カンガルーの小部屋

2011.07.08

カンガルーの本棚 せんせい

重松清さんの「せんせい」(新潮文庫)を読みました。

重松さんは、文庫版のあとがきで、次のように語られています。

「僕は教師という職業が大好きで、現実に教壇に立っていらっしゃるすべての皆さんに、ありったけの敬意と共感を示したいと、いつも思っている。けれど、僕は同時に、教師とうまくやっていけない生徒のことも大好きで、もしも彼らが落ち込んでいるのなら「先生なんて放っときゃいいんだよ」と肩を叩いてやりたいと、いつも思っている」

「せんせい」には、白髪の二―ル・ドロップスは神さまの涙・マティスのビンタ・にんじん・泣くな赤鬼・気をつけ礼・と、6つの短編が収められています。

私は、この中で「にんじん」に描かれた工藤先生が好きです。

先輩への嫉妬、生徒への嫌悪感、人間的で、じたばたとして・・

「先生とよばれる人も、一人のふつうの人間なんだ」と言う、当たり前のことに、ほろ苦く気づかされる短編集でした。

2011年7月8日

いたやどクリニック小児科 木村 彰宏