カンガルーの小部屋

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  • 2018.08.06

    カンガルーの本棚 生き抜いていく力

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    中脇初枝さんの「世界の果てのこどもたち」(講談社文庫)を、読みました。

    主人公は3人の女の子。

    戦争中の満州で、3人は出合います。

    珠子は高知の寒村からやってきた開拓団の一員

    終戦を迎えて、残留孤児として中国の両親とともに生きていきます

    茉莉は横浜の裕福な家庭で生まれ、日本に引き揚げたあと

    空襲で家族と家を失い、戦災孤児として生きていきます。

    美子は朝鮮の貧しい家庭に生まれ、在日朝鮮人として生きていきます。

    文化大革命、恋人との悲しい別れ、朝鮮戦争 

    どんなにつらいことがあっても

    3人を支えたのは、分けあって食べた1個のおむすびの記憶

    そして、誰かに確かに愛されたという記憶

    広島被ばく73年目の今日8月6日

    戦争で失われた、そして戦争を生き抜いた人たちに思いをよせる

    読書になりました。       

         2018年8月6日

          いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2018.05.10

    カンガルーの本棚 もろびとこぞりて

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    有川浩さんの「キャロリング」(幻冬舎文庫)を、読みました。

    キャロリングとは、クリスマスイブの日に、賛美歌を歌い、キリストの生誕を知らせること。

    おとなの都合と、子どもの願い、

    そこに散りばめられる倒産、離婚、誘拐、虐待、暴力などの言葉

    有川さんの軽やかな文体とともに、物語は意外な方向に展開していきます。

    おもしろくて、一気読み、

    作られた主人公たちなのに、その行く末のしあわせを願いたくなる一冊です。

           2018年5月10日

           いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2018.05.06

    カンガルーの本棚 知らない世界に

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    有川浩さんの「明日の子供たち」(幻冬舎文庫)を、読みました。

    営業職から児童養護施設に転職した青年の成長のお話

    転職の動機はと尋ねられ、「TVのドキュメンタリー番組を見て、

    かわいそうな子どもの支えになれたらなあっつて・・」と答えます。

    施設の厳しい現状、そこで暮らす当事者(子ども達)の声

    青年は物怖じをしない性格を武器に、難問に立ち向かっていきます。

    がんばれ 青年

    本は、知らなかった世界を教えてくれるもの

    子どもを見る目が、少しだけ広がったように思える、そんな作品です。

         2018年5月6日

         いたやどクリニック 木村彰宏  

     

  • 2018.04.25

    カンガルーの本棚 ページをめくるのがつらい

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    遠田潤子さんの「蓮の数式」を、読みました。

    主人公は、算数障がいの青年、そして彼の子どもを産もうと決意する人妻

    世間からみれば なんということをと非難を浴びる二人の生き方を

    作者は淡々と描きます。

    謎解きの本は、人の善意と分かり合えないもどかしさを描きながら

    それでいて、人の大切なものをうたいあげます。

    読後感は、「これはまいったな」

    主人公のその後の生き方が とても気になる1冊です。

           2018年4月25日

           いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2018.04.22

    カンガルーの本棚 奇跡とは呼ばない

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    東野圭吾さんの「ラプラスの魔女」を、読みました。

    ラプラスは、ポケモンにも登場する有名なキャラクター

    映画化され、5月に公開されるということもあり、

    興味深く手にしました。

    中身は 文庫本のカバー絵が表すように、不思議な力をもつ青年と少女の物語

    あとは 劇場でのお楽しみということにしましょうか

    そうそう、残念ながらポケモンが出てきませんよ

    念のため

          2018年4月22日

          いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2018.04.13

    カンガルーの本棚 おもしろくて一気読み

    51846XR1E6L[1]

    杉山登志郎先生の「発達障害の薬物治療」(岩崎学術出版社)を、読みました。

    新聞の書籍欄に紹介されていたのが目に留まり、

    さっそく事務長さんに無理を言って購入してもらいました。

    杉山先生は、ASDやADHD、虐待など、児童精神科の大家です。

    従来の精神科治療のもう一つ先にある、

    発達の視点から見た専門書と一般向けの解説書の中間の書籍

    おもしろくて、お休みの日に一気読み

    次は、誰に勧めてみようかな

           2018年4月13日

           いたやどクリニック 木村彰宏

     

     

  • 2018.04.09

    カンガルーの本棚 さるとヒトと

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    更科功先生の「絶滅の人類史」(NHK出版新書)を、読みました。

    副題の なぜ「私たち」が生き延びたのか にあるように

    この本のテーマは、ホモ・サピエンスの発達の歴史です

    重たい頭は、有利なのか

    全体重の2%ほどの重量しかない頭は、25%のエネルギーを消費する低燃費

    頭の重量比較では、ネアンデルタール人の方が重かったといいます。

    直立歩行は、有利なのか 

    走る速さでは4本足走行にはかないません。

    でも、重たい頭をのせて、長い距離を移動するには有利です。

    短い毛は、有利なのか 

    汗をかいて熱中症小を防ぎ、寒い時期には服の重ね着をしてたかも

    生物として 大きくも強くもないヒトが繁殖したのは

    集団を組んで狩りをしたり、身を守ったりする社会性

    ほかの種に比べて 多産であったこと

    お休みの日の4時に早起きして、一気読みのおもしろさ

    これまで習ってきた常識がひっくり返りました

    8日夜に放送された NHKスペシャル番組「人類誕生」とともに、

    こころは 人類黎明期に ひとっつ跳びします。

          2018年4月9日

          いたやどクリニック 木村彰宏 

     

  • 2018.03.21

    カンガルーの本棚 鍵となる言葉は

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    橋本健二先生の「新・日本の階級社会」(講談社現代新書)を、読みました。

    先生は、格差社会から、格差が固定化されている階級社会に変わったと、

    論を進められます。

    2016年に首都圏で行われた次の4つの質問から、

    ①日本では以前と比べ、貧困層が増えている

    ②いまの日本では収入の格差が大きすぎる

    ③貧困になったのは努力しなかったからだ

    ④努力しさえすれば、誰でも豊かになることができる

    社会の格差や自己責任に対する意識を、階級ごとに分類されます。

    格差については、20~30%の人がそう思わない

    自己責任については、35~40%の人が、

    貧困は自己責任の結果だと答えています。

    この二つの視点を結びつけると、次のような言葉が浮かび上がってきます。

    ①お金持ちは、努力をしたからだ

    ②貧困層は、努力が足りなかったからだ

    橋本先生は、自己責任という言葉に、鋭く迫られます。

    ①超お金持ちは、親からの資産を引き継ぎ、努力しなくてもお金持ちでいられる

    ②努力しても、病気や天災などの不幸で、貧困層に転落していく

    多くの人の心の中にある

    努力をすれば、結果はついてくる

    あいつは、努力しないからヘマばっかりしているという、自然な気持ちが、

    貧困層への無理解と、自己責任論を生み出していると言われます。

    努力しなくてもお金持ちのままでいられる、反対に努力をしても報われない

    理不尽さに、目を向けさせてくれる 良書です。

         2018年3月21日

         いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2018.03.07

    カンガルーの本棚 別解力って

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    鎌田實先生の「人間の値打ち」(集英社新書)を、読みました。

    鎌田先生は諏訪中央病院で働くお医者さん

    人間の値打ちをきめる、7つのカタマリ

    ①空気に流されない生き方

    ②人生を楽しむ力

    ③愛と死

    ④破壊力

    ⑤稼ぐ力

    ⑥別解力

    ⑦孤独を怖がらない力

    この7つのカタマリからみて、鎌田先生は自らの生き方を、自己採点をされます。

    お金や出世が大きな顔をしている世の中で、本当に大切なことを教えられる1冊です。

          2018年3月7日

          いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2018.02.26

    カンガルーの本棚 森の中をさまよい歩き

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    宮下奈都さんの「羊と鋼の森」(文春文庫)を、読みました。

    主人公はピアノの調律師をめざす青年。

    個性豊かな先輩の中の助けの中で、自分だけの音を探す旅に出ます。

    「明るく静かに澄んで懐かしい文体、少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体」

    原民喜の理想とする文体を音に変えた言葉が、繰り返し主人公の背中を後押しします。

    一人の青年の成長物語でありながら、筆者の覚悟が伝わってくる小説です。

           2018年2月26日

                  いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2018.02.21

    カンガルーの本棚 アマゾンの光と影

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    田中道昭さんの「アマゾンが描く2022年の世界」(PHPビジネス新書)を読みました。

    ネットで本を注文すれば、翌日には届けられるあのアマゾン

    書籍だけでなく、家電や医薬品から食料品まで、

    今やアマゾンが扱わないものはないという勢いがある企業です。

    アマゾンが、何を考え、どのような戦略で消費者を取り込もうとしているのかを

    本書は解説します。

    テクノロジーの進化やSNSの発達により見失われたものには、

    リアルなつながり、ふれあい、おもいやりなどがある。

    ここに依拠することでアマゾンンに対抗することができると、本書は結びます。

    流通企業の課題だけではなく、医療にも同じことが言えるのではないかと痛感しました。

           2018年2月21日

           いたやどクリニック 木村彰宏

     

     

  • 2018.01.26

    カンガルーの本棚 生物としての人間

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    藤田紘一郎先生の「手を洗いすぎてはいけない」(光文社新書)を、読みました。

    藤田先生は、寄生虫学の権威の大先生

    自ら寄生虫とともに暮らし、健康への影響を実証されています。

    この本を、清潔すぎる国の現状と、

    それがもたらす医学的・社会的問題への警鐘の書として読みました。

    「健康とは、生物としての自然を大切にすること」という先生の金言を、

    肝に銘じて、毎日のアレルギー指導にあたりたいと考えます。

         2018年1月26日

         いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2018.01.18

    カンガルーの本棚 医療というお仕事

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    水野操さんの「あと20年でなくなる50の仕事」(青春出版社)を、読みました。

    AI(Artificial Intelligence:人工知能)という言葉を聞かない日はありません。

    アマゾンで本を申し込むと、読書傾向からおすすめ本が紹介されます。

    ビッグデータから、高齢社会の未来予想が描かれます。

    AIの活躍が拡がるにつれて、繰り返しの単純な仕事に就く人は

    その職をおわれると、水野先生は指摘されます。

    気になるのは、医療の仕事

    先生は、「医師と患者の間で最も重要なのはコミュニケーション」

    「話をじっくりと聞いてくれ、勉強する医師が流行る」と言われます。

    異業種の先生からの指摘は、的のど真ん中を射ています。

    毎日の外来で、忙しさに流されないように、

    本を読み、会話を大切にしようと自戒しました。

          2018年1月18日

          いたやどクリニック 木村彰宏 

     

  • 2018.01.08

    カンガルーの本棚 素敵な人たち

     

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    佐倉淳一先生の「明日(あした)」(角川文庫)を、読みました。

    主人公は、小学2年生の男の子

    授業中に立ち歩き、学年主任の先生に叱責されると窓から飛び降りてしまします。

    学校の混乱は家族を巻き込み、誰が悪いのかの 責任のなすり合いが始まります。

    もう一人の主人公は、PC関連会社で働く青年

    パワハラをうけ、傷害事件を起こしてしまいます。

    ふたりの出会いは、深夜の恐竜博物館

    「明るいあしたは、自分の力で変えることができる」と、語り合います。

    ふたりの自閉スペクトラム症(ASD)の男性が、

    明るいあしたにむかって歩きはじめる勇気を、

    作者は温かく見守ります。

    自閉スペクトラム症という難しい課題に向かい合う一人一人の読者が

    本当の主人公なのかもしれません。

    まだ始まったばかりの2018年。

    今年の一押しの一冊になりそうです。

         2018年1月8日

         いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2018.01.07

    7+8= おとうさんはよろこび

    冬2018.01.03  (27) 冬2018.01.03  (18) 冬2018.01.03  (16) 冬2018.01.03  (15)

    おさきに おさんぽに でかけた ナナちゃんが

    「ハッちゃん ゆきが ふってたよ」って、おしえてくれます。

    こうえんは もう ナナちゃんいろ。

    おとうさんが、あんまり はしゃぐので

    ゆきのこうえんを いっしょに はしってあげます。

    「おとうさんは よろこび、こうえん かけまわる」って、

    うたが きこえてきそうです。

    よかったね、おとうさん

          2018年1月7日

          いたやどクリニック 木村彰宏  

     

  • 2018.01.02

    カンガルーの本棚 生きていく灯

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    ほしおさなえさんの「活版印刷三日月堂3」(ポプラ文庫)を、読みました。

    下町の小さな活版印刷屋さんをめぐる4つのお話

    はじめのお客は、人を年収と勤め先でしか評価できない会社員

    2人目は、主人公の母と青春を過ごした同級生

    3人目は、学校が少しつらくなってきた高校生

    悩みをかかえながら、活版印刷に出合うことで、

    迷いの先に、生きていく灯を見出します。

    今年最初の1冊は、お正月番組より強く

    わたしの心を しっかりととらえてくれました。

         2018年1月2日

         いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2017.12.31

    カンガルーの本棚 いったりきたり

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    朝井まかてさんの「藪医ふらここ堂」(講談社時代小説文庫)を、読みました。

    江戸の町で小児医を営む主人公は、

    仕事よりも どうすれば楽に暮らせるかと考える毎日です。

    弟子に、「小児医の極意は」と聞かれ、

    「ふらここだ」と答えます。

    「ふらここ」とは、今でいう「ブランコ」のこと

    どういうたとえなのかなと、読み進むと、

    人は、「正」と「邪」の間を、いったりきたり

    こっちが病のある状態、こっちが元気な状態

    悪いところもあわせもって生きていく

    薬で無理やり取り除くのではなく

    徐々に折り合いをつけていく

    作者は、主人公のことばに、こう意味を持たせます。

    くる年も、「ふらここ」のように、ゆれながら過ごそうと思います。

    今年一年、おつきあいくださり、ありがとうございました。

         2017年12月31日

         いたやどクリニック 木村彰宏 

     

  • 2017.12.29

    カンガルーの本棚 家族に寄り添って

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    河野和彦先生の「認知症治療の9割は間違い」(廣済堂出版)を、読みました。

    河野先生は、家族の介護負担を軽くする(介護者優先主義)視点から、

    従来型の治療とは異なる治療アプローチを考案され、

    多くの認知症のかたの症状を改善されています。

    本書は、「コウノメソッド」と呼ばれる認知症の治療を

    一般の方にも分かりやすく解説されたものです。

    子どもの発達障害にも言及され、興味深く読ませていただきました。

    医療生協の川崎理事さんからお聞きし、1日で一気読みしました。

                 2017年12月29日

       いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2017.12.14

    カンガルーの本棚 燃える思い

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    知野みさきさんの「雪華燃ゆ」(光文社文庫)を、読みました。

    シリーズ3作目は、かなわぬ恋の物語。

    着物の下描きを何度も書き直す中で明らかになる 依頼者の悲しい過去

    わが身の恋の行く末と重ねあううちに 揺らぐ思い

    ページをめくるごとに、江戸の街並みに生きる人々の

    確かな息遣いが聞こえてきます。

          2017年12月14日

          いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2017.12.09

    カンガルーの本棚 お借りして一気読み

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    ヴィカス・スワラップさんの「ぼくと1ルピーの神様」

    (ランダムハウス講談社)を、読みました。

    外来をしているときに、おかあさんから、

    「先生、本をよく読まれるのですね」と、手渡された一冊

    主人公は、インドの18歳の男の子

    クイズ番組に出場し、1億ルピー(日本円にして1.5億円)を手にします。

    13の難問に、なぜ正解できたのか。

    物語は 男の子の悲しい半生にさかのぼります。

    貧しくて、活気あふれるインドの社会

    ワクワクどきどきする、最高に楽しめる一冊です。

        2017年12月9日

        いたやどクリニック 木村彰宏

     

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