カンガルーの小部屋

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  • 2016.11.28

    カンガルーの本棚 託された命

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    葉室麟さんの「陽炎の門」(講談社文庫)を、読みました。

    幼な友達の冤罪に、自分がかかわったのではないかと自責の念に苦しむ主人公

    その真相が明らかになった時、彼は敢然と黒幕に立ち向かいます。

    ことが成り終え、罪業深き自分を見つめる時、

    「散っていった者たちから、命を託されたのだと存じます」との

    妻からの一言に救いを見出します。

    託された命をどのように生きていくのか、作者からの問いかけが胸に届きます。

             2016年11月28日

             いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.11.23

    カンガルーの本棚 いつか訪ねてみたい

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    森沢明夫さんの「虹の岬の喫茶店」(幻冬舎文庫)を、読みました。

    切り立った岬にある喫茶店。

    青く塗られたお店の窓からは、遠くに富士が望めます。

    そこを訪れる悩みを抱えた人たち

    子どもと訪れる妻を亡くした男性

    就活がうまくいかずに、失意のままに立ち寄る青年。

    「おいしくなあれ」と心を込めて煎れられたコーヒーと、

    その人の人生にふさわしく選ばれた音楽

    喫茶店の老主人と過ごすうちに、明日への希望に光がさしこみます。

    どこにでもありそうで、なかなか出会えない

    そして、いつか訪れてみたい喫茶店。

    そんな気持ちになる小説です。

          2016年11月23日

          いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.11.20

    カンガルーの本棚 ドタバタの悲しさ

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    荻原浩さんの「母恋旅烏」(双葉文庫)を、読みました。

    夢破れ、いまはレンタル家族業を営む大衆演劇一家

    おかしさあり、涙ありの ドタバタ喜劇そのものの家族関係

    やがて、ひとりひとりと 家族を離れ・・

    おもしろうて やがて悲しき 作品です。

         2016年11月20日

         いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.11.04

    カンガルーの本棚 マニュアル人生

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    村田沙耶香さんの「コンビニ人間」(文芸春秋社)を、読みました。

    主人公は、コンビニに開店当時から務める30台のアルバイト店員。

    コンビニを訪れるお客の足音や、商品の音に

    生きている、必要とされていると 実感します。

    泣いている子どもに感じる 簡単に泣き止ませる方法や

    季節に応じた服の選び方など、

    その行動は、コンビニに居場所を見つけたアスペルガーの女性そのもの。

    発達を勉強している友だちからお借りし、一気読みしました。

    世の中の いろいろな考え方、感じ方を持つ方への理解が深まる一冊です。

              2016年11月4日

              いたやどクリニック 木村彰宏  

     

  • 2016.11.01

    カンガルーの本棚 見上げる星は

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    荻原浩さんの「メリーゴーランド」(新潮文庫)を、読みました。

    主人公は、地方公務員の中年男性

    お荷物になったテーマパークの再生を命じられます。

    旧態依然としたお役所の中で、彼の魂がはじけます。

    おもしろくて、やがて悲しき物語の最後に用意されていたのは、

    家族と見上げる夜空の星。

    「さわやかだけど、ほろ苦い」

    巻末の書評の最後のページまでが、いとおしくなる作品です。

          2016年11月1日

          いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.10.18

    カンガルーの本棚 ジェントルゴースト

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    荻原浩さんの「押入れのちよ」(新潮文庫)を、読みました。

    ジェントルゴーストとは、優霊のこと。

    死んでなお、残された人に尽くすゴーストたち。

    もちろん こわ~いお話も入っています。

    9編の不思議な物語を、お休みの一日堪能しました。

             2016年10月18日

             いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.10.13

    カンガルーの本棚 母娘ふたりで

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    中江有里さんの「結婚写真」(小学館文庫)を、読みました。

    主人公は中学2年生の娘と、若い恋人がいるシングルマザー

    わかりあい、つきはなし、揺れ動くこころ。

    しあわせは、誰かが運んでくるのじゃなくって、

    しあわせは、自分の中にあるはず。

    こう言い切る大人になった主人公のすがすがしい決意に、共感します。

    親と子の関係に悩むあなたに、お勧めの一冊です。

          2016年10月13日

          いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.10.12

    カンガルーの本棚 ややこしや

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    大沼紀子さんの「真夜中のパン屋さん・シリーズ」を、読みました。

    主人公は高校3年の女子生徒。

    真夜中にだけ開くパン屋さんで繰り広げられる人間模様。

    午前0時から始まり、午前4時までと続くシリーズは、

    飛躍がすごすぎて、ついていくのに苦労が必要です。

    それでも主人公を助け、温かく見守る人々に、救いを感じます。

    おいしそうなパンの描写とともに、こころがホッとする小説です。

            2016年10月12日

            いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.09.30

    カンガルーの本棚 なぜにゴリラ

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    アレルギーの勉強会にでかけると
    小児科の中村先生に 呼び止められます。
    「自費出版したのですけど・・」と、
    いただいたのが「ウガンダにゴリラを訪ねて」
    先生の紀行文に、ご主人が撮られた写真
    読み進めるうちに、気分はすっかりウガンダです。
    中村先生、ありがとうございます。
    2016年9月30日
    いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.09.29

    カンガルーの本棚 あったやもしれぬ

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    荻原浩さんの「誰にでも書ける一冊の本」(光文社文庫)を、読みました。

    主人公は広告制作会社を経営する中年男性。

    郷里に残した父の、危篤の報が届きます。

    母から手渡されたのは、父が書き残した原稿の山

    読み進めるうちに、父の生き方が浮かび上がってきます。

    150ページにも満たないこの小説が、生きるという意味を問いかけます。

           2016年9月29日

           いたやどクリニック 木村彰宏 

     

  • 2016.09.23

    カンガルーの本棚 あの日に帰りたい

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    荻原浩さんの「あの日にドライブ」(光文社文庫)を、読みました。

    主人公は、大手銀行から、タクシードライバーに転職した中年男性。

    不規則勤務で体は悲鳴をあげ、家族との関係もきしみはじめる

    昔の自分に戻れるとしたら、いつ頃に自分からやり直せばよいのか

    誰もが一度は考える問いに、答えは見つかりません。

    ほろ苦く、それでいて一筋さす光を感じさせる作品です。

          2016年9月23日

          いたやどクリニック 木村彰宏   

     

  • 2016.09.09

    カンガルーの本棚 赤に染まる街

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    重松清さんの「赤ヘル1975」(講談社文庫)を、読みました。

    1975年の春から秋にかけての、広島の少年たちの物語。

    父に連れられて、広島の街に住むことになったマナブ少年。

    出合う人の心の中に、消えないでいる戦争の災禍

    「よそもの」と言われながらも、少年はこの街を分かろうとし、

    「ひろしま」を好きになっていく。

    この年、広島カープは、念願のリーグ優勝を果たし。

    少年たちも友情を深めていきます。

    2016年の今年、25年ぶりのリーグ優勝を目前にしたカープ

    当時の中学生は、中年になり、

    いま、何を思っているのか、とても気になります。

            2016年9月9日

                    いたやどクリニック 木村彰宏

  • 2016.08.15

    カンガルーの本棚 止めることはできなかったのか

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    NHK取材班の「日本人はなぜ戦争へと向かったのか」

    (外交・陸軍編)(新潮文庫)を、読みました。

    世界から孤立し、戦争への道を進んだ日本。

    歴史を後から振り返り、

    止めることはできなかったのかという思いは、

    誰しも一度はいだかれたことかと思います。

    外交情報の共有のなさ、

    組織防衛が第一優先の国家機関

    排他的かつ刹那的な国民感情

    などが、取材資料から明らかになります。

    終戦の日に、お勧めの1冊です。

          2016年8月15日

          いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.08.03

    カンガルーの本棚 積み続けること

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    エドワード・ムーニー・Jrの「石を積むひと」(小学館文庫)を読みました。

    妻を亡くし、孤独に生きていく男の物語。

    妻が残してくれた手紙を道しるべに、若者の再生に力を尽くします。

    親子とはなにか、夫婦とはなにか

    子育ての原点を考えさせられる作品です。

          2016年8月3日

          いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.07.10

    カンガルーの本棚 戦争へと進む道

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    加藤陽子先生の「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」

    (新潮文庫)を、読みました。

    東大教授の加藤先生が、私立中高校の生徒に、

    日本の近代史を講義します。

    日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、満州事変、日中戦争、

    太平洋戦争

    この国が経験してきた戦争への過程と、戦後とが

    多くの資料とともに解き明かされます。

    加藤先生はあとがきの中に、このように書き記されます。

    「戦争となれば真っ先に犠牲となるはずの普通の人々が、

    なぜ、自己と国家を過度に重ね合わせ、

    戦争に熱狂してしまうのか」

    500ページ近くの大作を、投票日までに読み上げようと、

    数日間、殆どの時間をこの本と対峙することに使いました。

    「過去を正確に描くことでより良き未来の創造に加担すると

    いう、歴史家の本分にだけは忠実であろうと心がけました。」

    加藤先生の力作が、多くの方に読まれることを望みます。

            2016年7月10日

            いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.07.03

    カンガルーの本棚 家族のありかた

    重松清さんの「ファミレス」(角川文庫)を、読みました。

    3組の中年オヤジが直面する家族の問題。

    結婚をして、子どもが生まれ、年収が増え、家も大きくなる

    そんな右肩上がりの家族のありかたが、

    子どもが独立することで、微妙に崩れていきます。

    ファミレスは、ファミリーレストランなのか

    それとも、ファミリーレスの略なのか

    軽快な重松ぶしに乗りながら、家族のありかたを考えさせられます。

           2016年7月3日  

                   いたやどクリニック 木村彰宏 

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  • 2016.06.28

    カンガルーの本棚 助けること助けられること

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    梨木香歩さんの「雪と珊瑚と」(角川文庫)を、読みました。

    生まれたばかりの雪を育てながら奮闘するシングルマザーの珊瑚

    アルバイトしていたお店が閉店することを期に、

    仕事疲れの人がホッとできる食べ物屋さんを開こうと考えます。

    出会う人に助けられながら、どこかで助けられることを期待する自分に葛藤します。

    助けられるとは、感謝が6割、屈辱感が2割、反感が2割と、著者は記します。

    人を助けるとは、人に助けられるとは

    善意の意味を考えさせられる小説です。

           2016年6月28日

           いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.06.22

    カンガルーの本棚 言葉の影を

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    ほしおさなえさんの「活版印刷三日月堂」(ポプラ文庫)を、よみました

    川越の街で、活版印刷を営む小さな店の物語。

    息子のたびだちを、寂しく見つめる母親

    叔父の喫茶店を引き継いで、自信が持てない青年。

    親友の悩みを受け止めきれない高校生

     

    活版印刷の懐かしい文字に、きぼうの灯を見つけます。

    今が旬の心温まる短編集です。

          2016年6月22日

          いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2016.06.21

    カンガルーの本棚 映画館に住んでいるという

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    原田マハさんの「キネマの神様」(文春文庫)を、読みました。

    主人公は、シネコン建設に携わるキャリアウーマン

    父の入院と時を同じくし、仕事をやめて映画雑誌社で働くことになります。

    そこで起きる奇跡の数々。

    映画館には「キネマの神様」が住んでいると言います。

    描かれる懐かしい名画のシーンに、心が温かくなりました。

             2016年6月21日

               いたやどクリニック 木村彰宏 

     

  • 2016.06.12

    カンガルーの本棚 日本の自然を愛して

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    朝井まかてさんの「先生のお庭番」(徳間文庫)を読みました。

    舞台は、幕末期の長崎は出島

    シーボルトのもとで働く庭師熊吉の物語。

    日本の自然を愛する先生のお気持ちのもと、精進を重ねる熊吉

    物語は、シーボルト事件に連座して、愛する人を失う悲しみに進みます。

    終章にかかれる後日談にすくいを感じるのは、私だけでしょうか

    紫陽花の名に込められた思いを、深く感じます。

        2016年6月12日

        いたやどクリニック 木村彰宏

     

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