちも、前を向いて歩いていくことを教えられます。
美しい文体とともに、人生とは何かを教えてくれる小説です。
2023年8月14日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.08.10
カンガルーの本棚 やっと気がついた
寺地はるなさんの「わたしの良い子」を読みました
妹の子ども朔は、「良い子」からはかけ離れた存在
人と交わらず、あつかいにくく、そんな朔と暮らし始めることになった椿
椿自身も世間の「幸せ」や「良い子」を受け入れることができないでいます。
妹との確執の末に、見つけた「良い子」とは。
平均的な生き方を拒否し続ける女性たちを描いた作品です。
2023年8月10日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.08.04
カンガルーの本棚 泣いてもいいよ
寺地はるなさんの「大人は泣かないと思っていた」(集英社文庫)を読みました。
九州の山奥の町に住む人々の物語。
男は男らしく、女は女らしくという因習に縛られて生きる息苦しさ
「大人は泣かないと思っていた」
「小柳さんと小柳さん」
「翼が無いなら跳ぶまでだ」
「あの子は花を摘まない」
「妥当じゃない」
「おれは外套を脱げない」
「君のために生まれてきたわけじゃない」
7つの短いお話のタイトルが、温かく流れる涙の意味を知っています。
もうすっかり、寺地さんにはまってしまいました。
2023年8月4日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.07.27
カンガルーの本棚 家族の価値観
小野寺文宣さんの「その愛の程度」(講談社文庫)を読みました。
子どもの川遊びでの事故をきっかけに、壊れていく家族
新たな出会いもまた、
子どもを育てていく、父と母との思惑が交錯し、
題名の「その愛の程度」が浮かび上がります。
あまりすっきりしない後味が、真夏の読書にはきついかもです。
2023年7月27日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.07.24
カンガルーの本棚 ひょっこりさん
山本甲士さんの「迷犬マジック3」(双葉文庫)を読みました。
シリーズ3作目も、4つのお話しが入っています。
オリンピック強化選手に選ばれたものの、ケガで選手生活を断念し、
アルバイトでその日を送る青年。
せっかくの商品企画を重役会で取り消され、
生きていく方向が見えなくなった女性技術者
両親の家業の店をからかわれ、自信をなくした小学生
そして、市民からのクレーム対応に追われ、
なんで自分がと思い悩む市役所職員
そこに現れるマジックわんこ
人と人とのつながりが軌跡をうみ、前を向いて歩く勇気を与えます。
マジックちゃん、次はわたしの前に現れてね。
2023年7月24日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.07.22
カンガルーの本棚 やってきた女神さま
山本甲士さんの「民宿ひなた屋」(潮文庫)を読みました。
釣り専門誌のライターとして活躍していた主人公。
雑誌が廃刊となり、食い扶持を失った彼は、
両親が経営する故郷の民宿に帰ってきます。
その民宿も、時代の流れに取り残され淘汰されようとしています。
そこにやってきたのが、再婚予定の彼女の連れ子の中学生
ぎくしゃくした関係が、釣りを通じて親密なものに変わり、
そして、数々の奇跡を生まれます。
読み進めていくうちに、無駄な人生経験って一つもないという
作者のメッセージが伝わってきます。
あっという間の読書時間、おすすめの1冊です。
2023年7月22日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.07.21
カンガルーの本棚 ことばがわかるニャン
有川浩さんの「旅猫レポート」(講談社文庫)を読みました。
ひとの心と言葉がわかる「ナナ」と名付けられた三毛猫
わけあって、ご主人様と旅に出かけます。
子猫と出会い、大きな甲斐犬とやり合い
たどり着いた北海道
そこで待っていたのは、ご主人様との別れ
もしかして、ネコって、ひとよりも賢いのかなと思ったりしながら
お休みの日の24時近く、最後の1ページまで。
何度も読み返したくなる1冊です。
2023年7月21日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.07.18
カンガルーの本棚 近くて少し遠い
辻村深月さんの「家族シアター」(講談社文庫)を読みました。
家族にまつわる、7つの短いお話。
近くて、それでいて少し遠い
そんな家族の関係を、描きます。
姉と妹、姉と弟、母と娘、父と息子、姉と妹、祖父と孫、そして父と子の物語
なかでも「タイムカプセルの秋空」「孫と誕生会」は大好きな作品です。
通勤電車のなかで、深く胸に刺さりました。
2023年7月18日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.07.12
カンガルーの本棚 愛しい人との
梶尾真治さんお「黄泉がえりagain」(新潮文庫)を読みました。
前作に続いて、舞台は震災後の熊本。
愛する人を亡くした人の目の前に、祖母が、妻が、恋人が再び現れます。
「黄泉がえり人」の報告は次第に増えていき、
熊本城を作ったという武将までが現れます。
復活は何を意味するのか
愛しい人との再会、そして残された日々を大切に思う気持ちが
今を生きる私たちに、問いかけます。
少し不思議なお話ですが、笑いもあり楽しめる1冊でした。
2023年7月12日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏