カンガルーの小部屋

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  • 2017.07.02

    カンガルーの本棚 哀しみの連鎖

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    遠田潤子さんの「鉄の鉄樹」(光文社文庫)を、読みました。

    庭師の主人公の愛と再生の物語

    食べること、灰皿、苔の庭 バイオリン

    散りばめられた言葉がつながるとき、愛の物語が

    そして、主人公につながる人々の 再生の物語が聞こえだします。

    「これはすごい」

    すごい小説に出合いました。

          2017年7月2日

          いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2017.07.01

    カンガルーの本棚 父の秘密

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    遠田潤子さんの「あの日のあなた」(ハルキ文庫)を、読みました。

    主人公「ある」くんの、父の急逝から始まる家族の物語。

    名前に隠された出生の秘密

    女子高生との出会い

    人と人とのつながりと、喪に服すことの意味

    重いけれど、こころの奥底まで揺さぶられる 小説との出会いです。

          2017年7月1日

          いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2017.06.12

    カンガルーの本棚 不思議な体験

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    椰月美智子さんの「消えてなくなっても」(角川文庫)を、読みました。

    カッパや、カラス天狗など この世のものでない者たちが現れて、

    生の世界と死の世界とが重なり合い、主人公の心が清められていく。

    読み終えた後の懐かしさとすがすがしさ。

    不思議な心もちにさせてくれる1冊です。

          2017年6月12日

          いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2017.05.22

    カンガルーの本棚 夜明けの一冊

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    おしおさなえさんの「活版印刷三日月堂 海からの手紙」(ポプラ文庫)を読みました。

    小さな印刷所をめぐる 4つの物語

    ちょうちょ、あわゆき、かいがら、そして西部劇と、鍵になる出会い

    先生から男の子、男の子から若い女性 そして中年男性へと

    不思議な物語はつなります。

    4月になり、新入学、自然学校の説明、アレルギー学会の準備と忙しく、

    1冊の本も読めないうちに、5月も半ばも過ぎました。

    4時に目を覚まし、夜明けに読み終えた一冊は、

    わたしを本の世界に戻してくれる魔法の力を持っていました。

           2017年5月22日

           いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2017.04.24

    カンガルーの本棚 蝉の鳴き声

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    佐伯泰英さんの「声なき蝉・上・下」(双葉文庫)を、読みました。

    累計2000万部が販売されたという「居眠り磐音」シリーズの最新版

    主人公は かわって磐音の息子、空也の修行の物語。

    日曜の朝、二時から起きだし、明け方までに下巻を読み終えるしあわせ。

    巻末の作者 佐伯氏のメッセージが こころに残ります。

    「書店が近くにある読者諸氏にお願い申します。書店さんが近くにない方は、

    大きな町を訪れた折にふらりと本屋の書棚を覗いてください。

    そして、だれの本でもいい、手にとって紙の本の感触を改めて確かめてください。

    電子書籍など出版物が生き残る道は残されているのだろう。

    だが、その前に書店さんで

    『ああ、今の本の傾向はこんなふうか』と

    自分の目と手で確かめていただきたい。

    それが書店さんを元気づけ、小説家を生き残らせる道なのです。」

         2017年4月24日

         いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2017.04.23

    カンガルーの本棚 夏が来て

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    東直子さんの「いとの森の家」(ポプラ文庫)を、読みました。

    主人公は、小学4年生の女の子

    父親の都合で、人里離れた村に引っ越してきます。

    そこでの出会いと、豊かな自然の中で、

    少女は少しずつ、自分が歩む道を見つけていきます。

    虫や猫たち、そして土のにおいが 

    手を延ばせば届きそうに思えるほどに、

    作者の美しい語り口に引き込まれます。

    新しい作家との出会いは、なによりのごちそうです。

          2017年4月23日

          いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2017.04.15

    カンガルーの本棚 なりたいもの

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    東直子さんの「とりつくしま」(ちくま文庫)を、読みました。

    「とりつくしま」とは、亡くなった人の魂が、

    この世に戻ってきて とりつく「もの」のこと。

    母は、息子の野球に使うロージンに

    幼子は、母と通った公園の青いジャングルジムに

    妻は、夫が大切にしているマグカップに

    夫は、妻が書き続ける日記帳に

    少女は、片思いの男の子の彼女が使うリップに

    娘は、恩師が使う白檀の扇子に

    文庫本には、「・・・」になって「・・・」をしてみたい、という栞が挟まれています。

    11の短いお話は、亡くなった人の想いのすべてを込めて 終わります。

          2017年4月15日

          いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2017.04.09

    カンガルーの本棚 ことばの力

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    原田マハさんの「本日は、お日柄もよく」(徳間文庫)を、読みました。

    主人公は、どこにでもいる普通のOL

    親友の結婚式でやらかした失態からであった、ことばの魔術師

    導かれるままに ことばの魔力に引き込まれ、

    幼馴染の門出に ちからを尽くします。

    「困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、

    想像してみるといい。

    三時間後の君、涙がとまっている。

    二十四時間後の君、涙は乾いている。

    二日後の君、顔を上げている。

    三日後の君、歩き出している。」

    小説を読み、励まされ、わたしも主人公のように、

    自分の道を こころ新たに歩いていこうと思います。

           2017年4月9日

           いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2017.03.25

    カンガルーの本棚 うつコミック

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    田中圭一さんの「うつヌケ」(角川書店)を、読みました。

    うつをテーマにした、コミック本です。

    大槻ケンヂさんや、熊谷達也さんなど著名人の

    18のうつ脱出実体験が収録されています。

    生真面目で、責任感が強い人ほど、うつになりやすいと言われています。

    本書は、コミック版ですが、軽くて深い中身の1冊です。

           2017年3月25日

           いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2017.03.23

    カンガルーの本棚 2年半ぶりの再会

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    三上延さんの「ビブリア古書堂の事件手帳7」

    (メディアワークス文庫)を読みました。

    古書にまつわる人間模様を描く作品シリーズの

    今回のテーマはシェークスピア

    最後に隠されている どんでん返し

    シリーズ前作は、2014年12月発刊ですから、

    2年3か月ぶりの新作ですが、一気読みで楽しめる作品です。

           2017年3月23日

           いたやどクリニック 木村彰宏

  • 2017.03.20

    カンガルーの本棚 新たな出発

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    宮部みゆきさんの「小暮写眞館」(新潮文庫)を、読みました。

    写るはずがないものが、写っている写真。

    持ち込まれた写真の謎解きを続けるうちに、

    亡くした妹の記憶をよみがえらせる英一青年

    出会いと別れ、そして希望への旅立ち

    ミステリー仕立ての温かい物語です。

          2017年3月20日

          いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2017.03.08

    カンガルーの本棚 白やぎさんと黒やぎさん

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    湊かなえさんの「往復書簡」(幻冬舎文庫)を、読みました。

    手紙のやり取りの中で暴かれる、隠されていた事実

    思い出したくない事実が明らかになるにつれて、大きくなる心の揺らぎ

    そして、物語の最後は・・

    3つの短い物語のどれもが、心に残ります。

         2017年3月8日

         いたやどクリニック 木村彰宏 

     

  • 2017.03.02

    カンガルーの本棚 カブキブって

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    榎田ユウリさんの「カブキブ」(角川文庫)を読みました。

    主人公は、歌舞伎大好きな高校生

    親友を誘い、演劇部の花形を引き抜き、知り合い、知り合いの知り合いを巻き込んで、

    歌舞伎同好会を立ち上げます。

    初めておこなう公演直前のドタバタ劇

    そして・・

    井戸書店の森店長さんに勧められた全五巻

    おもしろくて、元気になれるシリーズです。

            2017年3月2日

            いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2017.01.08

    カンガルーの本棚 アニメで生理学

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    清水茜さんの「はたらく細胞④」(講談社)を、読みました。

    主人公は、なにをやってもドジな赤血球の女の子

    次々と現れる外敵から、免疫細胞が身体を守るお話です。

    今回の敵は、黄色ブドウ球菌、デングウィルス、キャンピロバクタ

    好中球、NK細胞、ランゲルハンス細胞とともに、

    身体の平和のために、熱いハート戦います。

    見ているだけで楽しく、生理学の基礎が学べます。

           2017年1月8日

           いたやどクリニック 木村彰宏

     

     

  • 2016.12.31

    カンガルーの本棚 道を究める者たち

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    木内昇さんの「櫛挽道守」(集英社文庫)を、読みました。

    幕末の木曽路を舞台に、櫛作りに命を懸ける職人たちの物語。

    女の身で、父の技を受け継ごうとする主人公「登瀬」。

    弟の早世、妹の不本意な結婚生活、そして夫を受け入れることができない日々

    物語は、主人公の弟が書き残した絵草子を読み、

    こらえていた思いに涙することで、夫が背負ってきた苦難に気づき、

    夫婦が競うように櫛づくりの高みを目指すところでページを終えます。

    今年105冊目となる小説は、

    読み終えた後も、しばらく心の高まりが鎮まらない作品でした。

    また一冊、心に残る本に巡りあえました。

    今年一年、ブログにお付き合いいただきまして、ありがとうございました。

    2017年も、引き続きよろしくお願いいたします。

             2016年12月31日

             いたやどクリニック 木村彰宏 

     

  • 2016.12.28

    カンガルーの本棚 お礼のお駄賃

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    森浩美さんの「家族連写」(PHP文芸文庫)を、読みました。

    8つの掌編からなる、家族の物語。

    その中の一つ「お駄賃の味」に、ひかれました。

    貧しくて、いつもおなかをすかせていた少年時代。

    お手伝いを頼まれて、その代償にといただいた親子丼のおいしさ。

    時を経て、主人公の心に、その時の温かい味がよみがえります。

    人と人とのつながりの温かさを教えてくれる作品です。

         2016年12月28日

         いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.12.17

    カンガルーの本棚 100冊目は怒る富士

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    新田次郎さんの「怒る富士・上下」(文春文庫)を、読みました。

    宝永の大噴火により、砂に埋もれた村々

    幕府は税金を課さない代わりに、救済もしないという「亡所」の扱いをします。

    村人は、「棄民」とされ、死んでいく自由を与えられます。

    これに立ち向かう関東郡代の伊奈忠順

    お話は史実とフィクションとを織り交ぜながら進みます。

    前進座の特別公演が、2017年3月14日に神戸で決まりました。

    小説の世界が舞台でどう展開するのか楽しみです。

    今年100冊目の読書になりました。

           2016年12月17日

           いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.12.10

    カンガルーの本棚 憲法の番人

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    佐藤功さんの「憲法と君たち」(時事通信社)を、読みました。

    1955年に書かれた本の、復刻版です。

    押し付け憲法という中傷は、その当時からありましたが、

    日本国憲法の作成に深くかかわられた著者は、人類の英知の到達点だと明確に否定されます。

    以下、本文中より抜粋します。

    「裁判所も憲法の番人だし、また国会も、内閣も、議員や政党もじつはみんな憲法の番人なはずなのだが、国民はそれらの番人のそのまた番人だということになる、最後に憲法を守るのは国民の仕事だ

    多くの日本人が、あの戦争で命を捨てた。また、あの原子爆弾で二十何万の人が死んだ。

    こういうふうに考えれば、今の日本の憲法を、どんなふうに変えてもいいということにはならないということが、君たちにもわかるだろう。

    民主主義と、基本的人権と、そうして平和、この三つはどうしても変えてはならないことだということ・・

    憲法が君たちを守る。君たちが憲法を守る。」

    著者の熱いメッセージは、今の時代にこそ、私たちの心に響きます。

          2016年12月10日

          いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.11.30

    カンガルーの本棚 父の素顔

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    朝井まかてさんの「阿蘭陀西鶴」(講談社文庫)を、読みました。

    「好色一代男」「好色五人女」「日本永代蔵」「世間胸算用」など、江戸初期に浮世草子の作者として一世を風靡した井原西鶴の半生を、娘の目から描いた作品です。

    「好色一代男」を語る場面では、「読む者はな、それを己に重ね合わせて胸を躍らせたり口惜しがったりできる。・・・物語というのは自分の好きな時に好きなように読んで、百人おったら百通りの世之介が生まれるわけや」と、物語の本質を伝えます。

    それでも、家族を顧みず、家族に貧しい暮らしを強いる父を許すことができず、父を見る目は冷たく凍ります。

    母が早くして亡くなってからは、養子に出された二人の弟と離れて、父と二人の生活を余儀なくされます。

    その中で、父の家族への情愛に気づき始めます。

    人情時代小説を書くと、当代一の作者の期待通りの作品です。

            2016年11月30日

            いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.11.29

    カンガルーの本棚 いちから人権学習

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    「人権読本」(岩波ジュニア新書)を、読みました。

    フリーライター鎌田慧さんによる、15の解説文。

    1人の人間として:子どもの権利

    弱いおとしよりをどう支えるのか:高齢者福祉

    子どもの虐待とDV:家庭内の暴力

    そばに居ることから:障碍者とともに生きる

    など、社会が抱える問題を人権の視点から解説されます。

    どの解説文も、深く重く、人がともに生きることを、考えさせられます。

          2016年11月29日

          いたやどクリニック 木村彰宏

     

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