カンガルーの小部屋

2011.02.17

かんがるう目線 友の訃報

外来診察の途中に入った、同級の開業医師からの知らせ。

「いい話では、ないんやけどな・・・」

電話は、同級生の突然の死を告げるものでした。

死因は、冬山での滑落死。

言葉を失い、足が震える思いがしました。

亡くなった彼とは、もう20年近くも顔を合わせずにいました。

お互いに大学院に進んだ後、彼が選んだのは腎疾患から、小児救急の道。

新生児医療から、アレルギー医療へと進んだ私とは、交わる道もなく、やがて年賀状を交わすだけの仲となりました。

その後の彼が積み上げていった功績は、同級生の自慢の種となりました。

神戸市内の大病院の院長。東京の大学の小児科教授。そして小児救急医学会の理事長。

持ち前の人柄と、情熱と、日々の研鑽が、彼を必要とする人の輪を広げていったのでしょう。

でも、訃報に接したあと、思い出すのは、研修時代の笑顔。

もう、35年も前の話です。

同じ大学の小児科に入局したのは14名。

先輩医師が帰宅したあとも、誰が一番遅くまで病棟に残っているのかという、妙な競争をしました。

上背があり、目尻を下げて、人なつっこく話しかけてくる笑顔。

困ったことがあると、少し眉をよせて、真剣に話を聞いてくれる親身さ。

誰もが、そんな彼に魅了されたものです。

子どもさんを背中にしょって、上高地から穂高まで駆け上がった武勇伝。

夏休みには、山岳診療所に詰めて過ごした無心さ。

山が大好きな彼は、雪の山に還って行きました。

山田至康くん。

心から、ご冥福をお祈りいたします。

                      2011年2月17日

                      いたやどクリニック小児科 木村 彰宏