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2023.04.12
カンガルーの本棚 強く弱く悲しく
凪良ゆうさんの「汝、星のごとく」(講談社)を読みました。
高校で出会った、暁海と櫂が過ごした15年の物語
瀬戸内の島のしがらみの中で、もがきながら愛を確かめ合うふたり
惹かれ合いながらも引き裂かれ、
強く、弱く、悲しく そして
昨年の夏に頂きながら、積ん読く状態の8カ月間
ようやく手に取ると2日間で一気読み
本を閉じた後も、小説の世界が目に浮かびます。
読了した日に、2023年度の「本屋大賞第一位」選ばれた作品です。
2023年4月12日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.04.11
カンガルーの本棚 少しだけ顔を上げて
西條奈加さんの「わかれ縁」(文春文庫)を読みました。
金と女にだらしがない亭主のもとから逃れようとする絵乃
人ごみの中で救ってくれた「別れ屋」家業の手代のもとで、
新しい人生を探し始めます。
視野が狭くなり、下を向き足許ばかりを見ている
そんな顎を一寸だけ上げてやる
「別れ屋」は絵乃を救い、そして幾多の人を救います。
今よりのずっと女性の人権が疎んじられていた江戸時代にあって、
生きる力を取り戻していく女性たちの物語です。
2023年4月11日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.04.08
カンガルーの本棚 愛してるのに
中野信子先生の「毒親」(ポプラ新書)を読みました。
子どもの人生を支配し、子どもの人生に悪影響を及ぼす親を指します。
愛してるのに、愛されたいと思っているのに
すれ違う親と子の気持ち
中野先生は、
子を産む役割と、育てる役割を
ゆるやかに自然な形で分担できるならと述べられます
2023年4月8日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.04.05
カンガルーの本棚 深おも本
中野信子先生の「脳の闇」(新潮新書)を読みました。
不安が持つ意味
うつの生き方
正義中毒のわな
不健康の自慢
これまで抱いていた常識を、根底からひっくり返される心地よさ
脳科学者の中野先生による、深くて面白い論説集。
脳が最高に活動しているときに、おすすめの1冊です。
2023年4月5日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.03.31
カンガルーの本棚 親と子のきずな
高橋和巳先生の「子は親を救うために心の病になる」(ちくま文庫)を読みました。
学校に行けなくなった子ども、虐待を受けた子ども
発達障害がある親の元で育てられた子ども
子どもが自分の課題を乗り越えるうえで見えてくる、親がもつ課題
カウンセリングは、その人の生き方や悩みをきくのではなく、
その「存在」を確認する作業だと、高橋先生は述べられます。
やさしい文体の中に、人の心に迫る深い内容が描かれています。
2023年3月31日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.03.26
カンガルーの本棚 おかしくそして泣かせる人情噺
畠山健二さんの「本所おけら長屋二十」(PHP文芸文庫)を読みました。
大江戸の下町長屋を舞台にしたシリーズも、二十巻目をむかえました。
これまでは四つの小話がつまっていたシリーズも
今回は、三つのお話に凝縮
やくざな生き方、母との再会、そして新たな旅立ちと
どの話もおかしく、そして泣かせるお話
シリーズの中で、一押しの一冊です。
2023年3月26日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.03.23
カンガルーの本棚 五公五民
森永卓郎先生の「増税地獄」(角川新書)を読みました。
所得税に復興特別所得税が加算され、20年先まで延長という話が出ています
介護保険料に国民年金、医療費負担も増え
おまけに消費税増税も論議されています。
江戸時代の租税システムは、四公六民からはじまり
五公五民になると、人口の伸びがなくなり一揆が多発するようになります。
そして令和の今、多くの人は五公五民に苦しんでいます。
減税を、消費税の即時停止をと、森永先生は声を大きくして訴えられます。
令和の人々は、なぜ減税一揆に立ち上がらないのでしょうか
庶民の立場から税を考えることができる1冊です。
2023年3月23日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.03.18
カンガルーの本棚 一冊の本から
青山美智子さんの「お探し物は図書室まで」(ポプラ文庫)を読みました。
小学校に隣接する、小さな市民図書室を訪れる5人の物語
婦人服売り場での仕事に悩む朋香には、「ぐりとぐら」
経理の仕事になじめない諒には、「植物図鑑」
ワンオペで閑職に回されて悩む夏美には、「占いの本」
ニートの浩弥のもとには、「写真集」
定年後のなしなし生活を送る正雄には、「詩集」が
それぞれの手元に届けられた一冊が、
生きる勇気を、そして人生を変える力を与えます。
本が持つ力を、静かにやさしく教えてくれる一冊です。
2023年3月18日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.03.16
カンガルーの本棚 毎日が割引セール
藤井聡先生の「なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか」(ポプラ新書)を読みました。
賃金が上がらず、消費が冷え込み、経済が停滞する理由の一つとして、
藤井先生は、低賃金とともに、
消費税や社会保障費が大きくのしかかっていると指摘されます。
そもそも税とはなになのか、
国を豊かにし、人々を幸せにする施策の第一歩として
消費税の凍結を強く訴えられます。
財源をどうするのか、赤字国債の是非など
論議を深める余地は残されていますが、
藤井先生の提言を、受け止めてみようと思います。
ふしぎな、夢のある1冊です。
2023年3月16日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.03.14
カンガルーの本棚 父になる
重松清さんの「ひこばえ」(朝日文庫)を読みました。
主人公のもとに、幼い時に分かれた父の訃報が届きます。
顔も、一緒に生活した時の記憶も思い出せない父を、
受け入れることができずにいる主人公
やがて、父の最晩年を知る人とのつながりの中で、
息子として、父を知る旅が始まります。
題名に込められた「ひこばえ」の意味を
読み終えた後も 重く受け止め考えたくなる、おすすめの1冊です。
2023年3月14日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.02.24
カンガルーの本棚 せき越えて
西條奈加さんの「せき越えぬ」(新潮文庫)を読みました。
小田原藩が下級士族の武一は、
箱根の関の役人に任じられます。
「入鉄砲出女」の言葉にもあるように、
とりわけ女性の関越えには厳しい詮議が待ち受けています。
箱根の関で起きる様々な出来事
時代の大きな変化の中で、翻弄される武一
やがて、武一は友のために大きな決心をします。
読みやすく楽しめ、若者の心意気を後々まで心に残してくれる作品です。
2023年2月24日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.02.19
カンガルーの本棚 非常識の経済学
藤井聡さん、森井じゅんさん共著の
「消費税減税・ニッポン復活論」(ポプラ新書)を読みました。
税金をなぜ集めるのか
その年度の予算案の財源はどこから
消費税、社会保障費の増加が、実質賃金を引き下げ
人々の購買意欲を減らし、物は売れなくなり、
企業は人減らしと低賃金路線を突っ走る
その結果、購買意欲はますます冷え込み、物が売れなくなる。
この悪循環を打開するにはどうすればよいのか。
これまで常識だと思われてきた経済学に
まったく新しい観点から風穴を開けようとされる1冊です。
2023年2月19日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.02.17
カンガルーの本棚 町が呼ぶ声
小野寺史宜さんの「まち」(祥伝社文庫)を読みました。
高校を卒業し、尾瀬に近い故郷から東京に出てきた瞬一
身体を動かす仕事をしたいと始めた引っ越し屋の仕事
川沿いの道を走り、人と出会い、人を助け
そして、自分がめざしたい道がみえてきます。
大東京の中で、生きていこう
瞬一の決意に、街は大きく手を広げ、受け止めてくれます。
心が暖かくなる1冊です。
2023年2月17日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.02.14
カンガルーの本棚 永遠のパートナー
新堂冬樹さんの「虹の橋からきた犬」(集英社文庫)を読みました。
業界でのし上がるために、寸暇を惜しんで仕事に邁進する主人公。
社員を巻き込み、孤立し、酒におぼれ
そんな南野のもとに、子犬パステルが預けられます
南野を見つめるパステルのまっすぐな瞳に
栄光や賞賛や名誉のかわりに、もっと大切なものを知ります。
そして、病に侵されたパステルとの別れ
作者の体験をもとに書かれたこの作品は、
旅立った我が家の愛犬との日々を、なつかしく静かに思い出させてくれます。
2023年2月14日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.02.11
カンガルーの本棚 思いを新たに
南杏子先生の「ブラックウェルに憧れて」(光文社文庫)を読みました。
大学を退官する教授とその教え子で、女性医師として活躍する4人の同級生の物語
20年近くの時を経て、眼科医、健診医、エスコートドクター、新生児科医として生きる
彼女らの前に立ちふさがる、きびしい現実
悩み苦しみ、それでも患者さんのためにと、立ち上がる女性たちの姿に
身が引き締まる思いがします。
毎日をそれなりに過ごすことに満足しないで、
まだまだやりたいこと、やり残したことに挑んでみようという
勇気を与えてくれる1冊です。
このところ、いろいろな分野の新書に手を伸ばし、
知的好奇心が満たされていましたが
小説も、いいものですね。
2023年2月11日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.02.07
カンガルーの本棚 貧しい国に
小林美希さんの「年収443万円・安すぎる国の絶望的な生活」(講談社現代新書)
を読みました。
電気代、ガス代、生鮮食料品、みそ、しょうゆ
値上げのニュースを聞かない日はありません。
その国で暮らす人々は、ペットボトルのお茶を買わずに水筒を持参し、
ケーキや、スタバは高根の花
街には非正規社員があふれ、コロナ禍で失業者も増えています。
若者はその日の暮らしに忙しく、
結婚する資金もなく、子育てしようにも教育費が重くのしかかります。
小林先生は、生活者の生の声に耳を傾けられ
就職氷河期を過ごした、もはや若者とは言えない世代の声を書きとめられます。
胸が痛くなるような現実
その現実から目をそらすまいと、誓いを新たにさせる1冊です。
2023年2月7日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.02.03
カンガルーの本棚 複雑すぎて
島宗理先生の「使える行動分析学」(ちくま新書)を読みました。
行動分析学を用いて、自分の課題を明らかにし、それに介入して解決していく
精神論ではなく、行動の後に生じる随伴性をもとに整理する
ただ、実生活上の課題になると、いろいろな因子が絡み合い、
複雑になりすぎて、行動を起こす前にためらってしまいそうです。
まだまだ理解不足
もっと、消化する必要があると思いました。
2023年2月3日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.01.20
カンガルーの本棚 文明は進化しているのか
稲田豊史さんの「映画を早送りで観る人たち」(光文社新書)を読みました。
若者の間で、動画を倍速、あるいは10秒飛ばしで観る習慣が広がっている。
その背景にある若者が置かれている現状とは何か
作品をコンテンツと考え、鑑賞から消費へと行動が変化したこと
万人にわかりやすく伝えることが、求められる作品作り
可処分時間の減少とともに、「タイパ」を優先せざるを得ない生活
そして、そして
著者自らが、あとがきで述べられているように、
本書は「メディア論」であり、「コミュニケーション論」であり
また、「世代論」「創作論」「文化論」でもある。
幅広く、軽やかでいて奥深い論調に、記憶に残る1冊となりました。
2023年1月20日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.01.18
カンガルーの本棚 コロナ禍と少子化
河合雅司さんの「未来のドリル」(講談社現代新書)を読みました。
コロナ禍が、この国にもたらしたもの
それは日本社会の様々な面に見て取れる「この国の老化」
高齢者ファーストの背策で、若い人の青春を犠牲にした重さは、
婚姻率や出生数の減少という形で現れてきました。
河合先生は、国の宝である若い世代の輝きが
少しでも増すように後押しする必要性を訴えられます。
前に読んだ「未来の年表・業界大変化」とともに
この国の未来を考えさせられる1冊です。
2023年1月18日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.01.08
カンガルーの本棚 未婚率の増加こそ
山田昌弘先生の「日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?」(光文社新書)を読みました。
2022年日本の出生数が77万人台になったという、衝撃的なニュースが流れ、
政府も少子化対策に本腰を入れるという宣言を行いました。
生まれた子どもを育てやすくする世の中を作ることは、とても素晴らしいことですが、
山田先生は、若者が結婚しない、結婚できない世の中こそが、
少子化の第一原因であると述べられます。
若者が、なぜ結婚しないのか、できないのか
教えられることが多い1冊でした。
2023年1月8日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏