カンガルーの小部屋

2024.12.07

カンガルーの本棚 記憶の底から掬い上げるもの

町田そのこさんの「星を掬う」(中公文庫)を読みました。

母に捨てられて、育てられた父や祖父母がなくなった後、

出会った男は、とんでもないDV男

ふとしたことから、何十年ぶりに再会した母は、

認知症を患い、娘の顔もわからなくなっていました。

憎しみと悲しみと、許しと拒絶と、

シェルターで一緒に暮らす女性たちとの日常の中で、

なぜ母が私を捨てたのか、

そして母が何を望んでいたのかが明らかになっていきます。

薄れゆく記憶の底から、母は何を掬い上げようとしたのか

今年のカンガルーの本棚の中で、一押しの作品です。

2024年12月7日

いたやどクリニック小児科 木村彰宏