カンガルーの小部屋

2010.03.09

カンガルー目線 医師の元気な素

先日ご紹介しました、堤未果さんの「ルポ貧困大国アメリカⅡ」の中で、ご紹介したい一節があります。

著作権の問題がありますので、あくまでも堤さんの本の一節を抜き出させていただいたと言うことをご了承ください。(p153~154)

「すべてを数字で測り、利益と効率至上主義が医療現場から奪ったものは、目にみえるものばかりではありません。」

「今のシステムが奪った、目に見えないものとはたとえば何ですか?」

「患者と医師の間のつながりや、医師のなかに存在するはずの誇り、充実感などです。第三世界の医師がなぜ、同じように労働時間が長くても心が壊れないのか、わかりますか?患者と医師の間に人間同士の触れ合いがあるからです。間に医療保険会社という株主が介在しない世界では、患者は医師を人として信頼し、医師は患者との交流を通して、命を救っているという充実感と誇りを受け取るのです。これは数字では測れない、けれど人間が日々生きていくためには失ってはならないものの一つです」

堤さんとデイビッド・ワーナー氏の対話には、医師と患者さんとの関係についての深い洞察力を感じます。

医学の進歩とは、医科学のレベルや医療技術の面で最高の峰への挑戦が行える環境を作ること。そして獲得された最高の到達点を、できる限り多くの人が当たり前に利用できるようにシステムを作っていくこと。

この二つの挑戦の中にこそ、医師と患者さんとの信頼と絆がより一層強くなる秘密がかくされ、それが医師の元気の素になっていくのだと確信しました。

                       2010年3月9日

                       いたやどクリニック小児科 木村彰宏