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2022.10.05
カンガルーの本棚 カアカアさんのお金
西條奈加さんの「烏金」(光文社文庫)を読みました。
烏金(からすがね)とは、江戸時代の高利貸しのこと
訳ありの浅吉は、金貸しのお吟の家にもぐり込みます。
借りたお金を返すことができない人に、
浅吉は、生きるすべを教え、立ち直らせていきます。
金貸し業を手伝い、ふところにしまい込んだ金を
浅吉は何に使おうとするのでしょうか
お話の中の世界ですが、私利私欲のためでなく
もっと大きなものを夢見る浅吉に、大きな拍手です。
2022年10月5日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.10.01
カンガルーの本棚 今すこし抜け出せた
伊吹有喜さんの「今はちょっと、ついてないだけ」(光文社文庫)を読みました。
学生時代にマスコミの寵児となった主人公
バルブがはじけ、多額の負債を背負わされ、すべてを失い
冒険家と、写真家という夢も捨て、ひっそりと暮らす
そんな彼を、母は「今はちょっと、ついてないだけ。
そのうちいい運がやってくるよ」と、励まします。
フィルムのカメラから、デジタルのカメラへと時代は移り、
戸惑いながら、本当にやりたかったことに向かって歩き始めます。
敗者復活戦は、これから
あわてないで少しずつ、
読みながら主人公に声援を送りたくなります。
2022年10月1日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.09.29
カンガルーの本棚 年を取り巡り会い
森絵都さんの「出会いなおし」(文春文庫)を読みました。
出会いのあとに別れがあり、そして再び出会いが待ち受けている
生きていくと出会うかもしれない、6つの物語が書かれています。
小学校の同窓会で明かされる、引きづっていた後悔の時間
昔の出来事を思い出し、少しニコリとしました。
2022年9月29日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.09.27
カンガルーの本棚 1両はいくらなの
磯田道史さん監修の「江戸の家計簿」(宝島新書)を読みました。
時代小説を読んでいて、入り込めないのが地名とお金の価値
1両はいくらなんだろうと思い、手に取りました。
お米の価格を基にすると、1両は63,000円
賃金から考えると、1両は300,000円
とすると、1000両箱は3億円
頭がくらくらします。
庶民の生活では、お蕎麦は1杯、16文で約250円
それでもやはり、江戸の金銭感覚はなじめません。
あまりこだわらないで、本を読むことにしましょうね
2022年9月27日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.09.25
カンガルーの本棚 鈴の音が聞こえる
西條奈加さんの「無暁の鈴」(光文社文庫)を読みました。
幼くして寺に預けられ、愛する友の死をまじかに見つめ
無暁と名を変えて生きる主人公
世の哀しみ、人の苦しみをわが身で代ることができればと
修行に修行を重ねる無暁
ちりん、ちりんと響く鈴の音に
人の世の生きづらさが重なります。
読み終えた後も、作者の重い問いかけが、心に響きます。
2022年9月25日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.09.23
カンガルーの本棚 光と風の布
伊吹有喜さんの「雲を紡ぐ」(文春文庫)を読みました。
学校にも家庭にも、居場所を見つけられない高校生の美緒は、
長く音信が途絶えていた父方の祖父宅に家出をします。
岩手の山奥にある祖父宅で出会ったものは・・
自分のことがすきになれない美緒が
祖父の、そして父の志に気づき、
自分だけの道を歩み始めます。
居場所さがしで悩んでいる若い人に、是非読んでほしい1冊です
2022年9月23日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.09.22
カンガルーの本棚 舞い落ちる雪に
西條奈加さんの「涅槃の雪」(講談社時代小説文庫)を読みました。
時は水野忠邦による天保の改革の真っただ中
北町奉行所の与力門佑は、舞い落ちる雪を、
両手をひろげて受け止めようとする女性に出合います。
改革が進むにつれて、しぼんでいく江戸の町
門祐と女性は、改革の嵐に翻弄されながらも
どんな明日を迎えるのでしょうか
最後の1ページまで気を抜くことができない、みごとな時代小説です。
2022年9月22日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.09.19
カンガルーの本棚 また会えたね
山本甲士さんの「迷犬マジック2」(双葉文庫)を読みました。
孤独にさいなまされている人の足元に
ぶらりと現れては、役目を終えると去っていく迷犬マジック
今回は、継父となるひとを、受け入れられない少年
衝動的な性格から、人生につまづいた青年
仕事第一で過ごし、息子との確執に身動きが取れないでいる父親
ひとり暮らしが続き、孤立を深める老女のもとに、
マジックが現れます。
マジックと過ごすと、人の輪が広がり
生きる力が湧いてきます。
マジックさん、うちのクリニックにも顔を出してくださいね。
みんなが 待っていますよ
2022年9月19日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.09.17
カンガルーの本棚 旅立つ者と残された者と
長月天音さんの「ほどなく、お別れです」(講談社文庫)を読みました。
主人公は、就活中の女子大生
内定が決まらずに、はじめたバイト先は葬儀屋さん
旅立つ者と残された者の哀愁が、彼女の心を揺さぶります。
哀しみの中に、前へ進もうとする生きる力を見つけるお手伝いを
そんな仕事の意味を見つけていく小説です。
いたやど駅前、井戸書店の森店長さんお勧めの一冊です。
2022年9月17日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.09.14
カンガルーの本棚 黄金の蝶
飯嶋和一さんの「黄金旅風」(小学館文庫)を読みました。
寛永年間は2代将軍徳川秀忠から家光の世にうつり行く時代。
鎖国前の海外貿易が盛んな頃の、長崎の物語。
貿易商の家に生まれた型破りな末次平左衛門は、
長崎の民を守る一念で行動し、そして「黄金の蝶」を見ます。
歴史上の人物が多く登場し、読み進むのに難渋することもありましたが、
歴史に名を残す主人公の生き方に、大いに共感しました。
2022年9月14日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.09.12
カンガルーの本棚 家族の味
西條奈加さんの「まるまる毬」(講談社文庫)を、読みました。
大江戸の小さな和菓子屋さんの、3代にわたる家族の物語。
値が張る和菓子ではなく、庶民でも手が届くお値打ち値段のお菓子を
日替わりで作り続ける祖父と、それを支える娘と孫娘
どんな秘密が隠されていて、何が起きるかは読んでのお楽しみ
人情話も西條さんに、おまかせです。
2022年9月12日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.09.09
カンガルーの本棚 きんとぎん
高田郁さんの「あきない世傳金と銀 大海編」(ハルキ文庫)を読みました。
大江戸に店を構え、大火や身内の裏切りにあいながら、
商いを拡げていく五鈴屋の幸
新しいく開いた店を取り上げられ、
それでもみなと手をつなぎながら 前を向いて歩いていく
金は柔らかく、いつまでも光り続ける
銀は曇ってしまうけれども、それはひとからひとの手に渡った証
金と銀がそろわなければ商いはできないという言葉が
13巻続いた物語をしめくくります。
いまからスピンオフ作品が楽しみです。
2022年9月9日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.09.05
カンガルーの本棚 本屋さんお勧めの
朝倉宏景さんの「あめつちのうた」(講談社文庫)を読みました。
甲子園球場のグランド整備の職を選んだ青年と、仲間の成長の物語。
スポーツに関しては、新聞紙面で結果を通り読みするしか能がないわたしですが、
いたやど駅前の井戸書店の森店長さんのお勧めのまま、
読み始めると、これがやめられない。
スポーツ選手の汗と苦悩が迫り、一気読みの1冊になりました。
2022年9月5日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.09.01
カンガルーの本棚 変わるものと変わらないものと
三上延さんの「同潤会代官山アパートメント」(新潮文庫)を読みました。
19年からはじまる4世代の物語、
関東大震災、戦争、バブルの崩壊、そして、阪神淡路大震災
歴史の大きな流れの中で翻弄されながら、
変わるものと、変わらないものと
アパートメントとともに、家族のささやかな歴史が刻まれていきます。
2022年9月1日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.08.29
カンガルーの本棚 やらまいか
伊吹有喜さんの「なでし子物語地の星」(ポプラ文庫)を読みました。
子どもが生まれ、働き始めた耀子
高齢化をたどる山村で、自分ができること、
じぶんがやりたいことを模索します。
「やらまいか」
まわりを励まし、自分を励ます言葉とともに、
耀子は、おとなの女性へと育っていきます。
時代の流れの中で、力強く生きようとする耀子が、輝きます。
大河小説の3巻目は、心に響く1冊です。
2022年8月29日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.08.26
カンガルーの本棚 旅立ちの日に
伊吹有喜さんの「なでし子物語天の花」(ポプラ文庫)を読みました。
高校を卒業する前に、耀子は誰にも告げず家をでます。
車窓を見つめるうちに、ともに過ごした少女時代の思い出がよみがえります。
誰にも愛されない、だれも頼ることができない耀子
不安の中で物語は進んでいきます。
大河小説の2巻目も、つらくなる思いがする1冊です。
2022年8月26日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.08.23
カンガルーの本棚 山奥の村で
伊吹有喜さんの「なでし子物語」(ポプラ文庫)を読みました。
家族の愛情に恵まれない耀子
山奥の生活で出会った、立海
ふたりは、自分を消すことで生き延びようとする同類である事に気づきます。
自立とは、顔をあげて生きること
自律とは、美しく生きること
全3巻からなる、大河小説の1冊目
幼いものが、大きな流れに押し流されていく時代にあらがいながら、
遠くにちいさな灯をみる思いがする小説です。
2022年8月23日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.08.20
カンガルーの本棚 蓮の花のすがた
西條奈加さんの「大川契り・善人長屋」(新潮文庫)を読みました。
囚われの身となった母と娘
恐怖を共にする中で、母は娘に自分の過去をはなし聞かせます。
貧しい幼い時、そして天下をわが手にした娘時代
絶望の中、夫との出合い救われていく
家族の絆が、強く胸を打ちます。
真夏の夜半に読み終えると、自身の昔の出来事が思い出されます。
2022年8月20日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.08.18
カンガルーの本棚 正義とは
西條奈加さんの「閻魔の世直し」(新潮文庫)を読みました。
大江戸で次々と起こる、裏社会の親玉の死
「閻魔組」と称する一味が、世直しを始めたとの瓦版がまかれます。
江戸と令和という時代は違えども、
正義の名に置いて他人を誅する人心は、おなじ根を持っています。
「社会の病理を無視して厳罰化を進めても、果たして効果はあるのだろうか。」
末國善己氏が本書の解説に寄せる一文に、大きくうなづきます。
2022年8月18日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.08.16
カンガルーの本棚 いい人の影に
西條奈加さんの「善人長屋」(新潮文庫)を読みました。
大江戸は深川にある長屋の別名は「善人長屋」
その実態は、裏社会につながる悪党が住む長屋です。
そこへ、本当の善人が迷い込むことから始まる物語。
それぞれの特技を生かしながら、ふりかかる問題を解決していく痛快さ
新しいタイプの時代劇に、ワクワクします。
2022年8月16日
いたやどクリニック 木村彰宏