カンガルーの小部屋

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  • 2023.06.30

    カンガルーの本棚 明るくて悲しくて

    荻原浩さんの「家族写真」(講談社文庫)を読みました。

    家族にまつわる、7つの短い物語

    軽やかなタッチの文章で、家族の数だけ家族を描きます。

    7つの中で好きな短編は、「しりとりの、り」

    家族でドライブに出かけた時に、

    会話のなさをどうにかしようと始めたしりとり

    短い単語から、やがてこころの奥の言葉が紡ぎだされていきます。

    こころが疲れた時にお勧めの1冊です。

    2023年6月30日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

    71P4S2RvyfL

  • 2023.06.27

    カンガルーの本棚 見ることができたなら

    寺地はるなさんの「水を縫う」(集英社文庫)を読みました。

    高校生の主人公の楽しみは、刺繍をすること。

    母には、彼の趣味がうれしくありません。

    結婚を控えた姉のドレスを、彼が作るというのですが。

    男のらしさ、女の子らしさという周囲の目の中で生きてきた

    主人公や姉、母、そして祖母の屈折した心のうち。

    流れる水のように前を向いて生きていく

    作者の応援歌が聞こえてきます。

    2023年6月27日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

    61hIkdG28AL

  • 2023.06.24

    カンガルーの本棚 あらためてスマホ

    榊浩平先生の「スマホはどこまで脳を壊すのか」(朝日新聞新書)を読みました。

    人々の暮らしを便利にし、生活を一変させたスマホ

    便利さの影に、深刻な問題が現れてきています。

    スマホの利用時間と成績との関係では、

    勉強時間を増やし、しっかりと眠っても

    スマホの利用時間が3時間を超えると、勉強の成果は全く現れない

    それどころか、認知機能に関係する大脳の前頭前野の発育が止まってしまう

    榊先生は、自らの研究に基づいて

    子どもの脳への深刻な影響を強調されます。

    オンライン授業やオンライン会議の限界にも言及され、

    現代人必読の1冊といえます。

    2023年6月24日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

    81CtK-F0RrL (1)

  • 2023.06.21

    カンガルーの本棚 悩みのむこうに

    伊与原新さんの「八月の銀の雪」(新潮文庫)を読みました。

    悩みながら生きる5人の男女が出会う、人生の先輩たちとの物語

    就活がうまくいかず、自分を受け入れることができない大学生

    子育てにつかれ、自分を見失いつつあるシングルマザー

    立ち退かせ屋に務め、出会った老女とハト

    恋に破れ、明るくふるまうことで自分を支える女性

    仕事場でのミスかくしに耐え切れず、退職した中年男性

    それぞれが出会う先輩たちとの会話の中で、

    自分が帰る場所、自分が進む場所を見つけていきます。

    きびしい現実の中にも、小さな明かりが灯るあたたかな小説です。

    2023年6月21日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

    71WFRRceFhL (1)

  • 2023.06.18

    カンガルーの本棚 傷つく脳

    川島隆太先生の「スマホ依存が脳を傷つける」(宝島社新書)を読みました。

    便利さと引き換えに失ったもの

    脳の認知機能を奪い、脳の発育・発達すら損なっていく。

    スマホ依存は、ごく普通に起こり始め、子どもの未来を奪っていきます。

    脳活ソフトで有名な川島先生が、科学調査をもとに出された警告の書です。

    2023年6月18日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

    81epWU+8oIL

  • 2023.06.15

    カンガルーの本棚 みんなの笑顔が

    山口慎太郎先生の「子育て支援の経済学」(日本評論社)を読みました。

    少子化対策として、子育て支援の方策と政策化が話題になっています。

    山口先生は、子育て支援を、給付金などの現金給付と、

    保育所の充実などの現物給付をわけ、

    数理学的な予測をもとに、

    出生率や、母親の就業率にあたえる効果を検証されます。

    経済学の専門用語には、なじめないのですが、

    各章のおわりに、分かりやすいまとめが書かれています。

    読み終えるのに、1週間かかりましたが、

    子育て支援を考える時に、貴重な知識をいただくことができました。

    感謝の一冊です。

    2023年6月15日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

    71Q4Aw3KmwL

  • 2023.06.13

    カンガルーの本棚 会話の楽しさ

    小野寺史宜さんの「タクジョ!」(実業之日本社文庫)を読みました。

    夏子が大学を出て働き始めたのは、タクシー会社

    タクジョの誕生です。

    お客さんとの出会いと会話、

    乗り逃げや、強盗もどきとも出会い、怖い思いをしながらも、

    タクジョという仕事をやめられません。

    別れた父を乗せて交わす会話

    まるでタクシーに乗っているかのように

    テンポの良い話の運びに、乗せられてしまいます。

    若者の前を向いて生きる姿に、フレーフレーと声を出して応援したくなる小説です。

    2023年6月13日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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  • 2023.06.10

    カンガルーの本棚 思い描いて

    西條奈加さんの「千両かざり」(新潮文庫)を読みました。

    水野忠邦の倹約令が、人々の暮らしを凍えさせた江戸時代

    細工師の家に生まれた女主人公は、

    時代の制約の中で、ひとり飾り修行を続けます。

    現れた、人を寄せ付けない職人の腕に惹かれ

    そして・・・

    飾り物の緻密な描写が心を打つのですが、

    その形を頭に思いえがく才がありません。

    読書するにも、才がいるのですね。

    2023年6月10日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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  • 2023.05.30

    カンガルーの本棚 なかなかな人生

    青山誠さんの「牧野富太郎」(角川文庫)を読みました。

    朝ドラの「らんまん」に惹かれて、手に取った1冊

    牧野博士の生涯を、伝記風にまとめた読み物です。

    造り酒屋の裕福な暮らしに飽き足らず、

    植物学を目指して東京へ、

    借財を重ね、重ねて作り上げた日本の植物学

    まわりの人々が支えたことの、賜物です。

    2023年5月30日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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  • 2023.05.21

    カンガルーの本棚 不思議なお話

    佐藤正午さんの「月の満ち欠け」(岩波文庫)を読みました。

    子どもを残すのではなく、

    何度も生まれ変わって思いを遂げる女性の物語。

    前世の記憶を受け継いで、大切な人に会いに行く

    でも、なぜか感情移入ができません。

    第157回直木賞受賞作です。

    2023年5月21日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

    710R02uNjkL

  • 2023.05.18

    カンガルーの本棚 できすぎ君

    原田マハさんの「旅屋おかえり・丘の上の賢人」(集英社文庫)を読みました。

    今回の旅の先は北海道、小樽と札幌

    依頼人から頼まれた旅で、出会う3名の人

    帰りたくても帰れない

    旅の成果物を届けるときに

    ふるさととは、「おかえり」って言ってくれる人が住む所だと気づきます。

    少しできすぎかなという、印象が残りました。

    2023年5月18日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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  • 2023.05.16

    カンガルーの本棚 わかってはいても

    小野寺文宜さんの「近いはずの人」(講談社文庫)を、読みました。

    急逝した妻が残した、携帯電話

    ロックをはずすと、最後に交わされた謎のメールが

    わかっていたつもりの妻にどんな秘密が隠されていたのか

    テンポいい文体に、ページをめくるスピードは速まるのですが、

    あまり好きになれない結末が待っていました

    2023年5月16日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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  • 2023.05.12

    カンガルーの本棚 命綱を握りしめて

    凪良ゆうさんの「流浪の月」(創元文芸文庫)を読みました。

    行き場を失った若い二人に残されていたのは、

    友情でもない、恋愛感情でもない

    お互いを支え合う、命綱

    世の中の人がどう言おうと、

    強く結ばれた掌に、お互いの命を感じ取る

    本屋大賞2021年の受賞作は、生きる難しさと救いとを

    わたしに語りかけます。

    2023年5月12日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

    71VHEX1R8gL

  • 2023.05.10

    カンガルーの本棚 それぞれの秘密

    凪良ゆうさんの「神様のビオトープ」(講談社タイガ)を読みました。

    事故で夫を亡くした主人公は、残された家で夫の幽霊と出会います。

    彼女にしか見えない姿、聞こえない声をたよりに、

    夫との二人の生活を続けます。

    そこに現れる、普通の人々に隠された秘密とは

    彼の最期の選択を探し続ける女子大生

    ロボットとの友情を取り戻そうとする小学生

    成熟を拒み続ける大学生

    美しさの中に、恋心を隠し続ける高校生

    それぞれが秘密を抱えながら暮らすことの普通さを、

    小説は教えてくれます。

    2023年5月10日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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  • 2023.05.08

    カンガルーの本棚 願いを託して

    東野圭吾さんの「くすのきの番人」(実業之日本社)を読みました。

    罪を犯した青年に待っていたのは、「くすのきの番人」というお仕事

    月の満ち欠けに合わせて訪れる願い人が、

    くすのきに何を託すのか

    青年にはその謎がわかりません。

    固く守られているくすのきの秘密

    やがて青年は、言葉では伝えきれない ひとの思いに気づきます。

    ふしぎな、ひとの情念を描いた作品です。

    2023年5月8日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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  • 2023.04.27

    カンガルーの本棚 悩める人々に

    凪良ゆうさんの「わたしの美しい庭」(ポプラ文庫)を読みました。

    古ぼけたマンションの屋上にある、手入れされた神社

    悩みを持ち訪れる人は、後を絶ちません。

    マンションに住む住民も訳あり人ばかりです。

    急死した彼の思い出を、何十年も引きずる女性

    両親から受け止めてもらうことができず、さまよう性的少数者

    うつ病から脱することができず、もがき苦しむ男性

    そんな彼女、彼に救いの日は来るのかな

    細やかな心理描写に、引き込まれてしまう小説です。

    2023年4月27日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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  • 2023.04.21

    カンガルーの本棚 もどきってなあに

    成田奈緒子先生の「発達障害と間違われる子どもたち」(青春新書)を読みました。

    この13年間で、10倍に増えたと言われる発達障害

    成田先生はその背景に、過剰診断があるのではないかと危惧されます。

    睡眠障害や生活リズムの乱れ、

    その結果生じる不適切な行動を、「発達障害もどき」と名付けられ、

    まず子どもを「立派な原始人」に育てるところから始めようと言われます。

    子育てにお悩みの方にお勧めの1冊です。

    2023年4月21日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

    71FBBAEbf8L

  • 2023.04.19

    カンガルーの本棚 空飛ぶ猫

    ルイス・セプルベタさんの「カモメに飛ぶことを教えた猫」(白水社)を読みました。

    黒猫のもとにたどり着いた瀕死のカモメが言い残した3つの願い

    1つ目は、わたしが産む卵を食べないでください

    2つ目は、その卵のめんどうをみてやってください

    そして、3つ目の願いとは

    猫とカモメという種を超えた友情の先に現れる勇気と奇跡

    作者は動物に名を借りて、私たち人間に何を伝えようとしたのでしょう

    読みやすい文体と、ルビ付きの文章

    子どもから大人まで楽しめる1冊です

    2023年4月19日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

    71iIRs47q6L

  • 2023.04.12

    カンガルーの本棚 強く弱く悲しく

    凪良ゆうさんの「汝、星のごとく」(講談社)を読みました。

    高校で出会った、暁海と櫂が過ごした15年の物語

    瀬戸内の島のしがらみの中で、もがきながら愛を確かめ合うふたり

    惹かれ合いながらも引き裂かれ、

    強く、弱く、悲しく そして

    昨年の夏に頂きながら、積ん読く状態の8カ月間

    ようやく手に取ると2日間で一気読み

    本を閉じた後も、小説の世界が目に浮かびます。

    読了した日に、2023年度の「本屋大賞第一位」選ばれた作品です。

    2023年4月12日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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  • 2023.04.11

    カンガルーの本棚 少しだけ顔を上げて

    西條奈加さんの「わかれ縁」(文春文庫)を読みました。

    金と女にだらしがない亭主のもとから逃れようとする絵乃

    人ごみの中で救ってくれた「別れ屋」家業の手代のもとで、

    新しい人生を探し始めます。

    視野が狭くなり、下を向き足許ばかりを見ている

    そんな顎を一寸だけ上げてやる

    「別れ屋」は絵乃を救い、そして幾多の人を救います。

    今よりのずっと女性の人権が疎んじられていた江戸時代にあって、

    生きる力を取り戻していく女性たちの物語です。

    2023年4月11日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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